SCP-3124-JP
評価: -7+x
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アイテム番号: SCP-3124-JP

オブジェクトクラス: Safe Neutralized

霊体うみみ%28修正版%29.png

ハルトマン霊体撮影機で撮影された、SCP-3124-JP-2の外観を映す写真。


特別収容プロトコル(改訂版): 可能性は限り無く薄いものの、SCP-3124-JP及びSCP-3124-JP-2の再発生の可能性を考慮し、現在、SCP-3124-JP-1は煌楽きらら氏に所持させる事以外の必然的なプロトコルは定められていません。


説明: SCP-3124-JPは、「うみみ」という名称のLINE2のアカウントです。SCP-3124-JP-1は煌楽氏が所持するスマートフォンの指定であり、SCP-3124-JPが存在している点を除けば異常な点は有していません。

SCP-3124-JPの更なる研究と検証を目的として、LINEヤフー株式会社と協力し、データ収集及び解析、各アカウント履歴の確認、特定を主とした調査が実施されましたが、SCP-3124-JPに指定されるアカウントについての情報が一切無く、本来は存在しない筈であると結論付けられました。煌楽氏の証言によれば、LINEをインストールした直後から既にメールが展開されていたようです。インストールした日付は2022年12月24日です。

巷説部門3による大規模な調査でも、当該アノマリーに関連性のあると見なされる噂話や都市伝説は一切流行していません。SCP-3124-JPのアイコンは、黒色の背景に白文字で「うみみ」と記載された画像が使われています。

SCP-3124-JPは、煌楽氏から返信された場合に限り反応を示し、西園寺研究員や血縁関係にある人物を除き、彼女以外の人物による返信に対し反応を一切示しません。彼女に似せた返信であった場合も反応は示さず、どのようにして彼女の返信と他者の返信を見分けているのかは未だに判明していません。ただ、彼女以外の人物が考案した文章を彼女本人が送信すると、「うみみはきららとしかしゃべれない。ごめんなさい。」と返信がなされます。

SCP-3124-JPをグループチャットに参加させる行為、トーク記録を削除する行為、ブロックする行為のいずれかを実行するという確認が行われましたが、原因不明のエラーが発生し、アプリが確実にダウンするという結果に終わり、先述の行為は不可能であると結論付けられました。加えて、LINE電話による通話も同時に試されたものの、着信に応答する事はありませんでした。

SCP-3124-JP-2は、外観上白い毛並みと、黄色の瞳と青色の瞳のヘテロクロミア4を有するネコを呈しており、外的及び生物学的観点のみで注目すれば、少なくともオスのイエネコ(Felis silvestris catus)に酷似した、一般的な霊子量を有する霊的実体です。SCP-3124-JP-2は、通常の撮影機器による撮影も含め肉眼で観測する事は不可能で、明白な実体が存在せず、物理法則を有さない為、物質や生命の実体含むあらゆる物体を通過する事を可能としており、通過の阻止の試みも全て失敗に終わっています。ハルトマン霊体撮影機5のような、霊子やエクトプラズム6を利用した技術を使用してのみ実体を観測できます。

SCP-3124-JP-2は、ある一つの方法を除いて、どのような方法でも出現する事はありません。ただし煌楽氏本人が、SCP-3124-JPとコミュニケーションを図った場合にのみ、秋田県全域のうちの任意の地点に出現します。ただ、山や森の深部には出現せず、限りなく人の住む住宅街近辺に出現する傾向にあるようです。煌楽氏とSCP-3124-JPがコミュニケーションを図っている時間の間のみ実体化し、終了した際は再び突如として実体が消失します。出現可能な地域は、秋田県全域のみであり、それ以外の地域に出現したという事例は現状確認されていません。実体が消失している間、基底現実世界とは異なる何らかの異空間、あるいは霊界に転移している可能性が示唆されていますが、現状定かではありません。

西園寺 煌楽氏は、西園寺 ███ 研究員の実の娘であり、この報告書の執筆時点で彼女の年齢は15歳です。彼女は財団の存在は認知していません。現時点で経緯は不明ですが、軽度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っており、接する際には十分に留意しなければなりません。母親である西園寺研究員は、彼女はSCP-3124-JPをまるで年下の親友のように接していると証言しています。また補足として、西園寺研究員の自宅は秋田県に位置しています。


