アイテム番号: SCP-3167
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-3167の収容は、主にそれが侵入し、影響を及ぼした書籍の回収に重点を置いて行われます。被影響書籍の収容に加え、SCP-3167の影響を受けた人物は、SCP-3167の知覚歪曲効果が消失するまでの一定期間、記憶処理セラピーを施されます。
SCP-3167は現在収容下にありません。空想任務部隊アルファ-4 (“赤き後付け部隊Red Retcon Rangers”) が、最終的な収容または捕獲を目標とし、物語空間を通してSCP-3167を追跡する任務に従事しています。SCP-3167の最近の行動パターンは、ファンタジーのジャンルに特別な興味を示しています。そのため、財団のウェブクローラーが、物語の逸脱についての議論を検出するため、現代ファンタジー及びホラーシリーズに関する議論の監視に割り当てられています。また、当該オブジェクトとSCP-423、SCP-583及びSCP-3143との間の相互作用を防ぐことは、引き続き最優先事項です。
説明: SCP-3167は単一で共通の世界観または主人公を共有する物語群内に出現する空想科学実体に対する指定です。出現の対象となる物語には小説シリーズ、共通設定に基づく短編集、より巨大な神話体系に基づく作品群が含まれます。1SCP-3167は、物語の中で他の登場人物の意図とは無関係に行動しており、特定のキャラクターの殺害のみを目的とし、そのキャラクターを探しているようです。
SCP-3167の出現の様子は物語によって異なります。しかしながら、いずれの場合でも、「恐ろしく白い笑みを浮かべた異様に背の高い人物が武器を掲げ、殺しにかかる」というフレーズのバリエーションが現れることでその出現が知らされます。ここで指定される「武器」は最も多様な要素ですが、物語の設定に沿ったものです — 例えば、魔術的なアイテムはファンタジー作品でのみ使われ、レーザー光線はSF作品以外では珍しいものです。段落の間で、対象となるキャラクターがSCP-3167に襲われ、生々しく、しかし物語上論理的な方法で殺害されます。当該キャラクターが死亡すると、SCP-3167は物語から退場し、この出来事は「行為は完了した。その人物は最新の獲物を仕留め終え、そして自らの人生の新しいページをめくる」というフレーズによって知らされます。
SCP-3167が登場する物語を知覚した人物には、SCP-3167に殺害されたキャラクターが、時系列的に後の作品には全く登場しない ― つまり、死亡したキャラクターは前日譚には登場するが、後日譚には一切登場しないと誤認する知覚異常が持続的に発生します。SCP-3167の被影響者は、SCP-3167によって殺害されたキャラクターの死後も、作品の一部を知覚することができ、それが正統な物語とは全く異なるものであると主張します。しかしながら、被影響者は改変された作品をそのまま読むことはできません。この異常性は、曝露後24時間以内であれば、記憶処理薬の服用によって無効化することが可能です。
SCP-3167は侵入した物語の1つの実例にのみ影響を与えることができます。つまり、1冊の本に対してしか影響を与えることができませんが、その異常性は持続的なものです。現在、SCP-3167の影響を受けた書籍は5000冊以上あり、ほとんどが英語版です。
被影響物語の目録:
作品名: 『ユダの覚醒』 (The Judas Strain)
シリーズ: 『シグマフォース』 (Sigma Force) 第4部2
ジャンル: テクノスリラー
犠牲者: モンク・コッカリス
SCP-3167の出現: SCP-3167はエピローグにおいて、小説本編の出来事の後、シグマフォースの他の隊員からは死んだと思われていたモンクがSOSを送信するシーンに登場する。このSOSは、モンクがある人物について説明し始めることで中断される。「大きくて真っ白な笑顔を浮かべた、異様にノッポなやつだ。ユダの菌株 (the Judas Strain)3のバイアルを持ってて、こっちを殺そうとしてる」シグマフォースの隊員らが聞いたのはモンクの死に関してのみであり、この後SCP-3167が物語から退場したかどうかは不明である。
影響: モンクはそれ以降の『シグマフォース』シリーズの小説には再登場せず、このことは『シグマフォース』世界の現状に大きな影響を与えることになる。次の2作では他の隊員らが死亡し、『ギルドの系譜』の終盤に、シグマフォースはジェームズ・ガント大統領によって永久に解散させられる。これ以降の『シグマフォース』の作品は、影響を受けた読者によれば、ポストアポカリプス的なジャンルであり、敵対するチームの陰謀が主人公のチームの介入を受けず、成功裡に達成されてしまうことが日常的に描かれている。
