SCP-3246

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安全のため、以下の文章を閲覧する職員はモニターの明るさを最大にしてください。



アイテム番号: SCP-3246

オブジェクトクラス: Keter


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SCP-3246


特別収容プロトコル: 夜間に外出しないでください。

これまでの誤伝達部門による取り組みは、世界規模の情報拡散キャンペーンの先例となっています。当文書において制作されたすべての資料について、この先例を参照してください。

停電やSCP-3246の発生に備え、職員は軍用の600-フルオレン懐中電灯が支給されます。このような事態の可能性を低減するため、すべての収容サイトの予備電源を定期的に監視してください。また、人口密集地においては常に投光照明を点灯させてください。以後数週間にわたって、財団の部隊はすべての森林および海洋から40キロメートル以内にある全住民の避難に努めます。

暗がりに長居しないでください。


説明: SCP-3246は、通常"暗闇"として知られるものの現存成分です。暗闇の組成のほとんどが光が存在しない事によるものであるのに対し、SCP-3246による部分は「マイナスの光」と形容するのがより正確です。

明るさが減少するにつれ、非異常性の暗闇は0.001890キロフルオレン毎平方メートル(kF/m2)、「ピッチ・ブラック」の推定の明るさに漸近します。しかしながら、SCP-3246の濃度が十分に高い暗闇においてはこの値を大きく下回り、現在の光の尺度からかけ離れたものとなります。

この文書の作成時点で、地球の暗闇の約36%がSCP-3246となっています。


明度 (kF/m2) 表記 備考
>1 ライト(Light) ほとんどの物体表面は明瞭に見える。難読化を除けば、このような明度下で視認性を阻害するものは距離のみである。
0.999999-0.001891 ダーク(Dark) 物体表面は鮮やかでなくなり、彩度が落ちる。明度が下がるにつれ、細部のディテールや肌合いが背景と同化していく。カメラは約0.005kF/m2以下においては画像を感知できなくなる。
0.001890 ピッチ・ブラック(Pitch Black) 可視スペクトルの光が全く存在しない状態。肉眼における光の観測限界。
0 トゥルー・ブラック(True Black) すべての光が全く存在しない状態。トゥルー・ブラックは「冷たい」、「静か」などと形容される。光がトゥルー・ブラックの中を進むとき、通常とは異なり光度は変化しない。全体がトゥルー・ブラックである球状惑星では、ある人が懐中電灯で自分の前方を照らそうとすると、その人自身の後部を照らすことになる。
-0.001890 ナノブラック(Nanoblack) 0キロフルオレンを下回ると、光子は奇妙な現象を起こす。この値においては、人間を含む有機生命体はわずかながらも顕著な輝きを放つようになるが、ますます重苦しくなった暗闇に即座に飲みこまれてしまう。光が失われるのとともに奥行きが感じられなくなるため、軽い錯聴に陥りやすい。
-0.068584 ヘイヴァー=バンドン・ブラック(Haever-Bandon Black) レム睡眠周期に関する研究により、人が寝ているときに見る"色"がヘイヴァー=バンドン・ブラックにほぼ等しいものであるとされた。この結論は、紀元前376年にギリシャの哲学者ヘヴェリトレスの出した仮設も満たしている。1ヘイヴァー=バンドン・ブラック中で光に照らされていない箇所は、ナノブラックの約10000倍の可視光を吸収する。██████████████感覚遮断、██████ ███████████████、もしくは慢性的な精神乖離のいずれか早く到来するものが██████████。
-0.887641 バンドン=ブラック(Bandon-Black) バンドン=ブラックは修正フルオレンスケールにおける下限である。身体感覚は完全に打ちのめされる。骨以上に反射率の高いものを除けば、全ての物体表面は不明瞭になる。
-1 モウ(Maw) モウ・ブラックは存在しえない。


挿入された資料

SCP-3246と、現在ではその異常性を失ったSCP-█████との間の潜在的な関係が発見され、後に裏付けられました。

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かつてSCP-█████であった洞窟の外観。SCP-3246の濃度が異常に高いため、洞窟内部の写真を撮影することはできない。

説明: SCP-█████は、██████海岸沖の休火山にある玄武岩質の洞窟です。████/08/02に民間のトンネル工事業者によって発見されるおよそ400年前に形成された、水中の溶岩洞を通じてのみアクセス可能です。財団は発見後直ちに当該サイトを掌握し、影響を受けた全員を無力化しました2

SCP-█████の内部は、照らされたとしても完全に真っ暗Pitch Blackです。洞窟の奥はすべての光子を吸収するため、従来の撮影技術は使用できません。洞窟の中では、強烈な暗闇によって周囲が奥行きを持たないように感じる軽微な錯覚が引き起こされます。またこの錯覚は他の感覚にも及び、中にいる人は無音であると感じる一方、入口のすぐ外に立っている人はそのような錯覚を起こしません。

地上超音波スキャン(Terrestirial Sonography Scanning, TSS)技術の予備テストにより内部の大部分をスキャンすることに成功しましたが、洞窟がどれほど深くまで続いているのかは依然不明です。洞窟の一部には、予測されてきたような玄武岩の地層のほかに巨大な生物の化石があり、また洞窟の壁には古シュメール語で書かれた食刻による碑文が確認されました。訳文は以下にあります。

私の産まれ落ちたあの日は滅び失せよ
見よ、男の子が産まれた、と皆が言った夜もそのようになれ
あの日は暗黒の日であり、あの日が暗黒の日であり続けよ
彼は . . .
彼はそれに光を照らさず
故に彼はそれが . . . に再び舞い戻ることを欲す
雲が . . . 流れし時
. . . せんことを
そして陽が地平の下に落ちし時
陽が天を拭い去らんことを
その日が人生の記録より抹消されんことを
そして . . . 彼の年の日が
不毛で実りなきものにならんことを
その中に享楽は存在せず
その日を呪うのは彼のみにて
レヴィヤタンを . . .


