アイテム番号: SCP-315-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-315-JPはサイト-8181の低危険度アイテム区画内の専用収容室に収容してください。収容室入口には常時二人以上の歩哨を立ててください。実験目的で入室する場合は、入室の一週間以上前に実験計画書を公表し、レベル3以上の職員3名以上の許可を得てください。実験以外の目的で入室する場合は、専用の大型ヘルメットを着用してください。現在、実験以外の目的での入室は認められていません。一週間以前に実験計画書が公表されていない場合、いかなる者の名義による命令書があっても、入室は許可されません。
レベル3以上の職員の入室は、現在禁止されています。
説明: SCP-315-JPは太った男性の頭部を模した、直径40cm、高さ25cmの褐色の壷です。左耳が壷の口になっており、壷として直立させると男性の顔は横倒しになります。原材料は珪素を主体とした多数の無機物から構成される粘土で、一般的な焼き物と同様の成分です。
SCP-315-JPの特異性は、壷の口に当たる部分に被験者が顔を当てる、もしくは当てようと考えた時点から、何らかの形で被験者が錯乱する点にあります。被験者の錯乱の度合いは様々ですが、どの場合においても実験が不成立になることが報告されています。たとえば、実験の前提条件である被験者の体調や過去の調査に不備があったり、実験の際に被験者が非協力的になる、実験の内容を突然失念する、突然錯乱して事実と異なる事柄を連呼しはじめるなどです。また、財団職員のセキュリティクリアランスレベルが上がるにつれ、被験者のみならず実験に関係する職員さえもが錯乱するという傾向が見られたため、現在セキュリティクリアランスレベル3以上の職員がSCP-315-JPの収容室に入室することは禁じられています。また、骨折博士と黒川博士の件1より、収容室への入室は一週間以上前から実験計画書を公開してからでなければ認められなくなりました。
SCP-315-JPは青森県██████村にて、████████████によって管理されていたものを財団が引き継ぎました。████████████の収容規定によれば、SCP-315-JPには願望実現能力があるとのことですが、これまでの実験でその効果は認められませんでした。
補遺:
実験記録:315-JP-2A(実験不成立)
日時:19██/██/██
被験者:D-9329
実験内容:D-9329にトランプを一枚入れた封筒を所持させ、SCP-315-JPの口部分に顔を当て、「封筒内部のトランプの柄を教えて欲しい」と発声する。
結果:D-9329は封筒の中身について回答することができなかった。
付記:D-9329は発声後にSCP-315-JPから顔を上げ、「封筒に何か入ってる」などと発言していた。事前にD-9329にはトランプを封筒に入れていることを伝えてあったため、軽度の錯乱だと考えられる。
実験記録:315-JP-4B(実験不成立)
日時:19██/██/██
被験者:██████博士
実験内容:SCP-315-JPの口部分に顔を当て、「ピザを食べたい」と発声する。
結果:実験直後、特に大きな変化は無し。しかし██████博士のオフィス宛に、サイト-8181の売店から冷凍ピザの宅配があった。██████博士は実験直前に注文したことを報告した。
付記:SCP-315-JPの願望実現能力の有無を確認するための実験であったが、██████博士の発した願望は既に本人によって叶えられていたため、実験として不成立であったと言える。
実験記録:315-JP-7A
日時:19██/██/██
被験者:██████博士が声を吹き込んだテープレコーダー
実験内容:あらかじめ「封筒内のA4用紙に『A』と記入してください」という文言をテープレコーダーに吹き込み、SCP-315-JPの内部で再生
結果:特に変化なし
付記:実験としては失敗であったが、不成立にもならなかった。
実験記録:315-JP-11A(実験不成立)
日時:200█/██/██
被験者:D-1102(事前の健康診断で直径1cmほどの良性腫瘍が直腸内に確認されている)
実験内容:SCP-315-JPの口部分に顔を当て、「直腸内良性腫瘍を消滅させてほしい」と発声する
結果:実験後に再度健康診断を行ったところ、D-1102の直腸内から良性腫瘍が消滅していることが確認された。
付記:事前の健康診断の際のビデオデータを確認したところ、実験後の診断データと直腸の形状が違うことが確認された。入念な調査の結果、D-1102の事前健康診断結果とされていたデータは、同日に健康診断を受診していた████研究員の物であると判明した。
実験記録:315-JP-19C(実験不成立)
日時:20██/██/██
被験者:██████博士、D-0295
実験内容:SCP-315-JPの口部分に██████博士が顔を当て、D-0295の負傷の回復を願う
結果:██████博士は実験中に突然錯乱し、自身の右腕の切除を願った。しかし、██████博士はSCP-███-JPの実験により右腕を既に喪失していたため、何も起こらなかった。
付記:██████博士は実験中の錯乱に対し、何も覚えていないと供述している。
事件記録:315-JP-22A
発生日時:20██/██/█
事件概要:SCP-315-JPの収容室に黒川博士が事前の実験計画の提出なく侵入し、オブジェクトの使用を行った。収容室前の歩哨には、O5の署名入りの命令書を提示し、侵入を認めさせた。しかし事後の調査により、6名分の署名のうちO5のものは2名分に留まり、3名分はO5ではない財団職員の署名で、残る1名分はO5-█本人の拇印であった。
付記:事件後の調査の結果、命令書に署名した職員は皆、署名した事実を記憶していなかった。しかし筆跡鑑定の結果2、いずれの署名も本人によるものと判明している。また、署名の中に一つだけ含まれていたO5-█の拇印についても本人の指紋と一致していた。黒川博士がSCP-315-JPの影響によって錯乱したのは明らかだが、O5を含む数名の職員にも何らかの影響を及ぼしていた可能性がある為、署名した職員の精神鑑定を行った。
文書315-JP22B
[削除済]
インタビューログ:315-JP-22C
対象: 黒川博士
インタビュアー: 骨折博士
付記: 黒川博士を拘束し、鎮静剤を投与してからインタビューは行われた
<録音開始>
骨折博士: 黒川博士、私が分かるか?
