SCP-3063-JP
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アイテム番号: SCP-3063-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 財団はSCP-3063-JPに関する情報を隠蔽し、SCP-3063-JPが存在しなかった場合のシミュレーションに従い、カバーストーリー『武家政権の確立と崩壊』『明治維新』『文明開化による急速な近代化』『天皇を頂点とした軍事国家』『資源の少なさをバネにした技術国家』などを流布します。

財団は、日本国のほぼ全領土を接収するとともに、カバーストーリーと矛盾しないよう可能な範囲で日本国を近代化させ、統治します。

説明: SCP-3063-JPは、以下の条件が満たされた際に、火炎から50 cmの範囲内に出現するイエウサギ(Oryctolagus cuniculus domesticus)です。

  1. 日本国の領土において火炎が発生する。
  2. 火炎が火元から1 mの位置に拡散する。

SCP-3063-JPの出現は、鎮火するまで毎秒10羽のペースで続きます。全ての個体が正の走光性を有することが確認されており、より強い光源が存在しない限り出現と同時に全個体が火炎への進入を行います。SCP-3063-JPは対燃性を有していないため、多くの場合焼死します。当該オブジェクトは全ての個体が正確に体長60.30 cm、体重4.190 kgであり、2.514 kgの水を含み、その他の性質も全て同一であることが確認されています。

このため、日本国の領土においては、火災はSCP-3063-JPの血液など水分による冷却の寄与が脂質などによる燃焼への寄与よりも大きいこと、および火元の酸素遮断により鎮火します。また、下層のSCP-3063-JPは概ね圧死するため、熱源がオブジェクトの死体から滲出した体液で冷却され、バックドラフト1が抑制されます。

財団がSCP-3063-JPを認知して以来、様々な事例が記録されています。以下に付記するのは、その最も代表的な事例におけるタイムラインです。

0:00 一般的住宅で油火災(以下、火元1)が発生。火元1が発生した瞬間はSCP-3063-JPが発生しない。住民はSCP-3063-JPの出現を前提として、鎮火行動を行わずに退避する。

1:00 火元1から火花が飛び、1 m離れた別の家財へ延焼(以下、火元2)する。この時点で火元1および火元2から50 cm圏内の球状範囲にSCP-3063-JPが出現する。SCP-3063-JPは出現から数秒で火元1および火元2へ突入する。

1:10 SCP-3063-JPの発生個体数はこの時点で100羽を超え、火炎の外に所在する個体にも延焼し始める。

1:20 SCP-3063-JP個体群から1 m離れた複数の個体へ火炎が燃え移る。(以下、火元3)

1:30 SCP-3063-JPは火元1、火元2、火元3から出現する。火元3はSCP-3063-JP個体群により圧死し、体液によって火元3が鎮火する。

1:40 この時点でSCP-3063-JPの個体数は1000羽を超える。火元1、火元2でもSCP-3063-JPの圧死による体液飛散で温度は急激に低下する。出現を続けるSCP-3063-JP個体により火元1および火元2への酸素供給が途絶え、またSCP-3063-JP個体群による体液の気化冷却により火勢が衰え始める。

2:00 完全に鎮火する。最終的なSCP-3063-JP個体数は2000羽前後である。

補遺: SCP-3063-JPは、その性質から日本国が国号を日本と定めた大宝律令が発布された701年に発生を始めていると推測されていますが、日本国がSCP-3063-JPを認識したのは長屋王の変2における火災および、SCP-3063-JPによる鎮火です。

この際に発生したSCP-3063-JPの死骸は長屋王邸宅の面積3万 m2から150万体に及ぶと算出されており、これは重量にして6285 tに相当します。オブジェクトは長屋王の呪術に起因するものであるとして焼却処分が検討されましたが、これを焼却しきるだけの燃料が供給できないことから埋設処分が検討されました。しかし、呪物の可能性が高いSCP-3063-JPを埋設することは国家に凶をもたらすと判断され、SCP-3063-JPを罪人に提供することが決定されました。その後、罪人に不調が確認されなかったことから庶民へSCP-3063-JPの提供が始まり、そこでも不調が確認されなかったために全人口に対してSCP-3063-JPの提供が決定されました3

その後も木造建築であることに起因して度々火災が発生し、SCP-3063-JPが発生し続けました。この際、SCP-3063-JPが本能的に火炎に飛び込んでいく様子が人々に「これは悪なるものではない」などといった認識を与えていき、徐々にSCP-3063-JPの出現が長屋王の呪いであるという風説は途絶えました。仏教の説話からSCP-3063-JPは徳の高いウサギであり、食すことが供養であるという認識が全国共通のものになっていった経緯が、各種詩集などに登場するSCP-3063-JPの描写から推察されています。また、財団の分析によりSCP-3063-JPの出現が呪的現象でないことも明らかになっています。

SCP-3063-JPの需要は、日本国に2つの変化をもたらしました。

1.肉食供養文化の広がり
仏教の伝来により飛鳥時代から禁じられていた肉食は、SCP-3063-JPを摂食供養するために一部解禁されました。この結果として日本国では実質的にSCP-3063-JPがタンパク源として用いられるようになったため、日本人は体格などにおいて諸外国よりも有利になりました。

