クレジット
翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2024
著作権者: Iszth
原題: A Journey Home…
作成年: 2023
初訳時参照リビジョン: 26
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-3105
特別収容プロトコル:
SCP-3105は防弾観察窓を備えた標準異常人型実体収容房に収容されます。収容房内はSCP-3105へのこれ以上の損傷を最小化するため、摂氏10度、湿度45%の一定に保たれます。SCP-3105と接触する職員は負傷を防ぐために保護具を着用しなければなりません。
注: 2018/07/03時点で、SCP-3105の収容ユニットには進行中の研究の一環として多数のアイテムが備え付けられています。更なるアイテムがヤンセン博士によって追加される場合があり、これはセキュリティが徹底的に検査しなければなりません。
SCP-3105の死体はサイト-19非異常物品保管棟の冷凍保管庫に保存されます。それ以上の収容措置は不要です。
ヘルメットを除去したSCP-3105。
説明:
SCP-3105は深刻に損傷した人間男性の死体です。SCP-3105は、経年、曝露、動物による攻撃、腐敗、人工兵器による被害を含む多数の要因により著しく損傷しています。これらの重度の損傷と生命兆候や機械的プロセスの欠如にも拘らず、SCP-3105は依然として動作し、周囲を不明な手段で知覚して限られた能力で発声することが可能です1。
SCP-3105はヴァイキングの戦士が着用していたものと同様の、重度に劣化した衣服と金属の鎧を着用しています。これらのアイテムには、重度に錆びついたジェルムンドブ2様式のヘルメット、ぼろきれたチュニック、革の胸当て、重度に損傷した革手袋の片側、右手と融合した錆びた剣の柄が含まれます。試験により死体は西暦900年頃のものであることが判明し、これはSCP-3105の衣装の年代と一致しています。DNA検査と組み合わせた結果、SCP-3105の起源となる場所はノルウェー西部と判定されましたが、正確な場所を特定する試みは残部の欠如により困難と考えられます。
SCP-3105は知覚範囲内のあらゆる人間に攻撃的であることが判明しており、可能なあらゆる手段で直近の人物を傷つけようと試みます。しかし、SCP-3105の運動能力は重度に損なわれているため、これらの攻撃は容易に防御されて被害は通常最小限に留まります。SCP-3105はこれを超える高度な思考能力を示しておらず、現在は知性を有していないものと考えられます。(注: インシデントSCP-3105-Aを参照)
補遺-SCP-3105-A: 発見
SCP-3105はノルウェーのH████という小村で、住民の間で"ドラウグ3"が地域を歩き回り、"人の魂を食べている"という噂が広まり始めたことで発見されました。村はドラウグへの供え物として屋外に食べ物を置くようになり、これらは翌日には取られていました。SCP-3105は明らかに食物に関心を抱いておらず、それを処理する手段も欠如しているため、これは動物が漁ったことによるものと考えられます。
村の端で小さな子供がSCP-3105に接近し、続いて子供の両親が叫んで両者のもとへ駆け寄った際に財団は通知を受けました。SCP-3105は暴力的に反応し、両親を攻撃しようとしましたが、身体的損傷により彼らを捕まえたり傷つけたりすることはできませんでした。
この事件後、村民は最寄りのR██████の市当局に起こった出来事を通報し、SCP-3105を捜すため周囲の荒野への捜索を開始しました。村民は一層迷信深くなり、蘇生をはっきりと恐れて死体の焼却を開始しました。この激化がSCP-3105の映像証拠と共に市当局に報告された後、財団は調査を開始しました。
小規模な機動部隊が現地に派遣され、民間人は事情聴取を受け、村の範囲内に留まるよう命じられました。SCP-3105の捜索を経て、最終的にSCP-3105は付近の沼地で、泥だらけの湖底から動けなくなり自力で脱出しようとしているのを発見されました。SCP-3105は顕著な脅威を示さないと判断された後、収容チームが招集され、SCP-3105は回収されてサイト-19に移送されました。集団ヒステリーのカバーストーリーが公に流布され、民間人は記憶処理を受けました。
