アイテム番号: SCP-3150-JP
オブジェクトクラス: Keter-Prodest1
特別収容プロトコル: SCP-3150-JPの作成方法が複数の要注意人物に流出しており、高脅威度のSCP-3150-JP-Aの出現が懸念されます。SCP-3150-JP拡散の収束のため、関与する人物や団体の調査および襲撃が機動部隊ば-13("瑪瑙の眩惑")によって行われています。SCP-3150-JP-OおよびSCP-3150-JP-Aの収容方法は現在研究部隊と倫理委員会により検討中です。
説明: SCP-3150-JPは老婆の外見をとる口碑実体2 (以降、SCP-3150-JP-A) を無力化する薬剤です。SCP-3150-JPの生産には呪術的プロセスが必要ですが、再現性があり超常的工業生産が可能です。必要な原料および製造方法は別紙を参照ください。
SCP-3150-JPを体内に導入されたSCP-3150-JP-A (以降、SCP-3150-JP-O) はオブジェクトが有していた異常性を喪失します。例として、兵庫県で確保されたSCP-3150-JP-A-2は道路上を最高速度約100 km/hで走行する異常性を有していましたが、SCP-3150-JPの使用により走行が不可能となりました。SCP-3150-JP-Oは元のSCP-3150-JP-Aの種類を問わず一般的な80代のヒトと同等の身体機能となっており、総じて運動機能、認知機能、発話機能など変化前に比べ大きく低下します。変化直後においては重篤な急性期疾患の徴候は認めませんが、誤嚥性肺炎や骨粗鬆症に伴う病的骨折などの非特異的な疾患のリスクに晒されます。その平均余命はおよそ5年です。
SCP-3150-JP-Oは特定の条件下に置くことにより異常性を再度獲得し、SCP-3150-JP-Aへと変化する「分化」を行います。分化により発現する異常性はSCP-3150-JPを適用する前と同一の異常性に限定されず、別の異常性を獲得することも可能です。この分化可能性を除けばSCP-3150-JP-Oの高齢ヒト女性との差異は現状確認されていません。
以下はこれまで確認されているSCP-3150-JP-Aの実例、および各種口碑実体への分化条件です。口碑実体の呼称は一般的なものを使用しています。
SCP-3150-JP-A-1
呼称: 山姥
特徴: 山に住み人間を襲う老婆。年老いた女性が変化したという説もある。
分化条件: 山中の人がいない小屋にて、出刃包丁と共に3日間放置。
SCP-3150-JP-A-2
呼称: ターボババア
特徴: 自動車を抜き去るほどの速度で高速道路を走行する老婆。
分化条件: 時速300 km以上で移動させる。
SCP-3150-JP-A-3
呼称: 砂かけババア
特徴: 人に対して砂を振りかける老婆。
分化条件: 40 ℃以上の環境下で砂を100 g飲ませる。
SCP-3150-JP-A-4
呼称: 小豆ババア
特徴: 小豆を研ぐ老婆。
分化条件: 40 ℃以上の環境下で小豆を100 g飲ませる。
SCP-3150-JP-A-5
呼称: 紫ババア
特徴: 学校のトイレに現れる全身紫色をした老婆。「ムラサキ」と3回唱えると撃退できるとされる。
分化条件: 現在未発見。
SCP-3150-JP-A-6
呼称: 3時ババア
特徴: 3時に学校のトイレに現れる老婆。
分化条件: 学校のトイレに3時に存在することが必要条件であることは確認されているが、明確な条件は現状発見できていない。
SCP-3150-JP-A-7
呼称: 棺桶ババア
特徴: 自動車と併走し、運転手を引きずり出して担いでいた棺桶に入れてさらう老婆。SCP-3150-JP-2 (ターボババアとの類似性が指摘されている)
分化条件: 棺桶の中に入れた状態で、時速300 km以上で移動させる。使用した棺桶を担ぐようになる。
SCP-3150-JPはPoI-8079によって開発されました。PoI-8079はかつて高齢者介護施設『しんかの里』の経営者であり、施設経営の傍らSCP-3150-JPの開発を行っていたと証言しています。『しんかの里』は身元不明の女性の入所者数が異様に多いとして財団に注意対象とされていましたが、2026年11月21日『しんかの里』で発砲事件が発生しました。この事件でPoI-8079は下半身不随の重症を負いましたが、犯人は逃走し依然捕まっていません。発砲事件を受けてPoI-8079は財団へ接触し、自身の安全の保障と引き換えにSCP-3150-JPの情報提供と財団の協力を申し出ました。
インタビュー記録
2026/12/22
対象: PoI-8079
インタビュアー: 井上博士 (SCP-3150-JP担当研究員)
付記: 本インタビューはSCP-3150-JP-A-5 (紫ババア) の無力化実験に際して行われた。対象およびインタビュアーがいる控え室とガラスで隔てられた実験室にはSCP-3150-JP-A-5が拘束されている。SCP-3150-JP-A-5はPoI-8079が確保していた。
