SCP-3135-JPを所持する故クライヴ・マクレガー軍曹 (1965/11/03に撮影)
アイテム番号: SCP-3135-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3135-JPはサイト-8128の防弾処置を施した霊的実体収容セルに収容されます。SCP-3135-JP-Aの出現が確認された場合、室内に設置したメトカーフ非実体反射力場発生装置を起動します。SCP-3135-JP-Aを構成する霊素反応の完全な消失を確認した後、選任のDクラス職員1名を収容セルに入室させて、SCP-3135-JPを元の保管場所に再配置するよう指示してください。
注記: SCP-3135-JPの通年した収容効率・費用対効果の観点から、メトカーフ非実体反射力場発生装置の常時作動及び収容室外縁への移動はその必要性が希薄であると判断された為、現時点で関連するプロトコルの改定を行う予定はありません。
説明: SCP-3135-JPはアメリカ合衆国のオート・オードナンス・コーポレーション社が開発したトンプソン・サブマシンガンのプロトタイプです。SCP-3135-JPは“脅しの道具”パースエイダーの開発コードで知られる初期の試作銃であり、数多の動作不良と構造的欠陥によって量産化が決定する前に廃案となっています。SCP-3135-JPの組成/設計/製造方法に異常な点は発見されませんでした。
SCP-3135-JPの周囲には不定期的にクラスA霊的実体 (以降、SCP-3135-JP-Aと呼称)が出現します。財団の把握する限りでは、これらのSCP-3135-JP-Aは過去にSCP-3135-JPを所持していた経歴を持つ職業軍人や犯罪者と同一の身体的特徴を有する存在だと判明しています。SCP-3135-JP-Aとの意思疎通の試みは、当該実体がこちらの問い掛けに応じることが無く、また発話自体が不明瞭である為に成功していません。
以下は、現在までに身元が判明しているSCP-3135-JP-Aのリストです。
番号 |
氏名 |
国籍 |
享年 |
死亡状況 |
6 |
クライヴ・マクレガー |
アメリカ |
38歳 |
1965年、ベトナム戦争に於けるイア・ドラン渓谷の戦いに派遣され、その後の戦闘によって死亡した。なお、同氏の部隊は全滅している。 |
11 |
マニュエル・ロカシーノ |
イタリア |
26歳 |
1976年、シチリアのアグリジェントで発生したコーサ・ノストラ内部の抗争により死亡。この一件で同氏の所属するファミリーは壊滅した。 |
13 |
アラン・グード |
イギリス |
17歳 |
1982年、ロンドンのボーディングスクールで発生した銃乱射事件の犯人として、警官隊に射殺される。この事件による死傷者は確認されていない。 |
22 |
胡 詩夏 |
中国 |
23歳 |
2006年、北京市内の路上にて頭部に銃弾を受けた状態で死亡していた。財団中国支部は同氏の死因を含め、これ以上の彼女に関する情報は保持していない旨を表明している。 |
24 |
大久保 礼司 |
日本 |
36歳 |
補遺1を参照。 |
SCP-3135-JP-Aは実体化を終えた後に例外なく激しい怒りの感情を示しており、出現後すぐさまSCP-3135-JPを取得して非常に暴力的な行動を取ろうとします。実際の収容下で頻繁に観測される事例として、以下のようなものが挙げられます。
- SCP-3135-JPを取得して乱射する。
- SCP-3135-JPの分解を試みる。
- SCP-3135-JPを振り回したり、周囲の壁や床面に叩き付ける。
しかしながら、SCP-3135-JPは高い破壊耐性と無尽蔵 (或いはそれに準ずる)の弾倉を有している為、SCP-3135-JP-Aが当該オブジェクトそのものに何らかの損傷を与えたり異常性を喪失させる等の可能性は低いと見なされています。
