SCP-3197
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アイテム番号: SCP-3197

オブジェクトクラス: Safe

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SCP-3197の台座の装飾に使われているグリーンスパン氏の写真。

特別収容プロトコル: SCP-3197の構成部品は分解して標準収容ロッカーに保管します。実験はレベル2クリアランスを持つ職員であれば実施可能です。収容以前にSCP-3197と接触した非財団職員には記憶処理を施します。

説明: SCP-3197は、蝋燭3本、空色のボウル、ボールペン2本、第13代連邦準備制度理事会議長 アラン・グリーンスパンの額入り写真で装飾されたマホガニー材の台座です。“受け入れられる供物のリスト”が台座の基部に彫り込まれています。

当該オブジェクトの異常特性を発現させるには、幾つかの条件を満たす必要があります。

  • 全ての蝋燭に点火し、ボウルはおよそ半分までバラ水で満たさなければならない。
  • ボールペンは写真の両側に等距離で配置しなければならない。
  • 嘆願者は台座に近付いて跪き、4桁の数字を記した紙を、供物と共にボウルの中に配置しなければならない。
  • 嘆願者は以下の短い朗唱を行わなければならない。

我らの聖なるグリーンスパンよ
御名が聖とされますように
我らの日用の利益を今日も与えたまえ
そして我らの損失を帳消しにしたまえ
我らを負債過多にあわせず
追証より救い出したまえ
市場と利益と栄えとは
限りなく汝のものなればなり
アーメン

必要条件が全て満たされていると、ボウルに配置された供物は消失します1。4桁の数字がニューヨーク証券取引所に上場している株式に対応する場合、その株式には、台座の基部に彫られているリストの関連項目と一致する収益が発生します。他の取引所に上場している株式は影響を受けません。

異常特性は、ボールペンを鉛筆に置き換える、電気蝋燭を代用品に使うなどの軽微な改変を儀式に加えても発現し続けます。しかしながら、アラン・グリーンスパンの写真をベン・バーナンキ、ジャネット・イエレン、ポール・ボルカーといった他の理事会議長の写真と入れ替えた場合、全ての異常性質は停止します。

補遺A: SCP-3197の基部に彫られた“受け入れられる供物のリスト”

嘆願者の子供時代の記念品: 1%
嘆願者の全ての頭髪: 2%
嘆願者の結婚指輪: 5%
嘆願者の親の遺灰を収めた骨壺: 7%
嘆願者の親指(右手): 10%

補遺B: ディーン・ピーボディ 有限責任事業組合の元・証券トレーダー、ジャック・ロッシへのインタビュー

以下のインタビューは、SCP-3197の発見と収容から間もない2008/4/6に実施された。ロッシ氏は当初、財団研究員を不特定の政府機関で働いている人物と見做し、協力を拒んだ。EXP-URXW-232を秘密裏に投与され、危害を加えないと研究員らが保証した後、ロッシ氏はインタビューに同意した。

██████研究員: 祭壇を組み立てた時のことを覚えていますか?

ロッシ氏: おいおい、分かるはずないだろ? 多分‘97年の始めかな。S&Pが1000割りそうになってた時期だってのは覚えてる。あと、あれを組み立てたのは俺じゃない。

██████研究員: では、誰が?

ロッシ氏: 俺は写真を置いただけだよ。

██████研究員: しかし、あなたがピーボディの本社に台座を持ち込んだのでしょう?

ロッシ氏: ミッドタウンの何処だかの縁石で見かけたのさ。56丁目だ、多分。ヒンドゥー教徒だか仏教徒だか知らないが、そいつらが捨てたんだよ。気まぐれを起こして拾った後、例のデカい写真を添えて休憩室に飾った。みんな大笑いしたぜ。

██████研究員: “みんな”とは誰のことです?

ロッシ氏: 取引場にいた俺たち全員。ディック、レスター、フィル、俺たちに飲み物を買ってくる学校を出たばかりの勇み足の坊やたち。社長なんか、あれを見た時は爆笑しすぎて昼飯をもどしそうになったぐらいだ。次の日、誰かがボウルをそこに置いた。ペンはフィルの発案だった。ゴールドマンから来た負け犬の誰かさんが、理事長はボールペンがお気に入りだってあいつに話してたらしい。

いやもう、マジで面白かったよ。クライアントが来た時はいつも奥の間に連れてって、“私どもの新しい宗教”でござい、って披露した。みんな、とんでもないご乱行だって思ってた。

██████研究員: それで、リストは?

ロッシ氏: ある日突然現れた。誰が彫ったかは知らない。誰も自分がやったとは認めなかっただろう。言わせてもらえりゃ、そんなに面白くなかった。ちょっと行き過ぎたジョークって感じだ。

最初に誰かがあれを使ったのは、株の下方修正があった最中で…

██████研究員: すみません、ここで言うところの修正とは何を指していますか?

