SCP-3121-JP
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アイテム番号: SCP-3121-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-3121-JPはサイト-81██の人型実体収容房に3体をそれぞれ個別に収容してください。

収容房は四方防音構造を備え、音響・振動・電磁波による外部への影響を完全に遮断するよう設計されています。内部は監禁下での身体活動を最小限に制御可能な環境とします。

担当職員がSCP-3121-JPとの接触を行う場合、事前に標準対ミーム処置を受け、高出力スタンガンを携帯して下さい。接触は最小限にとどめることが推奨されます。職員がSCP-3121-JPによるミーム汚染に曝露した場合は、直ちに収容房から退避させ、Aクラス記憶処理を施してください。

また、収容前のSCP-3121-JP実体が所属していたグループ、「かにばる☆か~にばる!」についてはカバーストーリー「契約違反による解散」を流布し、関連する報道機関およびオンラインコミュニティへの情報統制を継続的に行って下さい。

説明: SCP-3121-JPは外見上、17〜19歳程度の日本人女性に見える3体から構成される生物群であり、それぞれSCP-3121-JP-1〜3に指定されています。個体はそれぞれ自らを「セナ(Senna)」「シエル(Ciel)」「ピリカ(Pirika)」と称しています。

解剖学的調査の結果、SCP-3121-JPの内部構造はヒト科生物のそれとは著しく異なり、未確認の軟組織および捕食器官によって構成されていることが判明しています。また、外見上は衣服として認識される部分は体表組織の一部であり、実体の意思によってその外観を可変させる能力を有しています。SCP-3121-JPはこの性質を利用して擬態したスカート状の外見を呈する器官を捕食時に展開し、そこから複数の触手を伸ばして捕食対象を拘束・捕食します。

SCP-3121-JPは軽度のミーム汚染を発生させる能力を有しておりこれを利用して捕食を行います。対象の歌唱やダンスを認識した人物は、高確率でSCP-3121-JPに対して好意的感情を喚起されます。曝露初期段階においては、SCP-3121-JPが実施するコンサートに頻繁に参加し、関連グッズを積極的に購入するなどの行動を示します。接触機会の増加に伴い、曝露効果は段階的に強化されます。

Dクラスを用いた実験により、SCP-3121-JPによるミーム汚染は標準的な対ミーム処置によってほぼ完全に無効化可能であることが確認されています。このため、適切な処置を施すことで比較的安全にSCP-3121-JPとの接触が可能です。

現在、SCP-3121-JP-1実体が特定の対象に対して異常な執着を見せる様子が観察されており、どういった機序によって起こるものなのか、また他2つの実体についても起こり得るものなのか調査が進められています。

発見経緯: 20██年██月██日、東京都███区で発生した男性の連続失踪事件を契機にSCP-3121-JPは発見されました。失踪者はいずれも10代後半~30代前半の男性で、インディーズアイドルグループ「かにばる☆か~にばる!」の熱心なファンでした。聞き取り調査やSNSの投稿から、被害者が同グループのイベント参加や出待ちを繰り返していたことが確認されています。また、被害者に共通する傾向として、「会場ではひときわ熱心に声出しを行っていた」との証言が複数上がっています。さらに、失踪直前の映像及び目撃証言においては、複数の被害者がSCP-3121-JP個体と接触し、人目の少ない路地裏や廃ビルへ同行する様子が記録されています。

警視庁による捜査中に財団エージェントが██駅前の防犯カメラ映像を発見。そこには被害者がSCP-3121-JP-2に拘束され捕食される様子が鮮明に記録されていました。捕食後、SCP-3121-JP-2は即座に器官を収縮し外見を偽装しました。

異常性を確認した財団は機動部隊を派遣し、事件発生から3日後、ライブ終了後の楽屋にてSCP-3121-JPを確保しました。

補遺3121-JP-1: インタビュー記録抜粋

SCP-3121-JPの調査を目的として、各実体に対するインタビューが行われました。なお、インタビューは全て強化ガラス越しにマイクとスピーカーを通して行われています。