発見経緯: SCP-3135-JPは“決して弾切れを起こすことのないトミーガン”として喧伝され、アメリカ合衆国ニューヨーク州のパラテック・ブラックマーケットから裏社会への流出が確認された後、各々の国や地域を問わず多くの犯罪・軍事組織の手に渡ってきた経緯を持ちます。他方で、その単純で利便性の高い異常性に反して、SCP-3135-JPの所有者が存在した戦場や犯行現場での使用・目撃例は殆ど報告されていません。
そうした中、SCP-3135-JP-Aの予期しない出現に絡み、当時の所有者がSCP-3135-JPを妄りに放棄する事案が相次ぎました。この内幾つかの事案ではSCP-3135-JPを巡って大規模な騒動に発展しており、事後処理として関係者の記憶処理やカバーストーリーの流布等が実行されています。
以上を受けて、財団はヴェールの保持及びSCP-3135-JP-Aによる公衆の物的・人的被害を阻止する目的から、当該オブジェクトを正式に優先収容対象とする決定を下しました。
これによってSCP-3135-JPの収容を完了する直前の最終所有者は、日本国を本拠とするGoI-8102 広域指定暴力団東栄曾直系 “有村組"の構成員、大久保 礼司 (当時36歳)でした。
補遺1: 以下は、機動部隊れ-8("代紋") が“有村組"フロント企業の入居するテナントビルを襲撃した際に記録された戦闘の映像です。今回は特に重要と思われる場面を俯瞰視点で転写する為、機動部隊員のボディカメラではなく、大久保氏がオフィス内に仕掛けていた監視カメラの映像を採用しています。
SCP-3135-JP収容作戦ログ - ファイル#3
2008/11/08
<抜粋開始>
室内には有村組の関係者や取引先の顧客など、計7人の成人男性の姿が映し出されている。その内の1人、大久保氏は来客用のソファに腰を掛け、SCP-3135-JPの手入れを行っている。同じく有村組の構成員で、大久保氏の舎弟である河村氏が焦燥した様子でしきりにスマートフォンを確認している。
河村氏: 兄貴! もう下の階までサツが入り込んできてます!
大久保氏: ああ、とうとう来やがったか。
河村氏: 抜け道も塞がれて……クソ! カメラも仕掛けも奴ら、お構いなしに壊して行きやがる!
大久保氏: そう焦んなよ、河村。俺らが奴らの的に掛けられてんのは、前に親父から聞いてたろ。
河村氏: いやでも! どう考えても普通のサツじゃないっすよ、こいつら! なんか特殊部隊みてぇな装備してますし、本当に俺達だけでやれますかね?
大久保氏: [SCP-3135-JPを掲げながら] こいつがあれば、どうにかなるだろ。どうせ、入り口のドアはそこの1つだけだからな。河村、奴らが廊下の向こうにスタンバったのが見えたら教えろ。
河村氏: わ、分かりました。
河村氏は神妙な面持ちで、手元のスマートフォンを見つめている。数分後、沈黙を続けていた河村氏は、小さく声を上げて大久保氏にスマートフォンを差し出す。そこに表示された画面は、監視カメラから視認できない。同時刻、財団の機動部隊員がオフィスの近傍まで到達していたことが判明している。
河村氏: 兄貴、奴らです。
大久保氏: よし。お客様は盛大に歓迎してやろうじゃねぇか。河村、お前は下がってろ。
河村氏: そんな、俺も兄貴に御供しますよ! これから死のうが生きようが、どうなっても悔いの残らないようにしねぇと!
河村氏は拳銃を携えて、大久保氏の傍らに控える。
大久保氏: ……好きにすればいい。
大久保氏はSCP-3135-JPを携えて、ドアの前まで移動する。仁王立ちで、SCP-3135-JPの銃口をドアに向けると、引き金に指を掛ける。
大久保氏: サツだか何だか知らねぇがな……さっさとくたばりやがれや! このボケナス共が!
大久保氏は雄叫びを上げながらSCP-3135-JPをドアに向けて乱射する。SCP-3135-JPの絶え間ない銃撃音と共に、複数人の呻き声が記録される。
河村氏: いいぞ、奴らに当たってます! 兄貴、そのままやっちまってください!
