SCP-3175-JP
特別収容プロトコル: SCP-3175-JPはサイト-81UT内の低脅威物品収容展示ブースにて保管されます。SCP-3175-JP-Aの内容は担当の研究員の間でのみ共有され、SCP-3175-JPを用いた実験は研究責任者の監督のもと、専用に整備された大型チャンバーにて行われます。
SCP-3175-JPに関する歴史学的資料研究、考古学的発掘調査、古生物学的研究及び実験、民間伝承を探る民俗学的調査が、サイト-81UTの主導で進められています。
説明: SCP-3175-JPは雅楽の曲目である『蘭陵王』に用いられる舞踊面です。当初は東京国立博物館の収蔵品であり、サイト-81UTによる定期検査をきっかけとして異常性質を有することが判明しました1。
歴史的資料から、SCP-3175-JP自体は鎌倉時代〜室町時代に作られた模倣品であり、そのモデルは仏哲2が奈良時代に日本へ持ち込んだ仮面であることが判明しています。2023/12/01までに、日本国内で計4枚のSCP-3175-JPが回収されています。
人間がSCP-3175-JPを装着した状態で、舞踊を中心とする特定の儀式的行為 (SCP-3175-JP-A) を行うことで、異常性が発現します。SCP-3175-JP-Aのプロセスの完遂と同時に、儀式実行者の半径5m以内に恐竜型実体が出現します。実体の出現プロセスは不明ですが、目視可能なものの、通常の光学機器では検出不可能なことから、ある種の霊的実体であると理論立てられています。
出現する実体の種・分類群は一見して無作為であり、儀式実行者によって指定することも不可能です3。実体は儀式実行者の指示に従順に行動し、出現してからおよそ30分程度で消失します。
SCP-3175-JP-Aの内容は、仮面本体がパッシブ・アノマリーに指定された後に判明したものであり、これによってSCP-3175-JPはSCPオブジェクト指定を受けました。その詳細な情報源は機密指定されています。
実験で出現したティラノサウルス属の未特定種 (Tyrannosaurus sp.)。体表に羽毛は確認されない。
雅楽の曲目『蘭陵王』は、古代中国における魏晋南北朝時代の北斉の皇族、高長恭を題材にしたものであり、「高長恭の端正な顔立ち故に彼の軍隊の参加者が見惚れてしまうほどであったため、彼が勇猛な外見の仮面を付けて軍の士気を上げた」という逸話を元にしています。
しかし、古代中国の歴史書である『北斉書』、『北史』および仏哲の遺した資料や口伝は、高長恭が実際には恐竜型実体を使役して敵国の軍隊を壊滅させたことを示唆しています4。このことから、SCP-3175-JPのモデルとなった仮面群も同様の異常性を持ち、当時の軍事的活動のために利用されていたと考えられています。
これに類似した記録は他にも複数存在しており、最古の記録は楚漢戦争の最中の劉邦に関するものです。そのため、同様の異常性を持った仮面が北斉以前から存在していたと考えられています。以下は、SCP-3175-JPのモデルとなったオブジェクトが使用された可能性を示す、歴史的記録の一部です。記録における「龍」という言葉が「恐竜」を指していると考えられます。
人物: 劉邦
年代: 紀元前3世紀末
概要: 劉邦と項羽が楚漢戦争にて覇権争いをした際、劉邦が龍を召喚し敵軍と戦わせたことが記録に残っている。劉邦は戦いに勝利したのちに前漢を築き、皇帝として即位した。彼が用いた仮面はその後の匈奴との戦いにおいて紛失している。
人物: 魏の徐晃、蜀の関羽/張飛、呉の甘寧、後漢の呂布など
年代: 後漢末〜三国時代 (3世紀)
概要: 後漢末期以降、中国に複数の国家が鼎立し互いに覇権争いを繰り返す中で、龍が度々戦闘に使用されたことが歴史書に記されている。また、同時に複数個の仮面が存在したことから、戦闘中の双方が龍を召喚し互いに戦わせたことも記録されている。これらの仮面群はおおよそ全てが戦闘中に被破壊または紛失している。徐晃、関羽、張飛、甘寧らは神格化されるなど、歴史上庶民の間で好意的に認識され、呂布も後代の歴史家からの評価は低いものの、その武力は評価されており、民間では様々な伝承が広まっている。
人物: 高長恭
年代: 南北朝時代末期 (6世紀半ば)
概要: 北斉の皇族である高長恭が敵国を倒すために龍を召喚した。高長恭は後世に名将として語り継がれ、日本においては雅楽にて『蘭陵王』5の曲目で披露される。
財団が保有しているSCP-3175-JPの直接のモデルは、高長恭が使用した仮面だと考えられるが、高長恭が賜死した後オリジナルは紛失した。
上記の他にも、東晋の謝玄6や後周の柴栄7にも類似した記録が見受けられます。また、中国以外の東アジアにおいても広開土王8、鬼室福信9、甲賀三郎10など複数のケースで、SCP-3175-JPと同様の異常性を持った仮面を使用していたことが記録から示唆されており、中国を中心に朝鮮及び日本までも同様の異常物品作成技術が伝播していたと考えられています。
発掘されたバルバロイの仮面
補遺: 近年、古代ギリシャの遺跡よりバルバロイ11を模ったとされる劇用の仮面が複数個発掘されました。財団の調査の結果、これらの仮面もSCP-3175-JPと同様の異常性を持つことが確認されました。
異常性発覚の発端は、2023年に赴任先のギリシャより帰国しサイト-81UTに配属された駒本博士が、2024年1月に東京国立博物館の企画展で展示されていたSCP-3175-JPのレプリカ12と、先述のバルバロイを模した仮面との外見上の類似性を指摘したことです。これを受けて実験が行われ、オブジェクトの異常性が発覚しました。
その後、発掘済みの遺跡の追跡調査を含め、ヨーロッパにて大規模な発掘調査が行われました。その結果、古代中国における記録よりも古い年代のヨーロッパ各地の遺跡から、SCP-3175-JPと同様の異常性を持った仮面が計57個回収されました。このため、SCP-3175-JPの歴史的起源は古代ギリシャにあり、それがヨーロッパやペルシア・インド洋貿易・北方民族を介して東アジアに流入したと考えられます。
しかし、ギリシャをはじめヨーロッパ各地で回収された仮面群にはSCP-3175-JPとの重大な相違点が存在します。これらのオブジェクトは、出現させた実体を使役する効果を有しません。このことから、実体を制御するための異常技術は古代中国にて発達したものであると推測されています。
これらの仮面は古代ギリシャの演劇用に作成されたものであり、バルバロイの残忍さや乱暴さと言った偏見を誇張するための舞台装置として使用されました。オブジェクトの当初の作成目的は、観衆に "怪物" を見せるための魔術的道具だったと考えられています。後の時代においてもこれらの仮面は呪物として魔術師の間で流通していたことが歴史資料より類推されます。
サイト-81UTの歴史的超遺物セクションは、これらの異常物品が東アジアにおける「龍」およびヨーロッパにおける「ドラゴン」の伝承の起源となったとの仮説を提唱しています。



