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アイテム番号: SCP-3306
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 通行人や衛星観測による発見を防止するために、サイト-3306と指定される目立たない木造建築が、SCP-3306の周辺領域を囲うように建造されています。また、研究員が3306-POI対象者と意思疎通する際の負担を軽減するために、二次的な電動式プラットフォームがSCP-3306の外周部に設置されています。
模範的行動を推奨するために、テレビやその他の娯楽物を二次プラットフォームに配置することが認められる場合があります。3306-POIに娯楽目的の物品を提供する際は、レベル3研究員1名の承認が必要です。精神的苦痛を引き起こし得る物品の提供は避けるべきです。
イリオンズ・イベントの間、財団職員は3306-POI対象者たちの意思決定への干渉を控えるものとします。
説明: SCP-3306はカナディアン・ロッキー山脈のコンチネンタル・レンジに存在する回転木馬です。未知の手段で動力を供給され、定常的に回転しています。SCP-3306の中央ハブを囲む木製のパネルには、ダンテ・アリギエーリの“神曲”の様々な場面らしき情景が描かれています。本稿執筆現在、SCP-3306のプラットフォームには44頭のファイバーグラス製の馬が設置されています。それぞれの木馬には、かつての3306-POI対象者たちを戯画化したような特徴があります。
発見当時、SCP-3306には木馬が設置されておらず、50人の要注意人物(3306-POI、下位指定01~50)が回転プラットフォームの上に存在しました。3306-POIはプラットフォームを降りることが不可能です。同様に、部外者がプラットフォームに上がる、または3306-POIと物理的に交流する全ての試みは失敗します。飲食物を入手できないにも拘らず、3306-POIは完全な健康状態を維持しており、老化しないようです。
3306-POI対象者たちは、SCP-3306のプラットフォーム上で目覚めるまでは、異常現象との繋がりを持たない一般人だったと主張しています。財団の捜査官はこれを反証できる証拠をまだ発見していません。
毎年2月17日、SCP-3306は著しく歪んだ声の録音を再生し、3306-POI対象者たちに“詐欺師”だと信じる人物への投票を指示します。深夜0時までに最も多くの票を集めた人物は即座に消失し、同時に新しい木馬がSCP-3306のプラットフォームに出現します。これに続いて、対象者たちの選択が誤っていた旨を告げるメッセージが流れます。財団職員はこの日を“イリオンズ・イベント”と呼称します。
現在、生き残っている3306-POI対象者は6名のみです。これらの人物たちが自称する身分は以下の通りです。
- 3306-POI-04: ルーク・ヒューズ、25歳時点でSCP-3306上に出現。旧職業はオクラホマ州税制調査会のコールセンター従業員。他の対象者たちとは滅多に会話しないが、頻繁に財団職員との交流を求める。
- 3306-POI-11: ロネル・アッシュコーム、73歳時点でSCP-3306上に出現。アメリカ合衆国海兵隊の退役軍人であり、故 リディア・アッシュコーム(夫の失踪から数年後に死去)の寡夫。“詐欺師”の実在に対する疑念を公言しており、通常は同点時の最終票が必要な場合を除いて毎年の投票を棄権する。
- 3306-POI-17: ロリー=メイ・シモンズ、11歳時点でSCP-3306上に出現。テキサス州アマリロにて、シェリル・ハイザー及びビリー・シモンズ(失踪当時は夫婦だった)の娘として誕生。両親が生きているうちにSCP-3306から解放されることを望み、“詐欺師”の正体を突き止める試みにかなりの時間を割いている。過去7回のイリオンズ・イベントで3306-POI-28と意見を共にしている。
- 3306-POI-28: ジニー・カークウッド、43歳時点でSCP-3306上に出現。旧職業はカリフォルニア州を拠点とする広告会社のクリエイティブ・ディレクター。“詐欺師”の正体を知っていると主張するが、3306-POI-17以外の誰に対してもその根拠を説明しようとしない。
- 3306-POI-30: クレイグ・ダルトン、28歳時点でSCP-3306上に出現。旧職業無し。頻繁に財団職員を支援して3306-POI対象者たちの士気を保とうと試みるが、その成功度合いは様々である。
- 3306-POI-33: シェリー・ロング、32歳時点でSCP-3306上に出現。ブリティッシュコロンビア州アボッツフォード出身のシングルマザー。SCP-3306に囚われた初期の数年間、3306-POI-17に強い母性愛を向けていた。両者は現在も友好的だが、お互いに疑いの目を向けている。
3306-POI対象者たちの中に詐欺師がいるという主張は、確証も反証もされていません。
補遺: 以下のファイルには、生き残りの3306-POI対象者たちへの直近のインタビューが記録されています。
[記録開始]
リックス博士: おはよう、ルーク。今日の調子はどうかな?