ドアや周囲の壁、書類棚に置かれた花瓶などが次々と破壊されていく中、室内に居合わせた他の人間が血液を噴き出しながら倒れ込む姿が映る。大久保氏はこれに全く気付いていないが、代わって河村氏は驚愕した表情で彼らの方を見遣っている。
大久保氏: おら、さっさと出てこいや! こっちはちっとも撃ち足りねぇぞ、ゴラァ!
河村氏: ちょ、ちょっと待ってください、兄貴! これ、あがっ!
大久保氏: ……あ?
おそらくSCP-3135-JPから放たれた銃弾の1つが跳ね返り、河村氏に命中したと思われる。大久保氏が振り返ったその直後、隣接する商業ビルからの機動部隊員によるライフルでの狙撃が成功し、同氏は胸部に銃弾を受けたことで膝から崩れ落ちる。
大久保氏: が……な……。
大久保氏と河村氏は俯せになって暫く踠いていたが、やがて次第に動かなくなっていく。その後、室内の安全を確保した機動部隊員が突入し、床に投げ出されていたSCP-3135-JPを問題なく回収する。続けて財団が終了した大久保氏を含む、現場の有村組構成員5名全員の死亡がその場で確認された。
<抜粋終了>
付記: オフィス入り口の監視カメラは巧妙に秘匿されていた為、大久保氏によるドアを貫通させる形でのSCP-3135-JPの乱射は想定外の出来事でした。ですが結果として、今回の収容作戦に於ける機動部隊れ-8("代紋") の人的損耗はありませんでした。
本件はカバーストーリー『内部抗争』が適用され、テナントビル内に居合わせた全ての人物にクラスA記憶処理を施しました。有村組の幹部はこのカバーストーリーを疑義なく受け入れており、現時点で財団の介入を察知した兆候は現れていません。
補遺2: 2008/12/16、SCP-3135-JPの収容室内部に大久保氏と似た容姿を持つSCP-3135-JP-A (-24に指定)が出現しました。このSCP-3135-JP-A-24の行動に従来記録された類型からの大きな逸脱はありませんでしたが、これまでのSCP-3135-JP-A群と比較して極めて発声が明瞭であった為、当該実体による発話内容の録音に初めて成功しています。
SCP-XXXX-JP-A-24出現記録#1
<抜粋開始>
SCP-3135-JPの収容室内にSCP-3135-JP-A-24が出現する。これまでのSCP-3135-JP-A群と同様、霊的実体固有の透過能力を用いて収容ケース内のSCP-3135-JPを取り出そうとする。この試みは問題なく成功する。
SCP-3135-JP-A-24: クソっ! クソっ! クソっ! クソっ! ふざけんじゃねぇぞ!
[激しい銃撃音]
SCP-3135-JP-A-24はSCP-3135-JPを構えて四方八方に乱射する。直ちにアラートが発令され、当直の収容担当者がメトカーフ非実体反射力場発生装置を起動する。4秒後、当該実体の動きが大幅に制限される。
SCP-3135-JP-A-24: [呻き声] よくも、コケにしやがって! この……ポンコツが!
SCP-3135-JP-A-24は緩慢な動きで、SCP-3135-JPを収容室の床に叩き付ける。直後、メトカーフによる霊素の固着が 90%まで進行する。当該実体は深く項垂れた状態で微動だにしない。
SCP-3135-JP-A-24: [啜り泣き] 河村、本当にすまねぇ。こんなもんに頼ってた俺が馬鹿だったんだよ。
程なくして、霊素の固着が完了する。8秒後、当該実体から発散される霊素反応の急速な減退と部分的な透明化が確認される。
SCP-3135-JP-A-24: いったい何なら出来るってんだ、お前には。
SCP-3135-JP-A-24は啜り泣きを続けたまま、SCP-3135-JPの収容室から消失する。
<抜粋終了>
付記: 今回のSCP-3134-JP-A出現事例に於いても過去の事例と同様、SCP-3135-JP-AによるSCP-3135-JPの乱射行為が発生したにも関わらず、稼働中のメトカーフ非実体反射力場発生装置に対する物理的被害は報告されませんでした。