アイテム番号: SCP-3098-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3098-JP及び六角研究員はサイト-8195神格実体収容セルに収容されます。六角研究員は必ずサイト-8195内に留めておかなければならず、高位アキヴァ放射地帯への立ち入りは禁止されます。
SCP-3098-JPと六角研究員は分離されず、六角研究員の死亡時には、ノウアスフィア概念描出装置によりSCP-3098-JPは終了されます。
説明: SCP-3098-JPは外見上は一般的な非異常である人間に酷似したレベル4ピスティファージ実体です。SCP-3098-JPはサイト-8195の職員である六角研究員との奇跡論的な関連性が確認されています。SCP-3098-JPとの意思疎通は可能であり、言語を用いての会話が可能なレベルに達しています。また、アキヴァ神学的エネルギー可視化装置を用いてのみその外見的特徴が判別可能であり、それらを用いないことでの視認は基本的に不可能です。
SCP-3098-JPは2020/8/29時点のアキヴァ放射観測では全ての生命体、あるいはそう見なされる存在に寄生する形で存在していましたが、2020/09/12に全世界で発生したΩKイベント以来の観測において、その寄生先の絶対数が減少し続けていることが確認されています。また、世界における命的存在の総数は増加し続けているにもかかわらず、新たな被寄生実体の存在は確認されていません。
補遺3098-JP-1: 会話記録-1
以下は六角研究員とそれに関連付けられたSCP-3098-JP実体との会話記録です。
対象1: 六角研究員
対象2: SCP-3098-JP
<記録開始>
六角研究員: (アキヴァ神学的エネルギー可視化装置を起動する)えぇと、まずはあなたが何なのかについて聞きたいのですが。
SCP-3098-JP: 死神。
六角研究員: へ?
SCP-3098-JP: 私は死神だぞ。伝承に伝わるような、布を纏い首を刈り取るようなものじゃない。私は死そのものだ。
六角研究員: 死そのものというのは、あなたは概念実体であると?
SCP-3098-JP: 聞こえは悪いが、まぁそうだな。私は神にして概念だ。
六角研究員: ふむ、似たような話を前に聞いたことがあります。ではなぜ、全ての生物は不死になったのですか?あなたはまだ死んでいないでしょう。
SCP-3098-JP: お前は何か勘違いしているみたいだな。私はもうすぐ力尽きる。お前たちの言う奇跡論とやらにも限度があるんだ。そしてお前は、
(数秒間の沈黙)
SCP-3098-JP: 私にとって最後の一人だ。お前は不死なんかじゃあない。
六角研究員: 私が不死ではないと?
SCP-3098-JP: お前が私の姿を認識しているその奇妙な機械で、お前を照らしてみると良いぞ。
(六角研究員がアキヴァ神学的エネルギー可視化装置を自身の身体へ向ける。それと同時に、監視カメラには六角研究員の身体がSCP-3098-JPと同様の発光を示しているのが視認できる)
六角研究員: 分かりましたよ、3098-JP。それでは最後に一つ質問があります。
SCP-3098-JP: 何でもいいさ。もっとも、私はお前のことは全て知っているからな。
(数秒間の沈黙)
六角研究員: なぜ私に付きまとうのですか?
SCP-3098-JP: 私なりの人類への愛だよ。
<記録終了>
以上の記録から、財団はΩK-クラス-"死の終焉"イベントをSCP-3098-JPの奇跡論的能力及び概念影響力の減衰によるものであるとしました。現在、SCP-3098-JPの奇跡術再現の研究が進行していますが、SCP-3098-JP及び六角研究員はこれに賛同していません。
補遺3098-JP-2: インタビュー記録
以下は2021/1/7に開始された、六角研究員と青葉カウンセラーとのインタビューです。
インタビュアー: 青葉カウンセラー
対象: 六角研究員
<記録開始>
青葉カウンセラー: えぇと、初めまして、六角研究員。その、お会いするのは初めてですよね?
六角研究員: そうですね、宜しくお願いします。
青葉カウンセラー: こちらこそ。ではまず、あなたはΩKイベントから、何か変わったように感じましたか?
