SCP-3268-JP

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Item #: SCP-3268-JP
KETER
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オリジナルのフタバスズキリュウ標本。

特別収容プロトコル: SCP-3173-JP 1内の国立科学博物館、日本館3階北翼の入り口および階段を封鎖し、付近の立ち入りを禁止してください。周辺のオブジェクトの回収はサイト-81UTの保安・収容セクション主導で行われます。

説明: SCP-3268-JPは、フタバスズキリュウ(Futabasaurus suzukii)復元骨格の、自立移動する複製です。SCP-3173-JP内の国立科学博物館、日本館3階北翼に当たる部分を主な縄張りとし、通常は室内の空中を移動しています。

Slasmoeaurus.jpeg

コープによるエラスモサウルスの復元図。

SCP-3268-JPを構成する個々のパーツの形状は、ベースライン現実上の対応物と一致していますが、大きな違いとして尾骨の先端に頭骨が接続されており、前肢と後肢が逆になった状態で再構成されています。

この形状は、かつてエドワード・ドリンカー・コープ2によって提唱され、後に否定されたエラスモサウルス(Elasmosaurus platyurus)の復元図と類似しています。また、個々のパーツは破壊耐性を有しており、強い衝撃により分解されたとしても短期間で元の構造へ復元されます。

SCP-3268-JPはヒトに対して非常に敵対的であり、

  • 口腔付近からの火炎放射
  • 放電現象およびそれに伴う停電
  • 現実改変による強風および降水

等の異常な手段を用いて危害を加えようとします。これらの攻撃の影響は展示室内にとどまる他、対象の外見が現代日本において一般的に女性らしい特徴を有する3場合、この敵対性はある程度軽減される傾向があります。

また、SCP-3268-JPは時折展示室を脱出し、周囲に存在する物品を前肢を用いて持ち帰ります4。蒐集している物品の傾向として最も多かったのは、館内に設置されていた消毒用のアルコールであり、その他で多かったのは女性用の服飾品を装着した展示用マネキンや貴金属類でした。この行動の理由は完全には解明されてはいませんが、展示室内の探査では、収集された消毒用アルコールの中身が空になっていることがわかっています。

上記の攻撃方法(火炎放射、雷嵐の発生)や女性への敵対性の緩和、アルコールや女性型のマネキンを筆頭とした蒐集行動等、SCP-3268-JPの性質は、民間伝承における、いわゆる「ドラゴン」を想起させる特徴と大部分が一致しています。

補遺: SCP-3173-JPをサイト-81UTの拡張部として扱うにあたり、内部に存在する異常物品の調査は重要度の高い業務でした。しかしながら、SCP-3268-JPの存在によって、国立科学博物館の日本館にあたる部分の調査は十分に実施できていませんでした。

この状況の解決策となりうるオブジェクトとして注目されたものが、2023/11/17にAnomalousアイテムとして指定されたパッシブ・アノマリー5のSCP-3173-JP内における複製であるAO-05UTです。

sword

AO-05UT-JP

アイテム番号: AO-05UT

説明: 爬虫類の首に当てた場合、その爬虫類の頚骨を瞬時に分離し、無力化する直刀。

東京国立博物館でパッシブ・アノマリーとして展示されていた『水龍剣6』のSCP-3173-JP内におけるコピーであり、実験によって異常性が判明しました。その後、異常性が爬虫類の骨格模型にも適応されること、破壊耐性を持つ爬虫類がAO-05UT-JPによって無力化されたことが実験によって判明しています。

これらの情報をもとに、サイト-81UT研究・開発セクションおよび異常芸術セクションより、次のような提言がなされました。

SCP-3268-JPの無力化に対する提言


SCP-3268-JPは、周囲の物体を自らの縄張りへと持ち去るため、財団によるSCP-3173-JP内部のオブジェクトの調査を困難にしている。加えて、サイト-81UTの拡張部としてSCP-3173-JPを運用するにあたって、敵対的なオブジェクトの存在は業務に多大な支障をもたらすだろう。SCP-3268-JPを無力化、もしくはより安全な状態に変化させることは今後サイト-81UTを都心部のオブジェクトの収容に活用する上で不可欠である。

SCP-3268-JPは海棲爬虫類の化石で構成されており、AO-05UTを用いることでその首を切断することができるだろう。しかし、オブジェクトは再生能力を有しているため、これだけで簡単に無力化できる可能性は低い。そこで、SCP-3173-JPの安定化にも使われた新たな価値の付加をその場で行う。

