SCP-3174-JP

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箱から千円札を取り出すSCP-3174-JP-3。

アイテム番号: SCP-3174-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-3174-JPの脅威度が十分に低く、かつ行動範囲がSCP-3173-JP 1内部にとどまっているため、積極的な収容は行われません。サイト-81UTによって各SCP-3174-JPの巡回ルートに監視カメラが設置されており、標準行動パターンからの逸脱がないかの確認が行われます。

説明: SCP-3174-JPは、SCP-3173-JP内部を特定のルートで移動している、実在する脊椎動物を模した形状の実体群です。現在までに発見されているSCP-3174-JPは、いずれも国際自然保護連合によって指定されている所謂「絶滅危惧種」の動物種を模しています。また、これらの動物種は必ずしもベースライン現実における上野動物園において展示されている種ではありません。

全てのSCP-3174-JPの首には箱が取り付けられています。その大きさおよび材質は各SCP-3174-JPによって異なりますが、共通して上部の蓋には紙幣・硬貨を挿入可能な大きさの開口部が存在します。

箱の表面には、黒色の塗料により、

ぼくらを助けるために、クラウドファンディングして下さい!

(当該SCP-3174-JP実例が模している動物の標準和名) より

と記載されています2

SCP-3174-JPの周囲にヒト (以後、対象) が接近した場合、SCP-3174-JPは規定の巡回ルートを外れ、対象に接近する行動をとります。対象に十分近い距離まで接近すると、SCP-3174-JPは対象の顔面を見つめ、所持する箱の開口部を対象の方へと向けます。

対象が箱に任意の額の金銭を投入した場合、SCP-3174-JPは「お辞儀」のような仕草を見せた後、対象から離れ、通常の巡回ルートへと戻ります。対象が金銭を投入しないままに立ち去った場合でも、SCP-3174-JPはそれ以上の追跡を行いません。

各月の最終日の23時 (日本時間) になると、SCP-3174-JPは箱の蓋を開き、内部の金銭を取り出します3。取り出された金銭は、徐々に発光し、消失します。全ての金銭が消失すると、SCP-3174-JPは再び箱の蓋を閉め、通常の行動パターンを再開します。

このイベントの翌日 (各月の1日) に、SCP-3174-JPが模している動物種の保護に関与する団体に対し、消失額分の金銭が差出人不明の寄付として届けられます。一般的に、このような保護団体は寄付を受ける機会が多く、また匿名の少額寄付も珍しくはないため、対象となった団体が寄付に違和感を持つことは稀です。


SCP-3174-JP群は、財団によってSCP-3173-JPの調査が行われた際に発見されました。調査の時点で、多くのSCP-3174-JP実例には、民間人によって既に金銭が与えられていました。下の表は、発見されたSCP-3174-JPのリストの一部です。包括的なリストは、サイト-81UTデータベースに保管されています。
形状 保護区分4 金額
SCP-3174-JP-1 ケープペンギン (Spheniscus demersus) EN (絶滅危惧) 1,279円
SCP-3174-JP-2 スマトラトラ (Panthera tigris sumatrae) CR (絶滅寸前) 5,527円
SCP-3174-JP-3 カカポ (Strigops habroptilus) CR (絶滅寸前) 17,404円
SCP-3174-JP-4 ジャイアントパンダ (Ailuropoda melanoleuca) VU (危急) 32,050円
SCP-3174-JP-5 ターキン (Budorcas taxicolor) VU (危急) 451円
SCP-3174-JP-6 オノイラウトカゲ (Leiolopisma alazon) CR (絶滅寸前) 302円
SCP-3174-JP-7 プリゴジンヨタカ (Caprimulgus prigoginei) EN (絶滅危惧) 190円
SCP-3174-JP-8 ワイオミングヒキガエル (Anaxyrus baxteri) EW (野生絶滅) 31円

以下は、SCP-3173-JPより救出された民間人へのインタビューのうち、SCP-3174-JPに関係する部分を抜粋したものです。

インタビュー記録: 3173-12


対象: 古谷 智 氏 (民間人)

インタビュアー: エージェント・サイモン

付記: 古谷氏は2023/10/06、SCP-3173-JPの異常性発現に伴い上野公園内で偶発的に発生した空間重複からSCP-3173-JPへと転移し、その1時間後に財団機動部隊によって保護されました。


<前略>

インタビュアー: では、周囲に人がいなくなって  こちらに迷い込んでから見かけたものについて覚えていることはありますか?

対象: はい。[考え込む] そうだ、一人になってすぐの時ですかね、僕に向かってパンダが近づいてきたんです。後ろ足だけで立ってて、首に募金箱を掛けていました。

インタビュアー: 募金箱を持っているパンダ、ですね⋯⋯ [端末を操作し、SCP-3174-JP-4に関する記録を確認する] ありがとうございます。そのパンダについて、詳しくお聞かせください。

対象: 分かりました。その子は近づいてきて僕の前に来ると、持っている募金箱を、こう⋯⋯ [身振り] 差し出してきたんです。それで、財布から千円札を入れてあげたら、お辞儀をしてくれたんですよ。

インタビュアー: ええと、ちょっと待ってください。迷い込んだ直後の出来事ですよね? 自分の身の安全も分からないのに、得体の知れないパンダにお金を渡してしまうなんて、少し気前が良すぎやしませんか?

対象: [苦笑] まあ、自分でも太っ腹すぎたかな、とは思ってます。でも、後悔はしてません。最初にあの子が近づいてきた時、募金箱をよく見ると「僕たちを助けてください」みたいに書いてあって⋯⋯それで、1週間前に見たテレビ番組を思い出したんです。

インタビュアー: テレビ番組ですか。

対象: ええ。野生のパンダの生活をいろんな角度から密着した番組でした。パンダの子育てだったり、パンダの寝顔だったり、それと、パンダの住んでる竹林の現状だったり。番組は最後に、パンダの保護活動をする人を写して終わってました。でも、画面の前の自分は、何もできなかった。だからあのパンダに募金をして、少しでも応援したくって。

インタビュアー: なるほど、事情はよく分かりました5

[インタビュアーが手元の端末で情報を照合する。SCP-3173-JP内での対象の移動範囲が、SCP-3174-JP-8の巡回ルートとも重なっていることに気づく]

インタビュアー: もう一つ伺いたいのですが、迷ってから保護されるまでに、このような [SCP-3174-JP-8の画像を提示する] カエルを見ませんでしたか?

対象: あー、ちょっと待ってくださいね、えーと [考え込む] 多分見たかもです。確かに、そのカエルもあの子みたいに募金箱をかけて、こっちに近づいてきた気がします。

インタビュアー: では、カエルの募金箱にもお金を?

対象: いや、普通に素通りしましたね。

インタビュアー: このカエルもパンダ同様絶滅の危機に瀕しているのですが⋯⋯よろしければ、お金を入れなかった理由について教えてもらってもよろしいでしょうか。

対象: いや、特段理由はないですね⋯⋯そのカエルが絶滅危惧ってことはちょっとよく知らなかったですし、それに⋯⋯

[対象が眉を顰める]

対象: 生理的にダメなんですよね、カエル。

<後略>


終了報告書: インタビューの後、古谷氏には通常の記憶処理が行われ、解放されました。

補遺: 2023/12/1以降、複数のSCP-3174-JP実体の外見に変容が見られています。変容したオブジェクトは一様に体表面が白黒に塗り分けられており、特に頭部はジャイアントパンダのものと類似する模様6へと変化しています。また、外見に変容が見られたSCP-3174-JPの所持する箱において、動物種の標準和名が書かれている部分は、総じて黒く塗り潰されています。

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