アイテム番号: SCP-3315-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3315-JPまたはSCP-3315-JP-Aが発見された場合、カバーストーリー「健康被害の可能性」を適用し回収してください。回収されたSCP-3315-JPは低危険度物品収容ロッカーに収容してください。SCP-3315-JP-Aは実験用のものを除き、焼却処分してください。
市場に流通しているSCP-3315-JP-Aの回収計画は放棄されました。詳細は追記を参照してください。
説明: SCP-3315-JPは現在1600mlが回収されている液体肥料です。SCP-3315-JPの外見的特徴や成分に一般的な液体肥料との差異は認められません。SCP-3315-JPの流通経路については現在判明していません。
SCP-3315-JPを吸収した食用果実/果実的野菜を収穫可能な植物は異常な果実(SCP-3315-JP-Aと指定)を生成します。SCP-3315-JPを吸収した植物は同種のものと比較し、生育速度の上昇、栄養吸収の効率化、強度の増加が確認されています。特に強度の増加については植物の密度に比例し、例としてモモ(Prunus persica)の樹木の場合では強度がおよそ1300MPaになります。この変化は後述のSCP-3315-JP-Aの異常性に伴うものであると推測されています。
SCP-3315-JP-A内にはヒト(Homo sapiens)の胎児が存在しています。SCP-3315-JP-Aの成長に伴って胎児の体長/体重も増加し、胎児が外部でも生存可能なほど成熟するとSCP-3315-JP-Aは落果します。胎児は出生時の大きさに関わらず、3年ほどで同時期の通常の胎児と同等の大きさにまで成長します。その後、胎児は異常性を喪失します。
補遺: 以下はSCP-3315-JPが回収された長野県██村の住民を対象としたインタビューの音声記録です。
対象: 比果 徹
インタビュアー: 春木博士
<録音開始>
春木博士: それでは、あの村で何を行っていたのか話していただけますか。
比果氏: あんたも知ってるだろ。あの村は、殆ど死んでいたんだ。
春木博士: どういうことですか。
比果氏: 子供のいる奴は都会に行っちまったし、若者は1人も居ない。俺達はただ、お迎えを待っているだけだったんだよ……あれが届くまでは。
春木博士: SCP-3315-JPですね。
比果氏: ああ、あの日は忘れないよ。ある朝、あれが玄関に置かれていたんだ、こんな紙が添えられて。
[比果氏が紙を春木博士に見せる]
比果氏: 最初は半信半疑だったさ。だから、桃の木から赤子が産まれたのをみたときは驚いたよ。まあ、不気味に思ったさ。桃の木から赤子が産まれるなんて尋常じゃない。
春木博士: では、何故あなたはあの赤子を育てていたのですか。
比果氏: 俺は独り身でさ、赤子なんて殆ど触ったこともなかった。だから、あのときの腕の重み、暖かさも初めて感じたものだった。初めて、こんなにも誰かを守りたいと思ったんだ。
比果氏: あの子達を村のみんなと一緒になって育てた。あの子達のお陰で、毎日が楽しいんだ、幸せなんだ……変なこと言っちまったな。
春木博士: いえいえ、そのようなことはありませんよ。
比果氏: そういや、あんたはあの栄養剤については調べてるんだろ。
春木博士: ええ、そうですよ。
比果氏: じゃあ、もし送り主に会ったなら伝えてくれ。俺達にあんな、小さな幸せをくれてありがとうって。
<録音終了>
以下は比果氏により提供された紙の内容を転写したものです。
お届け物です。この栄養剤を果樹に与えれば、その木から赤ちゃんがたくさん産まれてきます。つまり、子供の産めないご老人でも赤ちゃんを育てることができます。あなたもこれを使って赤ちゃんとの幸せな生活を営みましょう!
追記: 栃木県██農園にてSCP-3315-JPが使用されていることが発覚しました。当該農園はSCP-3315-JPの異常性を認知しておらず、通常の肥料として使用していました。SCP-3315-JPと接触した作物は回収されましたが、大多数のSCP-3315-JP-Aは既に出荷されていました。現在未回収のSCP-3315-JP-Aはオランダイチゴ(Fragaria ×ananassa)の果実です。
オランダイチゴ(Fragaria ×ananassa)の果実
SCP-3315-JP-A1および内部の胎児の微小さにより、摂食の際も違和感を抱く可能性が低く、異常が発見される可能性が低いため、SCP-3315-JP-Aの回収計画は放棄されました。