補遺.1: 観察兼実験ログ-3124-JP.01

以下は、神楽坂研究員と煌楽氏の通話記録と、SCP-3124-JPと煌楽氏のトークの内容を更新する様子を映し出すスマートフォンの録画記録を、統合し文章化したものです。この実験記録は西園寺研究員及び彼女の承諾の元実施しているものです。

観察兼実験ログ-3124-JP.01


実験開始日: 2024/9/18

<記録開始>

神楽坂研究員: さて煌楽さん。今から開始致しますが、大丈夫ですか?

煌楽氏: はい!大丈夫です。

神楽坂研究員: ん…煌楽さん、あなたのお母さんから会話は苦手と聞いていましたが…?

煌楽氏: えっと私…男の人と会話するのが、特に苦手?っていうだけなので、女の人とならまだなんとかなります。会話が苦手っていうのは変わりないですけど…

神楽坂研究員: そうでしたか。それでは、まずはどのようなメッセージでも構いませんので、トーク画面に何か一言送信してください。

煌楽氏: 分かりました。

煌楽氏: 今喋れる?

SCP-3124-JP: うん!いいよきらら!

煌楽氏: いいみたいですけど…次はどうしましょう?

神楽坂研究員: そうですね…変な話題でも無い限りは、どのような事でも大丈夫です。

煌楽氏: 分かりました。

[煌楽氏はその後、SCP-3124-JPと数分程度のやりとりを行う。]

神楽坂研究員: 煌楽さん、話から聞きましたが、まるで親友のように接していますね。親近感のようなものを感じているのでしょうか?

煌楽氏: あっはい!なんかこう…抵抗感無く会話できるんです。それに私が幼少期の時に飼ってた猫と同じ名前なので…余計に。

神楽坂研究員: …うむ?なるほど…一応メモしておきますか…

煌楽氏: えっと…何か聞いてほしい事とかありますか?

神楽坂研究員: そうですね…煌楽さんのLINEのみにしか見つかってない理由を探りたいところですね。

煌楽氏: はい!分かりました。

煌楽氏: 唐突だけどさ、なんで私のLINEにしかアカウントが無いの?

SCP-3124-JP: きららいがいのひとのラインにいるひつようがないからかな?いてもしかたないし

神楽坂研究員: なるほど…

煌楽氏: じゃあ、私のお母さんの名前は?

SCP-3124-JP: さいおんじ███さん!こんなのすーぱーいーじーもんだいだよ!もしかしてるなめてる?

煌楽氏: え?私のお母さんの名前を知ってる?

神楽坂研究員: ふむ…煌楽さん、次に、本当に人なのかを確かめてくださいませんか?

煌楽氏: え?は…はい。

煌楽氏: うみみは人なの?

SCP-3124-JP: ひとじゃないよ!ねこだよ!

神楽坂研究員: 猫ですか…なるほど。

煌楽氏: [少し動揺した声色で] 猫…猫…?

神楽坂研究員: ん?煌楽さん、どうしました?

煌楽氏: …いえ!ただの勘違いなので気にしないでください!

神楽坂研究員: そうですか?気になる事があればすぐ仰ってくださいね。

煌楽氏: は…はい。

神楽坂研究員: おっと、煌楽さん。これは初めての調査というのもあって時間は短くしているのですが、そろそろ調査が終わる頃合いなので、今日は一旦これで終わりましょう。お疲れ様です。

煌楽氏: あ…はい!そうですか、お疲れ様でした!

神楽坂研究員: 今日はゆっくりと休んでくださいね。疲労は身体に悪いですから。

煌楽氏: そうですね。今日はぐっすり眠る事にします。

<記録終了>


神楽坂研究員による追記

初回は一先ず問題無く調査が進みました。後の報告により、秋田県全域のうち███市のある地点に位置する、最も出現地点に近かったサイト-███の時空間情報測定観測所により、住宅街近辺に突如として不可解なエクトプラズム反応が検出されました。調査した結果、エクトプラズム反応が検出された地点にSCP-3124-JP-2が出現していた事が確認されました。この地点は、西園寺研究員の自宅の僅か█km程度の距離しか離れていません。この実験を行う以前までは、出現地点のいずれも10km以上は離れているという結果だった事から、明らかに私が干渉してから急激に自宅と出現地点の距離が縮んだ事が分かります。