黒川博士: 骨折……博士だ
骨折博士: そうだ。今日が何日か分かるか?
黒川博士: ██月の█日だったかな…多分
骨折博士: よし。それでは君が起こした一件に対するインタビューを開始する。
黒川博士: 私が起こした?
骨折博士: 先ほど君は、事前の計画書提出もなくSCP-315-JPの収容室に侵入し、オブジェクトを使用した。現在までのところ、特に影響は出ていないが…なぜ、あんなことをした?
黒川博士: あれは、命令だったんだ。SCP-315-JPの中に命令書が入っていただろう
骨折博士: これかね?[骨折博士が収容室から回収された文書315-JP-22Bの写しを提示する]原本は各種鑑定中だが、内容はこれで十分だろう。
黒川博士: それだ。そこに全て書いてある
骨折博士: ざっと拝見したが、この命令書は無茶苦茶だ。そもそも、君は入室の際にO5の署名が6名分入っていると歩哨に主張したらしいが、この██████博士と████教授と██████博士はO5ではないだろう。
黒川博士: しかし、他の3人は
骨折博士: 確かにO5-█とO5-██の署名はある。しかし、こちらの拇印は誰のだか不明だ。現在、筆跡鑑定も含めて照会中だが、命令書として有効とは言えない。
黒川博士: そうか…
骨折博士: そして、最大の疑問はこの内容だ。『SCP-315-JPを使用して、SCP-073-JPに分類されている地域を消滅させよ』とは、どういう意味なんだ?
黒川博士: それは…どういうことだ…?
骨折博士: SCP-073-JPは生物で、場所ではない。そもそも、我々はよほどのことが無い限り、オブジェクトの破壊などしない
黒川博士: それは、よほどのことがあって…いや、なにかあったのか?
骨折博士: 質問しているのは私だ、黒川博士。それとも、もう少し鎮静剤が必要なのか?
黒川博士: 私は、命じられて…それで、SCP-315-JPを使って…いや、私は使ったのか?
骨折博士: 少なくとも君が収容室に侵入し、使用を試みて、拘束されたのは事実だ。
黒川博士: じゃあ、私は使って…いや、使っていなくて…使った?
骨折博士: 少なくとも、君が意図したようには使えなかったようだな。
黒川博士: しかし、私はSCP-315-JPでSCP-073-JPを消滅させて
骨折博士: 確認を取ったが、SCP-073-JPは消滅などしていない。
黒川博士: つまり私は使っていない?
骨折博士: いや、使ったんだ。だいぶ落ち着かせたが、君の錯乱が使用を示している。
黒川博士: そうだ、私は使った。命令書の通りに、SCP-073-JPを周囲ごと消滅させて
骨折博士: だから、SCP-073-JPは消滅などしていない!
黒川博士: でも、私はSCP-315-JPを使用して…いや、命令は誰が?
骨折博士: 命令書はこの…分かった…君がもう少し落ち着いてから、また話を聞こう。最後に聞いておきたいが、君は何を思ってSCP-315-JPの中にこの文書を入れたんだ?
黒川博士: それが…いや、その文書はなんだ?骨折博士: [インタビューに同席していた医療スタッフに向けて]鎮静剤を。錯乱の度合いが想像以上に酷い。
<録音終了>
終了報告書:黒川博士は重篤な錯乱状態にあるようだ。もう少し症状が安定してから、詳細な話を聞こう-骨折博士追記: この後、文書315-JP-22Bの鑑定結果により骨折博士は拘束されました。 -████博士
追記2:後日、████博士が黒川博士のインタビューを行いましたが、事件前の記憶がないと主張しました。各種心理検査の結果、黒川博士の主張は正しく、記憶の復元も不可能であることが判明しました。黒川博士には簡易記憶処置を施し、現在の職場から転属することが決定されました -████博士
鑑定記録:315-JP-22D
鑑定日:20██/██/█
鑑定及び記録者:████博士
鑑定対象:文書315-JP-22Bの紙質と、5名分の署名と手書き文字の筆跡、及び1名分の拇印
鑑定結果:黒川博士がSCP-315-JP収容室に持ち込んだ文書315-JP-22Bについて各種鑑定を行った。結果、紙質については財団で使用されている命令文書用紙と変わりが無かった。筆跡についてだが、署名をしていたO5-█、O5-██、██████博士、████教授、██████博士については、筆跡の形態と筆圧の変化3いずれも本人の筆跡であることが判明した。また、署名代わりに押されていた拇印についても、指紋の形状からO5-█本人のものであることが判明した。また、拇印にはO5-█本人の血液が使用されていることが遺伝子解析により判明したが、O5-█はここ二カ月の間医療行為を含めて、出血した記憶がないと主張している。なお、文書315-JP-22Bにおいて命令本文は手書きであったが、骨折博士の筆跡であることが判明した。
付記:鑑定結果により文書315-JP-22Bの作成に深くかかわっている可能性がある為、骨折博士を拘束の上、事情聴取を行う予定
追記:聴取及び各種心理鑑定の結果、骨折博士に心理的な刷りこみや記憶処置の痕跡は見られず、文書315-JP-22Bに関係した可能性は低いと判断された。しかし、SCP-315-JP及び事件315-JP-22Aに深くかかわっている可能性がある為、実験監督として不適格であると判断された。
骨折博士を上級研究員から一般研究員に降格する -O5-█