特別収容プロトコル: SCP-3299-JPの全ての通信記録は保管され、研究資料として活用される予定です。SCP-3299-JP事例である疑いのある過去の記録が目下調査中です。
説明: SCP-3299-JPは、MIA指定されたエージェントの通信に関する一連の異常現象の総称です。SCP-3299-JPの主な要素は途絶していた通信信号が復帰することにあり、通信途絶からの経過時間が生存の可能性を排除するに値することによって特徴付けられます。
SCP-3299-JPの最初の発見は、ロストした通信の信号情報を保存・管理する人工知能徴募員であるAurora.aicが信号の再接続を通知したことでなされました。現在SCP-3299-JP現象として確証されている事案は発見時の一件のみ (後述) ですが、この異常現象の発見によって過去に発生した複数の類似事例1の再調査が計画されたことで、SCP指定を割り当てられました。
インシデントアーカイブ
日時: 2004/01/08 - 09
場所: アンダーシャトル ミクロライン8150-81KA 車内2
<記録開始>
通信士: 緊急連絡窓口です。用件を。
エージェント・羽角: こちらはエージェント・羽角。現在位置はアンダーシャトル車内 — のはずですが、先ほどから20分ほどターミナルに停車しません。単純計算で既に1000km近く移動していることになりますが、事故か何かでしょうか。一応、異常現象の兆候は現状見られません。とりあえず、シャトルの状況と正確な現在位置が知りたいです。
通信士: 了解しました。職員コードは —
エージェント・羽角: [編集済]
<通信士が管理部門に連絡しエージェント・羽角の居場所を特定する。エージェント・羽角は太平洋上を東北東方面に高速で移動していることが示される。>
通信士: 落ち着いて聞いてください。現在あなたは異常現象に遭遇していると思われます。
エージェント・羽角: (深呼吸する)ええ。
通信士: 既知のアノマリーかどうか照合を — SCP-023-JPと状況が一致しました、すぐに対応チームに繋ぎます。
エージェント・羽角: 了解です。
対応チーム通信士: (十数秒後)引き継ぎます。羽角さん、カメラをオンにしてください。周囲の様子はどうなっていますか?
エージェント・羽角: はい、車内は普通のシャトルと変わらないようです。さっきから進行方向に車両を移動しつつ確認していますが、特に変化はありません。
対応チーム通信士: そのまま先頭車両まで進んで、車掌室を確認してください。
エージェント・羽角: 了解しました。
<車内を移動し続ける。>
エージェント・羽角: ここまでもそうでしたが、どの車両にも一人も乗客がいませんね。巻き込まれたのは私だけのようです。
対応チーム通信士: 恐らくそうでしょう。ターミナル-8150の調査が始まっていますが、今のところ異常な構造物は発見されていないとのことです。短時間のうちに023JP現象が発生して、既に終息した可能性が高いと考えられます。
エージェント・羽角: わかりました。とりあえず、先頭を目指し —
<車窓が暗転する。>
エージェント・羽角: — トンネル? いや、バカな、アンダーシャトル自体が地下鉄道なのに。
対応チーム通信士: 異常現象の予兆かもしれません。注意してください。
エージェント・羽角: (間)了解。
<数分間、車内を移動し続けるが、標準の車両数を移動し終えたにも拘わらず、先頭車両には到達できない。>
<突然、電灯が消灯し映像が完全に暗闇になる。エージェント・羽角が手持ちのライトを点灯するのとほぼ同時に、車内アナウンスが放送される。>
放送: [不明瞭]
対応チーム通信士: エージェント・羽角、放送の内容は聞き取れますか?
エージェント・羽角: ダメだ、何を言ってるやら。
放送: [不明瞭]
エージェント・羽角: 何か — たぶん同じセリフを繰り返してるように聞こえます。
放送: (不明瞭)……い……も……う……そ……。
エージェント・羽角: (間)かい — もん?
対応チーム通信士: 分かりそうですか?
エージェント・羽角: (間)ようこそ —
対応チーム通信士: エージェント・羽角?
エージェント・羽角 / 放送 (同時に): 怪奇部門へようこそ。
<通信途絶>
付記: 以下は再開した通信への対応記録です。異常現象の可能性を調査する目的で実施され、のちにSCP-3299-JP事例として記録されました。
ログ3299JP-1
日時: 2023/04/01
場所: 不明
<記録開始>
通信士: お待たせしました。エージェント・羽角、聞こえますか? カメラをオンにして、現状を説明してください。
エージェント・羽角: はい。
<カメラが起動する。車内は以前の通信の終了時と同様の様相を呈している。車窓から見える景色は完全に暗闇である。>
エージェント・羽角: こちらはエージェント・羽角。現在位置はアンダーシャトル車内 — のはずですが、もう20年ほどターミナルに停車しません。単純計算で既に5億km近く移動していることになりますが、事故か何かでしょうか。一応、異常現象の兆候は現状見られません。とりあえず、シャトルの状況と正確な現在位置が知りたいです。
通信士: (沈黙)
エージェント・羽角: すみません?
通信士: (間)あなたは、SCP-023-JPに乗車しています。そのことは理解していますか?
エージェント・羽角: はい。さっきから進行方向に車両を移動しつつ確認していますが、特に変化は、変化は —
通信士: どれほどの期間乗車しているのか、もう一度教えてください。
エージェント・羽角: (間)20、年。
通信士: 今まで何をしていたのか説明できますか?
エージェント・羽角: (間)最後に、電気が消えて、放送、放送がかかって — それで、俺は、ずっと先頭を目指して —
<エージェント・羽角は目に見えて狼狽する。>
通信士: (間)あなたはインシデントの最中に失踪しました。
エージェント・羽角: 違う、違うんだ。
通信士: 我々は、あなたを発見することができませんでした。
エージェント・羽角: やめてくれ。やめろ。
<車窓の景色が暗闇から抜け出し、赤いライトが点灯した路線に切り替わる。>
通信士: 我々は、あなたを救出することができませんでした。
エージェント・羽角: やめろ!
通信士: 我々は、あなたは既に死亡していると考えています。
エージェント・羽角: (叫ぶ)
<エージェント・羽角を中心に車両の内装が急速に劣化し始める。>
通信士: このようなことになってしまったことをお詫び申し上げます。
エージェント・羽角: (嗚咽)いやだ。頼むよ。
<車両の劣化がさらに進行する。>
通信士: 申し訳ございません。
放送: 終点です。
<腐食によってドアが外れ、エージェント・羽角が気流に押し流されて車外に吸い出される。>
<通信途絶>
さらなる通信はありません。