補遺.2: 観察兼実験ログ-3124-JP.04

以下は、神楽坂研究員と煌楽氏の通話記録と、SCP-3124-JPと煌楽氏のトークの内容を更新する様子を映し出すスマートフォンの録画記録を、統合し文章化したものです。この実験記録は西園寺研究員及び彼女の承諾の元実施しているものです。

観察兼実験ログ-3124-JP.04


実験開始日: 2024/10/3

<記録開始>

神楽坂研究員: では煌楽さん。準備はいいですか?

煌楽氏: はい。いつでも。

神楽坂研究員: いいでしょう…そうだ、まず煌楽さん、あなたに質問を伺ってもよろしいですか?

煌楽氏: あっはい、なんでしょうか?

神楽坂研究員: あなたのお母さんの件についてですが、体調がどうも優れないらしいですが…どうしましたか?

煌楽氏: えっとそれが…多分ストレスとかなのかなーって勝手に思ってるんですけど…気にしないでって言われてるのでまだよく…

神楽坂研究員: 他には何か言われましたか?

煌楽氏: 特には……あ!でも

神楽坂研究員: ん、なんでしょう?

煌楽氏: 最近嫌なことが起きて、やる気になれないって言ってました。

神楽坂研究員: 嫌なこと?心当たりは?

煌楽氏: 私もよく分からなくて…心当たりも今のところ…

神楽坂研究員: なるほど…あとで伺ってみましょう。

[その後、問題無く実験が行われる。]

神楽坂研究員: 煌楽さん。次に、今日はいつかを確かめてみてください。

煌楽氏: はい。

煌楽氏: 今日の日付は分かる?

神楽坂研究員: …ん?返信が遅いですね。

煌楽氏: そうですね…何かあったのかな?

[10秒経過]

SCP-3124-JP: えっと…よくわからないの…おぼえてるさいごのひづけは、2015ねんの12がつ24っかってところまではわかるんだけど…おもいだせないの…

煌楽氏: え?2015年12月24日…?

神楽坂研究員: なるほど…?

煌楽氏: [微かに息遣いが荒くなる。]

神楽坂研究員: ん?煌楽さん?どうしました?

煌楽氏: 2015年…12月…24日…え…

神楽坂研究員: 煌楽さん!何かありましたか?

煌楽氏: [やや動揺した素振りを見せて] …え…えあ…はっはい!な…なんでしょう?

神楽坂研究員: どうしましたか?何やら動揺しているようでしたが…

煌楽氏: すみません…今日はちょっと…終わってもいいですか。

神楽坂研究員: ?…いいでしょう。何かあったらすぐ連絡してください。

煌楽氏: はい…すみません。

<記録終了>


神楽坂研究員による追記

報告によれば、SCP-3124-JP-2は西園寺研究員の自宅から、僅か███m程度しか離れていない地点に出現したようです。SCP-3124-JP-2の出現地点は、煌楽さんの感情によって大きく変動すると仮定すると、SCP-3124-JPと煌楽さんは、何かしらの強い関係性が示唆されます。

加えて、記録を終えたその後、数十秒程度、煌楽さんと通話で対話しましたが、どことなくいつもと様子がおかしいような印象を受けました。現状、煌楽さんは実験に参加出来そうに無い状況下にあるため、実験はこれにて一時中止と致します。

補遺: 西園寺研究員が10月12日に復帰予定だそうなので、その日に西園寺研究員に直接面談の時間を設け、インタビューを行いたいと思います。


補遺.3: インタビュー記録-3124-JP.A

以下は、神楽坂研究員と西園寺研究員の間に行われたインタビューの内容が録音された音声記録です。

インタビュー記録-3124-JP.A


インタビュー開始日: 2024/10/5

<録音開始>

神楽坂研究員: [軽い咳払い] さて、録音を開始したわけですけど…

西園寺研究員: そんな気を張らなくてもいいわよ?なにせあなたと私しかこの部屋にはいないんだし、それに敬語じゃなくてもいいわ。

神楽坂研究員: そう?ならお構いなく…と、その前に煌楽ちゃんの調子はどう?

