SCP-3058-JP
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アイテム番号: SCP-3058-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-3058-JPはサイト-8147の低脅威度物品収容ロッカーに収容されます。当オブジェクトについて言及した当報告書以外の全ての記録は速やかに廃棄・削除される必要があります。これには、電子記録・音声記録・当報告書の複製も含まれます。

説明: SCP-3058-JPは10cm×6cm×1cmの電卓です。計算に用いる場合、通常の電卓と同様に使用可能です。

SCP-3058-JPの異常性は2つあります。1つ目の異常性は、当オブジェクトについて記述された文章に含まれる、漢数字やローマ数字など「数字を表す文字や記号」を算用数字に置換するというものです。例えば、「2枚」を漢数字を用いて書いた場合、算用数字を用いた表記に変更されます。また、文字の個数で数値を表したり、文字の配置で数字を表したりした場合も同様です。ただし、「統一」「二枚目な男」「十人十色」などの成句・固定化した言い回しや、「五十嵐」「三重県」などの固有名詞には影響を与えません。

SCP-3058-JPの2つ目の異常性は、当オブジェクトについて言及された全ての記録に含まれる算用数字の合計数を制限するというものです。形式部門によって特定された、数字ごとに定められている個数を以下に示します。

数字 個数 数字 個数
0 5
1 6
2 7
3 ██ 8
4 9

各数字における個数は過不足なく満たされている必要があります。SCP-3058-JPについて記述された文章が上記の条件を満たしていない場合、約4時間後に文章が瞬時に消失します。





会話ログ3058-JP-01 - 日付 20██/██/██

相馬博士: 改めて、木村君。ようこそ戦術求解部門へ。今日からここの一員として一緒に頑張りましょう。

木村研究員: ええと、前にも言いましたけど、僕は数学とか論理学とか苦手ですし、なんでパズル部門に配属されたのか分かんないんですが。

相馬博士: パズル部門ではありません。戦術求解部門です。

木村研究員: いやでも、外部からはそう呼ばれてますよ?

相馬博士: まあ、パズルを解くときもありますが、そうでない場合も少なくないのですよ。  ところで、たった今メールが来たようです。


相馬博士: あと、SCP-3058-JPの報告書が添付されていますね。確認しましょう。

[両者は報告書を閲覧する。]

相馬博士: なるほど、つまりどの数字が何個書かれているかを正しく記入しなくてはならない……まるでパズルのようですね。

木村研究員: その数字って、「個数」に書かれてる数字自体も含むんですよね。こんなの分かるんですか? そもそも分からない可能性だってありますよ。

相馬博士: とにかく、一旦整理してみましょう。まず、黒塗り以外での数字の個数を表にしてみてください。その間に私はメールを一件。

木村研究員: ……はい。ええと、こうですかね?

数字 個数 数字 個数
0 8 5 7
1 5 6 2
2 4 7 2
3 7 8 8
4 3 9 1

相馬博士: 合っているようです。こういった単純な数え上げでミスしないことが重要ですよ。

木村研究員: でも、こっから何が分かるんです?

相馬博士: そうですね……例えば、「8」に注目してみてください。「8」は8個以上あるはずですよね。では、仮に「8」が8個しか存在しない場合どうなるか考えてみましょう。

木村研究員: ええと、「個数」の欄に「8」が記入されます。それで、あっ、「個数」における「8」を含めると「8」が9個になってる!?

相馬博士: そうです。「8」が8個しか存在しないと仮定すると数が合いません。そして、「8」の個数は1桁の数なので、9個であることが確定します。
数字 個数 数字 個数
0 8 5 7
1 5 6 2
2 4 7 2
3 7 8 9 (+1)
4 3 9 2 (+1)
不足分 「8」1個

相馬博士: ここでは、前の表から変化した部分を太字、変化した量をカッコ内に書きました。また、確定した部分を青字で表しています。

木村研究員: なるほど。自力じゃ思いつけませんよ。

相馬博士: なお、「8」は9個ですので、あと1個あるということを覚えておいてください。

木村研究員: はい。

相馬博士: では次に、「3」の個数に注目しましょう。

木村研究員: 「3」の個数は2桁の数ですね。

相馬博士: 「3」が入る可能性があるのは、「4」「6」「7」「9」いずれかの個数が3である場合です。それ以外の数字は既に3個以上ありますからね。

木村研究員: でも、「3」が13個ある場合も「3」が入りますよ?

