SCP-3283-JP
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SCP-3283-JP

アイテム番号: SCP-3283-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-3283-JPはサイト-81ISの鳥類用収容室にて飼育されます。

種の存続に必要な個体数を保持するようにSCP-3283-JPは管理され、減少した場合は繁殖プログラムを実行します。繁殖プログラム実施の際に必須となる人体素材には、活用不能となった人的資源を再利用してください。(現在、人的資源を消費しない人体素材の開発が進行中であり、使用の承認と同時にこの項目は改訂されます)

SCP-3283-JPの影響を受けたとされる死体、またはSCP-3283-JPにより頭部の変形した患者が新たに確認されたとき、地域一帯に生息するツバメを対象に調査が実施されます。SCP-3283-JPが発見された場合、該当地域のツバメを可能な限り殺処分し、地域に監視員を派遣します。監視員は3ヵ月程度、SCP-3283-JPの宿主を保護してSCP-3283-JPの拡散を防止する職務に従事してください。早期段階に発見できた宿主のみSCP-3283-JPを摘出し、記憶処理とカバーストーリーを施してから解放します。

説明: SCP-3283-JPは人体頭部に寄生して繁殖する、ツバメ(Hirundo rustica)に擬態した生物です。

SCP-3283-JPに雌雄の区別はなく、単為生殖による繁殖を可能としています。生殖行動を除いた生態の多くはツバメとほぼ同一ですが、越冬のための移動はせず繁殖した地域周辺に留まります。

生殖が可能になったSCP-3283-JPは、人間の頭頂部を狙って口部から5mm程度の粒を吐出します。粒は内部に生殖細胞を含み、脂質に反応して溶解する性質を持ちます。実際に人間の頭頂部へと吐出された場合、粒は頭髪に受け止められてから皮脂によって溶解し、溶け出した液体は経皮吸収により体内へ浸透します。

液体の浸透後、SCP-3283-JPの生殖細胞は分裂を開始します。宿主となる人間を養分と水分の供給源として、皮膚と帽状腱膜/頭蓋骨の間で約2ヵ月ほど分裂を繰り返し、膨張していきます。生殖細胞は宿主の頭蓋骨を圧迫しながら成長しますが、成長速度が遅緩であるため大きな症状は現れず、軽微な痛みを除いて宿主は違和感を覚えません。

経過 SCP-3283-JP生殖細胞、および宿主の頭部状態
約1~10日 侵入した生殖細胞を起点に、最初に胚が形成される。胚は3~7個ほど形成され、それぞれが別個体として成長。胚は1mmにも満たず、宿主はその発生をほとんど知覚できない。
約11~20日 すべての胚が分裂を繰り返し、胚から胚盤が形成される。胚盤は膜を形成して個体同士の混合を防ぎつつ、後に起こる肉体の形成に向けて養分を蓄える。この他、1枚の共通した栄養供給器官が宿主頭部皮膚の裏側に形成される。これは胎盤のような役割を担うと同時に、胚盤の成長過程で宿主の皮膚を裂かないよう、胚盤を安定させる役割がある。このため、SCP-3283-JPは頭蓋骨を圧迫する方向で成長していく。
約21~45日 肉体の形成が開始される。胚盤を覆う膜は徐々に長球状に変化し、最終的に20mm×15mm程度の卵殻が胚盤を包む。卵殻の形成と並行して胚盤は細胞分裂を繰り返し、卵殻内部で幼体のSCP-3283-JPが誕生する。この成長を受けて宿主の頭蓋骨は半球状に陥没し、圧迫によって脳機能にも影響が生じる。しかし、頭部皮膚の裏側に形成された栄養供給器官が蓋となるため、触れた程度では異常の発見は困難という状態がSCP-3283-JPの孵化まで続く。
約46~60日 頭部の内部にて、SCP-3283-JPが孵化する。卵殻を突き破った個体から栄養供給器官を最初の栄養源として摂食し、空気穴を開けてから宿主頭部の皮膚を食い破ろうとする。また、孵化直後のSCP-3283-JPには宿主の頭部を連続で突くという行動が見られ、これが刺激となって宿主は野山などの自然環境へと誘導される。皮膚を破られる激痛と脳の圧迫による判断力の低下も命令に従う要因だと思われる。
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寄生された宿主の頭頂部、
卵殻が形成される時期のCTスキャン

SCP-3283-JPの群れが外界に露出するとき、肉体形成時の頭蓋骨圧迫と頭部皮膚の食い裂きによって、宿主頭部には深さ60mm程度の空洞が生じます。この空洞を、SCP-3283-JPはそのまま巣として利用します。

皮膚の摂食を終えたSCP-3283-JPは鳴き声によって宿主に空腹を知らせます。この鳴き声は人間が最も不快に感じる周波数の音を含んでおり、鳴き止むことを条件として宿主を特定の命令に従わせる作用があります。

鳴き声を受け、宿主は餌となる虫や植物の実を捜索してSCP-3283-JPに与える行動を取ります。地表近くを捜索するにあたり宿主は姿勢を低くしますが、SCP-3283-JPが落下しないように首の角度を固定するため、宿主の身体には大きな負荷が生じます。宿主の多くは一日の大半を四足歩行の体勢で過ごし、地面を這って餌を採取、それを頭頂部のSCP-3283-JPに与え続けます。SCP-3283-JPが成体に成長して巣立つまでの約20日間、宿主はこの行動サイクルに支配されます。

SCP-3283-JPは宿主頭頂部に形成した巣で、ツバメや他の鳥類と比較して安全に成長します。頭髪を持ち頑強な頭部が温暖かつ破壊されない巣として十全な機能を発揮すること、人間という生物種が外敵を遠ざけること、親が死亡しても子の餓死を回避できることなど、複数の理由がその要因として推測できます。

宿主となる人間は鳴き声に影響される期間が長期化するに従って、自律的な思考力を失っていきます。高負荷の姿勢を取り続けたことによる肉体的疲弊、不快な周波数の鳴き声を受容し続けたことによる神経回路の麻痺などを主要因として、最終的に思考そのものを放棄します。蓄積した知識に基づき安定して餌をSCP-3283-JPに供給し、鳴き声の停止時に自身も餌を摂食して休息するという行動は、それでもなお継続されます。

宿主の頭部でSCP-3283-JPは飛行練習を繰り返し、すべての個体が宿主から巣立ちします。SCP-3283-JPが巣立ちを終えたとき、多くの宿主は自身の思考による行動が不可能な状態となっています。体力面/精神面の問題から他者に発見される場所には移動できません。SCP-3283-JPの巣立ちから数日後、宿主は絶命します。

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