西園寺研究員: [少し頷く] 今は大丈夫よ。気分はあまり良くないみたいだけど。

神楽坂研究員: そう…ならいいわ。それでね、前々から疑問に思っていたことが一つあってね?それについて聞いてもいい?

西園寺研究員: OK。

神楽坂研究員: 9月18日に行った実験記録、あなたも見てくれたでしょ?そこで、煌楽ちゃんが言及してた事なんだけど、幼少期に飼ってた猫について聞いておきたいのよ。

西園寺研究員: やっぱりそこね…正直に言ってしまうと、気分が悪くなってあまり言いたくないのよ。実際それでストレスの負担と同時に、まぁなんていうか…SCP-3124-JP-2の写真を見て…それで休んだのよ。

神楽坂研究員: あぁ…暫く休暇を取っていたのはそのせいだったの?

西園寺研究員: えぇ、まぁでも…この際だから全部話しちゃうか…

神楽坂研究員: ゆっくりでいいから、話してみて。時間はあまり残されてないけど。

西園寺研究員: …その猫…「うみみ」は、率直に言うと事故で亡くなってしまったわ。煌楽と散歩に行ってて、信号が青になってから横断歩道を渡ろうとした隙に、爆速で走る車に轢かれて…そして最悪な事にその車、そのまま轢き逃げしてったのよ。賠償金どころか、謝罪も無しに…まぁ賠償金払われたとて、許すつもりも無かったけどね。

神楽坂研究員: …なるほど…

西園寺研究員: それでね、車に轢かれて即死だったみたいで…ほら、飼い犬とか飼い猫ってさ、日本の法律的には轢かれても過失運転致死傷罪にはならないじゃん?私はそれで器物損壊罪と道路交通法の報告義務に反する行為で訴えたのよ。そしたら轢き逃げした男、わざとだったことを自白してね? [軽く机を叩く] しかも笑いながらよ?そん時私は内心いい加減腹が立ったわ。それでそのまま器物損壊罪が成立して有罪判決に至ったわ。

神楽坂研究員: …そう…

西園寺研究員 えぇ…全くよ。有罪判決で一応スッキリしたけど、勿論今そいつの事許してなんかいないし、私もあの子もあの出来事をずっと忘れられない… [僅かな溜息] いや、忘れたくない。それでね…私もうみみの事は好きだったけど、初めて背負うものが大きすぎた子がいるのよ。

神楽坂研究員: …煌楽ちゃん?

西園寺研究員: 正解。当時の煌楽はまだまだ幼かった。煌楽が物心つく前に旦那も病死して、周りの子供には父親がいる中、自分だけが父親がいないっていう、なんかこう…嫉妬心?みたいなのを抱いて、それで突然うみみという家族同然の存在も失い、罪悪感と後悔をずっと背負う事になって…それが原因で一回だけ身を投げかけそうになった時があったのよ。

神楽坂研究員: それは、私もあなたから聞いた事があるわ。それが原因だったのね…

西園寺研究員: そう、学校でね、先生とお友達がたまったまその場にいて、奇跡的に落ちる寸前に先生が煌楽の腕を掴んで助かったのよ。それで生憎当然𠮟られたけど…でも気持ちは分かるのよ、親としてね。

神楽坂研究員: 私にも娘がいるから、気持ちも凄く分かるわ。

西園寺研究員: あなたも知ってるかもだけど、今の煌楽は、学校に馴染めなくなって、しばらく不登校の日が続いたのよ。勿論担任の先生も事情は分かってもらってるから、一先ず家でのんびり過ごしてるけど。

神楽坂研究員: あんなに正義感が強かった子があんな風になるなんてね…でもメンタル面じゃ治療とかどうにもならないから仕方ないか……そういえばあなたはどうなの?うみみを失ったのはとても辛かったってことはわかったけど、夫が病死した時は、とても悲しんでたじゃない?