2.人口生産量の拡大
SCP-3063-JPは火炎の延焼をトリガーとして発生するため、都市のみならず森林の火災においてもSCP-3063-JPは発生します。日本国はこの現象を利用し、常に火元および延焼先4へ燃料を加え続けることでSCP-3063-JPを恒常的に生産し続ける手法を確立しました。この事実は、農耕に不適な山間部においても食料生産が可能となった事実を意味します。

このようにして、SCP-3063-JPの肉は、粟や稗を超える入手容易性から日本国における主食の一部となりました。冷害や自然災害による農作物の不作があった場合でもSCP-3063-JPが食料となるため、日本国が食物の確保に苦戦した例はSCP-3063-JPが発生するようになってから記録されていません。

しかしながら、日本国の人口が約3000万人となった時点で竪穴住居が主であった一般市民を収容しきれなくなり、疫病への懸念から領土を拡張する必要に迫られました。これがきっかけとなって10世紀はじめに蝦夷征伐が行われています。日本国は2世紀に渡りSCP-3063-JPを利用してきたため、戦略の殆どがSCP-3063-JPの発生を前提としたもの5になっていました。しかし蝦夷支配下の土地ではSCP-3063-JPが発生しないために、侵攻には予定よりも時間を要していたことが記録されています。

11世紀初めになって現在の北海道および東北地方が日本国の領土に編入されました。また、文献調査により北海道および東北地方の編入前後でSCP-3063-JPが発生する異常性の当該地域への拡散が確認されています。

この後、日本国が領土的野心を持つことはありませんでした。日本国の森林面積2502万 ha全てをSCP-3063-JPを発生させるための資源として使用することを仮定した場合、人口が1億2000人に増加したとしても20万8500年だけ人口を維持できる計算になります。原木を採取した跡地を村にすることで居住地の問題も解決したため、領土を拡張する必要がなかったためであると考えられます。

また、蝦夷討伐や元寇防衛、治安維持などにおいて貴族階級が積極的に活動したことから、イスラム世界のマムルーク朝などのように軍事指導者が支配階級となる事態も発生せず、現在に至るまで天皇が実質の君主である事実は特筆に値します。

日本国は海外との交易にも積極的でした。長年にわたりSCP-3063-JPを捕獲してきた日本国では捕獲技術が向上しており、火傷を経験していないSCP-3063-JPを回収できることから毛皮が飽和した状態にありました。16世紀から始まった南蛮貿易では、香辛料や各種根菜、工芸品などを欲した日本国が対価に大量の毛皮を輸出したことが記録されています。

食料と毛皮を恒常的に供給できる日本国は早期にヨーロッパ世界へ広く認知され、領土的野心の対象となりました。しかし、遠隔地であることから侵攻兵力が日本国の防衛線力を上回ることは困難であり、第一次大戦期になるまで全ての例において日本国が防衛に成功する形で終了しています。戦況が日本優位であったのは進行側の人員輸送能力が日本国の戦闘員を圧倒できるほどではなかったために過ぎず、技術的には徐々に遅れを取るようになっていった事実が明らかになっています。

16世紀から20世紀にかけて、世界各国では港湾施設などを防衛するために沿岸砲6が用いられてきました。しかし、このためには大量の鉄が必要であり、大型の鉄溶融炉が必要でした。しかし、たたら製鉄で用いられた長さ1.8 m幅1.8 m以上の大きさを持つ炉では炉底部の赤熱部から上方の原料部分への延焼がSCP-3063-JPを発生させるため、大型の鉄溶融炉は日本国において利用できず、沿岸砲による領土防衛は不可能でした。このため、日本国は沿岸の土地を放棄し、上陸してきた侵攻兵力をゲリラ的に殲滅することで対処していたことが知られています。この年代から、徐々にSCP-3063-JPに向けられる感情は敬意や親愛だけではなく、技術発展を妨げる邪魔者という悪意が混じり出したことが記録から読み取れます。

20世紀、揚陸艇により大規模な人員輸送を可能としたアメリカおよびイギリスは戦車や機関銃、毒ガス等による攻撃を行い、日本国のゲリラ戦術を圧倒しました。この際、両国の軍隊に潜入していた財団職員により、両国が掌握した土地においてSCP-3063-JPが発生しなくなっている事実が明らかになり、財団はアノマリー保護の観点から両国を撤退させることを決定しました。潜入した人員を利用して米英の部隊を衝突させて乱戦状態を引き起こし、日本国を偽装した部隊により両軍を殲滅、撤退に至らしめました。

その後、財団は全世界に対して日本国がSCP-3063-JPを持っていないように認識させる情報操作および記憶処理を行い、21世紀初頭に完了しました。この際にSCP-3063-JPが無かった歴史をシミュレートし、『武家政権の確立と崩壊』『明治維新』『文明開化による急速な近代化』『天皇を頂点とした軍事国家』『資源の少なさをバネにした技術国家』などのカバーストーリーを流布しました。

財団との協議により、天皇は他国や国民に対して公開されない真の日本国憲法を作成し、日本国の領土が皇居に限られることを明記しました。これ以外の土地については日本国ではないとし、日本国ではない土地については財団が接収、統治を行なうことが決定されました。

財団はシミュレーションした歴史に沿うよう各地を近代化するとともに、日本国民に対して記憶処理を施しました。その後、各国に流布したものと同様のカバーストーリーを日本国に流布しました。

その後、日本国は通常の国家と同様に発展し、現在に至っています。

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