現在のSCP-3268-JPは、行動や形状から特に物語においてドラゴンが果たしていた"混沌"の象徴としての部分が体現されている。龍殺しの説話は混沌の世界を英雄ないし聖人が秩序によって再構成するという意味合いがある。無力化後即興で状況の芸術的表現を行うことでSCP-3268-JPの性質が秩序へと再構成され、混沌の象徴から単なる英雄の当て馬の象徴にすることが可能だと考える。

サイト-81UT 研究・開発セクション長 岡田 涼子
同上 異常芸術セクション長 安藤 龍介


この提言が行われたことによって、AO-05UT-JPを用いた無力化作戦の実行が可決され、無力化試行-3268が計画されました。この作戦において実際にAO-05UTを使用する人員として、保安・収容セクション内の黒原くろはら 直人なおと 警備員が選ばれたほか、状況の芸術的表現によるSCP-3268-JPの再構成には、サイト-81UTでコンサルティング契約が結ばれている羽柴はしば 竜洋たつひろ7が志願しました。

無力化は以下の手順で行われます;

  1. 日本館3階北翼周辺に、黒原警備員及び羽柴氏の入った箱を設置する。この際、箱の内部には作戦に使用する物品のほか、消毒用アルコール等SCP-3268-JPが頻繁に蒐集する物品が入っている。
  2. 箱がSCP-3268-JPによって展示室内部に持ち込まれた際、黒原警備員が箱から脱出し、AO-05UTを用いてSCP-3268-JPの頸部を切断する。
  3. SCP-3268-JPの頸部が切断された瞬間、羽柴氏が箱を脱出し、キャンバスに状況の芸術的描写を行う。この際、迅速な絵画の作成を可能にする、Anomalousアイテム相当の異常な画材の使用が許可される。

第一次無力化試行-3268


主要関係者:

  • サイト-81UT所属 財団職員
    • 黒原 直人 警備員
  • 異常芸術コンサルタント
    • 羽柴 竜洋 氏

<記録開始>

[黒原・羽柴両名は背中合わせになり、箱の中に座っている]

黒原: ⋯⋯しかし、ここの作り手であるあなたが、鎮圧作戦に志願するとは思わなかった。

羽柴: あくまでこれは私の芸術のため。私はいたずらに死や血、暴力と結託した芸術など認めないのですよ。それに、以前は貴方達によってこの『ハコ』が流用されるのを見ていることしか出来なかった。今度は自分自身の手で『ハコ』とその落とし子たちに決着を 

黒原: [遮り] 静かに。何か来る。

[両名沈黙。数秒後、SCP-3268-JPのものと思われる音声が発せられ、箱が展示室内に運び込まれる]

黒原: [箱の穴から外を覗き] 侵入成功。これより箱から脱出し、SCP-3268-JPの頸部切断を試みます。[羽柴へ向かって] 首が切れたらサインを出す。それまで待機していてくれ。

[黒原がAO-05UTを保持し箱の外部へ出る。周囲の景色はベースラインの日本館3階北翼と類似しているが、長髪のウィッグを被ったマネキンや、日本館で実際に展示してあるものと類似した鉱物、自律移動する異常性を付加された物品等が散乱している]

黒原: SCP-3268-JPは⋯⋯いました。後ろから狙います。

[SCP-3268-JPは床に伏せ、蒐集した物品を眺めているように見える。黒原が近づこうとした瞬間、頭部が黒原の方を向き、叫び声が発せられる]

黒原: [AO-05UTを構えて] 見つかったか!

[SCP-3268-JPが口腔から火を放ち、急接近する。黒原は回避するが、炎は周囲のアルコールに引火し、激しく燃焼する]

黒原: 待て⋯⋯そっちは⋯⋯

[SCP-3268-JPが羽柴の入った箱へ接近し、明確に羽柴の方に向く]

羽柴: ⋯⋯やあ⋯⋯ご機嫌、いかが⋯⋯

[SCP-3268-JPと羽柴の叫び声。羽柴はパニック状態となり、SCP-3268-JPから逃れようとするが、SCP-3268-JPの敵対行動は加速し、周囲の物品を破壊しながら羽柴氏を追跡する]

羽柴: た、助けてくれ!

黒原: こっちだ!

[黒原がSCP-3268-JPと羽柴との間に割り込み、AO-05UTによって羽柴への噛みつき攻撃を受ける。SCP-3268-JPはさらに興奮状態となり、館内に強風を伴った降水が発生する。これ以上の続行は危険と判断され、撤退指示が出された]

黒原: [舌打ち] 先に撤退しろ! 俺が倒す!