西園寺研究員: 確かにね。でも旦那の間に産まれたのが煌楽なのよ?だったらいつまでも悲しんでないで、あの人から授かってくれた我が子を命懸けで育てるってのが親としての役目ってもんじゃない?それにあの人から勇気も貰ったし、なんとかなってるのよ。

神楽坂研究員: なるほど…なんか悪いわね。嫌なこと聞いちゃって…

西園寺研究員: いいえ、全然大丈夫よ。あと、もしかすると煌楽、今も自分の事責めてるのかもしれない。

神楽坂研究員: やっぱりそうか…

西園寺研究員: 私もなんとかしてあげられないかなーって思って、ずっと考えてるんだけど…案の定、軽くPTSDだし、上手く行動に移せないのよ…

神楽坂研究員: でもこれで尚更、SCP-3124-JPの起源が、うみみである可能性が高まったわね。

西園寺研究員: そうね。

神楽坂研究員: 一応聞いておくけど、うみみが亡くなった日付は?

西園寺研究員: えっとね…2015年12月24日よ。クリスマスイヴ。

神楽坂研究員: OK…ある程度情報が集まったわね。

西園寺研究員: 他に何か聞きたい事ある?

神楽坂研究員: そうね…今のところは無いかな。そろそろ丁度頃合いだし、一旦終わりましょうか。

西園寺研究員: 分かったわ。

<録音終了>


補遺.4: 事案-3124-JP発生記録

2024/12/23 23:25 - 西園寺研究員により、煌楽氏がSCP-3124-JPと通話を行い始めたという異例の報告がなされました。

以下は、通話記録を文章化したものです。また、以下の記録は事案が発生し事態が終息した後に、煌楽氏から神楽坂研究員に送られてきたものです。

事案-3124-JP発生記録


記録開始日: 2024/12/23

<記録開始>

煌楽氏: うみみ!うみみ!聞こえる!?

SCP-3124-JP: うん!聞こえてるよ!

煌楽氏: 本当にうみみなの…?私の飼ってた猫の…

SCP-3124-JP: 正解!猫のうみみだよ!

煌楽氏: えっと…それはわかったけど…なんで猫が喋れるの…?それにどうやって電話して…

SCP-3124-JP: それは僕でもわからないんだけど…それよりも…煌楽?ちょっと…聞きたい事があるんだ。僕…なんとなくわかったかもしれないから。

煌楽氏: え?聞きたい事って…?

SCP-3124-JP: 僕って…もしかして死んでる?

煌楽氏: え…あ、えっと…言いづらいけど…そうだよ。

SCP-3124-JP: そっか…だと思ったよ!どうりで2015年のクリスマスイヴの日から記憶が無いわけか。ありがと!教えてくれて!もっと早く気づきたかったけど。

煌楽氏: 何で…ありがとうなんか…全部、私が悪いのに…

SCP-3124-JP: えっと…どういう事?

煌楽氏: だって…事故とかも全部、私の手違いのせいで… [啜り泣く]

SCP-3124-JP: 何で煌楽のせいになるの?謝る必要なんて無いよ!

煌楽氏: え?…どうして…?

SCP-3124-JP: 煌楽?いい?

煌楽氏: …何…?

SCP-3124-JP: 煌楽は…なんだろう。正義感っていうのかな…?正義感が強すぎるんだよ昔から。でも当たり前かもしれないけどね…煌楽のお母さんから聞いた事なんだけど、なにせ煌楽のお父さんは、煌楽がお母さんのお腹の中にまだ入ってる時に、持病が急に悪化して、それでそのまま亡くなっちゃったってね。そのせいか保育園に通ってた時から責任感が強かった。まぁともかく、煌楽は正義感と責任感が強すぎるの。だから毎回余分な責任を背負って、ストレスを抱えすぎちゃうんだよ。

[3秒間の沈黙。]

煌楽氏: [啜り泣く] …でも…そんな事言ったって…

SCP-3124-JP: 大丈夫!それに僕もそうだけど、きっとお父さんも後悔なんてしてないよ!だって…笑ってたんだって!

煌楽氏: 笑ってたって…?

SCP-3124-JP: そのままの意味だよ。これもお母さんから聞いた話なんだけど、煌楽のお母さんも、今の煌楽みたいに泣き崩れてた時があったんだよ。でも死期が近くなった煌楽のお父さんは、いざ死ぬってなる前に、お母さんに遺言を残したの。

煌楽氏: 遺言…?