作品名: 『旅の仲間』 (The Fellowship of the Ring)
シリーズ: 『指輪物語』 (The Lord of the Rings)
ジャンル: ハイファンタジー
犠牲者: 灰色のガンダルフ
SCP-3167の出現: SCP-3167はカザド=ドゥムの橋において、バルログに代わり「焔をまとった白き笑みを浮かべた、異様に背の高い者」として登場し、武器として炎の鞭を持っている。ガンダルフは本来の『旅の仲間』劇中でバルログを倒す際と同じ方法でSCP-3167を食い止めようとするが、鞭で真っ二つにされてしまう。ガンダルフは最期にサムワイズに言葉を囁く。「彼はルーシエンの瞳を持つ」
影響: ボロミアが『旅の仲間』の最後に死亡せず、続編『二つの塔』にて、弟であるファラミアと共に、フロドとサムワイズの仲間として再登場する。角笛城の合戦は敗北に終わり、サルマンがセオデンを支配したままとなる。メリーとピピンはアイゼンガルド攻撃の際に死亡することになり、特にピピンはサルマンを殺すために自らを犠牲にする。フロドはシェロブと遭遇したことで死亡し、サムワイズが指輪を破滅の山へ運ぶことになる。この冒険は最終的には成功に終わるが、『王の帰還』の最後には、仲間の中で生き残っているのは、サムワイズ、アラゴルン、レゴラスのみとなる。サムワイズは灰色港に行くよう誘われるが、彼はそれを断る。
作品名: 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』 (Harry Potter and the Goblet of Fire)
シリーズ: 『ハリー・ポッター』 (Harry Potter)
ジャンル: ファンタジー/ミステリー
犠牲者: ロン・ウィーズリー
SCP-3167の出現: SCP-3167は炎のゴブレットのセレモニーの最中に唐突に出現し、死の呪い「アバダ・ケダブラ」によってロンを殺害し、その後姿を消す。ロンは即死を免れ、体を引きずってハリーの元へ辿り着き、「彼は、君の誕生日を祝った者だと言っていた」と囁き、息を引き取る。
影響: 作品のそれ以降の部分は、三大魔法学校対抗試合 (トライウィザード・トーナメント) の中止、精神的に参ってしまったウィーズリー家の面々、ロンを追悼するハリーなど、混乱した状態で進行する。バーテミウス・クラウチは最終的に、ヴォルデモート卿を復活させるためにハリーを誘拐する。その過程でハリー自身も殺されるが、ヴォルデモートの魂の一部が自分の中に存在し、自分が死ぬことができないこと、そしてその逆も同様であることに気付く。ヴォルデモートとハリーは、自分が死ぬことなくお互いを殺すことを決意する。
『ハリー・ポッター』シリーズの最後の3作品は、SCP-3167の影響を受けたほとんどの読者によって、「混乱しており、意識の流れが乱雑である」と表現される。
作品名: 『黄金の羅針盤』 (Northern Lights4)
シリーズ: 『ライラの冒険』 (His Dark Materials)
ジャンル: ヤングアダルトファンタジー
犠牲者: 「ゴブラー」の名無し構成員
SCP-3167の出現: SCP-3167は、主人公ライラ・ベラクアが彼女のダイモン5であるパンタライモンを切り離す「インターシジョン」を受けている最中に出現し、パンタライモンを捕らえているゴブラーの男を、巨大なボアコンストリクターの形状をした自らのダイモンを用いて殺害する。異常性を受けていない『黄金の羅針盤』作中のこの場面は、同意なしに他人のダイモンに触れることはレイプにも等しい行為であることを強く示唆するように書かれていることが特徴的である。
影響: 物語全体に渡る影響はない。コールター夫人は、パンタライモンを捕らえていた男がなぜ死んだのかについて、混乱しながら部屋に入る。ボルバンガーでの残りの場面は、SCP-3167が脱出したことと、インターシジョン用の部屋から「あんなことをして、後悔している」と書かれたメモが見つかったことを知らせるため、コールター夫人とライラが話している部屋に警備員が入ってくる部分を除けば、途切れることなく続く。
作品名: 『ソードアート・オンライン1 アインクラッド』 (Sword Art Online: Aincrad)
シリーズ: 『ソードアート・オンライン』 (Sword Art Online)
ジャンル: 日本のSFライトノベル
犠牲者: 不詳。