ヒューズ: 元気だけど、近頃はダルトンがいつにも増して無我夢中で騒いでやがる。きっとあいつ、俺たちから次の投票で選ばれると思ってんだよ。
リックス博士: 君はその仮定に同意するのかね?
ヒューズ: 多少はね。俺たちはこれまでにも、また次の年もこいつらと一緒に暮らすのは耐えられないってだけの理由で投票した前科があるし、今じゃもうダルトンから無理やり楽観主義を押し付けられるのには全員うんざりしてるはずだ — 特にあのジジイはな。でもたった6人しか残ってないし、みんな自分の票を有意義に使おうと決心してるだろうよ?
リックス博士: ああ、理解できる。
ヒューズ: 今のところ、俺はロングじゃないかと思ってる。あの女は年々、投票でどっちつかずの立場を取るようになってきた。普通なら時間が経てばもっと注力しそうなもんだろ? おかしいよ。ロングとしちゃカークウッドに投票したいんだろうが、ダルトンがシモンズを怖がってるから、そっちに肩入れして多数派の仲間入りをするかもしれない。ジジイは何も気にしてないから多分ダルトンに投票する。カークウッドとシモンズは… さぁな、あの2人が何考えてるかなんて分かりっこない。
リックス博士: 成程。ところで、昔の君は絶望感と闘い続けていたね。人数が少なくなってきて、脱出の可能性を検討し始めたかい?
ヒューズ: ハッ、脱出それ自体は検討してないよ。アンタたちとは長い付き合いだ、俺を完全に解放してくれるとは思えないね。でも、いつかこの回転木馬を降りるチャンスはあるんじゃないかって話なら… ああ、それはあり得ると感じ始めてる。
リックス博士: それは良かった、ルーク。
ヒューズ: なぁ、チャンスはあると思うかい… きっと俺を高い地位になんか就けないのは分かってるけど、もし万が一ここから降りられたら、俺にも何かしら財団で仕事をさせてもらえるかい? 研究員とかさ? ほら、俺にはまともな職歴なんて無いだろ。この回転木馬が俺の全てなんだ。それに、これまでずっと見てきたからアンタたちの働き方はよく分かってる。
リックス博士: 興味深いね。私には何とも言えないが、君のためにできる事が無いか調べてみよう。
ヒューズ: ありがとう、感謝するよ。
[記録終了]
[記録開始]
リックス博士: こんにちは、アッシュコームさん—
アッシュコーム: 失せろ。これ以上付き合う気は無い。
リックス博士: 大丈夫です、これはほんの—
アッシュコーム: (大声で) 付き合う気は無い!
リックス博士: 新しいテレビ番組が幾つかありますが—
アッシュコームは鼻を鳴らす。
アッシュコーム: もうあんなクソつまらんテレビは見ておらん。もう一度言うぞ、失せろ。年寄りにとってはこのクソ忌々しい照明の下で眠るだけでも一苦労なんだ。おまけにクソ忌々しい音楽まで流れていて、いざ寝るにしてもベッドすら無い始末だ。お前らは事態を悪化させるだけだ。
リックス博士: まだ昼日中ですよ、アッシュコームさん。
[記録終了]
結: アッシュコームが数分間返答を拒んだ後、リックス博士はインタビューを終了した。
[記録開始]
リックス博士: インタビューの時間だよ。
シモンズは溜息を吐く。
シモンズ: 私の名前はロリー=メイ・シモンズです。外見は若いですが、55歳です。私はいつかここから脱出できる日に備えて、肉体的かつ精神的に活発な状態を保っています。私は詐欺師が存在すると信じており、その正体について幾つかの疑いを持っていますが、現時点ではそれらを明かすことができません。前回のインタビュー以降、私の意見と感情に顕著な変化はありませんでした。以上です。
リックス博士: まるで機械仕掛けじゃないかね。
シモンズ: ねぇ。これ以上何が欲しいの?