SCP-3124-JP: うん!それは「過去に縋って泣いてばかりじゃ次には進めない。だから俺は、お前の幸せと未来、そして煌楽の幸せと未来の為に、天国でお前らを陰ながら全力で支えたい。いいか?生きる母親は亡き父親だと思え。俺とお前は一心同体だ。だからどんな辛い壁でも、いつかは必ず乗り越えれる。俺が死んだからって幸せが途絶えたわけじゃない。自分を信じろ。過去の想いを抱いて今を生きて、苦労してもいいから未来の為に次に進め。」ってね!驚いた?僕記憶力凄くいいんだよ!

煌楽氏: …お父さん…… [啜り泣く]

SCP-3124-JP: 煌楽!…今、幸せ?

煌楽氏: え?…いや…よく分からない…

SCP-3124-JP: じゃあ言い方を変えようか。煌楽ってさ、人の為になれると笑顔になれるでしょ?

煌楽氏: えっと多分…そうかも。

SCP-3124-JP: 笑顔で居られる事って、僕とても素敵な事だと思うんだ。勿論笑顔にもいろんな種類があるけど、笑顔って言えるものは、生きてるって証。逆も然り、生きてるっていうのは、幸せって証。そこで確かめたいんだけど、今の煌楽に…笑顔はある?

煌楽氏: …無いかも…

SCP-3124-JP: そっか…幸せの在り方は人によって違うのは当たり前だけどね… [3秒間の沈黙] あ…時間が無いかも…

SCP-3124-JP: そうだ…煌楽!2015年のクリスマスイヴ、あそこに行けなかったでしょ!

煌楽氏: あそこって…公園の事?

SCP-3124-JP: うん!僕あそこ大好きなんだ!山の上にある公園!今行こうよ!もうすぐでクリスマスイヴだし、事故で行けなかった続きを!その間まで競争ね!

煌楽氏: え!?ちょ…ちょっと待って!!

SCP-3124-JP: 待たないよ!じゃあ今から煌楽の家から走るね!よーいどん!

煌楽氏: ちょちょ…待って!今日寒いし…お母さんになんて説明したら…あーもう!マフラーとコートだけでいいや!えっと…それに距離もここから少し離れてるよ!?うみみ!

SCP-3124-JP: 関係無いよ!でも風邪は引かないでね!

煌楽氏: それはちょっと無理あるって…!

[煌楽氏はビデオ通話に切り替え、マフラーとコートを手に取り、素早く身に装う。]

煌楽氏: 今そっちに向かう!!

[扉を開き、階段を降りる。]

西園寺研究員: え…ちょっと!?どこに行くの!!

煌楽氏: 公園に行くからごめん!!

西園寺研究員: 待ってどういう事!?

煌楽氏: うみみと話してるから!公園で会いに行ってくる!

西園寺研究員: は…はぁ…?7

[ブーツを履き、玄関の扉を開ける。]

煌楽氏: はぁ…はぁ!!

[走行により画面が乱れる。]

SCP-3124-JP: 今横断歩道にいるよ!僕が事故に遭ったとこ!渡った先にいる!

煌楽氏: 待って…!はぁ!今向かうから!!

SCP-3124-JP: 寒くない?

煌楽氏: 寒いよ!雪だって全然まだ降ってるし!

SCP-3124-JP: ごめんね突然!煌楽、クリスマスイヴまで…あと何分?

煌楽氏: え?はぁ…はぁ…えっと…11:48だから、あと12分だよ!はぁ…それがどうしたの…?

SCP-3124-JP: それは公園に着いてからの内緒!…そうだそうだ、最後にさ、煌楽に聞きたい…いや、伝えたい事があるんだ。

煌楽氏: 何!?それに最後ってどういう事!?

SCP-3124-JP: 幸せじゃないって事は…もしかして、進路とか決まってない?

[当時、煌楽氏が飼っていた猫の事故現場である横断歩道に辿り着く。]

煌楽氏: そ…はぁ…それは…その…待って!横断歩道今渡るから!青になったら渡るから、一旦止まって!

SCP-3124-JP: いくら煌楽から言われてもそれは無理かな。それで…どうなの?

