クレジット
タイトル: SCP-3269-JP - 上位存在であっても灰皿からの出火には気をつけなければならない
著者: kazuyi_mizu
作成年: 2025
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アイテム番号: SCP-3269-JP
オブジェクトクラス: Keter
ライブの演出と誤解され撮影されたSCP-3269-JP出現時の画像
特別収容プロトコル: SCP-3269-JPは不明点が多く、収容には至っていません。出現時にはSCP-3269-JPの規模に応じてカバーストーリー「タバコのポイ捨て」または「ガス爆発火災」を流布してください。SCP-3269-JPの出現監視及びSCP-3269-JP-1の位相座標1特定作業を継続し、SCP-3269-JP-3の捜索を続けてください。
説明: SCP-3269-JPは不定期に日本国内のランダムな位置に出現する炎に似た外見の第三種空間穿穴2です。その性質から精密検査は行われていませんが、非異常の炎のように直接延焼はしないものの高温によって火災を引き起こしうることが確認されています。出現が確認されたSCP-3269-JPの大きさは基本的には直径20~60cm程度で出現時間は20~30秒程度ですが、現在までに一件のみ直径15m以上で5分以上消失しなかったSCP-3269-JPの出現が確認されています。この出現を最後にSCP-3269-JPの再出現は確認されていません。
SCP-3269-JP-1はSCP-3269-JPが繋がっていると考えられている、基底現実に酷似した異空間です。日本国内にいるランダムな人物(以下"遭難者"と呼称)がSCP-3269-JP-1に迷い込むことが推測されていますが、サンプルの少なさから詳細な条件は不明です。遭難者はSCP-3269-JP-1内で不自然な寒気を覚える他、後述するSCP-3269-JP-2が灯火されていない状況下ではSCP-3269-JP-1内全体が前方を視認できない程の不自然な暗闇に包まれます。この暗闇はSCP-3269-JP-2以外の光源によって消滅しません。
SCP-3269-JP-1内には概ね基底現実と同一の建築やインフラ及び各種物品が存在しているにも関わらず、SCP-3269-JP-1内に遭難者以外の生物は確認されていません。また、当人以外の遭難者の痕跡は確認されているもののSCP-3269-JP-1内で遭難者同士が遭遇したケースは記録されていません。これらの事情にも関わらず食料品やインフラの劣化、無人であることによる発電所等の施設の機能停止は発生せず、人間が生存しやすい環境が維持されています。
SCP-3269-JP-2はSCP-3269-JP-1に迷い込んだ際に遭難者のすぐ近くに出現する松明のような物体です。見た目や大きさは遭難者によって異なり、遭難者が周囲3にいると自動的に灯火し遭難者の感じる寒気を軽減する他、SCP-3269-JP-1内全体の異常な暗闇を消滅させます。SCP-3269-JP-2は遭難者の未練を燃料としている可能性が示唆されていますが、詳細は不明です。
SCP-3269-JP-3はSCP-3269-JP-1及びSCP-3269-JP-2を作成、管理していると仮定された存在です。存在が確実視されていますが実在の確証はないことを留意する必要があります。
SCP-3269-JP-1及びSCP-3269-JP-2についての情報は全て最後のSCP-3269-JP出現時にSCP-3269-JPから出現した財団製の携帯型ボイスレコーダー4に残されていた音声データと写真を元にした推測です。詳細は補遺1を参照してください。
補遺1: 以下は当該ボイスレコーダーに記録されていたSCP-3269-JP-1内部の情報が連続的に説明された一連の音声記録の抜粋です。記録は全てSCP-3269-JP-1内部で当該ボイスレコーダーを拾得したと思われる民間人の加藤大輝氏によって録音されています。音質から音声記録3269-JP-66までは市販のスマートフォン5、音声記録3269-JP-67以降は当該ボイスレコーダーによって録音されていることが明らかになっています。また、虚偽の記録を残していると証言された部分については録音内容の内どの程度が虚偽か不明なため大規模なデータ除外を行っています。抜粋及びデータ除外が行われていない完全な記録についてはアーカイブを参照してください。
