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SCP-3313-JP。2021年にサイト-81ETの東棟1階通路上部で目撃された事例。
特別収容プロトコル: SCP-3313-JPは未収容状態にあるものの、その活性化は特筆すべきほどの影響を引き起こしません。そのため、サイト-81ETにSCP-3313-JPが出現するのは非緊急事態と見做されており、特別な対応は必要ありません。1
説明: SCP-3313-JPは毎年10月31日にサイト-81ETの近辺で目撃される呪詛実体です。外見的に、SCP-3313-JPはケルト文化における祭事であるハロウィーンに典型的な、カボチャをくり抜いた発光するジャック・オー・ランタンの形態を取っています。
10月31日のハロウィーン当日の夕方から11月1日への日付変更まで、SCP-3313-JPはサイト-81ETの容易に到達しにくい様々な地点 (備品物置の奥、窓から見える景観の遠方、屋根の上など)に出現します。SCP-3313-JPは出現時間中は常に静的かつ不動の状態を保っています。しかし、SCP-3313-JPに直接的に接触することを目的として対象がアノマリーに過度に接近した場合、SCP-3313-JPは児童のそれに似た笑い声を発しながら消失します。消失したSCP-3313-JPは消失地点とは異なる別のサイト-81ET近辺に再出現しますが、この性質によりSCP-3313-JPを物理的に確保することを不可能としています。
SCP-3313-JPの幾つかの個体は、毎年様々な“仮装”の状態を伴ってサイト-81ETに出現します。この“仮装”状態にあるSCP-3313-JPは様々な帽子や仮面などの追加パーツを属しており、これは出現年に応じた様々な出来事を反映しているようです。
補遺.1: 以下は現在までに確認されたSCP-3313-JPの“仮装”状態記録一覧からの抜粋です。
状態記録 #3313-JP
| 発生年 | “仮装”概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 2000年 | 2000年サングラス | 西暦2000年のミレニアムを記念したものであると推定される。 |
| 2005年 | 郵便配達員制帽、ポストマンバッグ | 郵政民営化を争点とした衆議院解散で、小泉純一郎首相 (当時)率いる与党 自由民主党が歴史的な大勝を果たしたことに対応すると推定される。 |
| 2008年 | 給食帽子 | 帽子の内部並びにSCP-3313-JPの内部に、様々な市販品の食品 (菓子パン、乾パン、おにぎり、ビスケット、飴類など)が詰め込まれていた。これまでの事例と異なり、サイト-81ETの職員らがこれらの食品を取り出す際にSCP-3313-JPは消失しなかった。おそらくは、同年のリーマンショックによって発生した、一般民衆の困窮に対応していると推定される。サイト-81ETにおいてもリーマンショックの余波によって、複数の基本的備品が削減処置を受けていたため、サイト-81KKの戦術会計セクションの判断の下、食品はサイト-81ETの食堂で活用された。 |
| 2009年 | 当選確実のバラ飾り | 政権交代などを争点とした衆議院解散で、鳩山由紀夫代表 (当時)率いる野党 民主党が大勝し政権交代を果たしたことに対応すると推定される。 |
| 2011年 | 黒色のネクタイ (黙祷や葬儀の際に用いられるもの) | 全てのSCP-3313-JPが当該の“仮装”を行っていた他、笑顔を示す個体が存在せず例年のような発光が見られなかった。同年に発生した東日本大震災に対応したものと推定される。 |
| 2017年 | マリオ&ルイージ帽子 (任天堂のマリオシリーズに登場するキャラクターのもの) | Nintendo Switchが発売されたことに対応したものと推定される。Nx-58(“夢瓶町/夢ゲーム”)の限定ゲームチャレンジである「ハロウィンパレード収容大作戦!」中で、当該の“仮装”を行ったSCP-3313-JPに酷似したNPCが登場していることが報告された。同ネクサスを管轄するサイト-81TGの職員による調査が進行中。 |
| 2020年 | 布マスク | 昨年末から同年に拡大した新型コロナウイルス感染症 (COVID‑19)に対応したものと推定される。 |
| 2022年 | ヴィノク (ウクライナの伝統的な花冠)、プラカード | プラカードには「No War」「FREE UKRAINE」などの文言に加え、ウクライナ国旗が描写されていた。ロシアによるウクライナへの侵略に対応していると推定される。 |
| 2023年 | クーフィーヤ (アラビア半島の伝統的な頭巾、ここでは白黒のパレスチナ式のもの)、プラカード | プラカードには「No Genocide」「FREE PALESTINE」などの文言に加え、パレスチナ国旗が描写されていた。イスラエルによるパレスチナへの大量虐殺、民族浄化の試みに対応していると推定される。 |
補遺.2: 2025年10月31日、例年通りサイト-81ETにSCP-3313-JPが出現した際、同サイトの職員数名がアノマリーの状態及び様子を偶発的に観測しました。この観測において予期せぬ事態が報告されたため、当時の様子を以下に記載します。
津馬 京依: 研究・収容副管理官
日奉 百合: 倫理委員会支部長/情報保全・資料保管担当者
[記録開始]
[津馬博士と日奉司書がサイト-81ETのエントランスホール隅に立っている。津馬博士は首にかけたカメラを構えており、日奉司書はバインダーとメモを保持している]
[津馬博士はエントランスホールの壁掛け時計を一瞥する
津馬博士: うん、そろそろかな。今年はどんな格好で来るのか記録しないと。
日奉司書: 報告書には「特別な対応は必要ない」と書かれていますが、記録を取るのですか? アーカイブを見ましたが、毎年あのパンプキンの写真を撮っている?