インタビュー記録: SCP-3121-JP-2-1

対象: SCP-3121-JP-2

インタビュアー: 橘研究員

付記: 対象は質問に対して終始淡々とした口調で答えたが、時折長考して言葉を選んでいる様子が見られた。

<録音開始, 20██/██/█>

橘研究員: こんにちは、まずは自己紹介をお願いします。

SCP-3121-JP-2: ……シエル。

橘研究員: 歌やダンスが人間に影響を与えることを自覚していますか?

SCP-3121-JP-2: うん。声を出すと、目が変わる。ファンサを入れると――落ちる。

橘研究員: 能力の仕組みについて教えてもらえますか?

SCP-3121-JP-2: ……自分たちでも、わからない。気がついたら備わっていた。

橘研究員: 自分たちが人間社会に潜む理由は?

SCP-3121-JP-2: 目立たないように、でも……孤独では死ぬ。群れに混ざると、心が軽くなる。

橘研究員: 孤独?あなた達は孤独を不快に感じるのですか?

SCP-3121-JP-2: 当たり前。私達は人食いの化け物かもしれないけれど、他の多くは、あなた達とそう変わらない。

(SCP-3121-JP-2はこれまで淡々と答えていたが、最後の発言時に橘研究員を見つめ、表情をわずかに緩めた。)

<録音終了, 20██/██/█>

終了報告書: 対象は能力の自覚を示したが、その詳細な仕組みは把握していない様子が確認された。また、人間社会に潜んでいた理由として「孤独感」を挙げた。対象が人間と同様の感情的機微を持ちうるのかは不明だが、集団行動を志向する本能が働いている可能性があり、引き続き調査する必要性がある。

インタビュー記録: SCP-3121-JP-3-1

対象: SCP-3121-JP-3

インタビュアー: 橘研究員

付記: 対象は終始明るく、しばしば冗談を交えて答えた。

<録音開始, 20██/██/█>

橘研究員: まずは自己紹介をお願いします。

SCP-3121-JP-3: ピリカ!かわいい担当!みんなを盛り上げるのが仕事だよ!

橘研究員:人間社会に入り込んだのはいつからですか?

SCP-3121-JP-3: んー、たぶん……数十年?でもあんまり覚えてないよ。楽しいことだけ記憶に残るの!

橘研究員: 捕食行為についてどう考えているか説明してください。

SCP-3121-JP-3: んー?食事兼、ファンとの交流?的な?みんな、最後はすっごく幸せそうな顔してたでしょ?でも私、細身でかわいい子がタイプだから、研究員さんは……タイプじゃないかな。

橘研究員: 捕食せずに通常の食事だけで生きていくつもりはありますか?

SCP-3121-JP-3:えー?それじゃ退屈じゃん!美味しい肉を知らないで生きるなんて、人生半分損してるよ。

橘研究員: あなたにとって「ファン」はどういう存在ですか?

SCP-3121-JP-3: 餌であり、愛であり、遊び相手!全部まとめてファン!

<録音終了, 20██/██/█>

終了報告書: SCP-3121-JP-3は捕食行為を「ファンとの交流」「遊び」といった表現で正当化し、明確な殺害・捕食行動を娯楽的活動として認識していることが判明した。対象は全般的に軽薄で陽気な態度を維持していたが、発言内容は一貫して人間を捕食対象=消費資源として位置付けている。特に「細身でかわいい子がタイプ」と具体的な嗜好を述べた点は、今後の被害対象の予測に有用と考えられる。

インタビュー記録: SCP-3121-JP-1-1

対象: SCP-3121-JP-1
インタビュアー: 橘研究員
付記: 対象は終始余裕のある態度を取りつつ、橘研究員に対して頻繁に視線を向け、時折意味深な笑みを浮かべた。回答の合間に一瞬の沈黙を置くなど、通常の挑発的態度とは異なる挙動が複数確認された。

<録音開始, 20██/██/█>

橘研究員: まずは自己紹介をお願いします。

SCP-3121-JP-1: セナ。リーダーでセンター。つまり、一番大事な存在ってこと。

橘研究員: グループ内でリーダーとしての役割を意識しているのですか?