リックス博士: もう十分だと思う。お時間をありがとう。
[記録終了]
[記録終了]
リックス博士: 君のために“シャーク・タンク”の最新シーズンを準備してある。
カークウッド: いいでしょう。2分あげるわ。断っておくけど、私はゆっくり喋るから、慎重に考えて質問しなさい。
リックス博士: 記録によれば、君は詐欺師の正体を知っていると主張している。他に5人しか残っていない今、その情報を明かす気になったかな?
カークウッド: いいえ。
リックス博士: それは何故?
カークウッド: 無意味な茶番劇だからよ。室内ゲームと同じ — どうせこれ全部そういうのを基に作られたんでしょうけどね。拝み倒したり泣きすがったり叫んだり言い争ったりしても、結局は他人に自分を信用させることなんかできない。何もかもが個々人の好みで決まる。私たちがこのゲームに勝ったとしても、それは偶然だわ — それだって仮に勝てるとしたらの話だけど。
リックス博士: 勝つ見込みはあると思うかい?
カークウッド: いいえ。
リックス博士: それは何故?
カークウッド: 勝利に値する奴らは全員とっくの昔に投票で消されてる。ロリーは良い子だけど、私たち2人じゃ望みは無し。ほら、2分経ったわよ。
[記録終了]
[記録開始]
ダルトン: リックス! リックスRicks、リックスRicks、ピックアップスティックスpick up sticks。今日の調子はどうだい、友よ?
リックス博士: 充実しているよ、ありがとう。君は?
ダルトン: ああ博士。博士、博士、博士。もうすぐバレンタインだろう? 僕にもね、かつては彼女がいた。1人だけじゃない。昔の僕はあまり良い人間じゃなかったよ。クリスティ・ビンガム、ショーナ・ハート、ヘザー… ヘザーの苗字は忘れた。どんなもんだい? ああ、僕は人間のクズだ。こんな目に遭わされたのも当然なんだ。
リックス博士: すまないね。イリオンズ・イベントが近付くと辛いのは理解しているよ。
ダルトン: 聞いてくれ、君に泣き言ばかり言いたくはないけれど、正直に話せるのは君しかいない。君とはここ何年も仲良しだったよね、リックス博士。君とお喋りしたくてたまらなくなるんだ。
リックス博士: 他の人たちが君を投票で消すと思っているのかい?
ダルトン: ああ、勿論だ、僕には分かる! 彼らは僕を嫌ってる。かつての僕にはある種の魅力があった、だから大勢の女の子に好かれた。でも長年ここで過ごすうちに… 心をやられたんだと思う。他人との喋り方がもう分からないんだ。考えのまとめ方もほとんど分からなくなってる。親しみを込めて振る舞おうとしているけれど… 近頃じゃ、ただ不愉快なだけになっていると思う。
ダルトンは服の袖で目を拭う。
ダルトン: ねぇ博士、1つ頼みを聞いてもらえるかい?
リックス博士: 頼みの内容による。
ダルトン: 僕が変身しても話してくれるかい? つまりその、僕の馬に語り掛けてくれるかい?
リックス博士: 君は木馬が生きていると思っているのか?