SCP-3105が高次の脳機能を発揮不可能と断定された後、SCP-3105は標準異常オブジェクト収容ユニットに配置され、レベル1以上の全ての研究員に研究可能とされました。(インシデントSCP-3105-Aを参照)
インシデントSCP-3105-A:
ヤンセン研究員は、SCP-3105を物理的に拘束することなく定例のサンプル採取を行っていました。SCP-3105のヤンセンへの攻撃を妨げる障害や障壁がなかったにも拘らず、SCP-3105は敵対的に反応せず、ヤンセンの行動や動作を平和的に観察しました。
この特異な反応を考慮して、ヤンセンは更なる反応を引き出そうとSCP-3105に接近しました。それに応じて、SCP-3105はヤンセンに手を伸ばしてその顔に触れようと試みました。ヤンセンは素早く身を引き、警備員はプロトコルに従ってヤンセンをSCP-3105から更に遠ざけようと反応しました。SCP-3105は以前に記録されていた通り敵対的に反応しました。
ヤンセン及び警備員はこの接触で傷を負うことはなく、更なるインシデントなくチャンバーを退室しました。
補遺-SCP-3105-B: 実験記録
インシデントSCP-3105-Aでのやり取りの後、ヤンセンはSCP-3105の認知能力をテストするために様々な実験を実施する許可を正式に要求しました。SCP-3105は、様々な形式の刺激に曝された際にそれを受ける可能性のある知性を現在も保持している、というのがヤンセンの考えでした。ヤンセンのヨーロッパの歴史や文化における専門知識のためにこの要求は承認され、ヤンセンはSCP-3105及び以降全ての実験の権限が与えられました。
実験3105-1
2018/06/23
監督者: ヤンセン研究員
対象: SCP-3105
実験: 反応の測定のため、ヤンセン研究員はSCP-3105を完全に視認可能な観察窓の裏に立つ。
結果: SCP-3105は特異にも穏やかな状態で窓に接近した。SCP-3105はヤンセンをしばらく観察した後、ヤンセンはガラスに手を置いた。SCP-3105は非武装の手をガラスの、ヤンセンの反対側に置いた。
注: 興味深い。SCP-3105の物体や人を認識する能力の測定には更に実験が必要でしょう。 - ヤンセン研究員
実験3105-2
2018/06/24
監督者: ヤンセン研究員
対象: SCP-3105
実験: ヤンセン研究員は、反応を測定するためいくつかのアイテムを観察窓に掲げる。アイテムには眼鏡、携帯電話、テディベア、写真、ライターが含まれる。
結果: SCP-3105は眼鏡、写真、携帯電話には興味を示さなかった。しかし、テディベアには好奇心を持って反応し、ライターが点いた際には恐怖で反応したように見え、その後慎重に再接近した。
注: 感情らしきものは残っているようですが、表面をなぞるだけです。感情をさらに刺激できるか気になります。 - ヤンセン研究員
実験3105-3
2018/06/25
監督者: ヤンセン研究員
対象: SCP-3105
実験: ヤンセン研究員は観察窓の反対側からSCP-3105に話しかける。
結果: SCP-3105は当初、ヤンセンの存在に興味を示した。しかしヤンセンが話し始めると、SCP-3105は困惑し、やや動揺しているように見えた。SCP-3105はしばらくヤンセンを見つめてからガラスに拳を叩きつけた。この時点でヤンセンは実験を終了しチャンバーを退室した。
注: 何が起こったかわかりません。私の声はSCP-3105が期待していたものではなかったのでしょうか? 特に女性としてはかなり低い声ですので。あるいはひょっとして言語が関係しているのでしょうか? いずれにせよ、SCP-3105は私の発言にとても動揺しているようでした。音楽のようなもっと普遍的に理解できるものならどうでしょうか? 言ってしまえば、私はサイトでフルートを演奏する口実を探していたのです。 - ヤンセン研究員
実験3105-4
2018/06/26
監督者: ヤンセン研究員
対象: SCP-3105
実験: ヤンセン研究員はスピーカーを通してSCP-3105チャンバー内にフルートで伝統的なスカンジナビア音楽を演奏する。SCP-3105が音源について混乱することを防ぐため、ヤンセン研究員はSCP-3105から完全に見える状態で留まる。
結果: SCP-3105は1分間ヤンセン研究員を見つめてから、左手をゆっくりと観察窓に置く。その後、SCP-3105は額を窓に当て、泣くようにリズミカルに痙攣を始める。