SCP-3121-JP-1: 当然よ。あの二人は放っておくと好き勝手するから。……でも、私がいれば大丈夫。(ここで一瞬、橘研究員を見て微笑む) ……頼りがいある女って、好き?

橘研究員: 他のメンバーについて、印象を教えてください。

SCP-3121-JP-1: シエルはクールぶってるけど、すぐ余計なこと考えて固まるんだよね。踊りは上手いけど、頭は固い。ピリカ? あれはガキ。うるさいし、調子に乗る。でも場を盛り上げるのは上手いから、利用価値はある。結局、二人とも私がいないとバラバラ。だから私がリーダーなんだよ。

橘研究員: 年齢は?

SCP-3121-JP-1:(鼻で笑う)女に歳を聞くなんて野暮。……でも、あんただから答えてあげてもいいわよ。数百年くらい。もう数えるのも飽きたけど。

[中略]

(対象は質問の多くに挑発的に答えたが、橘研究員の発言にはしばしば笑みを浮かべ、視線を外さずに答える様子が確認された)

橘研究員: それでは、これでインタビューを終了し…(途中でSCP-3121-JP-1が遮る)

SCP-3121-JP-1: ねえ、あんた。

橘研究員: 何でしょうか?

SCP-3121-JP-1: あたしたちがここに居れば、あんたとまた話せる?

橘研究員: それは……自分が担当であるうちは、そうでしょうね。

SCP-3121-JP-1: そう……それじゃ、また。よろしくね。

<録音終了, 20██/██/█>

終了報告書: SCP-3121-JP-1は捕食行為を嗜好として説明し、挑発的な態度を取り続けたが、インタビューを通じて橘研究員への注視が頻発した。特に質問に対して即答せず、一瞬の沈黙を置いてから柔らかい口調を取る場面が複数回確認されている。

補記: この後行われた複数回のインタビューを含む接触において、橘研究員に対してのみ特異な態度を示し続けることが観察された。特定職員に対する異常な執着の兆候である可能性があるため、さらなる調査を要する。

インタビュー記録: SCP-3121-JP-1-2

対象: SCP-3121-JP-1

インタビュアー: 三浦研究員(補佐員)

付記: 橘研究員以外の職員に対してSCP-3121-JP-1がどのような態度を示すかを確認する目的で実施された。

<録音開始, 20██/██/██>

三浦研究員: それでは、まず体調について教えてください。

SCP-3121-JP-1: (無関心な声で)普通。変わりないわ。

三浦研究員: 捕食衝動については? 抑えられていますか?

SCP-3121-JP-1: ……質問ばかりね。特に変わりはないわ。

三浦研究員: ……それが仕事ですから。では、収容生活の感想は?

SCP-3121-JP-1:(長い沈黙の後)……橘博士は来ないの?

三浦研究員: 本日は私が担当です。研究員がいないと答えられない内容ですか?

SCP-3121-JP-1: ふーん。……まあ、あなたに言っても仕方ないわね。

三浦研究員: ……あなたにとって、橘研究員はどういう存在ですか?

SCP-3121-JP-1: 特別。食べちゃいたいくらい。……でも、食べたくないの。

三浦研究員: それはどういう意味ですか?

