アイテム番号: SCP-3099
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-3099は現在、サイト-78の標準的な小型アイテム確保ロッカーに保管されています。ヒト被験者に対する実験は、倫理委員会によって設定された人数までに制限されています(現在6名)。実験対象者数の更なる増加はサイト-78の倫理委員会連絡員オフィスまで要請しなければいけません。
説明: SCP-3099は、オランダのアムステルダムにあるアダルトビデオショップ“Mister B”から回収された、ヴィンテージ・ポルノ映画“デビー・ダズ・ダラス”のVCRテープ録画です。対象は、SCP-3099-Aと指定される実体が作中に出現するという点において、異常性の無い“デビー・ダズ・ダラス”とは異なります。
SCP-3099-Aは柔らかい白のスーツ/コスチュームと球形の被り物を着用したヒト型存在です。SCP-3099-Aは、性行為が関与する最初の場面の中途で(00:09:52の後、シャワー室でのグループセックスの冒頭)、撮影セットの右側にある換気口から這い出すという形で画面に出現します。映画内の俳優や女優はSCP-3099-Aの侵入に気付いた様子を見せず、困惑を示すことなく活動を続行します。SCP-3099-Aは画面内を徘徊し、時々しゃがみ込んで俳優・女優を調べる素振りを見せ、場面の終了時にセットを去ります。
SCP-3099-Aは映画の残りのシーンを通して、様々なセットの背景に姿を見せます。SCP-3099-Aは時折ボディランゲージを用いて焦燥感を示します。また時にはセット内の小道具に好奇心を示し、拾い上げて検査した後、常に非常に注意深く本来の正確な場所へ配置し直します。
テープの最後のセックスシーン中(映画の01:05:54以降、俳優たちが書店で服を脱ぎ始めるシーンから)、SCP-3099-Aは性行為に関わる人々の反対側に腰かけます。その後、SCP-3099-Aは手で顔を、円を描く動きで撫で始めます。手が22回の円運動を終えた後、SCP-3099-Aの身体は激しく震え、映画のそれ以降ではぐったりと弛緩したままです。
性的満足感を得るためにSCP-3099を初めて視聴する人物は、映画の終了時、自発的なオルガズムに達するとともに強硬症の状態に入ります。この状態において一般的に、軽度の困惑から著しい苦痛までの範囲で、幻覚・幻聴・幻触の発生が報告されています。影響を受けた人物は心的外傷後ストレス障害の症状を呈し、この症状には時として、触れられることと白い色に対する急性の嫌悪感が付随します。他の効果も発生すると理論上想定されていますが(対象者ファイルを参照)、それらはまだ制御された実験状況下で観察されていません。
SCP-3099は2005/07/01、複数の男性に対する奇妙な性的暴行事件の頻発を調査していたアムステルダム警察からのタレコミに続き、エージェント L・ミンによって取得されました。犠牲者と“Mister B”店舗との関連性がエージェント ミンによって確立され、最終的にはSCP-3099とその直近の被害者の発見に繋がりました。合計29名にSCP-3099の影響を受けた疑いがあります。1人を除く全員の身元が特定されています。
補遺: 対象者ファイル (抜粋 - 完全版のリストは文書3099-C3を参照)
対象者プロフィール: ヤン=ピーター・ラトガース、27歳。フリーランスのソフトウェアプログラマー。独身。
曝露日: 2005/06/11
コメント: 対象者は会話を拒み、身体的接触には忌避感を示した。左肘・両膝・太腿内側に最近軽度の打撲傷を負った痕跡あり。対象者は明るい部屋で映画を半ばほどまで見たのは覚えていると報告したが、その7時間後にビデオ店の床で救急隊員から発見されるまでの出来事は余り思い出せなかった。対象者は強制的に心的外傷後心理カウンセリングに参加登録させられ、現在は財団と提携している地元のメンタルヘルスクリニックで観察中である。
対象者プロフィール: マタイン・ズヴァイセン、47歳。無職。既婚者、子供無し。
曝露日: 2005/06/16
