SCP-3100-JP
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エリア/3100-JP内部の様子

アイテム番号: SCP-3100-JP 

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: エリア/3100-JP周縁部には常時2名の駐在員を配備し、防獣を名目とした電気柵が多重に設置されます。駐在員は観測所より監視を行い、異状が確認された際は管理者に報告してください。

エリア内部への侵入を試みた人物は速やかに捕縛/拘留し、警察機構に引き渡します。なお、許可なくエリア内に侵入した人物は既に死亡したものと見なされ、救援は行われません。

エリア/3100-JP内部での生物の殺害は現在、例外なく厳に禁止されています。

説明: SCP-3100-JPは、生物の捕殺に関連する精神影響及び消失・肉体変異現象への包括指定です。

影響区域(以下、エリア/3100-JPと定義)内部に侵入した人物は概して、エリア内で生物を殺害する行為に対して忌避意識を抱きます。この精神影響は非常に軽微であり、一般の社会通念を逸脱しません。

エリア内で人間が故意に生物を殺害した場合、当該人物および殺害した生物は直ちに消失し、平均して3日程度の期間を経て消失地点に死体が出現します。1 出現した死体は一様に脱水症の形跡を示しており、身体の一部が魚型の実体2に変異していた例が確認されています。

発見経緯: SCP-3100-JPは岩手県二戸警察署浄法寺駐在所にて男性が保護された事案を受け、発見されました。

当該区域山林を指定するエリア/3100-JPは、旧来の宗教的禁足地としての性質から民間人の立ち入りが厳しく制限されていた領域であり、交通の便宜等の複合的要因から現在まで対象の異常性は露見していなかったものと推察されます。

事案/3100-JP

日時: 2022/8/8

概要: 家族でキャンプ中に遭難したとして、 二戸市在住の会社員/長谷川春彦氏が浄法寺駐在所にて保護されました。交番からの不審な報告を警察機構に潜入していたエージェントが捕捉。現地警察との提携のもと初期調査が実施されました。

なお、妻の優香氏と娘の莉愛氏は両名とも、遺体となった状態で回収されています。


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長谷川優香氏/春彦氏

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長谷川莉愛氏

長谷川春彦(男性/当時31歳)

  • 保護された際、重度の脱水症状が見られた。
  • キャンプ中に娘の行方が分からなくなり、妻と分かれて捜索していたところ遭難したと証言している。

長谷川優香(女性/発見当時24歳)

  • 実地調査の際に、死亡した状態で発見。
  • 遺体は腐乱/損壊しており、下半身は前述の魚型実体に変異していた。

長谷川莉愛り あ(女性/発見当時4歳)

  • 実地調査の際に、死亡した状態で発見。
  • 優香氏と同様に腐乱/損壊が見られたが、魚型実体への変異は確認されていない。

補遺: 状況から、優香氏と莉愛氏はエリア/3100-JP内部にて何らかの生物を殺害した可能性が示唆されています。春彦氏はPTSDの症状から十分な聞き取りが不可能であるため、治療を名目とした拘留/監視が継続中です。

以下は事案/3100-JPの初期調査および実地探査記録の抜粋です。

初期調査記録-2022/8/10

探査人員: エージェント・斎川、現地警察官6名

目的: 現場検証と優香氏/莉愛氏の捜索

結果: エリア/3100-JP中腹にて両名の遺体を発見、回収。また、遺体発見現場から約300m離れた地点で長谷川氏所有の車両が発見された。車内を調査中、外で待機していた警察官1名が消失。車両の回収は行わずエリアを離脱する。消失した警察官は3日後に同地点で死体が出現した。

検証後に行われたカウンセリングにより、調査員は共通して生物の殺害に対して漠然とした忌避感を知覚していた事が確認された。


探査記録-1-2022/8/13-15

探査人員: D-31001

装備: 映像送信端末、トランシーバー

目的: 探査および精神影響の調査

結果: エリア内部に侵入してすぐにD-31001は前述の忌避意識を報告した。

探査中、手を叩く音とともにD-31001が消失。直前の映像記録ではD-31001が手の痒みを訴えていたことから、消失現象は(Culicidae)の捕殺に起因するものと推察される。D-31001は消失から2日後、脱水症により死亡した状態で出現した。