SCP-3121-JP-1: 終わり。これ以上は答えない。橘研究員に聞いて。

<録音終了, 20██/██/██>

終了報告書: SCP-3121-JP-1により、橘研究員に対して異常な執着を示しているとの証言が得られた。これは、捕食衝動とは別種の心理的傾向であり、個体の情動的変化である可能性が検討されている。

補遺3121-JP-2: SCP-3121-JP-1の感情的傾向について

SCP-3121-JP-1は、複数回にわたるインタビューを通じて、特定の職員(橘研究員)に対し、通常の捕食行動とは明らかに異なる態度を継続的に示しています。主な観察例は以下の通りです。

  • 捕食行動に関する質問において「食べたいが食べたくない」と矛盾した発言を繰り返す。
  • インタビューの終了を引き延ばすため、雑談や質問の遮断を行う。
  • 他職員による面接時に「橘研究員は来ないのか」と複数回確認。
  • 橘研究員に対してのみ、発言前に長い沈黙を置き、柔らかい表情や口調へ変化する。

以下は関連する記録の抜粋です。

インタビュー記録: SCP-3121-JP-1-6

対象: SCP-3121-JP-1

インタビュアー: 橘研究員

<録音開始, 20██/██/██>

橘研究員: 先日の発言、「食べたいけど食べたくない」というのはどういう意味ですか?

SCP-3121-JP-1: ……食べたいのは確か。でも、壊したくない。壊したら、もう二度と声が聞けなくなる。

橘研究員: それは保存のために捕食を先延ばしにしている、ということですか?

SCP-3121-JP-1: ふふ……研究員はいつもそうやって難しく言うね。ただ、あんたと話してると、お腹の音より心臓の音のほうがうるさくなるの。空腹なんかじゃない、もっと別の……ねえ、これが何か、あんたは分かる?

<録音終了, 20██/██/██>

また、インタビュー終了直後に以下の対話が記録されました。

接触記録: SCP-3121-JP-1-6-A

状況: インタビュー記録: SCP-3121-JP-1-6の記録終了後発生したやり取り

SCP-3121-JP-1: ……ねえ、博士。次は、いつ来るの?

橘研究員: スケジュールは開示できません。また、私にはSCP-3121-JP-1の個人的な質問に回答する義務はありません。

SCP-3121-JP-1: つれないわね。でも、ここにいる限りは、あなたが来てくれるんでしょう?

橘研究員: ……職務として、必要があれば。

SCP-3121-JP-1: (笑って)それなら安心。私、あなたには近くにいておいてほしいの。

橘研究員: その発言はどういう意図ですか?……記録員、注記を。

(対象はこの発言の直後短く笑みを見せ、橘研究員の質問には回答を行わなかった)

報告: 対象はインタビュー終了後も橘研究員にのみ発話を継続し、「次の訪問」や「近くにいて欲しい」といった保持・独占を示唆する表現を繰り返した。

以上の記録について当初、調査チームの一部からは 「恋愛感情に類する情動の発露ではないか」 との意見が提出されていました。しかし、主幹研究員である橘研究員は会議の場で一貫して強硬にこれを否定し「人間と同等の感情的機序をSCP-3121-JPに認めるのは不適切であり、生物学的に見ればリスやイタチ、キノコシロアリに観察される貯食行動的な本能に基づく執着と解釈する方が妥当である。そのためあくまで生物学的視点を軸に研究を進めるべきである。」と繰り返し主張しました。

結論: SCP-3121-JP-1が示す特異な態度について、橘研究員の主張する「貯食行動を基礎とする本能」とする説を軸に調査を進めることとします。但し、SCP-3121-JP-1実体が個人的に橘研究員に恋愛感情を抱いている可能性を完全に否定する根拠は現在確認されておらず、仮に恋愛的感情を抱いている場合、実体の行動を予測・制御し、円滑な収容へ役立てられる可能性があるため、他研究員による接触などを通して並行して調査を継続します。

補足: SCP-3121-JP-1の異常行動に対するさらなる調査を目的として、橘研究員をSCP-3121-JP専任に任命しました。これに伴い、保留中であった橘研究員の人事異動願いは却下されました。

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