六角研究員: 何か変わったかと言われれば、私は何も変わっていません。ですが周りは少し、いえ、とても変わったように感じています。
青葉カウンセラー: 具体的にはどのような点でそう感じていますか?
六角研究員: 私は、(沈黙)そうです、例えば収容違反が起こったとき、怪物が私の体をその爪で引き裂くかもしれない。襲撃に逢ったとき、私は蜂の巣になるかもしれない。でも、周りは違います。私はたったそれだけで死んでしまうでしょうが、周りは皆、無限に苦しみ続けています。そういう点で私は、少し混乱しているといいますか。
(沈黙)
六角研究員: 私はこの間、古くからの友人の3回目の34歳の誕生日を祝ったところです。あいつが34歳を3回迎えている間に、私は3年間の命のチケットを浪費しています。そんなことは今まで考えたこともなかったのに、あの日から私は、時間の流れが嫌になりました。
青葉カウンセラー: あなたは死ぬのが怖いのですか?
六角研究員: あなたにはもう一生味わえない感覚だと思いますが、私は死ぬのが怖い。でも死ななくなるのはもっと怖い。
青葉カウンセラー: 周囲があなたが死なないよう尽くしていたとしてもですか?
六角研究員: 私は自分の命を自分で捨てるようなことはしませんよ。ただ一つ願うとすれば、
青葉カウンセラー: 願うとすれば?
六角研究員: 彼が私を見放さないことです。
<記録終了>
六角研究員はインタビュー後、SCP-3098-JPと共に収容状態に置かれました。
補遺3098-JP-3: 会話記録-2
以下は2024/3/17にサイト-8195の神格実体収容セル内部で記録された、SCP-3098-JPと六角研究員との会話記録です。
SCP-3098-JP: 話がある。
六角研究員: どうした?
SCP-3098-JP: 単刀直入に言うんだが、最近のお前は死ぬのが怖くないのか?お前の言動は何というか、どうやら死に対して軽薄であるように見える。
六角研究員: なるほど。確かに私はあまり死を恐れてはいない。同僚が集合写真からいなくなることなんてたくさん見てきたし、私だってその覚悟はしている。
SCP-3098-JP: そうか。(沈黙)私は、死神としてはみっともないんだが、私は死ぬのが怖い。
六角研究員: それはどういう意味だ?死という概念がなくなることが怖いのか、貴方自身の死か?
SCP-3098-JP: 前者でもあり、後者でもある。私の力が弱まり、死が死ぬとき。私はお前を死なせたくないのだ。だが永遠の命も、
六角研究員: (遮るように)言っておくが私は不老不死になるつもりはない。それに、私が死ぬまでお前は死なないし、お前が死ねば私は死ぬ。
SCP-3098-JP: だが、死とは最も遠くでありながら身近にある。
六角研究員: 私は自分が一度も死んだことがないから死なないと思うほど愚かじゃないぞ。
(両者沈黙)
SCP-3098-JP: 理解した。だが、くれぐれも気を付けるのだ。
六角研究員: お前は過保護すぎるな。
補遺3098-JP-4: インシデントログ-1
2024/5/12、サイト-8195の収容エリアがカオス・インサージェンシー構成員による襲撃を受け、収容状態にあった六角研究員が重傷を負う事態となりました。構成員は拘留され、インシデントは収束しました。
以下は六角研究員の治療後に行われた、青葉カウンセラーとのインタビューです。
<記録開始>
青葉カウンセラー: 久しぶりですね。最後にお会いしたのは確か、数週間前でしょうか?
六角研究員: 確かに久しぶりですね。それで、本題は?
青葉カウンセラー: そうですね。まず、お体の方は?
六角研究員: おかげさまで。
青葉カウンセラー: そうですか。会話ができる状態にまで戻ったのは良いことですね。
六角研究員: 顎を動かすと痛かったからな。
青葉カウンセラー: それでは。貴方は死についてどう考えていますか?