羽柴: し、しかし⋯⋯

[羽柴は展示室から逃走するが、黒原は命令を無視しSCP-3268-JPと対峙する]

黒原: このまま帰るわけには⋯⋯[風によって飛んだ物品をAO-05UTで叩き落としながら、SCP-3268-JPに接近する]⋯⋯いかないんだ!

[SCP-3268-JPが落ちていた消毒用アルコールを口部で挟み持ち上げ、その内容物を口蓋内部へと飲み込む。アルコールは消失したように見え、SCP-3268-JPの動きがより活発になる。黒原はSCP-3268-JPに切り掛かるが、攻撃は回避され、逆にSCP-3268-JPの尾部の攻撃を受け倒れる]

<記録終了>

作戦後、羽柴氏は無事に展示室を脱出しました。また、黒原警備員とAO-05UTは現場付近で待機していた機動部隊によって回収されました。SCP-3268-JPのもたらした降水のため、炎による展示室の損傷は軽微なものでした。SCP-3268-JPの無力化自体は失敗したものの、映像記録はSCP-3268-JPの詳細な振る舞いの記録を残しており、両名の回復を待って第二次無力化試行の実行が可決されました。

対話記録-3268


主要関係者:

  • サイト-81UT所属 財団職員
    • 梅山うめやま 聡行さとゆき 警備主任 (保安・収容セクション長)
    • 黒原 直人 警備員
  • 異常芸術コンサルタント
    • 羽柴 竜洋 氏

この対話記録は、第二次無力化試行の内容を黒原・羽柴両名に伝えるほか、両名のカウンセリング目的を兼ねたものとなっている。


<記録開始>

[会議室内で3名が沈黙している]

梅山: ⋯⋯[黒原に向かって] さて。まずはどうしてあんな行動をしたのかについて、説明してもらえますか?

黒原: あと少しであいつを、SCP-3268-JPを、倒せると思ってしまったんです。何もできずに撤退したくなかった⋯⋯本当に申し訳ありません。

梅山: 今回の作戦においては、SCP-3268-JPの首を切る人物と、それを描く人物、両方が必要であった事はわかっていますね?

黒原: ⋯⋯はい。

梅山: 基本的に、作戦時は通信の命令を聞くべき、ということも?

黒原: ⋯⋯はい。[数秒間の沈黙] あの⋯⋯後任は誰になるんでしょうか。

梅山: 今のところ、人員の再編成は予定にありません。

黒原: [驚く]⋯⋯それはどうして⋯⋯

梅山: 確かに第一次無力化試行での君の行動は少々問題ではあった。君を「"英雄"にふさわしくない」と思う人間もいないわけではない。しかし、君は普段から品行方正であり、現に自分の所業を反省しています。

[黒原が顔を上げる]

梅山: 一つの失敗が"英雄"としての価値を無くすことはありません。むしろ、それは君が人間であり、挑戦に果敢に立ち向かう勇気を持っていることを示している。こんなことを言うのも何ですが、あそこで命令を無視したことで観測された新たな行動パターンもありましたしね。

羽柴: 実際、先日私を竜の一噛みから守り抜いたあの覚悟。十分、"英雄的"なものでしたよ。

梅山: もちろん、こちらの言うことをもはや聞くつもりがないというのなら、別の人員を探すことにしますが?

黒原: ⋯⋯いえ。やらせてください。

羽柴: そう来なくては。[笑う]

梅山: [羽柴に向かって] あなたは⋯⋯いきなり目の前に爬虫類の骸骨が現れても、驚かないことです。

羽柴: え、ええ。私も少々慌てすぎたようです。申し訳ない。

梅山: さて、第二次無力化試行での相違点についてだが⋯⋯まあ、つまり⋯⋯君たちには女装をしてもらうことになりました。

黒原: 女装?

羽柴: 女装というのは 

梅山: 敵対性を抑えるために、SCP-3268-JPのドラゴン的性質を利用するのだそうです。なんでも、ドラゴンは女性に弱く、スサノオの八岐大蛇退治しかり物語上の英雄たちは女性のフリをしてドラゴンを討伐したとか。頼まれてくれますね?