音声記録3269-JP-01 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
加藤氏: スタバとかで充電できるんだから動画を撮ろうと思いましたが、別にわざわざ動画で撮るべきものもないのでボイスメモ使います。それに充電切れは心配しなくて良さそうですけど、ずっと動画取ってたらスマホの容量があれなんで。
加藤氏: 状況を説明すると、大会……あー、俺が出る予定だったゲームの大会に行こうとして駅まで歩いてたら一瞬フラッとして、急に周りから人が居なくなりました。みんなが消えたというより俺がきさらぎ駅みたいな異界っぽい場所に入っちゃったんだと思います。心なしか世界が灰色っぽい気がするし。いや、これは気のせいかもです。
[風音]
加藤氏: あと、なんか勝手に燃える松明を持ってます。急に出てきたんですけど、これから離れるとめっちゃ寒いし暗い通り過ぎて前見えなくなるので持ち歩いてます。一応一瞬火を触ったりしても俺も周りも燃えません。熱くはあるのに紙ですら発火だけはしないのよく分かりませんが。若干変な臭いがするのだけ怖いです。
加藤氏: 他はちょっとよく分かりません。電波は通じてるし書き込みもできるけど誰も返信してくれないです。Twitterもインスタも全ての更新が途絶えてて、電話もかかるんですけど肝心の出る人が居ません。全部この世界の機器に繋がってるみたいで。あ、じゃあネットの書き込みも同じか。
[沈黙]
加藤氏: 何も起こってないから何も言うことがないですね。
[沈黙]
加藤氏: 一旦切りますね。お昼食べる時とかにまた録音します。
[再生停止]
音声記録3269-JP-02 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
加藤氏: 今はセブンのイートインスペースでパスタ食べてます。ちゃんと野菜も摂ってます。松明は傘立てに立ててます。かなりシュールです。てかこれ無限に燃えてるの凄いな。パスタ温め放題の永久機関だ。
[パスタを啜る音]
加藤氏: よく考えたらここらへんの食べ物がダメになったらどうすればいいんでしょう。食べる物減るのもヤバいし処理しないと虫とか沸く?なんならゴミ処理する人とかもいないんだからめっちゃ沸くよな。
加藤氏: というかそもそもおかしいですよね。人がいないからってすぐに電気や水道が止まることはなくても、交通事故とか、料理そのまんまとか、調理中で火事とか絶対起こるはずなのに。
[咀嚼音]
加藤氏: 道に車とかはほとんど無いんですけど、信号機だけいつも通り動いてます。流石にこんな状況で信号守ってませんけど。ご馳走様でした。
[ゴミ箱に容器を棄てたような音]
加藤氏: え、ちょっとゴミ箱に中身あるじゃん。誰かいる?
[再生停止]
音声記録3269-JP-03 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
加藤氏: 目的地までの道にメモ、というか書類落ちてました。俺はもう読んだんだけどこのスマホがこの書類みたいな記録になるかもなので内容を読み上げますね。あ、声が聞き取りにくいとかだったら写真見るか、あとメモ帳にもちゃんと内容メモってるからそっち見てください。 [風音] ちょっと風音うるさいですね。建物内に移動します。
加藤氏: ビギナーへ。目的がないと人間一瞬で狂うから何か目的を探せ。食べ物は劣化しない。生物がいないから虫とかもいない。ウイルスも確認できてない。インフラも何故か一切劣化してないからトイレとかも大丈夫。ただしゴミを回収してくれる人はいない。人とは会えなさそうだけど人の痕跡は見つかるので、もし自分の記録を残したいのなら私みたいにコンビニのプリンターで大量印刷してばら撒くのがオススメ。意味分からんけど多分私企業の提供してるネットとかもインフラ判定されて謎の維持を受けてる。でも電車みたいなのは流石にない。化け物とかは今の所見たことないから多分大丈夫。
加藤氏: これが表面です。事実ならとりあえず生きるのに不便はしなそうです。裏も読みます。
加藤氏: 80日目、今日はHUNTER×HUNTER6を読んでしまった。続きないのガチで死にたい。でもこれこの世界に居るからとかあんま関係ない苦しみだよな。明日はNARUTO読む。佐々木隼人。
[風音]