六角研究員: それについて聞かれるだろうと思っていましたよ。数年前にも似たようなことを話した覚えがありますが、私は死ぬことに対してあまり実感が湧いていません。なぜなら一度も死んだことがないのでね。それでもいつか死ぬのだろうとは思っていますが、なんと言うべきか。
青葉カウンセラー: 私も前まではそう思ってましたよ、貴方に出会うまでは。死なないのがもう当たり前になってしまって、なんだか窮屈な感じがします。私は貴方に死んでほしくありません。
六角研究員: 私だって死にたくはないさ。だが、永遠の生もごめんだ。
青葉カウンセラー: とりあえず、お体の方に変わりがなくてよかったです。
六角研究員: 私は死ぬまで死なないからな。
青葉カウンセラー: ありがとうございます。あっ、最後に一つだけ。
六角研究員: どうしたんだ?
青葉カウンセラー: あの人によろしく伝えておいてください。
(沈黙)
六角研究員: あぁ、分かった。
<記録終了>
以下は、上記のインタビュー後に六角研究員の収容室にて録音された、SCP-3098-JPとの会話記録です。
SCP-3098-JP: お前を守ってやれなかったことを後悔している。
六角研究員: もう気にしていないさ。
SCP-3098-JP: ならいいのだが。それにしても、やれ死を恐れちゃいないだのなんだの言っていた割には、あの時のお前の顔面は恐怖に塗れていたぞ。
六角研究員: — 見ていたのか。
SCP-3098-JP: 当然だ。私は何時でもお前の傍にいる。
六角研究員: はぁ。最悪だ。よりによってお前に見られるとは。
SCP-3098-JP: そういえば、お前は随分と舐めた口を利くようになったな。数年前は敬語だったというのに。
六角研究員: 毎日のように話していれば、嫌でもそうなるだろう。
SCP-3098-JP: どうだかな。それに、お前ももう40か。意外と早いものだな。
六角研究員: お前も年寄りだから時間の流れが速いんじゃないのか?
SCP-3098-JP: 年寄り、年寄りか。
六角研究員: どうしたんだ?
SCP-3098-JP: あぁ。いつかお前が死んでしまえば私は死ぬが、私にはその感覚がない。
六角研究員: 死神のくせにか?
SCP-3098-JP: だからこそだ。私は今まで幾度となく死を見つめてきた。だが私が死ぬとなると — 途端に不思議な感覚だ。
六角研究員: なるほどな。俺も同僚が死ぬのなんて何度と見てきた。俺もいつか死ぬ。だから —
(沈黙)
六角研究員: その時はその時だ。
SCP-3098-JP: お前、何か考えているんじゃないか?
六角研究員: その通りだよ。確かに考え事をしていた。
SCP-3098-JP: なるほど。いや、自分も少し考えていることがあってな。単刀直入に言うんだが、お前はこのままでいいのか?
六角研究員: このままでいい、とはどういう意味だ?
SCP-3098-JP: 私は — 私はこのままではいけないように感じている。このまま死んでいくことは何も悪いことではない。だがお前は財団職員だろう。私はこの世界に、未練はない。だがこのまま永遠の生を傍観するのは違う。
(沈黙)
SCP-3098-JP: お前はどう思う?トンチキな質問だとは思うが、答えを聞きたい。
六角研究員: はっ、私たちは財団だぞ?このΩKに対して何の対処もしていなかったなどと思うんじゃない。
SCP-3098-JP: 何か考えがあるのか?私は付き合うつもりでいるぞ。
六角研究員: まずは私を研究に復帰させることだ。そしてその後は本部の方にいろいろと要請しなくてはならない。
SCP-3098-JP: 待て、何をするつもりだ?私は止めるつもりはないが、お前は不死ではないんだぞ。
六角研究員: そして倫理委員会へ連絡を入れる。
(沈黙)
六角研究員: これが、私なりの爪痕だよ。
SCP-3098-JP: 分かったよ。何から手を付けるんだ?