相馬博士: 「4」「6」「7」「9」全ての個数が3であっても、「3」は11個です。仮に「3」の個数に「13」と入っても、「3」は12個しかないので合いませんね。

木村研究員: そうなるのか。つまり「3」は10個か11個ということですね。

相馬博士: そういうことです。

相馬博士: では、ここで、仮に「3」が11個だとしてみましょう。

数字 個数 数字 個数
0 8 5 7
1 7 (+2) 6 2
2 4 7 2
3 11 (+4) 8 9
4 3 9 2
不足分 「8」1個 「3」4個

木村研究員: これだけだと「3」が4個足りませんよ。

相馬博士: そのため、「4」「6」「7」「9」全ての個数が3個だといえます。

数字 個数 数字 個数
0 8 5 7
1 7 6 3 (+1)
2 4 7 3 (+1)
3 11 8 9
4 3 (+0) 9 3 (+1)
不足分 「8」1個 「6」1個 「7」1個 「9」1個

木村研究員: えーと、この場合だと「6」「7」「9」が1個ずつ足りてないですね。

相馬博士: さて、「3」以外の数字は個数が2以上かつ1桁なので、「1」及び「0」の個数も確定します。
数字 個数 数字 個数
0 8 (+0) 5 7
1 7 (+0) 6 3
2 4 7 3
3 11 8 9
4 3 9 3
不足分 「6」1個 「9」1個

相馬博士: 今確定した「7」を新たに数えれば「7」は3つになります。あと「6」「9」が1個ずつあることが必要です。

木村研究員: けど、空いてるところに「6」と「9」じゃ数が合いませんよ。

相馬博士: その通り。よって、仮定が誤っていたといえます。

木村研究員: じゃあ、「3」は10個でしたか。

数字 個数 数字 個数
0 8 5 7
1 5 6 2
2 4 7 2
3 10 (+3) 8 9
4 3 9 2
不足分 「8」1個 「3」3個

木村研究員: 現時点では、「3」が3個足りてないのか。具体的には、「4」「6」「7」「9」のうち3個存在するのが3種類ですね。

相馬博士: ええ。さらに、「3」以外の数字は個数が2以上かつ1桁なので、もう「0」と「1」は入りません。よってこれらの個数も確定します。

数字 個数 数字 個数
0 9 (+1) 5 7
1 6 (+1) 6 2
2 4 7 2
3 10 8 9
4 3 9 2
不足分 「8」1個 「3」3個

相馬博士: そして、「0」と「1」の個数が確定したので、「6」「9」の最低個数も増えます。

数字 個数 数字 個数
0 9 5 7
1 6 6 3 (+1)
2 4 7 2
3 10 8 9
4 3 9 3 (+1)
不足分 「8」1個 「3」3個

相馬博士: さて、「8」を思い出してください。「8」は9個なので、あと1個だけ必要でしたね。

木村研究員: 8個になり得るのって、もう「5」しかないんじゃないですか?

相馬博士: そうです!

数字 個数 数字 個数
0 9 5 8 (+1)
1 6 6 3
2 4 7 2
3 10 8 9
4 3 9 3
不足分 「3」3個 「5」1個

木村研究員: 「5」が1個必要になりましたね。ここから……うーん、解けそうなのに分からないなあ。

相馬博士: いろいろ解き方はあるでしょうが、例えば「2」はいくつあるでしょうか?

木村研究員: 「7」が2個ならその個数より「2」は5個ですし、3個なら「2」は4個です。

相馬博士: 後者であると仮定しましょう。

数字 個数 数字 個数
0 9 5 8
1 6 6 3
2 4 (+0) 7 3 (+1)
3 10 8 9
4 3 9 3
不足分 「3」2個 「5」1個

相馬博士: この場合、「4」はいくつです?