分析: D-31001が生物殺害への忌避感を示していたにもかかわらず蚊を捕殺した事から、SCP-3100-JPの与える精神影響は想定より軽微なものであると推察される。

また、D-31001の脚部が僅かに魚鱗に変異していた事が確認された。なお、D-31001が装着していた端末は衣類とともに消失地点に残留した。

追加の探査および周辺調査を行う事とする。



以下は周辺住民への聞き取り調査の際に確認された、異常性に関係すると思われる資料の抜粋です。

関連文書/3100-JP: エリア/3100-JPを有する集落では旧来「御御贄おみにえ」と称される神事が斎行されていました。

御御贄神事

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資料写真(昭和15年撮影)

概要: 葉月の晦、白酒、塩、油、米、粟、ふなを神饌3として捧げる。

魚を神饌とする場合、醤煮ひしおにに調製する様式が一般的だが、御御贄では生の鮒が捧げられる。神事の際は、その時に最も幼い子供4が母親と共に神域内の社に出向いて奉納し、男たちはそれを外から見守る。

天保の大飢饉5の際に、心優しい母子が自ら山に入り三日三晩祈りを捧げたところ、神より魚がもたらされた。住民はそれを食し、飢えを凌いだという。

この魚たちは先の飢饉で死んだ大人たちの生まれ変わりとされ、それらが現在も集落特有の霊魂観として受け継がれている。

周辺地域の聞き取り調査で蒐集された口承によると、古来より神域内での殺生は厳禁とされ、これはSCP-3100-JPの精神影響によるものと考えられる。なお、昭和中期の記録を最後にこの神事は形骸化しており、斎行していた神社も現存しない。


インタビューログ3100-JP-Y5

対象: 二戸市浄法寺町住民 竹根氏(30代男性)

インタビュアー: 八重垣調査員

<記録より一部抜粋>

竹根氏: 何となく聞いた覚えがあります。魚を奉納する神事ですよね。ただ、祖父の代あたりからやらなくなってしまいまして、私自身は参加した事が無いんです。祖父も病死していますし、詳しい事は分からないですね。申し訳ない。

八重垣調査員: いえいえ、そんな。どうしてやらなくなってしまったんでしょうか。

竹根氏: まあ、過疎化でしょうね。子供が居ないとやる意味も薄いですし。それに終わった後の直 会なおらいもしない行事6だったそうですから、なかなかやりたがる者もいなくて。

八重垣調査員: そうなんですか。むしろ、神事だからこそ住民間の交流と言うか、そういうのも大事な気もしますけどね。何か、理由があったりするのでしょうか。

竹根氏: まあ、あの魚ってご先祖様の生まれ変わりらしいですし、それを食べて大騒ぎするってのも少しね。

それに、あそこにいる神様が、無闇な殺生を嫌っているのかもしれません。実際、あの山では古くから禁猟、禁足が徹底されていましたから。亡くなった祖父も、食べ物を粗末にするとひどく怒る人でしたし。

八重垣調査員: お爺様はあの山について、何か仰っていましたか。

竹根氏: んん。ええと、そうだ。

あそこで生き物を殺すと、帰れなくなると言っていましたね。

<記録終了>


上記の調査内容を受け、研究チームから提案された実地探索が行われました。

探査記録-2-2022/8/27-8/30

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実験に使用したマウス

探査人員: 伊勢谷研究員、D-31002

装備: 実験用マウス(Mus musculus)

附記: 前述の探査と異なり、研究員はエリア内部に同行した。

結果: D-31002にエリア内に持ち込んだマウスの殺害を指示。D-31002は初めそれを拒否したが、懲罰を示唆するとこれを実行した。この際、エリア内部に同行して指示していた研究員も同時に消失したことから、影響範囲内で殺害を企図した人物も同様に消失することが確認された。

消失から3日後、同地点にD-31002と伊勢谷研究員、および実験用マウスの死体が出現した。なお実験に参加した両名の脚部は、部分的に魚型実体に変異していた。

分析: これまでに回収された遺体の記録から、殺害した生物とほぼ同等の体積が魚型実体に置換されるものと考えられる。追加の実験は保留する事とする。





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