加藤氏: この佐々木さんは漫画読むのを目的にしたんでしょうか。確かにこの世界なら読み放題か……文量少ないし漫画に夢中で日記書くの飽きてそう。人とは会えなさそうで他人の痕跡は発見できる?のはどういう原理か分かりませんけど、俺が辿り着けたってことは他の人もこの書類にたどり着くかもしれないのでこれはここに置いておきます。それじゃあ眠くなってきたので今日はホテルで寝ます。
[再生停止]
音声記録3269-JP-06 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
加藤氏: よく考えたら自己紹介してませんでしたね。落ち着いてきたのでやっときます。加藤大輝です。22歳の大学四年生です。帰れた時にこれが流出したらあれですし今は住所とかは言わないでおきましょう。趣味は格ゲーです。内定もう取れてるんで最後のモラトリアムってことで沢山遊んで、それでこの異空間に巻き込まれた日は格ゲーの大型大会に出る予定だったんです。大会めっちゃ楽しみで、勝ちたかったのでめっちゃ頑張ってました。出たかったです。
[パチパチという燃焼音が入り込む]
加藤氏: あー… [ソーシャルゲームの起動音] ダメだ。ログイン日数は増えたけど始まる筈だったイベント始まってないや。
[沈黙]
加藤氏: すみません、録音終わりますね。機器自体は確保できてるので気分転換にトレモ7でもしてきます。
[再生停止]
音声記録3269-JP-21 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
加藤氏: 今日も佐々木さんのメモを見つけたんですけど、その、今読み上げます。
加藤氏: 411日目、あまり時間がないので簡潔に。遂にこの店にあった漫画全部読み終わりました。まだまだこの世界でやれることはあると思うんですけど、私は満足したみたいです。火がもう消えそうになってるので、多分これをばら撒いて終わりです。400枚くらいの私のノートの内何枚が他人に届いたのか分かりませんが、とりあえず私は満足しました。佐々木隼人。
[沈黙]
加藤氏: この火って消えるんだ。
[沈黙]
加藤氏: しんどくなってきたので一旦録音終わります。
[再生停止]
音声記録3269-JP-30 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
加藤氏: 今誰かの呼吸音が聞こえた気がして録音始めたんですけど、何も聞こえません。幻聴だったかもです。流石に精神的に厳しいかもです。
[風音]
加藤氏: あ、スマホ、が地面に置かれてます。えーっと、ロックされてないですね。
加藤氏: あー、メモアプリに一個だけメモがあって、Will8ってタイトルなんですけど、中身も英語だ。読めません。いや、流石に翻訳かけるか。折角届いたのに英語だから読まれませんでしたって、あまりにも酷いですよね。
[沈黙]
加藤氏: 間違ってるかもしれないけど、要約して読み上げますね。私は日本大好きで、念願の日本旅行に来て、階段を駆け降りてたらこの世界に迷い込んだ。でも折角だから日本全国回って、って凄いなこの人。北海道と沖縄も行ったのか。えーと、それで全都道府県楽しみ尽くしたから満足した。日本の生き物や日本人と会えなかったのは残念だけど時間があったお陰で日本語も覚えられたし、楽しい旅だった。こうして満足するまで火が消えないでくれてよかった。きっとこの火は死ぬ筈だった私の未練を燃やし尽くす火だったんだろう。願わくばこの記録が誰かに伝わってくれますように。らしいです。やっぱり消えるんですね。
[何かが転がる音]
加藤氏: 地面に適当に転がしても消えない火なのに、本当にそんな簡単に消えちゃうんですかね。
[再生停止]
音声記録3269-JP-38 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
加藤氏: 今更ですけど、みんながみんな満足して終わってるの変じゃないですか?だってここには人がいないんですから、たとえば素敵な恋がしたいだとか、人を救いたいとか、そういう人の遺言もあるのが自然なのに。
加藤氏: 脱出することを目標にしてた小林さんも太田さんも最後には終わりを受け入れてたし。ああでも終わりを受け入れてなかったら遺書なんて書かないしそもそも火が消えないのか。
[2時間程度の沈黙]
加藤氏: 日記帳落ちてる。