注: これは大きな反応です。完全に警戒状態にあるときは周囲を積極的に認識していないようですが、何かに興味を持ったときはSCP-3105は注意を向けるようです。しかし、SCP-3105のすすり泣きをみて少し動揺したことは認めます。SCP-3105が本能で動くただの動物だったら良かったかもしれません。 - ヤンセン研究員
上記の実験の後、ヤンセン研究員はSCP-3105チャンバー内での対面実験を要求しました。これは武装警備員がチャンバーの外で警戒するという条件下で承認されました。
実験3105-5
2018/06/28
監督者: ヤンセン研究員
対象: SCP-3105
実験: ヤンセン研究員は単独でSCP-3105のチャンバーに入って反応を測定する。警備員が待機する。
結果: SCP-3105は当初誰かがチャンバーに入ってきたことに気付いたとき、身構えるように反応した。しかしヤンセンを見ると態度を変え、リラックスしたように見えた。それからSCP-3105はじっと微笑んでいるヤンセンに接近し、彼女に手を伸ばし、彼女は緊張してそれに応えた。SCP-3105は一瞬手を伸ばすのをやめ、彼女を見つめてから再開する。SCP-3105はヤンセンの髪の束をそっと掴み4、それを短時間調べた後、チャンバーの遠い隅に座った。その後ヤンセンはチャンバーを退室した。
注: 興味深い。これはまるで物思いにふけっているような、郷愁に浸っているかのようなほぼ「優しい」反応でした。確かに死体が顔に手を伸ばしてくるのはぎょっとしますが、しかしどういうわけか、あれは我々が信用している以上に人間らしいようです。実験用にもっと「馴染み深い」物体を要求しました。もっと強い結果が得られるかもしれません。 - ヤンセン研究員
実験3105-6
2018/06/29
監督者: ヤンセン研究員
対象: SCP-3105
実験: ヤンセン研究員は古代北欧の工芸品の複製として作られたいくつかのアイテムをSCP-3105に提示する。これらには小さな編み人形、手細工のフルート、ミョルニル5の像、切れ味の鈍いナイフ、ネックレス、乾燥ハーブの集まりが含まれる。
結果: SCP-3105は全てのアイテムと接触し、それぞれ異なる程度の感情を示した。ナイフとミョルニルの像は最も興味を持たれず、SCP-3105は像にある程度の敬意を示していた。ネックレスは短時間触れられた後にSCP-3105はそれを頭の上に乗せようと試み、最終的にヤンセンの支援の下でなんとか成功した。SCP-3105はハーブにも強い興味を示し、ハーブを掴んで長時間顔に押し当てた。
最も強い反応を引き出したのはフルートと人形だった。フルートを与えられるとSCP-3105は演奏を試みたが、機能する肺がないため失敗した。しかし、機能する手の指の動きから判断すると、楽器に熟練しているように見えた。その後、著しい熱意をもってフルートをヤンセンに返却した。人形を提示されると、SCP-3105はそれを1分間静かに保持した後、所有していた全てのアイテムを持ち上げて地面に放り投げ、着用していたネックレスを引きちぎった。その後泣き声を上げて手と頭をヤンセンの反対側の壁に叩きつけ始め、警備員が鎮圧しようと駆け寄った。
ヤンセンは警備員に下がるよう命令し、単独でSCP-3105に接近した。それからヤンセンはSCP-3105の肩に手を乗せ、SCP-3105は落ち着いたように見えて、部屋の隅に座って無反応となった。
注: 痛ましいものでした。こんなに小さなものからここまで激しい反応が返ってくるとは思っていませんでした。いずれにせよ、全てのアイテムはSCP-3105がより馴染み深い刺激に反応するという私の説を裏付けているようです。これはSCP-3105チャンバーの徹底的な改修に必要な資金割り当てを上層部に説得する材料となるはずです。ややもすれば、ここからバイキング時代についてより深い知識が得られるやもしれません。少なくともそう願っています。 - ヤンセン研究員
実験3105-6に続き、ヤンセン研究員はSCP-3105のチャンバーに、バイキング時代に使用されていたものを再現したいくつかの大型家具を配置するよう要求しました。この目的は、SCP-3105に残存している認知能力や記憶を刺激し、最終的にはコミュニケーションを可能とすることと述べられました。数点のアイテムを除き、必要な特性を維持しながらも可能な限り低コストで全アイテムを再現することを条件にこの要求は承認されました。
実験3105-7
2018/07/04
監督者: ヤンセン研究員
対象: SCP-3105