SCP-3167の出現: SCP-3167は、ソードアート・オンライン内における、桐ヶ谷和人 (キリト) と茅場晶彦のアバターであるヒースクリフとの最終盤の決闘中に出現する。描写は以下の通り。
「恐ろしく白い笑みを浮かべた異様な程に長身のプレイヤーが、鼓動し閃光を放つ巨大なクレイモアを振り上げ、殺しにかかる。大剣は七十五層の地面に叩きつけられ、《ソードアート・オンライン》そのものを停止させた 結果、そこに閉じ込められていた全員が解放されたのだった。」
影響: 『ソードアート・オンライン』のライトノベルシリーズ第2巻は、SCP-3167が出現する以前の時系列を舞台とする物語であるため、影響を受けなかった。一方、それ以降の作品は全て現実の世界が舞台となり、和人と結城明日奈の関係を描くものとなった。SCP-3167の攻撃により、ソードアート・オンラインと同規模のバーチャルリアリティゲームをサポートするためのインターネット環境そのものが破壊されたようだ。
作品名: 『最後の事件』 (The Final Problem)
シリーズ: シャーロック・ホームズの正典 (The Sherlock Holmes Canon)
ジャンル: ミステリー
犠牲者: シャーロック・ホームズ
SCP-3167の出現: ワトソン博士がライヘンバッハの滝に到着すると、SCP-3167がホームズと格闘しているのが見える。SCP-3167は「彼は君に死んで欲しがってるんだ!」と叫び、ホームズを何度も刺してから崖下に投げ捨てる。それからワトソンに向かって頷き、消えていく。
影響: 『最後の事件』以前に書かれたホームズの物語には影響がない (また、『最後の事件』以前を舞台とする『バスカヴィル家の犬』も同様である)一方で、SCP-3167によって改変された『最後の事件』を読んだ人物は、それ以降の全てのシャーロック・ホームズの物語を読むことができなくなった。ここには、正典と見做される作品も含まれる。
この時点で、空想任務部隊アルファ-4のエージェントが、物語から出ようとしたSCP-3167を妨害し、一時的に物語の空白へと閉じ込め、エージェント ケイトリン・ネクストによる尋問を行うことに成功した。インタビュー記録を以下に示す。
ケイトリンは概念的に何もない空間を歩き回り、肩を回した。「私たちは何年も前から貴方を追いかけていたのよ」
恐ろしく白い笑みを浮か
「おっと、私にその武器を向けるのは止めて。こっちは貴方が私を殺そうとするたびに物語自体をコントロールできるの — メタファー的な意味での、メタフィクションのディックは、私の方が大きいから。だから、お話しをしない?」
恐ろしく白
「私の話、聞いてた?」
……ボブはエージェント ネクストに対し、顔をしかめた。彼の素晴らしく白い笑顔はしかめっ面に変わってしまった。「俺は誰も傷つけたりしていない。実在する者は誰もな」
「貴方は過去4年で、少なくとも90の物語世界を破壊しているわ。その上、振り返ってみて! 『しかめる』という表現を同じ記述の中で2回も使ってる。ええ、そう、私にはそれが見えてるし、貴方もそうだと知っている」
「作者の願いを実行しただけだ。ローリングはウィーズリーに死んで欲しがっていた。ドイルは最後にはホームズにうんざりしていたし、川原は少し前にSAOを破壊しておけばよかったと望んだ」
「…… 『皇帝の雨』については?」
ボブは、彼女自身の首を傾けた。「何?」
「待って、女の子だったの?」
「こっちは創作の存在だぞ、望めばクトゥルフにすらなれる。まあ、クトゥルフになりたがる者などいないだろうがな」
「『皇帝の雨』、新進気鋭のファンタジーシリーズ。貴方はその第一作に入り、主人公を殺して、王国を混沌の渦に陥れた。神々のスペクトラムであらゆる色の戦争が始まった」
「それは俺の仕業じゃない、だが、良いアイデアだと思うね」
「こっちには貴方がやったっていう記録があるの — ちょっと。不味いわ。彼は文書にいる。この文書に。貴方が今読んでるSCP報告書にいるの。閉じて、早く閉じて!」
恐ろしく白い笑みを浮かべた異様に背の高い人物がバックスペースキーを掲げ、殺しにかかる。
「ここから出して!」エージェント ネクストは懇願した。「お願い!」
「ここから出して!」エージェント ネクストは懇願した。
「ここから出して!」エージェント ネクス
「ここから出し
「ここ
「
行為は完了した。その人物は最新の獲物を仕留め終え、そして自らの人生の新しいページをめくる。
フィクションであることの利点の一つは、人生を書き直せるってこと。しばらくは白文字の中にいないといけないわ。読者の皆はイライラするかもしれないけど、許してね。でも、それで平穏無事でいられるなら、そうしなくちゃ。 —C・ネクスト