[20分程度の沈黙]
加藤氏: この人も俺と同じで格ゲー大好きな人間らしいんですけど、結局満足したみたいです。こんな飛び飛びの情報じゃ本当に満足してたかなんて分かりやしませんけどね。俺なら対人戦せずに満足なんてできませんよ。
[2時間程度の沈黙]
加藤氏: なんでみんなこんな小綺麗で断片的な記録で満足するんでしょうね……俺だったら俺をこんなとこに連れ込んだ奴をボコボコに殴ってやらなきゃ満足できませんよ。いるのか知りませんけど。
[再生停止]
音声記録3269-JP-62 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
[何かが焼ける音]
加藤氏: 調理が下手な俺でも焼肉屋なら確実簡単に美味い飯にありつけるのでいいですね。火も焼肉するために生まれてきたみたいなめちゃくちゃ便利なのがありますし。火力もちょっと未練を込めればこんな風に……手が空かないから録音にしてるせいで見れないか。後で見せます。
[創作上の火系呪文を詠唱する声。不要と思われる]
加藤氏: でもそろそろ簡単な調理くらい覚えたいかも。高級食材も調理器具も使い放題なんだからある程度食えるものはできるでしょうし、調理が面倒臭いからって何日もコンビニ飯ばっか食べてたらそりゃ気分も落ち込みますし。あと元々そういうもんだから松明の煙たさが気にならないのもグッドです。あれ、火……弱くなってる?うわっ!
[箸が落ちる音と風音]
加藤氏: ビックリした……急にめっちゃ燃えました。この火なんかちょっとブレあるんですよね。なんなら延焼しないと思ってたらちょっと燃え移ったことありますし。一応あれ以降床に雑に置いて寝るのは控えるようにしてます。とりあえず話戻しましょう。何でしたっけ、そうそうレモンダレに漬けたカルビを山程食えば元気が出るって話です。元の世界に戻っても活用できる知識で良いですね。
[沈黙]
加藤氏: もしかしてこの世界で機密情報とか漁りまくって元の世界に帰れば凄いことになるのか……めちゃくちゃ警備が厳重だった施設も素通りし放題扉壊し放題……ちょっと色々巡ってみます。
[食器の音]
加藤氏: でもどうすれば帰れるんだろ。実は満足したら死ぬんじゃなくて帰れるとかあるんでしょうかね。
[グラスを置く音]
加藤氏: 俺両親はもういませんし、友人と会えないことは未練ではありますけど、会えない限り満足できないって程ではないですね。はは、案外ゲームくらいしか未練じゃないや。俺思ったより薄情というか軽薄というか。ここに来る前も言われてたんですよ。お前ってゲームさえやれればそれで満足するんだから欲の無いやつだなって。友達周り加味しても俺は結構欲強いと思うんですけどね。
[再生停止]
音声記録3269-JP-67 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
加藤氏: 考えないようにしてたんですけど、ここって死後の世界なのかもしれないです。フラッとした直後にここに迷い込んだって言ったんですけど、あの感じは……なんというか、貧血のヤバい版みたいな感じで、正直なところみんなそのことはメモに書くと思ったんですけど、今まで見つけたメモではブラック企業で働いてたらだとか、横断歩道を渡ったらだとか、階段を駆け降りたらとか、みんな違って、それでいてみんな死んでそうじゃないですか。
加藤氏: そりゃ認めたくないですよ。2週間以上も考えないようにしてたんですから。でも満足して心残りをなくそうっていうならこの可能性には向き合わないと。その、これは俺が成仏するための過程っていう可能性を。
加藤氏: 何が言いたいかというと、本来死ぬ筈だったのにロスタイムが与えられたと考えて前向きに行きます!ということです。何もやれることがない無力感とは今日でさよならです。とりあえず最終目的地は決まってるので、そこに着いた時に後悔が無いように一杯寄り道していこうと思います。
[再生停止]
音声記録3269-JP-513 - 日付 20██/██/██
[再生開始]
加藤氏: はい!俺が本来出場する筈だった大会の会場前に到着しました!いや〜東京から大阪まで徒歩とはいえ普通は1ヶ月もかからないと思うんですけど、いっぱい寄り道していっぱい観光楽しんでいっぱい自分の人生について残してから来たので半年もかかっちゃいましたね!他の未練は全部解消してきた自信があります。ここで終わりです!