煌楽氏: いや…あまり言えないというか…そもそも夢が無いというか…

SCP-3124-JP: 夢が無い…それってまさか、人生諦めてもいいなんて思ってない?

煌楽氏: え…?そ…それは…

[信号が青になり、煌楽氏は横断歩道を走り渡る。]

SCP-3124-JP: やっぱりかー…いい?煌楽。辛いなら、無理矢理でもいいから、自分の力で前を向かないと駄目だよ?人生はそう簡単に諦めていいものなんかじゃない。人生は一度きりって言うでしょ?

煌楽氏: う…うん。

SCP-3124-JP: 僕は猫だから、人の想いを細かくまでは分からないけど、でもこれだけは猫の僕でも分かる。言葉が通じなくたって、別の動物だったって、想いはきっと伝わる。だからこそ、今こうして想いを伝えたい。

煌楽氏: …それで…私に伝えたい事って…?

SCP-3124-JP: 伝えたい事…そうだ、せっかくだから僕が公園に着いたらにしよっかな。

煌楽氏: え?も…もう…うみみは何がしたいのよ!!

SCP-3124-JP: ごめんね。でも、どうしても公園で伝えないといけない。消える前に。

煌楽氏: え…ま…待って!?消えるって何!!

SCP-3124-JP: …着いた。

煌楽氏: ねぇ!!どういう事!!消えるって何なの!!

[煌楽氏は体力の限界を迎え、膝に手をつけて休憩する。その瞬間、SCP-3124-JPは突如として煌楽氏と同様ビデオ通話に切り替える。SCP-3124-JPは、████公園のとある一角を映し出している。]

煌楽氏: え…ビデオ通話…

SCP-3124-JP: ねぇ煌楽。

煌楽氏: …何?

SCP-3124-JP: もうケジメをつけちゃお。率直に言うけど…煌楽、生きたい?

煌楽氏: …えっと…そりゃ…生きたいけど…?

SCP-3124-JP: うんうん…それじゃあさ…僕が居ないと…生きたくない?

煌楽氏: …当たり前でしょ…私のせいでお父さんと…うみみも

SCP-3124-JP: [遮るように怒鳴り散らすような声で] いい加減にして!!

煌楽氏: え…

SCP-3124-JP: …言ったでしょ?君のお父さんは、君の未来と幸せの為に命を落としたんだよ…?

[2秒間の沈黙]

SCP-3124-JP: お父さんの気持ちを分かってあげて。君の「生きたい」は「生きたい」じゃないの。生きるっていうのは、幸せになるって事だよ?僕が居ないと悲しいっていうのも全部分かってる。僕も悲しいし、出来る事なら生きたいし、煌楽と一緒に居たい。でも、神様は僕らの言うことを聞いてくれない…世界はとても残酷だから。でも、そんな世界でも、幸せの為に生きる事は出来るんだよ。辛い事もいっぱいあるだろうけど、それもまた人生なんだから。

[煌楽氏は再び足を運んで走る。]

煌楽氏: はぁ…はぁ…

SCP-3124-JP: もうちょっとだね、公園まで…クリスマスイヴになる前に僕に会えるかだけど…

煌楽氏: [啜り泣く] じゃあ…なんで最初から家の前で会おうとしなかったの!?

SCP-3124-JP: 簡単な話だよ。そのまま煌楽と会ったら、余計に消えたくなくなるからだよ…

煌楽氏: え…!?って、やっぱり…消えようと…!?

SCP-3124-JP: うん…煌楽の未来と幸せの為に、僕は消える。そもそも元から、今日を過ぎたら消えるのはもうなんとなくわかってたよ。

煌楽氏: な…なんで…!! [啜り泣く] なんで私なんかに…!!!

SCP-3124-JP: なんでって…僕は、煌楽…君の事が一番大好きだから。これ以外に理由なんてある?

煌楽氏: え…!?

SCP-3124-JP: ほら…速くしないと…僕を見れずに消えちゃうよ?

煌楽氏: はぁ…はぁ…待って…! [啜り泣く] 今公園のすぐ近くだから!!山の坂道登ってる!

SCP-3124-JP: あと…何分?

煌楽氏: えっと…11:58…いや今、11:59!!はぁ…あと…1分…!?