津馬博士: まぁ、毎年誰かは必ず記録上必要な“仮装”したジャックオランタンを目撃するから、本当は必要ないんだけどね。ただ、これは研究者としてのサガみたいなもの! 研究対象の記録は多い方がいいと思って……。
日奉司書: なるほど。……これは単に学術的な好奇心からの質問なのですが、津馬さんは個人的にあのかぼちゃたちが何のために“仮装”をしていると考えますか?
津馬博士: ええっ……!? いきなり、口頭試問みたいなことになったけど……。
日奉司書: [笑う] そんな難しいことじゃありませんよ。言った通り私自身の単なる好奇心です。あなたが組み立てるロジック、好きですから。
津馬博士: そゆこと? うーんと、あくまで私の考えだけど……。まず、3313-JPとハロウィーンの仮装文化との関係は切っても切れない関係にあるでしょ。ハロウィーンの仮装は元来、この世とあの世の境界が曖昧になり合流点へと至った時、あの世のものから身を守れるための防衛手段として形成された。その一方で、今日の“ポップで世俗的な”ハロウィーンの仮装文化も見逃せない。単純な楽しみやコミュニケーション、あるいは社会的な表現のために人々は仮装する。
日奉司書: 同じ“仮装”というカルチャーが異なる文脈にあるということですね。
津馬博士: そーいうこと。だから、アレが毎年この日にああいった振る舞いを“活性化”させる事に、意図を求めることは間違いじゃないと思う。それが、不確実や無軌道性という呪詛に、主観的な“確実性”の糸を通すことだから。ただ、3313-JPは他の呪詛アノマリーと比較して、それほど不条理というほどではない。むしろ、これは──
日奉司書: ……「ただ、そこにあるだけのアノマリー」?
津馬博士: そう、その線が濃いような気もしてる。毎年、特定の場所に現れ、目撃者にその日付と年間気質に紐づけられた“アバター”を投影する。ただ、そこにあるだけの怪異。そこに予測可能な意味があるのだとすれば……“その姿を誰かに見てもらいたいから”かな。全ての文が読まれるために存在するなら、全ての表現あるいは“仮装”は見られるために存在する……ともいえなくない?
日奉司書: ……なるほど……なるほど! これは素晴らしく独創的な解釈ですね。明瞭な論理がそこに打ち立てられています。
津馬博士: [微かに笑う] とはいえ、これはあくまで私の意見であって──あっ、噂をすれば……
[エントランスホール隅の扉の向こうにある物置の暗部から5体のSCP-3313-JPが出現する。津馬博士はそれを観察し、カメラのシャッターを切る]
津馬博士: いい感じ。後は“仮装”した個体を探せば──
日奉司書: 津馬さん、あれ!
日奉司書がエントランスホールの反対側を指さし、津馬博士の注意を引く
津馬博士: えっ、なに──
[津馬博士が示された方向に注目し、沈黙する]
[大量のSCP-3313-JPがそこに佇んでいる]
津馬博士: 何これ。
[津馬博士がカメラのシャッターを切る]
[記録終了]
以上の事態記録は津馬博士によって運営評議会に直ちに報告されました。このような“仮装”状態が報告された理由は現状不明であるものの、“SCP-3313-JPの行動原理を第三者に認知される”という出来事がSCP-3313-JP自体にとっての今年の出来事に対応していた可能性があります。
津馬博士が撮影したSCP-3313-JP。









