芦名研究員の元に出現したSCP-3147-JP-473
アイテム番号: SCP-3147-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 現象進行中のSCP-3147-JPの収容は不可能とされています。異常性消失後のSCP-3147-JPはサンプルとして各サイトの低危険度異常物品倉庫で管理され、一定期間後に処分されます。
説明: SCP-3147-JPは不定期かつ瞬間的に日本人の近傍に出現するキャリーケースです。対象の特徴、そしてSCP-3147-JPの色やサイズに統一性は見られませんが、重量は後述する理由から7kg以下であると推測されます。また、異常性が消失するまでいかなる手段を用いても内部を確認することはできませんが、保安検査などは問題なく通過します。そのため、当オブジェクトを現象途中で発見することは現在にいたるまで成功していません。
SCP-3147-JPが出現したあと数分以内に、対象は親族、友人、会社の同僚や上司などに対して旅行のために7日間の休暇を申請します。この申請は必ず受理され、また申請された人物は異常性消失まで不信感を抱きません。その後、対象は24時間以内に飛行機や新幹線などの移動手段、宿泊先、その他観光地を訪れるための予約を行い、直ちに旅行先へ向かいます。この際、確率操作もしくはそれに酷似した現実改変によって全ての予約が受理されます。なお飛行機に搭乗する際、全ての事例で機内に持ち込んでいるため、重量制限のかからない7kg以下であると推測されています。それにもかかわらず対象は、SCP-3147-JPが7kg以上の重量があるように振る舞い、特に休暇初日は持ち上げることがさえ非常に困難です。
休暇中、対象は手続きや支払い、その他両手を使用する必要のある行為を除きSCP-3147-JPを手放すことはありません。また、対象は休暇の多くを観光や食事に費やし、結果としてほとんどの所持金を消費します。日数が経過するごとにSCP-3147-JPの重量は徐々に軽くなっているように見受けられ、SCP-3147-JP-158の対象であった10歳女性でも片手で持ち上げられる程になります。休暇最終日の午後7時以降、対象が宿泊先の客室や自宅など未観測状況下に入った時点で消息を絶ち音信不通となります。
SCP-3147-JPは最終的に、消息を絶った地点から最も近い河川の近傍にて、対象が内部で死亡している状態で発見されます。死因は全ての事例で非異常性の病死で、その多くは心筋梗塞です。対象の体格によっては四肢や頸部が異常な方向へ屈曲していますが、いずれの事例でも対象は苦痛の表情を示していません。また、内部からは対象の死体以外に以下の物品が発見されています。対象の衣服、その他所持品は発見されていません。
- 経帷子: 衿を左前にあわせた状態で着用しています。
- 白足袋: 左右を逆にした状態で着用しています。
- 脚絆・手甲: 紐を縦結びにした状態で着用しています。
- 草鞋・数珠・杖・頭陀袋・天冠・編み笠: SCP-3147-JP内部の隙間を埋めるように入れられています。頭陀袋の内部には六文銭が入れられており、天冠は編み笠に結び付けられています。
SCP-3147-JPの起源について詳しく調査したところ、1972年の12月に同様の状況で死体が発見され、未解決事件として処理されていたことが判明しており、これは日本の企業がアメリカの企業と共同でキャリーケースを開発、販売を開始した時期と一致します。また、それ以前に用いられていた旅行鞄からも同様の死体が発見された事例が確認されたため、現在も調査が続けられています。
追記: SCP-3147-JP-473を回収後、芦名研究員の葬儀を担当した葬祭部門職員より、仏教において故人が来世までの四十九日間の旅を無事に終えることができることを願って納棺前に施す"旅支度"に関連している可能性が示唆されていますが、実際の関連性は不明です。また、発見された物品はいずれも数日間使用したように摩耗、皴がついている状態で発見されている点、対象の推定死亡日時はSCP-3147-JPが対象の近傍に出現した日である点の2点は特筆に値します。
補遺: 現在まで、7日経過する前にSCP-3147-JPの対象が死亡する事例は39件報告されており、その内訳は事故が21件、事件が18件です。全ての事例で対象は死亡する直前までSCP-3147-JPを抱きかかえる、チャックを開けようと試みる、念仏を唱えるなどの行動を示しており、そして死亡と同時にSCP-3147-JPが消失しています。死亡前の行動から、対象はSCP-3147-JPの存在意義について理解している可能性が考えられますが、推測の域は出ていません。