ダルトン: そうだよ。時々、木馬たちに耳を押し付けると、曲の切り替わりで音楽が止む時に、息遣いや呻き声が聞こえる。お願いだよ、リックス博士。僕にとって真の友人はこの世に君だけなんだ。僕に話しかけるのを止めないでくれ。
リックス博士: それらしい手配ができると思うよ。
ダルトン: ありがとう、博士。君が居なくなると寂しいよ。本当に。
[記録終了]
[記録開始]
ロング: 随分早く戻って来たわね。
リックス博士: 前回のインタビューからもう6ヶ月経っているよ。
ロング: あら。
リックス博士: 何か新たに報告したい事は?
ロング: 特に何も。ただ疲れてるだけ。
リックス博士: 次回のイリオンズ・イベントまで2週間だが、調子はどうかな?
ロング: まぁまぁね。正直あまり関心が無いの。まだジニーを疑ってるけど、もしその必要があればロリーに投票するつもり。あの子は現時点で既に充実した生活を送ってると思わない?
リックス博士: 私はそれに口出しできる立場じゃない。
ロング: でしょうね。
[23秒の沈黙。]
リックス博士: 何か記録に残しておきたいことは?
ロング: 特に何も。
リックス博士: そうか。お時間をありがとう。
[記録終了]
[記録開始]
アッシュコーム: 私はこの軟弱者に投票する。
ダルトン: ああ、オーケイ。構わない。そうなるのは分かってたからね。
ロング: いいえ、心配しないでクレイグ。私はジニーに投票する。
カークウッド: 光栄だわ、シェル。
ダルトン: そうか。いや、僕も彼女に投票するんだよ。
シモンズ: ちょっと待って、落ち着いて。どうしてみんなジニーを選ぶの? まだ話し合ってもいないじゃない。
ヒューズ: ロリー、俺たちは45年間ずっと話し合ってきた。悪いな、ジニー、だが俺もアンタに入れるよ。
ロング: あら! でも、あなたがリックス博士と話してるのが聞こえたわよ—
ヒューズ: あの時は嘘を吐いた。俺も大したもんだろ、そう簡単に手の内を見せるかってんだ。
シモンズ: 私はこれに反対よ。それだけは皆に知ってもらいたい。
ダルトン: じゃあ、君は誰に投票するんだい?
シモンズ: 気にしないで。今更どうでもいい事だから。
シモンズは立ち上がり、プラットフォームの反対側の端まで歩いて遠ざかる。
ヒューズ: やれやれ。
ロング: ならこれで決まりね。ごめんなさいね、ジニー。
ヒューズ: 待て。ジニー、もしアンタお得意の“教えてあげない”をきっぱり止めるのなら、俺の投票先を変えてやってもいいぞ。詐欺師の正体を知ってるなら、或いは知ってると思うのなら、俺たちに教えてくれないか?
ダルトン: どうせもう失う物なんか無いだろう。
カークウッド: 知りたくないくせに。
アッシュコーム: くたばれ、クソ女。
ヒューズ: 是非とも知りたいね。
カークウッドは肩をすくめる。
カークウッド: いいでしょう。詐欺師は私たち全員よ。みんなグル。全員、自分たちが遊んでいることすら忘れたゲームの駒でしかない。
ロング: こんな馬鹿な話、今まで聞いたことが無いわ。
カークウッドは再び肩をすくめる。
ヒューズ: その考えは何処から湧いて出て来た?
カークウッド: 出て来たんじゃない。私1人だけが覚えているの。始まり方がどうだったかははっきり覚えてないけどね。私たちは — 集団としての私たちって意味だけど — 退屈してたんだと思うわ。或いは賭けに負けたのかも。でもとにかくこういう状況になった。これで分かったでしょう。もう放っておいてもらえる?
[記録終了]
結: 事前の予想通り、3306-POI-28が深夜0時に消失し、新たに1頭の木馬がSCP-3306に追加されて、イリオンズ・イベントは終了しました。これ以降、残り5名の3306-POI対象者たちの士気は低下しており、一部の者は自らの存在に疑問を呈するようになりました。
カウンセリング担当職員の追加派遣要請は、サイト管理官グードによって承認されました。これ以外の収容ルーチンは通常通り続けられます。
ページリビジョン: 8, 最終更新: 11 Sep 2021 14:03