加藤氏: 会場はこのビルの8階のホールです!エレベーターが生きてて良かった。[エレベーターの到着音] ここを丸1日使うのって100万円以上かかるとかよく聞くんですけど、こんな状況だからタダで貸切だ。 [エレベーターの到着音]
加藤氏: …………お〜やっぱこの状態ですよね。車とかは無くなってるけど基本的には俺がここに迷い込んだタイミングの街、というか世界が保存されてる感じだったので、ここはちょうど対戦に使うモニターとかの設置中って感じですね。このでっかいホールに机と椅子がずらーっと並んでて、1列に50台くらいのモニターが並んでて、それが1,2,3,4,5,6列なのでモニターは300台あることになりますね。本当なら2400人集まって大会が進行することになってたので、これでも割と不足気味なの本当にやばい。
加藤氏: この台は本体が設置されてるので試合できますね。相手はいないのでコンピューターと一戦やりますか。
[ゲーム音とコントローラーの操作音]
加藤氏: あ、火が消えそうになってますね。これは、不安定とかじゃなくて、ああ、これは完全に消える奴だ。
[何かが叩き壊されるような音。モニターが叩き割られた音と推測可能]
加藤氏: はは……お前本当に音しか聞いてないんだな。[編集済み]さん9の推測通りだ。ふざけんな、満足してる訳ねえだろ、ざまあみろ!俺はここに競いに来る筈だったんだよ!満足なんてしてる訳ねえだろ!
[風音]
加藤氏: 変だと思ってたよ!400日で人生に満足するだけの漫画が読み切れるのか!?人がいてこその日本に決まってるだろ!?格ゲー好きな人間が対人戦せずに満足するなんてありえない!本当は満足してない奴を!勝手に火ぃ消してさあ!お前がそれらしく諦めさせてただけなんだろ!?俺がここに来ただけで満足したと思ったか!?たかがゲームの未練なんて大したことないって思ったか!?思ったよな!その為に半年かけて未練がないことを偽装した独り言続けてきたんだから!てか音聞こえるなら声だけじゃなくて発生してる音まで注意深く聞いとけ馬鹿!なんか噛み合ってないとか分かるだろ!
[強い風音]
加藤氏: [言葉の区切れ毎にモニターが叩き割られる音が入りながら]外からちょっと覗いただけで!断片的な記録で!そいつが満足したかどうかなんて!俺の未練!だって!俺が!今!どん!な!気持ちかなん!て!分かる訳ないだろ!思い上がるな!燃えちまえ!
[何かが燃える音とスプリンクラー作動音]10
加藤氏: 松明の火を消す為のアクションをした後はしばらく物や空間への延焼すら抑えられなくなるんだろ?マジでエージェントがどうやってそれを調べたのかは知らねーけどそう書いてあったよ。だから一発で消しきれないといけない。閉じ込めた人間が満足して未練の火が弱るタイミングを、音を頼りに推測して。普通にちゃんと満足して勝手に火が消えるのを待てばいいのに、時間を惜しむからそうなるんだ。同じ味が続くのは嫌か?
