SCP-3251-JP
評価: +1+x
blank.png
%E3%82%B5%E3%83%8C%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%88%E8%A3%BD%E5%A3%B0%E5%B8%AF

SCP-3251-JP CGモデル

アイテム番号: SCP-3251-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-3251-JPはSCP-3251-JP-Aの咽頭部に組み込まれた状態で、生物サイト-8102の生物収容ユニットで保管されます。ユニット内部には音声遮断装置の設置、A個体には頸部に不可聴域周波数を相殺する首輪型の音響モジュールの装着が定められており、外部への音声漏洩を防いでください

SCP-3251-JP-Aによる実験は性質上、完全な日没が確認された時点から翌日の日の出までの間に限定され、酉端とりはし主任研究員の監視の下、指定されたDクラス職員のみに出現した「ナン」の摂取が許可されます。この実験期間中、認識障害を理由に外部の医療機関へアクセスした人物が報告された場合、職員はその人物に接触し、問診テストを行ってください。その中で「太陽」や「時間感覚」などの既知の概念に関連した認識異常が確認された場合、クラスA記憶処理剤の処方と共にカバーストーリー「一過性の認識障害」を適応してください。

サイト外部にてネコ科動物の「異常鳴き」もしくは「ナン」の異常出現が確認された場合、機動部隊か-76("カレー同好会")を現地に派遣してください。機動部隊員には解析装置を含むサンプリング機器の持ち出し、必要に応じてカバーストーリー「過剰生産」「猫の集会」の何れかを流布することが許可されます。

説明: SCP-3251-JPは通常のサヌカイト(sanukite)1と比較して筋繊維に似た柔軟性を有するSCP-3251-JP-1を素材として作製された、ヒト科発声機構型の構造体です。現在の所持者であるSCP-3251-JP-Aの「鳴き声」に呼応する形で異常性を持つ「ナン」を出現させます。

当該オブジェクトは、岡山県██町のインド料理店に訪れたAgt.南度みなわたりが注文した物とは別のナンが出現する異常現象に遭遇した際に収容されたSCP-3251-JP-Aの咽頭部から発見されました。

透過検査により気道内側表面には「保食」の文字と判読不能の文字が混在した二行にわたる文字列が確認されています。現時点では、この文字がSCP-3251-JPが有する一連の異常性に関連があると捉え、文字による権能擬似再現や神格実体の干渉といった方面での分析が進められています。

IMG_0881.jpeg

SCP-3251-JP-A(撮影: Agt.南度)

SCP-3251-JPを内包するSCP-3251-JP-Aは一般的にダイリュートキャリコと呼ばれる推定5歳程の雌の三毛猫(Felis silvestris catus)で、通常のネコ科動物と同じ生活サイクルで管理されています。内部のSCP-3251-JPの分離手術後に保護団体へ譲渡する案が検討されていましたが、外科的摘出の困難さからこの譲渡案は棄却されました。

SCP-3251-JPの初期収容段階では、SCP-3251-JP-Aが「ナーン」もしくは「ナァン」と形容される鳴き声を発した際、半径5メートル以内にカレーを含めたインド料理全般を摂取しようとした人物の下へ「ナン」を出現させる召喚型の異常性2を持つオブジェクトであると分類されていました。しかし、20██/07/06に発生したSCP-3251-JP-Aの脱走事案において、これまで報告されていた既知の異常性とは異なった異常性の発生が確認されました。(補遺-3251-JP.1参照)


補遺-3251-JP.1: SCP-3251-JP-Aの再収容から2時間後、SCP-3251-JPの実験に参加していたDクラス職員2名、SCP-3251-JPの研究チームとは無関係の職員3名から「時間感覚」に関連したあらゆる認識の喪失が報告されました。SCP-3251-JPの管理責任者である酉端主任研究員は、これまでに行われた摂取実験の結果3に着目し、SCP-3251ーJP-Aによって出現した「ナン」を対象者に摂取させることで異常性からの回復が見込める可能性を提案。この提案はサイト-8102管理官である██博士により承認されました。

以下は当該事案におけるAgt.南度と対象者(D-9312)のインタビューログからの書き起こしになります。

対象: D-9312
インタビュアー: Agt.南度
付記: 当該記録は20██/07/06 16:35:00に記録されました。


<再生開始>

Agt.南度: D-9312、君は今が「夜中」だと思っているんだね? 外はこれだけ明るいのに。

(Agt.南度は席から立ち上がり、インタビュールームの西側につけられた窓に近づき、遮光カーテンを開ける。窓の向こうでは晴天が広がっている

D-9312: (窓の外を見た後、困惑したように首を傾げる)真っ暗だろ?星も見えるし。

(Agt.南度は机に戻り、端末を手に取り操作する。)

Agt.南度: じゃあ、これが何かわかるかい?(画面には高高度撮影された太陽の写真が写っている。)

D-9312: ……(画面を一瞥したのち、わずかに顔を顰め、端末から視線を逸らす)

Agt.南度: D-9312?

D-9312: ……あ、ああ。その、あんまり見たくないんだ。悪いけど、それをこっちに向けないでくれねえか?

Agt.南度: なぜ?

D-9312: なんか、怖いんだよ。怒られてる感じがして。ただ笑ってる女の写真なのに。

<中略>

Agt.南度: ……では、D-9312。貴方にはこれを摂取してもらう。

(Agt.南度はD-9312の前に「プレーンナン」を置く。)

D-9312: またこれかよ……。食うってば、いただきます。

<中略>

(プレーンナンの摂取後、D-9312は「太陽」に関連した認識障害からの回復を示す。Agt.南度は画像を見せた時の反応について質問する。)

Agt.南度: ──ところで、君にはこの「太陽」が何に見えていたんだい?