[記録開始]
井上博士: 本件担当します井上です。本日はよろしくお願いいたします。
PoI-8079: ええ、これからは協力関係になるわけですからね。何卒よろしくお願いいたしますよ。
井上博士: 製法を提供いただきました薬剤につきまして、我々の組織ではSCP-3150-JPと呼称することとなりました。既にご協力の下SCP-3150-JPを作成しておりますが、これより実施する紫ババアの無力化実験にもお付き合いください。
PoI-8079: 財団内ではこれが初めての使用でしたかな。まあ問題なく終わるでしょう。
井上博士: それでは実験を開始します。
(研究員が実験室に入室する。SCP-3150-JPが封入された注射器を所持している)
SCP-3150-JP-A-5: おいそこの貴様。はようこの枷を外せぇ。小童が生意気じゃ。
研究員: あなたの名前を教えて下さい。
SCP-3150-JP-A-5: 儂は紫ババアじゃぞ。こんなことをしてただで済むと思うてか。貴様の体を切り裂いてやるぞ。肝臓を奪ってやるぞ。
井上博士: 無視してかまいません。SCP-3150-JPの注入を実施してください。
(研究員はSCP-3150-JP-A-5の首に注射器を刺しSCP-3150-JPを注入する。暴れていたSCP-3150-JP-A-5は次第に大人しくなる)
PoI-8079: 体の紫色が薄れてますね。
(SCP-3150-JP-A-5は完全に鎮静化し、SCP-3150-JP-Oとなった)
研究員: あなたの名前を教えて下さい。
SCP-3150-JP-O: はい?
研究員: (大声で) 名前を教えて下さい。
SCP-3150-JP-O: んあ、名前はトメ。あれ、りゅうちゃんじゃない。ゆきこは元気?
研究員: 私の名前に"りゅう"は入っていませんが。
井上博士: ともかく、無力化は成功したようですね。
(井上博士は研究員に実験終了と後処理の指示を出す。)
井上博士: さて、ありがとうございました。それではもう少しSCP-3150-JPに関してお話を伺いたいのですがよろしいでしょうか。
PoI-8079: ええ。なんなりと。
井上博士: ではまずSCP-3150-JPを発明するに至った目的はなんなのでしょうか。
PoI-8079: まあ端的に言えば金儲けです。
井上博士: シンプルな回答ですね。
PoI-8079: 元々色んな妖怪のババアを仕入れては売っていたんですがね、やっぱりレアなババアの方が売れますから。どうにか生み出せないかと模索する中で作り出したのがあの薬剤です。
井上博士: ちょっと待ってくださいババアを売る、と言うのは砂かけババアなどといった妖怪を欲しがる人がいるということですか?
PoI-8079: そうです。結構いるんですよ、妖怪の蒐集家というやつは。私のような業者も数多くいてしのぎを削っています。後はあれですね、ターボババアとかは動力に使えるので需要は高いです。最近はなんでもSDGsですからね。CO2排出がないエネルギー源は注目されますよ。
井上博士: えっと、そんなにいっぱいいるものなんですか?ババアというものは。
PoI-8079: 山姥なんかは野生でよく見つかりますね。あとあまり価値はないですが私は研究の素体に三時ババアをよく捕まえに行っていました。一日一人ですが出現条件が確立していますから捕まえやすいです。聞いた話では後天的にヒトをババアに変化させる技術もあるそうですよ。最近では市場が海外にも拡大していて、アメリカにババア牧場、いやグランドマザー牧場があるそうな。異常存在を製造、拡販しているわけですからいやはや貴方がたにとっては面白くないでしょうな。
井上博士: はい。今仕事が増えることが確定しました。
PoI-8079: そういったわけで、安いババアからレアババアを産み出せばかなり儲かる。そうやって開発されたのがあの薬剤です。特殊な因子を導入することによって未分化な状態に戻ったババアはいわばババアのヒナ。理論上はあらゆるババアへと成長することができるわけです。
井上博士: ヒナといっても若い女性の姿になるわけではないんですね。
PoI-8079: そりゃあそうです。ババア系妖怪と雪女などの女系妖怪とは系統が違います。ババアは生まれたころからババアですよ。
井上博士: その女系妖怪にもSCP-3150-JPのような手法は存在するのでしょうか。
PoI-8079: 可能性としてはあるでしょうな。けど私はババア専ですからそちらには手を伸ばしている余裕はありませんでしたね。まだ分化のコントロールをしてレアババアを作る方法も確立しておりませんし。
井上博士: その研究というのはお一人でされていたんですか?
PoI-8079: 理論の発見までは私一人でやっていたのですが、その後の実用化や分化手法の探求などは流石に人手が足りなくなりまして同業者と組むことになりました。
井上博士: なるほど、ということはある程度SCP-3150-JPの存在は広まっていたのでしょうか。襲撃はそれを嗅ぎつけた競合が技術を奪うため?
