アイテム番号: SCP-3180-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 潜在的なSCP-3180-JPの対象者は非常に多数存在すると考えられており収容するのは現実的ではない点、SCP-3180-JPに一定程度の自己撹乱性が存在する点などから、収容の主眼はSCP-3180-JPに関する情報の隠蔽に置かれます。
財団ウェブクローラ (“Farewell”) によりSCP-3180-JPに関連すると考えられるインターネット上のトピックは監視・捜索が行われ、発見次第エージェントによる介入が行われます。
説明: SCP-3180-JPは特定の個人(以下、対象者と表記)に関連して発生する異常現象です。現時点で財団が捕捉している対象者は239人であり、経歴やパーソナリティに共通項は確認されていません。通常時、対象者はいかなる異常性も示しません。
SCP-3180-JPは特定条件下でのみ発現します。実験の難しさから具体的な構成要件は不明ですが、対象者が何らかの困難な課題に直面しており、かつその対象者が現状に対する焦りなどから強い精神的ストレスを感じていることが最低条件であると考えられています。条件を満たした場合、対象者は非自覚的に実行中のタスクをすべて中断し、壁面や天井を数十分程度凝視する行動をとります。この行動は外部からの声掛けなどにより中断させることが可能であり、その場合は後述のプロセスは実行されません。
前述の行動が阻害されなかった場合、対象者は急速に意識を失ったのち肉体がその場から完全に消失します。消失後1分程度が経過した段階で、対象者の存在していた位置に人型実体(以下、SCP-3180-JP-Aと表記)が出現します。実体は対象者と判別不能な外見を持つうえ、対象者の記憶を部分的に引き継いでいると考えられるものの、遺伝子情報等は全ての例に一貫して未特定の同一個人のものが検出されます。
SCP-3180-JP-Aの身体能力や論理的思考力は元となった対象者とほぼ同一の水準ですが、対象者に精神的ストレスなどによる常在的なパフォーマンス低下が見られるために、相対的にSCP-3180-JP-Aの方が直面している課題に対し解決能力が秀でています。加えて、課題解決に対する強い使命感を有しており、課題の期限内はそれの解決に必要な行動以外を取りません。これらの状況により、対象者が直面している課題は高確率で遂行されます。
SCP-3180-JP-Aは課題遂行後も対象者の代役として生活を続けますが、SCP-3180-JP-Aが意識を失ったタイミングで先述の置換プロセスと逆の手順で対象者が再出現します。対象者はSCP-3180-JP-Aと記憶を共有していませんが、漠然と「直面していた課題が終了した」という認識を持ちます。結果として、対象者は「課題解決のために行ったことはほぼ記憶していないものの、結果として課題の解決には成功した」という成功体験を得ることになります。
対象者はSCP-3180-JP-Aの存在について自覚はしておらず、ほとんどの場合は自身の異常性について、直面している課題の解決を可能にする特定の行動パターンと認識しています。多くの場合対象者は青年期にこれを認識し、中学や高校の定期考査や課題提出、大学入試等においてSCP-3180-JPを利用していることが判明しており、成績の優秀さから比較的高水準の進路を選択する傾向にあります。
SCP-3180-JPの性質から、対象者は人格形成においてSCP-3180-JPの影響を大きく受けることが推測されます。
問題解決をSCP-3180-JPに依存していた対象者は、何らかの目標達成のための計画を立てて実践するといった経験が著しく不足します。そのため、対象者のアイデンティティの大部分は前述の成功体験により形成され、「本気を出せば困難な状況の打破は容易い」という無根拠な自信を持つことになります。しかしながら実際には対象者自身の青年期における勉強量の不足などの理由により、対象者の能力が他と比べ特に秀でているということはありません。
対象者の持つ無根拠な自信により、退職などにより社会的な生活を送ることが困難となった場合においてもこの状態に対して強いストレスを感じることは少なく、結果的に生活が停滞するケースが多くを占めています。加えて、現状に対し危機感を覚えた場合でも、目標達成のための計画立案の経験の乏しさから、社会復帰のために設定される課題が抽象的なものになる傾向があります。
1つの典型的な例として、可能な限り良い条件の企業に再就職することを目標としてSCP-3180-JPによる解決を試みたものの、SCP-3180-JP-Aの就職活動により得られた再就職先の企業が対象者のスキルにそぐわないために早期退職を余儀なくされるといったケースが多く見られます。
極端な例としては、最終的に対象者に感情障害が発生し、日常の所作に対してSCP-3180-JPによる解決を試みる状態に陥る場合があります。しかし、SCP-3180-JP-Aが食事や入浴を行おうとも対象者とは全くの別存在であるため、SCP-3180-JP-Aによる課題遂行後も飢餓や不衛生の状況から脱することはできません。結果的に、この状態に陥った対象者は自身で能動的な活動を行うことができず、起床時間のほとんどをSCP-3180-JPの待機時間に費やすことになります。
上記のようなSCP-3180-JPに関連する行動は外部からそれが異常だと判断することが難しいため、財団に捕捉されていない対象者が多数存在することが予想されます。しかしながら、異常性の自己撹乱性に加え、対象者以外に強い影響を与える異常性ではない点や、前述の条件に該当する対象者の多くは社会的に孤立しており人づての調査が難しいと考えられる点などから網羅的な対象者の捜索は保留されています。