補遺 01

以下の記録は、████より回収された、現在では行方不明または死亡していると考えられる警察官、ローレンス・ヘスター氏のボディカメラ映像です。

ログ開始


████/12/23 14:20:54 -0500
AXON BODY 3 X6038RFZ12

身体装着型カメラ映像 - ヘスター警官

ヘスター警官はマンションの一室の玄関を繰り返し叩いている。

ヘスター警官: ███ ████ ████警察署です!

ヘスターは大きな音でノックを続ける。

ヘスター警官: ███ ████ ████警察署です!どなたか中にいますか?

ヘスターはしばらく待つと、無線に手をかける。

ヘスター警官: ███████通り██について、4人家族へのウェルフェア・チェック3の応援を要請します。母親は今朝仕事場には来ず。子供も学校に行っていません。また誰も呼びかけに反応しません。

他の隊員が返答するが、録音では音声が不明瞭である。

へスターは廊下を進むと、壁に耳を当てる。中からは叩くような音が不規則に聞こえる。

へスターは玄関の正面に戻る。

へスターに無線が入り、他の警官が話しはじめる。

へスター警官: 待って、ゆっくり話してください。

警官が数字の羅列を伝えると、へスターは携帯電話を取り出しその数字を入力する。マンションの中からかすかに着信音が聞こえる。

へスター警官: ███ ████ ████警察署です!ドアを開けなければ、このまま突入します!

少しの間ののち、へスターはボルトカッターを取り出し、戸枠に差し込む。それを上にスライドさせ、ドアチェーンを強引に外す。

ドアはゆっくりと軋みを上げながらひとりでに開く。内部は真っ暗である。

ドアが開き続けると、へスターの立っている廊下が急激に暗くなり、カメラには何も映らなくなる。

へスター警官: いったい何が……

へスターは部屋の中に向け懐中電灯を照らす。

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ラミソン宅の玄関内部。

へスターの懐中電灯が玄関を不均等に照らす。数歩前進したのち、立ち止まる。

アパートの中に進むにつれ、重い足音に似た叩くような音が聞こえる。

へスターはゆっくりと玄関へ進む。

叩くような音は激しくなり、やがて完全に止む。

へスターは20秒間動かずに立っている。録音からはほとんど荒い呼吸のみが聞こえる。最終的に、へスターは中に入っていく。

へスター警官: ███ ████ ████警察署です、誰かいませんか?

へスターの声はかすれている。左の方からまた叩くような音がすると、すぐに音が止む。

へスターは左を向くと音の方向へ歩みを進める。足元では床板が軋み、部屋の中にこだまする4

叩くような音が大きく、そして速くなる。へスターのボディカメラが揺れる。

へスター警官: すみません?

へスターはさらに数歩進む。

へスター警官: ███ ████ ████警察署の者ですが。

叩くような音が止む。へスターはさらに二歩進む。

音が再び鳴り始める。へスターのすぐ右隣の部屋から聞こえる。懐中電灯を音源と思しき場所に向ける。

thumpingnoise.png

洗濯部屋。

懐中電灯が大きな洗濯機に向けられる。電源が付いており、回転によって木製の床をゴトゴトと叩いている。

へスターはため息をつく。ボディカメラの揺れが止む。

へスターは洗濯部屋の繋がっているより大きな部屋の中央の方へ向き直る。

familyroom3.png

のちに7歳のジェイミー・ラミソン、1歳のエミリア・ラミソンであると確認された。いずれもこの家の住人。

ヘスターは後方へ跳び退く。2人分の目と歯が部屋の中央に見えている5

ヘスターはそれらに駆け寄ると、顔のパーツのあるあたりを掴もうとする。彼の手は暗闇に溶け込み、何も触れられない。歯の大きい方に手を近づけると、指が歯の輪郭を伝っているのがようやく見えている。

無線が入り、警察官が喋り始める。ヘスターからの返答はない。

無線の音声は続くが、ヘスターのカメラは完全に動きを止める6

無線の音声は録画の終了まで聞こえている。


後日、ノア・ラミソン牧師が住居内で子供らと同じ状態で発見されました。財団エージェントが接触した際、当初彼が寝室から喋りかけてくるものであると勘違いしましたが、後にアナログラジオが創世記6章の一節を繰り返し再生し続けたものであると判明しました。


補遺 02

12/25、 東部標準時21時に撮影されたニューヨーク、マンハッタン・スカイラインのライブ映像。
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ドローンにより、マンハッタンが撮影された未編集の画像。

同じ画像で、彩度および露光の設定を1000%にしたもの。
nycdarklineexposed3MINE.png

市域からは悲鳴の大合唱が響き、暗黒の人型実体300万体が朝の空に立ち昇っている。

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