ロッシ氏: 98年半ばとだけ言っとこう。取引所でスゲェ大暴落があったんだ。俺はまだ軽くて済んだ、ポートフォリオが7~8%下がったけどな。大抵の奴は20~30%の範囲で損した。ボーナスがあっちでもこっちでも蒸発してた。マジでさ、空気に離婚の匂いが嗅ぎつけられるぐらいだった。

██████研究員: 何です?

ロッシ氏: あいつらの殆どはトロフィー・ワイフ持ちだったんだよ。分かるだろ、パツキンでおっぱいがデカくて数十歳若い女房。それどころか何人かにはトロフィー愛人もいたんだぜ。いったん夫が場外に叩き出されたら、そういう女がそいつらに執着すると思うか?

██████研究員: 成程。

ロッシ氏: そんでとにかく、ベルが鳴って大虐殺がついに終わると、レスターが俺たちを休憩室に呼び集めて大仰な見世物をやった。あのちっぽけな祭壇の前に跪いてな、自分がしこたま持ってる株の1つを紙切れに書き付けて、主の祈りの改悪版を唱えてから結婚指輪を放り込んだのさ。俺たちゃみんな笑顔だった、だってあん時ゃ少しぐらいコミックリリーフが無くちゃやってられなかったんだ、な? その間ずっと、俺は失職したらどうするかばかり考えてた。俺の女房 — まぁ幸いと言うべきか、ウチはしっかりしてる。でもジャージー辺りのクソ田舎に引っ越すことになるかもしれなかった。

██████研究員: その時、あなたは初めて異常性質に気付いたのですね?

ロッシ氏: レスターの結婚指輪が消えた。あいつも可哀想に、何時間も指輪を探したよ。俺がその日ウチに帰る時も、このままだと女房に嫌と言うほどケツを蹴り飛ばされるとかブツブツ言いながら未だに探し回ってた。ところが次の日、俺たち全員またしても大損こいたってのに、レスターの株は5%上がった。その日の終わりになると、あの馬鹿ヅキ野郎の赤字はほんの少しだった。

それで、取引所が閉まった後、俺たちはみんなお互いニヤニヤしてた。ハハッ、こいつは実際ご利益あるようじゃないか? 聖なるグリーンスパン万歳! フィルは家に取って返して、まだおむつを履いてた頃に勝ち取ったチェスの優勝トロフィーを持って帰ってきた。次の日、また大暴落があって、俺たちは揃いも揃って10~15%も損を出したが、フィルの持株だけは1%上がりやがった。

██████研究員: そして、あなたたちは定期的に祭壇を使い始めた?

ロッシ氏: そうでもねぇよ。暫くは皮肉を飛ばし合ってた。ハハ、祭壇詣でに行く途中か、ディック? お前の株はきっと危なくなってんだろうな! でも結果は否定できなかった。誰かが供物を捧げれば毎回、機械仕掛けみたいに次の日にはリターンがあったんだ。

それから… それから、ジョークは面白くなくなったと思う。段々と俺たちはあのブツを話題にしなくなったけれど、可能な限り頻繁に使い続けてた。こう、髪は一回剃り上げちまうと生えるのに時間が掛かるしな。1ヶ月後に、俺たちは祭壇を個室に移した。特注の錠が付いてて、鍵は俺たちのごく一部しか持ってなかったから、用務員さえ中に入れなかった。誰かに訊かれることがあれば、あれはもう捨てたと言った。

██████研究員: 供物がもたらすリターンはあまり大きくないようですが。

ロッシ氏: 当たり前だボケ、直で株に投資なんかしねぇよ。勢い重視のモメンタム投資家が全員、その株が危うくなるだろうって思いこむまで待ってから、先物取引を始めるんだ。運が良い日にゃ、50:1かそれ以上のオッズで株価が10%上昇しないのに賭けたお気の毒さまなマヌケが、どん底まで落ちた株を抱え込むことになったりする訳。

██████研究員: 必要な事は全て把握できたようです。間もなく他の者があなたに会いに来るでしょう。これは好奇心から訊きたいのですが、あなたは一連の出来事について何かしら後悔していますか?

ロッシ氏: なんで後悔しなきゃならない?

██████研究員: 例えば、ご両親を掘り起こした件とか。

ロッシ氏: ああ、まぁ両親は気にしてるわな。あの墓場で大層素敵な時間を過ごしてただろうから。

██████研究員: あなたの手については?

ロッシ氏: あのな、もしドアを開けるのに苦労する時は、執事に代わりにやってもらうさ。

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