黒原: は、はい。

羽柴: お安い御用です。

<記録終了>


第二次無力化試行の大まかな作戦の流れは第一次と同じですが、SCP-3268-JPの敵対性を削ぐために、黒原・羽柴両名が女装をして箱に入り待機します。SCP-3268-JPが蒐集したアルコールを明確に消費している行動が観察されたため、爬虫類に対して催眠作用のある薬剤が加えられたアルコールが作戦の1週間前から展示室内に投入されています。

第二次無力化試行-3268


主要関係者:

  • サイト-81UT所属 財団職員
    • 黒原 直人 警備員
  • 異常芸術コンサルタント
    • 羽柴 竜洋 氏

<記録開始>

[黒原・羽柴両名は背中合わせになり、箱の中に座っている。なお、黒原は長髪ストレートのウィッグにワンピース、羽柴はポニーテールのウィッグにエプロンドレスを装着している]

黒原: 準備は万端。今回こそは必ず、仕留めてみせる。

羽柴: ええ。もちろん危うくなったら撤退することですよ。

黒原: そういえば、どうしてメイド服にしたんだ? 絵を描くのに邪魔じゃないか?

羽柴: エプロンドレスは仕事着ですから、むしろ絵を描くのに最適なのですよ。そちらこそ、ワンピース、お似合いですよ。

黒原: 身軽だから選んだだけだ。嬉しくないぞ。

羽柴: [笑う]⋯⋯おっと、ドラゴンが来たようですね。

[両名沈黙。箱が展示室内に運び込まれる]

[黒原がAO-05UTを保持し箱の外部へ出る。周囲には以前投入された消毒用アルコールや、弥生時代の女性の被服のレプリカ、以前の侵入に用いた箱等が乱雑に転がっている]

黒原: [箱の穴から外を覗き] 侵入成功。SCP-3268-JPは⋯⋯! 見つかったか。短期決戦で行きます![AO-05UTを構える]

[SCP-3268-JPが黒原を追跡する。挙動は非常に不安定であり、幾度となく周囲の棚に衝突している]

黒原: そっちが寝ぼけてるなら、こっちから近づかせてもらう!

[SCP-3268-JPは攻撃しようとするが、その勢いは弱く、黒原は攻撃を容易に回避している]

黒原: [SCP-3268-JPの攻撃を受け流しながら] 女に見えるからって、手加減は無用だ![AO-05UTを振り上げる]

[SCP-3268-JPが突如叫び声を上げ、周辺から雷のような光が発生する。展示室内が暗転]

黒原: 停電か! こんな時に⋯⋯

羽柴: 奴の雷の影響です!

[おそらくはSCP-3268-JPの能力により強風が吹く音。SCP-3268-JPの物理攻撃の勢いが急速に強くなり、黒原は呻き声を上げる]

羽柴: 大丈夫ですか!

黒原: ああ。ただ [呻き] 周りが見えないだけさ⋯⋯[呻き]

[羽柴が突如入口方向へ走り出し、展示室の扉を開ける。光が黒原とAO-05UTを照らす。AO-05UTの光がSCP-3268-JPの顔面に反射し、SCP-3268-JPはよろめいた様子を見せる]

羽柴: ⋯⋯これでよく見えるでしょう?[息切れ]

黒原: [振り向いて] でかした! さあ、これで終わりだ!

[SCP-3268-JPの首が切断され、胴体は地面に落下する。黒原は首を掲げ、羽柴に向かってサインを出す]

羽柴: 了解した!

[羽柴が箱内の画材を用いて、キャンパスに異常な速度で絵画を描く]

羽柴: ⋯⋯完成だ。

[羽柴がその場に倒れる]

黒原: よかった⋯⋯

[突如、黒原の掲げた頭骨が動き出す。同時に胴体の各骨も空中の一点をめがけて飛んでいき、骨格を再構成する。形状は、かつてのSCP-3268-JPのそれではなく、ベースライン上のフタバスズキリュウ復元模型のものと一致するように見える]

<記録終了>











報告書に更新があります!



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Item #: SCP-3268-JP
SAFE

特別収容プロトコル: SCP-3173-JP内の国立科学博物館、日本館3階北翼周辺はサイト-81UTの施設保守セクションによって損壊部分の修復が行われています。SCP-3268-JPの形状がフタバスズキリュウ復元模型の形状から変化していないか常時監視されます。

説明: SCP-3268-JPは、フタバスズキリュウ(Futabasaurus suzukii)復元骨格の複製です。以前は、人間に対する敵対性や蒐集行動のため、SCP-3173-JP内で高い脅威度を有していましたが、無力化試行-3268によって再構成が行われ、現在の状態に至ります。

現在、SCP-3268-JPはベースライン上のフタバスズキリュウと同様の形状で自律移動を行なっており、以前のような人間に対する敵対性や、蒐集のための展示室からの脱出はみられません。

Kurohara

題:暗闇を断ち切る直刀

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