D-9312: ……笑ってる女の写真。けど、なんか怖かった。あと、気まずさとかもあったと思う。こう、取り返しのつかない事をした後みたいな感じの。

Agt.南度: それは「ナン」を食べた後も?

D-9312: いや?全く無い。むしろ、さっきまで怖がってたのが謎なくらいだ。

<再生終了: 20██/07/06/17:05:09 >


終了報告書: D-9312がナンを摂取した直後より、症状が確認された職員に認識異常からの回復が認められました。これにより「ナン」の摂取はこの認識異常の発生を抑制する他に、回復の鍵となるプロセスであると断定されました。
この異常性が発現した対象者には直近での食事記録や年齢等に一貫性はなく、当該異常性は物理的な時間経過や距離を問わない長期的な影響の残留があると考えられます。

Dー9317のインタビューにおける発言には認識異常の様子を含め、既知の日本神話と合致する部分が複数見受けられ、SCP-3251-JPに刻まれた「保食」の文字が「保食神うけもちのかみ」の名4を冠している可能性が浮上しています。しかし、当該神性の持つ権能からすれば「ナン」のみが出現する状態に疑問が残るため、完全な断定には至っておりません。

事案収束後に行われた確認実験では、A個体が出現させたナンを摂取したことのある人物(以後、対象者と呼称)には、全員に「時間感覚」「天体概念」に関連したあらゆる認識・記憶改変事象と「太陽」に対する畏怖感情が確認がされています。これまでの記録上、当該認識異常からの回復はいずれも対象者自身によるナンの消費以外では認められていません。

追加実験中、サイトー8102から[編集済]km離れた医療施設で類似する認識異常の発症が確認されており、このオブジェクトによって発現する認識異常には、実質的な影響限界距離は存在しないと考えられます。

追記: SCP-3251-JP-Aの鳴き声に対し高性能音響機器によるスペクトル解析を行った結果、40kHzの周波成分から未知の周波成分が抽出されました。解析の結果、その75%は非異常性のサヌカイト製石琴からサンプリングした波形パターンと一致し、23%の部分からはヒトとネコ科動物が混ざり合った波形パターンが検出されました。残りの2%からは既存のデータに無い波形パターンが収集され、この部分には財団が過去に接触した神格実体の音声データに含まれる波形値との僅かながらの類似点が確認されており、調査が続けられています。

今回のインシデントで確認された認識異常の潜在保有率および発現時の被害規模を鑑みて管理・実験手順の更新が行われます。


補遺-3251-JP.2: 20██/09/09、香川県██市の山間部の洞窟にて異常な柔軟性を持つサヌカイト(以後、SCP-3251-JP-1と呼称)の出土が確認されました。洞窟内部は入り口から2m進んだ先より全長20m、深さ5.6mの逆円錐台状に沈下しており、底となる地面層にSCP-3251-JP-1を内包する地層が露出しています。地形・地質学的調査により内部の沈下は自然侵食によって形成されたものではなく、採掘による人為的な沈下であると推定。過去に何者かが長期的にSCP-3251-JP-1の採掘を行っていた可能性が考えられ、Agt.南度が追跡調査を行っています。

洞窟より回収されたSCP-3251-JP-1のサンプルからは以下の性質が確認されました。

  • 筋繊維に似た柔軟性を持ち、変形・切削・温度変化に伴う結晶構造の変化を示さない。
  • 通常のサヌカイトでは確認されないマイクロスケールの空洞構造が内部に形成されている。
  • SCP-3251-JP-1から発生する音の周波数は簡易的な加工で調律が可能である。
  • 小型哺乳類を対象にした生体部位への移植実験では、SCP-3251-JP-Aの体内に存在するSCP-3251-JPと同様に一切の免疫・生理的拒絶反応を示さなかった。

これらの性質は非摘出検査で得られたSCP-3251-JPの調査データからも確認でき、SCP-3251-JPがSCP-3251-JP-1を加工して作製されたものであると判明しました。

調査後、財団はこれ以上の採掘を防ぐため当該地域一帯を財団フロント企業の私有地として所有することを決定。洞窟周辺には熱感知式カメラと無線ドローンによる監視が行われています。

追加報告書 - 日付: 20██/12/14 報告者: Agt.南度
文献調査の結果、洞窟周辺には18██年頃まで鉱石の採掘と加工を生業とする小規模集落が存在していたことが確認されました。また、当該地域一帯の人別帳類5の記録によると17██年から18██年かけて起きた全国的な飢饉においての死者の記述が極端に少なく、当時の周辺環境を鑑みても、何らかの未知の方法による食料供給の手段があったと推測できます。

現地調査で当該集落跡及び社跡地を発見しましたが、経年劣化による建物の損壊が著しく集落の生活の痕跡を示す物的証拠は、比較的損壊の少なかった民家に残されていた生活道具一式、囲炉裏および竈の内部、枯れ井戸の底から発見されたSCP-3251-JP-1の砕片(人為的な破壊が見られる)以外に目ぼしい発見は得られませんでした。現在、民家に残されていたSCP-3251-JP-1の残骸は組成分析用のサンプルを取った後、研究チームによる修復復元を試みられます。


補遺-3251-JP.3: 20██/03/12、岡山県██町内の複数の飲食店(インド料理屋を含む)で、SCP-3251-JPの状況と酷似したナンの異常出現イベントが確認される。調査員を派遣し現地調査を行うも発生源の特定には至りませんでした。また、回収されたナンからはこれまで確認された異常性は認められませんでした。事態発生前後にSNS上で野良猫の「異常な鳴き声」に関する投稿が複数確認されており、SCP-3251-JP-Aとは別個体の存在していると考えられ、現地での捜査が続行されています。


特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。