コメント: 対象者は財団職員が接近すると動揺した振舞いを見せた。当初は押し黙っていたものの、更なる質問を重ねた所、エージェント ミンの着ている白い襟のジャケットを見ると非常に不快感を感じると明かした。ジャケットを脱ぐと、対象者はリラックスし、より饒舌になった。彼は午後4時ごろにビデオの視聴ブース内で眠ってしまったと報告したが、それ以降の事は全く覚えていなかった。エージェント ミンは対象者の唇と指先の周辺に、微量の白い粉が付着しているのに気が付いた。対象者はこの白い粉の起源を説明できなかった。白い粉は採取され、検査によってポリカーボネートの粉末と判明した。インタビュー担当職員は、自発的に財団の監視下へ入るよう対象者を説得できなかった。フィールドエージェントは日常的に秘密裏の監視を行う事が推奨されている。
対象者プロフィール: アユーブ・ハッダーニー、35歳。警備員。既婚者、子供3名。
曝露日: 2005/06/21
コメント: 対象者は意識不明で発見され、その後3日間はVU大学メディカルセンターに入院。医療報告は、幅およそ4cm・長さ10cmの鈍器による左眼球への深刻な穿刺傷、軽度の敗血症、そして両肘・両膝・太腿内側に残された様々な挫傷と擦傷を示している。対象者の妻は夫の所在に関して更なる説明をするのに消極的であり、警察官だけに話すと主張した。対象者は2日後の2005/06/29、白いポリカーボネート粉末と精液を固めた5cm幅の塊が中心静脈カテーテルを介して強制注入されたことにより、心停止を起こして死亡した。保安カメラはクラッキングされて機能しておらず、犯人の姿は映っていなかった。
対象者プロフィール: グレゴール・サクサー、44歳。バーテンダー。独身。
曝露日: 2005/06/30
コメント: 対象者はアダルトビデオ店の地下1階に無意識で倒れているのを警察官によって発見された。対象者は他の曝露した人物たちと類似する負傷を負っており、大量の発汗と体温上昇を示していた。トリアージに際して、10cm幅の球体が対象者の下腹部に埋め込まれているのが発見された。対象者は医療措置と観察のため、即座にサイト-78へ搬送された。事案報告書#3099/20050630/02を参照のこと。
補遺: 事案報告書#3099/20050630/02
回収から2時間後、対象者グレゴール・サクサーは持続的な腹筋痙攣を起こし始めました。このため、腹部に埋め込まれた球体の除去手術は保留されました。
5分後、対象者の下腹部から円形の塊が拡張し、次いで対象者の皮膚が裂けると共に、SCP-3099-Aの頭部に似た白い材質の巨大な塊が体内から出現しました。さらに傷口からは同じ白色材質で出来た太いチューブが現れ、延伸してヒト型の胴体を象りました。これは対象者の胴体を腹部で二分する重傷をもたらし、対象者はこの出来事の直後に死亡しました。
対象者の死体を目撃した当該実体は激しく苦悩する様子を見せ、跪いて対象者の分離した身体部位を自分の顔に擦りつけました。その後、実体は胸の中央部から白色材質のチューブを突出させ、それを使って対象者の切断された胴体を繰り返し刺突しました。この時点でM・マヌエル博士が隠し持っていた拳銃を抜き、実体の頭部に6発の弾丸を撃ち込みました。負傷した実体はあらゆる活動を停止し、弛緩した状態となりました。現場にいた職員は、人間の啜り泣きと風船の萎む音を混ぜたような音が聞こえたと報告しています。
標準プロトコルに則り、実体の検死解剖が実施されました。実体の身体には筋肉や骨格構造がなく、全体がシリコンで構成されていたことが判明しました。体内は、精液・涙液・ポリカーボネート粉末の混合物を満たしたスポンジ状の嚢の集まりから構成されていました。当該実体はクモと同様に、液体を満たした体内の嚢を膨張・収縮することで移動していたと考えられます。
予想とは裏腹に、その後のSCP-3099再生においても、SCP-3099-Aは画面内に出現し続けています。頭部に貼り付けられた6枚の小さな絆創膏と、若干のぎこちない動作を別とすれば、外見や振舞いは変化していません。SCP-3099-Aが肉体的に顕現した手段・動機は未だ不明のままです。