アイテム番号: SCP-3163-JP
オブジェクトクラス: Keter Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-3163-JPは現在無力化されたと考えられています。月に一度、担当のフィールドエージェントはその付近に変化があるか確認し、カバーストーリー「資材置き場」を流布してください。
説明: SCP-3163-JPは北海道札幌市北区に位置する████公園周辺で発生する異常現象です。公園内に13歳以下の児童が複数名存在し、公園の中心部から約10m地点にて観測される児童の声量が約70dbを超えるとSCP-3163-JPが発生します。発生する異常現象は以下の通りです。
・近隣の住宅の窓が開き、声量や遊び方について児童を叱責する罵声が発される。その声質の種類はさまざまだが、そのほとんどは40代から60代の男女のものだと推測される。
・先述の声で、児童の声量や遊び方を問題視し、これを解決するよう110番通報が入る。
・近隣の札幌市立████小学校にも、同様の電話がかかる。
████公園の13歳以下の利用者数はSCP-3163-JPの影響が原因だと考えられる小学校・警察などの指導によってSCP-3163-JP発見時から著しく減少しています。
インタビュー記録3163-JP
対象: 三浦博士
インタビュアー: 近藤博士
付記: 三浦博士は幼少期、習慣的に████公園で遊んでいました。
<録音開始>
インタビュアー: でははじめます。あなたが████公園で遊んでいた時、SCP-3163-JPを実際に経験したことがありますか。
三浦博士: 僕が遊んでいた1980年代後半にはそんなことは見たことも聞いたこともありません。
インタビュアー: あの公園はあなたや周りの人にとってどのようなものでしたか。三浦博士: あの公園はみんなにとって、ここ一帯のシンボルのようなものでした。放課後は学校中の人がここに集まって、遊具で遊んだり、かたきをしたり、雪合戦なんかもしました。
インタビュアー: その公園は昔は自由に遊べたのですね。最近その公園を訪れたことはありますか。
三浦博士: 2014年だったかな。久しぶりに実家へ帰った時、ちょっと気になって寄ってみました。その時はボール遊び禁止とか、うるさくしないとかそういったルールが書いてあった看板がありました。
インタビュアー: 当時はそう言った遊びを自由にできたのですね。
三浦博士: はい、当時はボール遊びは普通にできましたよ。ですからそういった、子供が気ままに遊べる場所が最近減ってきているのはとても悲しいです。特にその公園は僕にとっては少年時代の思い出の場所でしたので。
インタビュアー: ご存知かと思いますが、現在、公園廃止交渉が進んでいます。それについてどうお考えですか。
三浦博士: ︎その公園がなくなるのは、子どもたちにとって大きなショックになるとおもいます。しかしそれが財団の役目なので、少し悲しいですが受け入れなければならないと感じています。それが大人というものです。
[以下、省略]
<録音終了>
補遺1: ︎︎████公園廃止案が公示され、それに対し████小学校の生徒十数名が████公園を守る会を結成し、それを中心に約200名が公園廃止に抗議する署名を区に提出しました。以下がその内容です。
私たちは████小学校の生徒です。████公園は私たちにとって大切な遊び場でもあり、交流する場でもあります。以下のことを約束いたしますので、どうか廃止だけはしないでください。
・近隣の住民を考え、マナーを守って遊ぶ。
・ボール遊びなど、公園の規則で禁止されていることは絶対にしない████公園を守る会 代表 ████小 6年 ████
これを受け、████公園を守る会の代表である████氏と公園を管理している北区土木センター、財団の間で会議が行われました。
録音記録3163-JP.1
第一回████公園会議
1.日時:20██年6月5日午前10時2.出席者
︎・████公園を守る会 代表 ████氏(████小6年)
・北区土木センター ████氏
・SCP財団3163-JP責任者 山田博士
(ここでは近隣住民代表として出席している)3.議長 北区土木センター ████氏
4.議題 ████公園を廃止すべきか
5.補足 報告書に記載するにあたって、████公園を守る会、代表████氏は以下の記録ではA、北区土木センター████氏はBと表記します。
<録音開始>
議長: ではこれより、████公園廃止についての会議を行います。ではまずAさん、意見をお願いします。
A: はい。私たち████公園を守る会の意見としては、公園の廃止はやり過ぎなのではないでしょうか。先日区に提出した署名にも記載している通り、これまで以上にマナーを守って公園を利用します。
議長: では、これに何か意見がある人はいますか。
[Bが挙手]
議長: では、Bさん。意見をどうぞ。
B: 区としては、████公園の騒音は大きな問題だと感じています。しかし、廃止は流石にやり過ぎではと言う点ではあなた方と同じです。これがずっと続くなら話は別ですが。
山田博士: はい、私もあなた方と同じように廃止は軽率な考えだと感じています。残念ながら近隣住民の話を聞く限り、その公園の評判はあまり良くありません。このまま解決しないのであれば、廃止は仕方ないのではと考えます。
議長: これに何か意見のある人はいますか。
A: 山田さん。このままでは廃止を免れることはできません。しかし、「このままでは」です。私たちは変われます。この公園を守るためならばなんだってします。
議長: では山田さん、これに何か意見はないですか。
山田博士: 私たち近隣住民としては、70db以下。まあ大体電話のベルぐらいの音ですね。それ以下の声量で遊ぶのならば、私は廃止に反対します。