SCP-3124-JP: …会えても、ほんの数秒しか話せないぐらいかな…

煌楽氏: うみみは…それでいいの…!? [啜り泣く] なんでそんな簡単に消えようとするの!?

SCP-3124-JP: もう…煌楽はわがままだな~…そんな煌楽も好きなんだけどね…これも理由は同じ!言うまでもないよ。あとさ…

煌楽氏: な…何?

SCP-3124-JP: 最後に、復習しよ?

煌楽氏: 復習って…何の復習を…?はぁ…待ってもうすぐで着く…待ってあと30秒ぐらい…待って!

SCP-3124-JP: 君のお父さんは…何の為に命を落とした?

煌楽氏: え…えっと……わ、私とお母さんの、み…未来と幸せの為…!![啜り泣く]

[████公園に辿り着く。]

SCP-3124-JP: じゃあ最後…うみみは、何で…煌楽の幸せを願ってると思う?

煌楽氏: え…それは…私の事が…えっと…大好きだから…?って、うみみ!…どこ!!どこに…

SCP-3124-JP: …大正解!良かった…その言葉を聞けただけで十分だよ!

煌楽氏: 待ってよ!まだ…まだ!嫌だ!!

SCP-3124-JP: あと数秒かな……煌楽?

煌楽氏: 何!?

SCP-3124-JP: …ありがとう!!凄く幸せだった!!

煌楽氏: …!?ま…待って…

SCP-3124-JP: じゃあね煌楽!…君のお父さんの言葉を借りるけど…僕と君は、一心同体!!自分の幸せ…大事にしてよ?…少し早いけど、メリークリスマス!!ありがと!!

[SCP-3124-JPとの通話が強制終了する。]

煌楽氏: え!?…うみみ!!うみみ!!… [啜り泣く] 何で…何で…

[数十秒程度、画面は動かず、その間、煌楽氏の泣き声が聞こえる。]

煌楽氏: うっ… [啜り泣く] せめて…うみみが最後居るところに……トークにうみみのアカウントが無い…!?…あーもう、それは後にして…早くそこに……ここだ、うみみが居たとこ…ん?

[煌楽氏は、SCP-3124-JP-2が待機していた地点に何かが散乱しているのを発見する。]

煌楽氏: これは…白い毛…?雪で分かりにくいけど、これは…うみみの毛…?

煌楽氏: 一心同体…そう言われても… [2秒間の沈黙] いや、お母さんだって…乗り越えて、私の事をここまで育ててくれた…んだよね…?

煌楽氏: 生きるって事は幸せになるって事…って言ってたっけ…確かに…そうかも。

煌楽氏: 私は、生きたいけど幸せとは感じてない…でも、うみみのおかげで、幸せっていうのは何なのかわかったかも…過去に縋るのは駄目。先に進まないと意味が無いのは、もうわかってる。

煌楽氏: 私…いや私たち…うみみ!私たちは一心同体!居なくなったって幸せになれる!他の人にも勿論、うみみにも、私の本当の笑顔…見せたくなった!だから、人の為になれるような存在でありたい!…あ!そうだ…返すの忘れてたね…メリークリスマス!

<記録終了>


補遺.5: 記録終了後、西園寺研究員は、████公園のあるベンチで、煌楽氏が座っているのを発見したという報告がなされ、煌楽氏は、サイト-██の█████に搬送され、診断された結果、脚やアキレス腱の痛み、過度な運動誘発喘息、低体温症が確認されたものの、幸いな事に命に別条はありませんでした。その後、問題無く完治し、無事退院する事になりました。

SCP-3124-JPは、SCP-3124-JP-1内のLINEから消滅し、加えてSCP-3124-JP-2も同時に消滅し、再発生の見込みが限り無く薄いと判断され、オブジェクトクラスは、Safe から Neutralized へと再分類されました。再分類後の調査が現在実施中です。

神楽坂研究員による終了報告: Neutralizedクラスへの再分類後の調査が実施され、終了したその後の報告によると、SCP-3124-JPは事案発生直前に、異常性及び性質を変化させていたと見られています。SCP-3124-JPと、SCP-3124-JP-2が異常な方法で事実上の合体を引き落こし、その際、霊体を実現しながら、異常な方法でアカウントの操作が可能になったと予測されています。



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