SCP-3103は20██/09/04、ニューギニアの████にある倉庫の鳥籠から、警察が外国産鳥類の密売ビジネス拠点を強制捜索した際に発見された。以下の映像はその倉庫の監視システムから回収された。この映像にはSCP-3103が密売者の一団に影響を及ぼす様子が記録されており、現在SCP-3103の収容や研究に関与している全ての職員に視聴が義務付けられている。
SCP-3103 回収された監視映像
画面は約5×5mの部屋を上方から映したものである。2名の人物、PoI-3103-1(“ケビン”)とPoI-3103-2 (“ニック”)が、1羽のヤシオウム(SCP-3103)が入った大きな籠の前に立っている。タイムスタンプ表示は20██/09/03の1:18 PM。SCP-3103は苦痛を示す挙動を見せており、羽ばたきながら籠の金属棒を噛み、金切り声を上げている。PoI-3103-1は3羽のヤシオウムの雛(恐らくSCP-3103の子孫)を手に持っている。全ての雛の発育はかなり初期段階である。
ケビン: 本当にこんな事しなきゃいけないのかい… だって、見ろよ、可哀想じゃないか。
ニック: だからお前は何処にも就職できねぇんだ、ケビン。こいつは本能で反応しちゃいるが、どうせ15分もしたら何が起きたかさえ覚えてねぇよ! さっさとその雛どもをバンに積み込め、スケジュールが押してる。
ケビンは3羽の雛を持って退室する。SCP-3103は鳴き続けており、ニックはヘッドホンを付けてSCP-3103の籠の隣にある椅子に腰かけ、地面を見つめている。バンのエンジンがかかる音が聞こえ、走行音は徐々に遠ざかって、やがて聞こえなくなる。映像をタイムスタンプ1:28まで省略 — ニックが椅子から立ち上がり、SCP-3103に向かって怒鳴り始める。
ニック: この野郎、黙れねぇのか? お前の面倒見るのは俺なんだ、もしこんな調子で俺をイライラさせ続けるなら、そのうちマジで-
ニックが突然SCP-3103の籠の前の床に倒れ込み、激突時の衝撃でヘッドホンが半分に割れる。ニックは手足を不規則に動かし、口を開けて高音の叫び声をあげる。SCP-3103は発声を止め、餌用ボウルから幾つかの種を摂取する。SCP-3103はその後、摂取した種をニックの口に吐き戻し、ニックは叫ぶのを止める。ニックは床に寝そべったまま、身動きせずにSCP-3103を見つめている。映像をタイムスタンプ1:35まで省略 — ケビンが再入室する。
ケビン: …ニック? <ニックは反応しない> なぁおい、くだらない事は止せよ…
ケビンが顔を軽く平手打ちすると、ニックは金切り声を上げる。SCP-3103はケビンに向かって大声で鳴き、動揺したケビンは叫びながら部屋を飛び出していく。ケビンは間もなくPoI-3103-3(“ヴィク”)を連れて戻り、2人がかりでニックを床から持ち上げようとする。ニックが大声で金切り声を上げる一方、SCP-3103はケビンとヴィクへの攻撃的な姿勢を維持している。ケビンが床に転がっているパイプで足を滑らせ、ニックを床に取り落とす。ヴィクは速やかに立ち上がる。ニックは頭から倒れて無意識になり、左耳から細く血が流れ始める。
ヴィク: 何を考えてやがる、ケビン?! 一度ぐらい周りに気を払ったらどうなんだ!
ケビン: す-すまない、ヴィク… ぼ-僕には何が起きてるかわ-分からない、こんなのは普通じゃない、何でニックはあんな風にさ-叫んでたんだ?!
ヴィク: そこでじっとしてろ、クソの役にも立ちゃしねぇ… 救急箱を取ってくる、商品から目を離すなよ!
ヴィクが退室し、バンのエンジンがかかる音がする。ケビンも立ち上がって退室するが、僅か30秒で戻って来る。ケビンの表情はパニックを示している。
ケビン: あり得ない、こ-こんなのはあり得ない… 僕はこの鳥をどうすればいいんだ? ニックをど-どうすればいいんだ?
ケビンは壁に寄りかかり、ゆっくりと胎児の姿勢を取る。その後、ケビンはすすり泣き始める。映像をタイムスタンプ1:59まで省略 — ケビンは突然目を見開き、呻きながらSCP-3103の下へと這って移動し始める。SCP-3103は再び餌用ボウルから比較的大量の種を摂取し、ケビンの口に吐き戻す。映像が終了するまで、ケビンは床に横たわりながら時折周囲を見回しているが、ニックは身動きせずに血を流している。SCP-3103は静かであり、ニックの状態に気付いていないようである。
映像はタイムスタンプ2:24で唐突に終了する。
結: PoI-3103-1は精神状態の更なる検査のため、サイト-██の医療棟に移送された。PoI-3103-2は現場で死亡が確認され、遺体は[編集済]に移送された。PoI-3103-3の現在の行方は不明であり、パプアニューギニアの財団エージェントはSCP-3103への彼の関与と差し迫った情報漏洩の危険性について通達されている。 PoI-3103-3は捕縛されて尋問を受け、3名のPoIにSCP-3103の異常性の事前知識は無かったと主張した。全ての非財団職員(PoI-3103-3を含む)にクラスA記憶処理が施された。
SCP-3103の雛は未だ発見されていない。財団は当該個体群を発見するためにニューギニアの徹底的な調査を命じたが、オセアニア地域で活動する動物密売ネットワークが大規模かつ多数であることから、発見の見込みはほぼ無いと考えられる。