SCP-3321-JP
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アイテム番号: SCP-3321-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 全国の精神科から情報を収集しSCP-3321-JP被影響者と思われる人物の情報を収集します。加えて、全国のゴミ屋敷を捜索し、SCP-3321-JP生息の有無を確認してください。

SCP-3321-JPが確認された地域は財団の監視下におかれ、SCP-3321-JPの被害状況の調査と隠蔽・SCP-3321-JP個体の捜索が行われます。SCP-3321-JPによる被害はカバーストーリー「孤独死」または「死体遺棄」を流布したうえで隠蔽措置が取られます。確保されたSCP-3321-JPは最低限のサンプルを確保した後殺処分して下さい。

説明: SCP-3321-JPはヒトを捕食する習性を持つチャバネゴキブリ(学名: Blattella germanica)に類似する昆虫の一種です。SCP-3321-JPは通常のチャバネゴキブリに比較して高い社会性を持ち1、後述する狩りに代表されるような役割分担を伴う集団行動を行います。(ゴキブリ目(Blattodea)の生物はフェロモンの放出を通じて他の個体とコミュニケーションを行い群れで生活します。これらの内チャバネゴキブリに代表されるゴキブリは役割分担などは行わない単独生活性の生物です。
ゴキブリの生態に関する補足情報
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非異常のゴキブリの気管系(左)
SCP-3321-JPの気管系(右)

SCP-3321-JPは非異常のチャバネゴキブリと比較して非常に発達した気管系を持ち、特に腹部に発達した気嚢及びそれを動かすための筋肉を持ちます。また、この気嚢の近傍にはクチクラの厚い膜状組織が存在し、これが気嚢の伸縮によって変形することでクリック音を発生します。この音は気嚢内の空洞が反響装置として機能することにより増幅されるため、SCP-3321-JP単体で60dB程度2の音量を発生します。(陸上性の節足動物の多くは気管を用いて呼吸を行います。これは体表の気門から体内に管状に伸びた気管系に空気を取り込むことで、体内へ直接空気を取り込む呼吸方法です。これに加えて、昆虫などの一部の生物は気管が袋状に拡大した気嚢という器官を持ち、気嚢を伸縮させることでより効率的に空気を気管内に取り込んでいます。

特筆すべき例として、セミのオスの腹部には気嚢による巨大な空間があり、これが鳴き声の共鳴装置として働きます。
気嚢に関する補足情報
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SCP-3321-JPは未確認の機序により、向精神作用を持つ物質(SCP-3321-JP-1に指定)を空気中にエアロゾルとして分泌する能力を持ちます。チャバネゴキブリは体液中に抗躁作用を持つ物質である██████を含むことが知られており、SCP-3321-JP-1は██████の合成経路に変異が生じた結果産生されるようになったと推測されています。

充分量のSCP-3321-JP-1をヒトが吸入した場合、意欲低下や感情平板化などのうつ病や統合失調症の陰性症状に似た症状を引き起こします。加えて振戦や筋強剛といった錐体外路症状3を生じる他、脳内での神経新生の低下により海馬の萎縮などが確認されていることから、これらの症状を生じる要因にはドパミンD2受容体遮断作用や脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生低下などの複数の機序が推定されていますが、詳細は未確定です。(脳由来神経栄養因子(BDNF) は神経細胞の成長や再生を促す物質とされているタンパク質です。BDNFは精神的ストレスによって産生や成熟が低下することが知られており、うつ病はストレスへの曝露によってBDNFを始めとする神経因子の産生低下によって海馬や前頭皮質などでの神経新生が減少することによって起こるとする神経可塑性仮説が提唱されるなど、精神疾患との関与が指摘されています。
BDNFに関する補足情報
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生態: SCP-3321-JPは生息域を拡げるにあたってヒトの捕食を含む生態を持ちます。これは以下のステージに分かれます。

ステージ1. SCP-3321-JPは主に民家などのヒトが生活している建物の隙間などの暗所に住み着きます。新規の建物に侵入した段階のSCP-3321-JPでは気嚢の伸縮が抑制されており4、クリック音を生じません。この段階のSCP-3321-JPは非異常のチャバネゴキブリと同様の生活、即ち夜間に食料を捜索し、暗所で繁殖して数を増やす生活を行います。充分な個体数まで増殖し、群れとしての生活を行うことが可能になると次のステージへ進みます。

ステージ2. 住居内に充分な個体数が存在する場合、SCP-3321-JPは気嚢の伸縮を通じて連続したクリック音を発するようになります。この際、複数の個体間でクリック音が同期することにより音量が増幅し約100dB5の音量を発します。SCP-3321-JPは夜行性であるため、このクリック音は主に夜間に発生することとなり、当該住居に住んでいる住人の睡眠は著しく妨害されます。

加えて、SCP-3321-JPは密閉性の高い空間で活動する際6に、先述のSCP-3321-JP-1を分泌します。当該住居の住人がSCP-3321-JPの発するクリック音を探してこれらの空間内に侵入した場合、SCP-3321-JP-1を吸引することによって影響を受け、意欲低下や感情平板化を呈してSCP-3321-JPの駆除を中止することがあります。

これらの睡眠妨害による脳神経系へのダメージと、SCP-3321-JP-1による脳機能の抑制によって、被害者は徐々にうつ病様の症状を呈します。この症状の進行した場合次のステージへ進みます。

ステージ3. SCP-3321-JPによりうつ病様の症状を呈した被害者は、住居内を清潔に保つ能力を喪失します。これによって、住居内には生活ゴミや糞尿が散乱することとなり、これらのゴミを食料兼住処とすることでSCP-3321-JPは指数関数的に個体数を増殖します。個体数の増殖と共にSCP-3321-JP-1の分泌量も上昇するため、このステージの進行とともに被害者のうつ病様症状は悪化の一途を辿ります。当該症状の進行によって被害者が自死した場合、SCP-3321-JPはそれを消費して増殖し、食料源が失われたことによって新たな生息地を探して散開します。一方で被害者が死亡しないまま住居内のSCP-3321-JP個体数が限界を迎えた場合には次のステージへ進みます。

ステージ4. 被害者が死亡する前にSCP-3321-JPの個体数が住居に生息できる限界を迎えた場合、最も他の個体との接触回数が多いSCP-3321-JP個体群(これは食料源となる被害者の近傍に生息する個体群であることがほとんどです。この段階に至った被害者はSCP-3321-JP-1への反復的な曝露によってSCP-3321-JPとの接触に対して有意な反応を見せなくなるため、ほぼ常に皮脂や毛髪などを捕食されることとなります。)は他の活動を停止して、SCP-3321-JP-1の分泌のみを行うようになります。これによって環境中のSCP-3321-JP-1濃度は██倍程度まで上昇し、被害者はそれを吸入することによって過度の脳機能抑制に伴う昏睡により死亡します。被害者の死亡に伴ってSCP-3321-JPはこれを消費し、その後は食料源が失われたことによって新たな生息地を探して散開します。


補遺: 先述の習性は環境中の集合フェロモンの濃度と個体同士の接触回数が関与してステージが進行すると推測されています。このため、ステージの進行に必要な個体数は住居の面積や構造によって増減し、集合住宅の一室にSCP-3321-JPが侵入した場合、一軒家に侵入した場合と比較して極めて短期間でステージが進行するとされており、研究チームの試算では侵入から約██日でステージ3へ至ると推測されています。加えて集合住宅の一室ではステージ3へ移行した場合でも住居の密閉性によって発見が困難であることから、都市部にSCP-3321-JPが侵入した場合爆発的な生息域の拡大と個体数の増殖が起こると懸念されています。

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