SCP-3216-JP
評価: +14+x
blank.png

アイテム番号: SCP-3216-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 現時点において、SCP-3216-JP現象の抑制・防止手法は確立されておらず、更なる研究が進行中です。そのため、財団による主だった収容活動は、現実および人類の叡智圏等の形而上空間における、当該現象と関連する情報や知識の統制・隠蔽工作に注力されます。

説明: SCP-3216-JPは、ヒト個人による特定行動の結果として発生し得る、あらゆる形而下および形而上空間内の時間軸に対する干渉現象です。この現象は見た目上、時間進行の異常な延長もしくは遅延として観測され、現象発生中はその起源となった人物(以下、対象者)以外のあらゆる事象が実質的に静止した状態となります。

SCP-3216-JPは、"睡眠状態から覚醒した直後の対象者が、目覚ましのアラーム時刻を再設定・延長して再び睡眠状態になる"という、非常に簡潔かつ容易に起こり得る個人の行動によって、再睡眠の開始直後に発生します。そしてこの際、現象の持続時間は"対象者が再び睡眠状態になった時刻から、再設定されたアラーム時刻まで"の1/1000の時間となります1

上記の通り、当該現象は財団の監視外においても極めて容易に発生し得る一方、ほぼ全てのケースで現象による延長時間は対象者の睡眠行為に消費されます。そのため、対象者がSCP-3216-JPの発生に気付くことは、後述の特例を除けば起こり得ません。また、発生を意図した行動では現象を誘因しない場合がある等、現時点でもその完全な条件・要因は不明です。

加えて、現象中の対象者が現実と異なり、自身の夢中において自由に行動可能である点には留意すべきです。この際、現実同様に夢中の対象者以外のあらゆる形而上要素は、見た目上の完全静止状態として観測されます。また、明晰夢訓練を受けた対象者は、夢中における自身の身体に関して"濡れている"もしくは"水中歩行を行っている"とも形容される、僅かな不快感と脱力感の存在を報告しました。

なお、この夢見の経験は、対象者がSCP-3216-JPの発生を認識し得る唯一の可能性でもあります。しかしながら、これまで上述した通り、それら経験は意図しない限りは極めて短時間内に起きる出来事でしかなく、いずれのケースであっても無視されるために収容上の問題となることは非常に稀です。

経緯: SCP-3216-JPは19世紀後半、夢界学部門における研究成果の結果として偶然的に発見されました。当初、当該現象は"二度寝直後の夢中において観測される、潜在意識下での極めて短時間の遅延もしくは停止現象"として議題に挙げられていましたが、続く後発的な研究成果によって現行の性質が発見されるに至っています。

なお、現行報告書の確立後、SCP-3216-JPによる延長時間を形而上学的アノマリーの収容・研究に利用する手法も立案されましたが、その発生条件に対する不完全な知見から意図的活用が困難である点に加え、後述される未発見の性質の存在を危険視した結果、否決されました。また、SCP-3216-JPの性質が、敵性的な形而上知性により利用される可能性2も指摘されており、現時点においてはオブジェクトと関連するあらゆる情報に対して、開示制限が設けられています。

補遺: SCP-3216-JPの初動研究に際して、現象の持続時間中に対象者が睡眠から覚醒した場合、対象者にどのような影響が及ぼされるのか検証が試みられました。この時、アラームの再設定時刻は+72時間後(現象の持続時間は約4分間)と指定されており、夢界学部門による専門訓練を受けた対象者が睡眠開始から3分後、意図的に覚醒を行うとする形で実施されました。

当該検証は問題なく進行され、担当職員は事前に想定されていた通り、"対象者が再睡眠を開始した直後、瞬間的に覚醒する"様子を観測しました。しかしながら、その覚醒直後に対象者は酷く取り乱し始め、呼吸不全を伴うパニック症状を示したために鎮圧されました。この症状自体は十数分の時間経過により解消されましたが、対象者は覚醒してから残り1分間の持続時間中における、現実の自らが経験した状況を不明な理由から鮮明に説明できませんでした。

この検証によって齎された情報は、対象者の"溺れる"もしくは"気持ち悪い"といった旨の反復的な発言と、漠然とした"自身の胸の上に座った存在に顔を舐め回される"という実在性の証明されていない光景想起の報告のみに留まりました。以降、SCP-3216-JPに関する更なる知見が獲得されるまで、同一内容の検証試行は暫時的に中断されています。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。