B: すいません、意見があるのですがよろしいですか。
議長: Bさん、どうぞ。
B: 70db以下で遊ぶと言うのは非現実的ではないのでしょうか。7、8歳の子供にとってあまりにも難しすぎます。
A: いいえ、Bさん。私たちはできます。絶対に。公園を守るためならなんだってします。70dbなんてへっちゃらです。みんなと力を合わせれば実現できます。
[B、5秒間沈黙]
B: わかりました。信じましょう。ただし月の我々や警察への████公園騒音問題に関する相談回数が7回を超えたら、区としては廃止に動いていくつもりです。
議長: 他に何か意見のある方はいますか。
山田博士: 意見というか、アドバイスなんですけども、公園を守るためにも、まずはあなたたちのイメージアップが大切です。先ほど申した通り、近隣住民の評判はあまり良くありません。地域のゴミ拾い活動や、町内会の活動などに積極的に参加した方が良いかと。
A: ありがとうございます。山田さん。私たちはみんなの公園を守るために全力で頑張ります。
議長: では、他に意見のある方はいますか。
[3秒の沈黙]
議長: では以上で会議を終わります。皆さんお疲れ様でした。
<録音終了>
その後、████公園の廃止は保留され、またSCP-3163-JP発生回数も大幅に減少しました。
更新[20██-10-01]: 九月のSCP-3163-JP発生回数が9回に急激に増化しました。調査によるとSCP-3163-JP発生の条件が70dbから60dbに減少しており、財団3163-JP収容プロジェクトメンバー内での会議の結果、児童が60db以内の音量で遊ぶことは不可能だとの結論が出ました。これを受け、財団、北区土木センター、████公園を守る会の間で第二回████公園会議が行われました。以下が録音記録です。
録音記録3163-JP.2
第二回████公園会議
1.日時:20██年10月2日午前10時
2.出席者
︎・████公園を守る会 代表 ████氏(████小6年)
・北区土木センター ████氏
・SCP財団3163-JP責任者 山田博士
(ここでは近隣住民代表として出席している)3.議長 北区土木センター ████氏
4.議題 ████公園を廃止すべきか
5.補足 録音記録3163-JP.1と同様、報告書に記載するにあたって、████公園を守る会、代表████氏は以下の記録ではA、北区土木センター████氏はBと表記します。
<録音開始>
議長: ではこれより第二回████公園廃止についての会議を行います。意見のある方はいますか。
B: はい、九月の████公園騒音問題相談数が9回を超えました。一時は改善が見られましたが、これでは少し厳しいと考えます。Aさん方の努力もあり、事態は解決に動き始めていましたが、相談回数が急増しました。これでは公園が公園でなくなってしまう。ですから私たち区は████公園を廃止する方向で進めています。
A: 待ってください。そのような結果になったのは私たちが悪いです。ごめんなさい、本当にすみません。しかし、私たちは最善を尽くしました。なぜ、なぜ、どうして。
[Aは俯き、沈黙する]
山田博士: 我々近隣住民の間でも、████公園騒音問題の話題は再び出てきています。Aさん方には申し訳ないですが、公園廃止に私は賛成です。Aさん、あなたはやれることはしっかりやったと思います。ただ、一部の自分勝手な大人がいるためにこのようなことになってしまいました。
[3秒の沈黙]
A: 他人事だからそんなこと言えるんですよね。
[Aの声が震え始める]
A: 大人だから、公園なんて別にどうでもいいと思ってるんですよね。ですが、私たちにとって、あの公園は憩いの場であり、交友の場でもありそして何よりみんなの思い出が詰まってるんです。それなの
[議長が止める]
議長: 落ち着いてください、Aさん。
A: なんでその人たちの意見だけを聞くんですか。なんで私たちの声はあなたに届かないんですか。教えてください。
[Aの呼吸が荒くなる]
山田博士: Aさん。本当に申し訳ありませんが、廃止はもう避けられないようなものなのです。大人の都合と言いますか、なんといいますか。
B: その通りです。あなたたちだけが悪いというわけではありません。
[Aは4秒俯き、その後深呼吸をする]
A: ようやく分かりました。皆さん。これが大人になると言うことなんですね。結局、私たちは自分のエゴを押し付けているだけで、近隣住民のことを考えていなかった。もうそういったわがままで、子供じみたことは卒業します。
議長: あなたの気持ちは分かります。Aさん。でも我々にはこうすることしかできないんです。期待に添えなくて、本当に申し訳ない。
A: 大丈夫です。(議長の名前)さん。仕方ないです。私たちが悪いのですから。
A: 近隣住民の快適な生活が守られて嬉しい限りです。では、これで失礼します。
[Aが会議室から退出する]
[Aの泣き声だと思われるもの。音量は小さくなっていき7秒後に完全に消失。]
[10秒の沈黙]
<録音終了>
補遺2: 20██年10月15日、札幌市北区との交渉の結果、████公園の廃止が決定、跡地は財団フロント企業が買収しました。以降半年間SCP-3163-JP発生が確認できなかったため、オブジェクトクラスはKeterからNeutralizedに変更されました。現状、SCP-3163-JPの転移などは確認されていません。
補遺3: ︎████公園廃止から2ヶ月後の定期調査にて、跡地に建てられている私有地であることを示す看板に、赤色で以下の文言の落書きがされていることを担当のフィールドエージェントが発見しました。
私たち大人の声を聞いてくれてありがとう