木村研究員: 「4」は4個です。あっ、そしたら「個数」における「4」を含めて5個になってます! となると、「4」は5個以上ある必要があります。

数字 個数 数字 個数
0 9 5 8
1 6 6 3
2 4 7 3
3 10 8 9
4 5 (+2) 9 3
不足分 「3」2個 「4」1個

木村研究員: ってことは「6」か「9」の個数が4であるはずです。

相馬博士: ここで、「『4』『6』『7』『9』のうち3個存在するのが3種類」ということを思い出してください。既に「4」は3個ではないのですから、「6」も「9」も3個ですね。つまり、「4」があと1個は入らないのです。

木村研究員: なるほど、「2」が4個だと数が合わないのか。

木村研究員: ということは「2」は5個ですね。

数字 個数 数字 個数
0 9 5 8
1 6 6 3
2 5 (+1) 7 2
3 10 8 9
4 3 9 3
不足分 「3」3個 「2」1個

相馬博士: そして、これより残った数字の個数も確定します。

数字 個数 数字 個数
0 9 5 8
1 6 6 3 (+0)
2 5 7 2 (+0)
3 10 8 9
4 3 (+0) 9 3 (+0)

相馬博士: さて、念の為、数が合っているか確かめましょうか。

木村研究員: 合って……ますか?

相馬博士: 私はそう思います。

木村研究員: よかった……! これ、僕だけじゃ絶対分かりませんでしたって! 

相馬博士: 戦術求解部門のメンバーとしては、すぐ解けるようになってもらいたいですね。

木村研究員: いやあ、この部門、僕には務まりませんよ。数合わせにすらならないです。

相馬博士: ……数を合わせてただけに?

木村研究員: あ、たまたまです。

相馬博士: まあ、こういう言葉遊びもこの部門に必要ですからね。ちなみに、今やったのはあくまで解き方の一例です。この方法でなくても解が求まれば構わないのです。

木村研究員: 他に解き方があるのでしょうか?

相馬博士: 例えば、コンピュータに総当たりで確かめさせるというのも考えられます。

木村研究員: ゴリ押しですか。

相馬博士: 解ければよいのですからね。実は、木村君が数を数えている間にメールを送り、他の戦術求解部門職員にそれを依頼していました。実際に返信されたものがこちらです。

数字 個数 数字 個数
0 9 5 8
1 6 6 3
2 5 7 2
3 10 8 9
4 3 9 3

相馬博士: おめでとう、合っていたようですね。

木村研究員: ……いや、じゃあ何のためにパズルを解かされたんですか!

相馬博士: 「解は1つだが解法は色々ある」と実感してもらうためです。あと、場合によっては機械が使えないときもありますからね。

木村研究員: そうですか……。

相馬博士: さて、解自体は求まりましたが、何か他にすべきことはありませんでしたか?

木村研究員: ええと、特別収容プロトコルに従い、SCP-3058-JPに言及した記録を削除しなくてはなりません。ってことは、僕たちが書いた表とか、今録ってる会話ログとかも処理すべきですね。

相馬博士: その通り。最後まで気を抜かないでくださいね。

木村研究員:   ところで、勘違いだったら申し訳ないのですが、ちょっと気になることがあって。

相馬博士: 何ですか?

木村研究員: まず、黒塗りされた数字は書かれたと見なされませんでした。また、このオブジェクトについて書くときって、例えば四角2個で「2」を表す、とかはできないんですよね?

相馬博士: はい。その場合には四角が「2」に置換されます。

木村研究員: でも、「3」の個数が2桁の数って分かったのは、黒塗りが2文字分あったからですよね。

相馬博士: なるほど。確かにそうですね。

木村研究員: ってことは、例えば「1」は1桁の数、「2」は2桁の数……みたいな表し方ができれば、黒塗りにされてても数を表せるのではないでしょうか?

相馬博士: ……木村君、それは、面白そうな解法ですね。収容に役立てられるかもしれません。

木村研究員: そんなにですか!?

相馬博士: いや待て、これは1進数だ、1進数のことでしょう! 「1」のみを使う特殊な数え方! 「11」は2(10)、「111」は3(10)、そういうことだったのですね?

木村研究員: えーと、ごめんなさい、よく分からないです。

相馬博士: ともかく、後ほど形式部門に提案してみましょうか。素晴らしい解法ですからね。

木村研究員: はい!?

相馬博士: では、紙は捨てておきますので、この記録の削除はお願いします。

木村研究員: あっ、了解です!
















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