PoI-8079: 私もそう思いました。ですが実のところ襲撃犯は共同研究をしていた者たちだったのですよ。
井上博士: なんと。権利や儲けを独占したかったのでしょうか。
PoI-8079: とんだ裏切りですよ。しかもどうやら懇意にしてた顧客も絡んでるらしく、もう最悪です。許せません。今研究中の内容も全部持ってかれてしまいましたし、こんなことなりゃ特許でも出願しておけばよかった。
井上博士: それにだいぶひどいケガをなされたようですね。
PoI-8079: 全くです。介護施設を経営してましたがまさか自分が介護される方になるとは。もう研究なんてどうでもいいです。あいつらを痛い目に合わせないと気がすみません。
井上博士: お気持ちお察ししますが、できれば私情はなるべく抑えて頂けると助かります。ところでここまでのインタビューの内容をまとめたいのですが、妖怪を生産・流通している者たちが多数いる、SCP-3150-JPの製造方法は同業者に既に流出している、ということで良かったでしょうか。
PoI-8079: そうなりますね。ババアたちの確保に向けた情報整理ですか?それなら急いだほうが良いですよ。もう私の研究成果が盗まれてから一カ月が経つ。
井上博士: それはどういう。
PoI-8079: 繰り返しになりますが理論上未分化なババアはあらゆるババアへと成長させることができます。研究が進めばターボババアの上位種であるジェットババア、いやそれどころか伝説の光速ババアへと成長させる方法を見出すやも。いやはやそうなれば世間からの隠匿は困難でしょうなぁ。
井上博士: それは──面倒なことをしてくれましたね。
PoI-8079: でも安心してください。私はババアに携わる奴らの情報を持っています。拠点もいくつか分かりますので、財団の力で襲撃すれば他の業者の情報も手に入るでしょう。さあ、正常性保護のため、異常を拡散する裏切り者たちに鉄槌を下そうではありませんか!
井上博士: えっと、元々あなたが開発した技術でしたよね?
[記録終了]
更新1: PoI-8079からの情報をもとに、SCP-3150-JPの研究拠点やSCP-3150-JP-Aの生産拠点への襲撃を行っています。これまで12の拠点を襲撃し、SCP-3150-JP-Oを計35体、SCP-3150-JP-Aを計103体確保しました。SCP-3150-JP-Aは収容難易度削減のため、収容に非協力的なSCP-3150-JP-Aに優先してSCP-3150-JPを適用しSCP-3150-JP-Oへと変化させて収容を実施しています。
更新2: 500体を超えるSCP-3150-JP-OおよびSCP-3150-JP-Aの確保により、SCP-3150-JP-Oの収容コストが増大しています。SCP-3150-JP-Oの多くは要介護4以上に相当する状態であり、今後の更なる増加から介護人員の不足および収容室の空間的問題が予期されています。
今後のSCP-3150-JP-OおよびSCP-3150-JP-Aの増加リスクを低減するための収容方法について、倫理委員会内で検討が実施されました。
提案1
余剰となったSCP-3150-JP-Oを終了する。
状態: 却下
理由: SCP-3150-JP-Oは異常性の無いヒトと同等であり、実質的に一般人の殺人を行うことと等しいため倫理的に問題である。
提案2
SCP-3150-JP-OをDクラス職員として雇用する。
状態: 却下
理由: 運動機能等に問題があるため適切ではない。
提案3
SCP-3150-JP-AにはSCP-3150-JPを適用せず終了する。
状態: 却下
理由: SCP-3150-JP-Oへと変化が可能な以上、倫理的な問題が解消したわけではない。
提案4
民間の高齢者介護施設を買収して財団フロント企業の管理下に置き、民間施設でSCP-3150-JP-Oを保護する。
状態: 一時承認
理由: SCP-3150-JP-Oの分化条件が明確でない以上外部機関へ委託するのは不安が残るが、現状の収容施設内で予期せぬ分化は発生していない。暫定的な措置として許可する。
更新4: 上記提案4に基づきSCP-3150-JP-Oの高齢者介護施設への入居を進めていますが、一般人の入居者および希望者が既に多数存在することから、SCP-3150-JP-Oを保護する収容室の確保が想定より難航しています。
この事態を受け、倫理委員会所属でありSCP-3150-JP-O収容補助を実施している福田博士により新規に収容方法が提案されました。
提案5
プロジェクト "Null Highway Home"の実施。
状態: 承認
プロジェクト
"Null Highway Home"
概要: 本プロジェクトは過剰のSCP-3150-JP-Oの収容およびSCP-3150-JP-Aの活用を目的とします。プロジェクトには異次元高速道路「虚区高速3」を利用します。
虚区高速内でのSCP-3150-JP-Oの収容を実施することにより収容室の空間的問題を、SCP-3150-JP-Aの協力により介護に必要な人的コストの削減に成功しました。現在虚区高速内では平均150体のSCP-3150-JP-A-7が周回走行をしており収容を継続しています。