加藤氏: はは、騙そうとしてない奴相手でも何度かしくじってるんだから、騙そうとしてきたらそりゃ間違えるよな。俺はお前が作ったこの世界を燃やさせて貰うよ。掃除をサボって死体以外を放置するからこうなるんだよ、ばーか。あ、そうだ。今までせっせと俺がこの火で調理する時に延焼防いでくれてご苦労さん。
[沈黙]
加藤氏: はー。マジで嫌だ。死にたくない。
[沈黙]
加藤氏: あつっ。11何も残らないのは嫌だな。あー、だからみんなも記録してたんだ。
[沈黙]
加藤氏: でも死に際の叫びとか残したくないな。確かに遺書みたいな小綺麗な形で終わらせたくなるのも納得だ。色々説明できなくてすみません。今からあの人が残してた仮説全部話す時間もないと思いますし、一部だけ話しても誤解を生むだろうし、気力もないので、そっちで調査お願いします。これだけ情報があれば外部からの調査の方が正確だろうって書いてあったし、大丈夫でしょう?漏洩がうんぬんとかで財団って名前しかマトモな情報が書かれてなかったですけど、信じますよ。
加藤氏: あ、丸っきり嘘ではないんですけどあいつを騙すために途中からは結構嘘の状況とか未練の解消とかを話してたので、もしこの記録を真面目に全部順番に聞いてくれてた人がいたら申し訳ないです。ボイレコ拾ってからだから多分音質とかで分かる筈。それからこれだけは絶対伝えろって書かれてたんですけど、[編集済み]12、ごめん、愛してる。らしいです。全文はクソ長文で読み上げ時間ないので省略します。本当にごめんなさい。
加藤氏: 空間そのものが燃えたら元の世界に繋がる穴になるって書かれてたんで、俺も都合よく生還できないか、この状況にできたら試そうと思ってたんですけど、まあ、既に熱気やばいので、あの中は多分、熱くて無理だと思います。ワンチャン帰れてもまあその後死にそう。でも諦めてたらそれこそ未練も消えたカウントで火も消えてておかしくない筈なんで、俺まだ諦めてないのかな。延焼してるしもう関係ないのかな……いや、そうか。まだ解消できる未練があった。ありました。生還を考えなければ片道だけ、ワンチャン耐えられるか?
加藤氏: 「消滅耐性加工をしてあるからこれは元の世界まで壊れない」ってのを信じて写真や動画を諦めてまでデータ移行したので、まあ大丈夫だとは思いますけど、届くことを祈ってます。俺はここで解消できる心残りを解消してきます。それじゃあさよならです。斉藤、大内、馬場、拓也、亮、真田先輩、その他リアルのみんな!もむめ、あお、サーフィス、葦原、バラカス、プラム、ちゃあ、以下バカども省略!13みんなごめんな!バイバイ!
[ボイスレコーダー自体が床と衝突する音。火中に投げられたと思われる]
[30秒程度燃焼音と加藤氏の叫び声14が続き一瞬音が途切れる]
[基底現実で行われていたライブの音とSCP-3269-JPの出現を火災と勘違いした人々の悲鳴が5分程度続く。これ以降有意義な音声データは記録されていない]
[再生停止]
上記内容から、エージェント████がSCP-3269-JP-1内に残した情報を元に加藤氏がSCP-3269-JP-2を利用してSCP-3269-JP-1に何らかの損害を与えたことが推測されており、最後のSCP-3269-JPの出現原因もSCP-3269-JP-2を利用した放火と思われる行為が関係していると考えられています。15また、加藤氏の発言を考慮せずとも本音声記録の中に屋内での風音など不自然な環境音が入っていることから、SCP-3269-JP-3に該当する実体が存在する可能性は極めて高いです。
補遺2: 財団データベースを利用しIMP16の発生数を推定した結果、最後のSCP-3269-JP出現後はIMPの発生数が有意に減少していることが判明しました。17この分析結果及び新規のSCP-3269-JP出現が確認されていない事実からSCP-3269-JPの出現が停止した可能性が浮上しているため、SCP-3269-JP出現監視の予算を削減することが決定されました。SCP-3269-JP-1の位相座標の特定作業は継続されます。
20██/██/██追記: SCP-3269-JP-1の位相座標候補に不自然な虚数空間18が確認されました。現在当該虚数空間の調査とSCP-3269-JP-3の痕跡の捜索が行われています。
20██/██/██追記: 虚数空間内部で打撲痕のある焼死体が発見されました。現在当該死体についての検証が行われています。検証結果によって本オブジェクトのオブジェクトクラスが変更される可能性があります。









