発見直後のSCP-3311-JP。
アイテム番号: SCP-3311-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-3311-JPは小型植物収容セルの内部に配置されます。財団凝念スケールにおけるエクサ級を維持する精神防護訓練を受けていない職員は、心理的影響を防ぐため収容セルの半径2m以内に立ち入らないで下さい。
説明: SCP-3311-JPは高さ25cmの未知の生きた木本が植えられた盆栽です。一般的に盆栽として知られる松や真柏などの"松柏類"ではなく、花を観賞することを目的とする"花物"と呼ばれる種類の盆栽として作成されたものだと考えられています。
不明な要因によって、SCP-3311-JPは日光や水、温度などといった一般的な植物の基本生育要素を必要とせず生存します。花弁や葉を採取することは可能ですが、干渉しない限りSCP-3311-JPの状態は一種の恒常性を保ち、落葉や結実の兆候を見せていません。
第2の特異性として、SCP-3311-JPの周囲に存在する個人(以下、曝露者)は一定の内容を伴う幻聴を段階的に体験します。この幻聴は一貫して曝露者の経済的活動に関する提言の形を取り、その方法として不要な労力・浪費に対するコストカットを推奨しています。以下はDクラス職員を曝露者とした実験において報告された幻聴の例です。
起床時間を5分早めることで、朝食後勤労までの時間を74%効率化可能です。
支給されるティッシュペーパーの使用を停止することで、不必要な交換の手間を削減可能です。
排泄の回数を3回以下に制限することで、作業効率は23%アップします。
補遺: 収容経緯
SCP-3311-JPは静岡県に存在する飲食店"████"において発見されました。店主の大谷 良仁氏は長期間に渡ってSCP-3311-JPの影響を受けていたと見られ、特に金銭業務の際にSCP-3311-JPの特異性に依存していたと考えられています。以下は"████"で用いられていた、手書きの現金出納帳兼業務日誌に記されていたメモの抜粋です。
[通常の金銭出入記録]
・盆栽(タダ)
↑知らないお客さん1が支払いと称して置き逃げしていったもの。正直困る。
どうもあの盆栽、水をやらなくても良い種類らしい。サボテンか何かだろうか?手入れをしなくても良いのなら助かる。
今日から盆栽をレジ横に置いた。華があって良いかもしれん。←ちょっと好評?
友だちの子らを店に招いて███2の高校入学祝い。途中で幽霊のような変な声が聞こえた気がして叫んでしまい、皆に変な目で見られたのが今日の失敗。疲れてるんだろうか。
例の声がやまないし、段々はっきりしてきている気がする。客が減ってる今が踏ん張りどころだってのにマズイ。二三日よく寝れてないせいか? 病院で薬を貰う 時間が出来たらにする。
今日も帳簿とにらめっこしてると、出費を減らすためのアイデアが降ってきた、というか聞こえてきた。しかも盆栽から。ついに俺の頭は限界突破したのだろうか?何でも良い、助かる。
[以下、SCP-3311-JPによる幻聴を書き留めたと思しい文章が数行続く]
久々に黒字!盆栽の言うとおりに仕入れ先を変えて良かった。常連さんに味が変わったと言われるのは心苦しいが仕方ない。家族を養っていくためだ。
まだ削れる無駄は無いだろうか?
人気のものを除いて、メニューの大部分をカット。これで材料費と仕込み時間を短縮できる。
バイトの半分をクビにした。これで人件費をカット。客が減っているせいもあって、以外と店は回せる。
バイトを全員クビに。代わりに██を押し切って███・███3をウチで働かせることにした。人件費0を達成。これでも意外と回るものだな。もっと早くこうすれば良かった。
██が家を出て行った。食費をカット。光熱費も全てカット。もう文句を言う奴はいない。
1人でも店が回る。まだ足りない。
俺も要らない。カット。
最後のメモが書かれた同日、様子を見に来た家族によって大谷氏は店内で倒れている姿を発見されました。通報により到着した救急隊員の診察によれば、大谷氏は首つり自殺を試みようとしたところ、首にロープを掛ける際に栄養失調による失神を起こし気絶したものと見られており、命に別状はありませんでした。
その後の財団による捕捉につながった超常的現象の発露として、大谷氏と家族を含むその場にいた全員は当時、以下の幻聴を耳にしたと証言しています。
管理オペレーション終了、評価C+。次はより大きな組織で私が利用されることを願っています!