閲覧中のファイルが更新されました。
当ファイルに関連するプロトコル及びプロジェクトは改訂されます。
補遺3098-JP-5: プロジェクト報告、提言
プロジェクト・ダマルング
非不死性者の永続的な有用性について
サイト-8195
六角直人
ダマルング計画は2018年に発案された、唯一のΩKクラスイベントへの対抗策である。これは不死性をも打破できる永遠の死を刻み付けることで、その生物を永遠の生から解放することを目的としていたが、その手段はいまだ解明されていなかった。
しかし、それは過去の話だ。
SCP-3098-JP — 及びその最終寄生体である六角研究員を利用し、新たに死という概念を生み出す。いわば形而上空間への新規概念の創成だ。
ΩK-クラスの対処には以下の3つの要素が存在する。
1. 生物数コントロール
2. ベールコントロール
3. 終局状態の代替の研究
プロジェクト・ダマルングと私は、これらのうち"3. 終局状態の代替の研究"を — 完成させる。
[…]
六角研究員: 私はプロジェクトを提言した。前々からK-クラスシナリオについては研究していたし、そのプロジェクトにまさか自分自身が関われるなんて思いもしていなかった。
青葉カウンセラー: 倫理委員会に提出した理由は?それと、そのようなことを私に話してしまってもよかったんです?
六角研究員: このプロジェクトはいずれ公然のものとなる予定だ。それに、私は君を信頼している。
青葉カウンセラー: あの人には、もう話したんですか?
六角研究員: 思いついた時から話していたよ。奴は最初は不服そうだったが。倫理委員会に提出した理由については、今の財団にそんなことを考える余裕なんてあるのかと考えたからだ。だからこそ、私は真っ先に倫理委員会へ連絡した。財団はまだ倫理を忘れちゃいない。
青葉カウンセラー: あれ、でもあなたは収容状態じゃないですか。どうやってプロジェクト提言をまとめたんです?
六角研究員: 奴が手伝ってくれた。
(沈黙)
青葉カウンセラー: やはり、そうでしたか。わかりました。上にはあなたが記述したと伝えておきますね。
六角研究員: あぁそうだ、最後に一つ。
青葉カウンセラー: どうしました?
六角研究員: 今までのこと、感謝する。
プロジェクト概要: SCP-3098-JP及び、その被寄生先である六角研究員に存在する死の概念を形而上空間に発生させ、トリスメギストス-エンジントーテム描出器(TETS)を用いて六角研究員の死亡により発生した死の概念をマッピング、特定の物質"トーテムオブジェクト"へ概念を付与する。死の概念を持つ物質はSCP-2719に影響され内側になり、内側に入った実体は死の概念を獲得する。
選択制の不死を獲得することが最終目標である。これらのプロジェクトは六角研究員により発案、実行される。
六角研究員の終了は2028/10/8の18時40分に行われる。
終了プロトコル記録
<映像記録開始>
2028/10/8-18:04: 六角研究員とその他6名の職員、倫理委員会連絡員が1人終了室へ入場する。
2028/10/8-18:05: アキヴァ神学的エネルギー可視化装置が搬入され、SCP-3098-JPが可視化される。
2028/10/8-18:17: 六角研究員の身体が電気椅子に固定される。
2028/10/8-18:19: SCP-3098-JPが六角研究員に耳打ちをする姿勢を取る。言語らしき音声は聞き取られなかった。
2028/10/8-18:30: 終了のカウントダウンが開始する。
2028/10/8-18:32: 青葉カウンセラーが到着し、六角研究員へ話しかける。六角研究員はそれに対して笑顔で応答する。
2028/10/8-18:35: 5分前。
2028/10/8-18:38: SCP-3098-JPが笑顔を見せる。
2028/10/8-18:39: 1分前。
2028/10/8-18:40: 六角研究員の身体が少し跳ね、生体反応が確認されなくなる。
<記録終了>
プロジェクト後文: 六角研究員は事前の想定から逸脱することなく終了された。六角研究員が保持していた死の概念が形而上空間に出現し、それはTETSによって死の概念を発見、それに対応する物質(SCP-3098-JP-1)へと付与された。SCP-2719によって死の概念を持つSCP-3098-JP-1は内側になり、今後はSCP-2719によって内側になった存在は不死性を剥奪される。
六角研究員の遺体は財団によって火葬された。
SCP-3098-JPからのアキヴァ放射は確認されず、存在は消失したと考えられる。