実験: SCP-3105の意識を刺激することでコミュニケーションを試みるため、SCP-3105のチャンバーには多数の大型家具や装飾品が配置された。チャンバーには大型ベッドと毛皮の毛布、大きな毛皮の敷物、複数の吊り下げられた装飾・芳香用ハーブ、小さなテーブルと2脚の椅子、模擬の囲炉裏6、及び実験3105-6からのいくつかの小さなアイテムや装飾品が配置されている。実験3105-6での反応にも拘らず小さな人形もヤンセンの要求に応じて含まれており、予防措置として警備員が待機する。
結果: SCP-3105はヤンセンと共にチャンバーに再度入れられると、しばらく立って周囲を観察した。その後SCP-3105はヤンセンに振り返り、彼女は身振りで中へ促した。SCP-3105は部屋を歩き回り、その間ヤンセンは提供された小さな椅子に座っていた。SCP-3105は続けて付近のいくつかのアイテムと接触した。注目すべき点として、SCP-3105はベッドをテストし、囲炉裏で手を温め、いくつかのアイテムを拾って観察するようヤンセンの下へ持っていった。
しばらくして、ヤンセンがSCP-3105の持ってきたレプリカのフルートを演奏し始めると、SCP-3105は歩いてヤンセンの向かい側に座った。SCP-3105はヤンセンの演奏を観察し、前回実験の人形を握りしめた。この間、SCP-3105はヤンセンを見ながら小さく声を出しているのが確認された。演奏が終了するとヤンセンは手を差し出し、SCP-3105は自分の手をヤンセンの手のひらに乗せた。その後、ヤンセンはSCP-3105に別れを告げてチャンバーを退室した。
注: やりました! まるで子供が部屋の中を走り回って、大切な人に自分のおもちゃを全部持ってくるような感じでした。見ていて本当に心温まるものでした。我々がこのレベルの注意力をSCP-3105から向け続けられるなら、何らかの形のコミュニケーションを促進することだってできるかもしれません。
しかし大きな飛躍ともなるとやるべき仕事は増えます。音楽が大きな反応を引き出すことは前に示されているので、ひょっとしてそれでギャップを埋められるのでしょうか? 私はSCP-3105が間違いなく聞きたがるだろう曲を多少は知っています。もしかしたら古北欧語で話を伝えられるかもしれません! 数日かけて勉強しないと。
面白い話ですが、演奏中SCP-3105の呻き声がまるで言葉のように聞こえたと断言します。まるで名前みたいでした。もしかして"シグリッド"? 単なる私の想像かもしれませんが。 - ヤンセン研究員
実験3105-8
2018/07/05
監督者: ヤンセン研究員
対象: SCP-3105
実験: ヤンセン研究員が伝統的なスカンジナビア音楽を演奏したり古北欧語で物語を読むなど、SCP-3105に様々な聴覚刺激に曝露させる。彼女は実験3105-6以来熟達するよう練習してきた。
結果: N/A
注: 対象の死亡により実験は終了した。
実験3105-8のためにSCP-3105のチャンバーに入室した際、ヤンセン研究員はSCP-3105が胎児の姿勢で提供されたベッドから数時間動いていないことに気付きました。心配したヤンセン研究員はSCP-3105を覚醒させようとしましたが失敗しました。彼女は更に必死になってこれを試み、激しくSCP-3105を揺らして叫びましたが、SCP-3105は静止したままでした。最終的にヤンセン研究員は警備員によって部屋から連行されました。
検査の後、SCP-3105の異常性は消失し、SCP-3105は非異常の人間の死体となっていることが判明しました。これを受けてSCP-3105の死体は解剖のため動かされましたが、理由は不明ながら右手から錆びた剣が取り除かれ、ヤンセンが実験で演奏したレプリカのフルートを持っていることが判明しました。もう一方の手は編み人形を胸に押し当てていました。
付近のテーブルには、SCP-3105の折れた剣によるものと思われる古北欧語のメッセージが粗雑に彫られていました。古北欧語から大まかに翻訳すると、メッセージには以下のように書かれていました。
ありがとう、親切なヴァルキリーよ。今は君が彼女ではないとわかる。頭は晴れて心は軽い。私も行くよ、愛しき人よ。私を待っていてくれるかい? 私の花よ。私のシグリッドよ。
解剖の結果、SCP-3105の異常性の原因は特定できませんでした。SCP-3105はNeutralizedに再分類され、死体は冷凍倉庫に保管されています。ヤンセン研究員はSCP-3105の死体に適切な葬儀を執り行うよう要求しました。この要求は検討中です。









