SCP-3322-JP


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アイテム番号: 3322-JP
レベル3
収容クラス:
euclid
副次クラス:
none
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
danger


特別収容プロトコル: ポリネシア神話における「悪魔の島」伝承は隠蔽されます。現地住民及び研究者には必要に応じて適切なカバーストーリーを流布して下さい。

野生のSCP-3322-JPの生息する海域は主要な航路及び遊泳地からは離れており、現地での隠蔽の必要性は微小です。民間人が閲覧可能な航空写真及び衛星写真に対して検閲を行い、SCP-3322-JPを非異常の岩礁と偽装するか海面の画像を合成してSCP-3322-JPの発見を防止して下さい。

SCP-3322-JPの飼育に関してはSCP-3322-JP研究チームへ問い合わせてください。

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SCP-3322-JP

説明: SCP-3322-JPは島に擬態する能力を持つマッコウクジラ上科(Physeteroidea)の特徴を有する全長50m程度のクジラの一種です。SCP-3322-JPは南太平洋に生息し、常に背部を海表から露出した状態で生活します。SCP-3322-JPの背部は灰白色の厚い角質層に覆われており、これを用いて岩礁に擬態しています。SCP-3322-JPの背部では不明な機序により、草本類あるいは低木性の木本類が根をSCP-3322-JP体内へ侵入させないまま健全に発芽・生長します。また、これらの植物群は主に海岸部に生息する塩生植物で構成されていますが、SCP-3322-JP背部における塩分濃度がこれらの種が通常許容可能な塩分濃度をはるかに上回る場合においても悪影響を呈しません。これらの植物が生長に利用する栄養素はSCP-3322-JP背部上に体積する海鳥の糞に由来していると推測されています。

SCP-3322-JPの繁殖行動及び幼体は発見されておらず、SCP-3322-JPの完全な生活環は確認されていません。1

SCP-3322-JPは非異常の鯨類と異なり体温調節の大部分を外部環境に依存しています。一般に鯨類は体温を36度前後に維持していますが、SCP-3322-JPの体温は概ね水温と同期しています。これに加えてSCP-3322-JPは後述する捕食時を除きほとんど活動性を見せないことなどから、SCP-3322-JPは冬眠に類似する低代謝状態(以下休眠状態と呼称します。)を維持していると推測されています。これによってSCP-3322-JPは極めて低い基礎代謝量を持っており、観測下での食餌量は平均100kg/日程度です。一般に鯨類は1日に体重の3-4%程度の餌を捕食するとされておりSCP-3322-JPの推定体重が300tであることから、これはサイズから推定される通常の食餌量の1%未満です。

SCP-3322-JPは背部に一定以上の重量2が乗った場合、休眠状態を脱して自身の上部に乗った存在を捕食する習性を持ちます。観測されたSCP-3322-JPの主な餌は海鳥、ハワイモンクアザラシ(Monachus schauinslandi)などの鰭脚類、稀にクルーズ中に上陸した観光客などのヒトです。


SCP-3322-JPは大型生物の捕食に適応した歯を持ちます。歯の長さは平均して40cm程度であり、これは捕食に用いるものとしては既知の動物種の内で最大のものです。また太い顎骨や側頭部の筋肉の発達からもSCP-3322-JPは大型生物の捕食への適応が見られます。これらの特徴は中新世に生息していた鯨類の一種であるリヴィアタン・メルビレイ(Livyatan melvillei)3との類似が見られます。ゲノム解析の結果はSCP-3322-JPと現生のマッコウクジラ(Physeter macrocephalus)は1200-900万年前頃に分岐したことを示唆しておりこれはリヴィアタン・メルビレイの生息時期と一致します。以上の証拠から、SCP-3322-JPはリヴィアタン・メルビレイから分岐した生物種であるとの仮説が立てられています。

リヴィアタン・メルビレイは捕食に用いるものでは動物種で最大級となる36cmの歯を持つ史上最大級の捕食動物であり、主に小型から中型のヒゲクジラを捕食していたと推測されています。中新世以降の寒冷化によって獲物としていた鯨類の大型化が起こったことによって餌を失ったことで絶滅したと推測されています。SCP-3322-JPがリヴィアタン・メルビレイから分岐したと推測されている1200-900万年前頃は寒冷化が進行しつつある時期であり、これによる餌の減少に対して、休眠状態を獲得して代謝量を下げることによって適応し、種分化へ至ったと推測されています。また歯のサイズの伸長などの特徴は、休眠状態の獲得に伴って1回の食事量の増大が生存上有利となったことが大型化したヒゲクジラを捕食するための適応を同時に進行させたと推測されています。

一方で、観測下でのSCP-3322-JPが大型のクジラを捕食した例はなく、加えて岩礁への擬態とそれを利用した狩りは大型生物の捕食には適していないことから、これらの生態的特徴の適応的意義は不明です。 追記1 を参照してください。


発見経緯: SCP-3322-JPはポリネシア諸島、特にマイチキ島周辺における神話伝承である「悪魔の島」を調査していたハワイ大学の実験考古学研究チームから「島がクジラになって船員が食われた」という不可解な通報がなされたことによって発見されました。「悪魔の島」伝承はポリネシア神話における英雄マウイが魔法の釣り針マナイアカラニによって島を釣り上げたことがハワイ諸島の起源であるという神話伝承の派生型伝承であり、主にマイチキ島周辺に伝わっていました。以下に「悪魔の島」伝承を転記します。

悪魔の島


マウイが兄たちを説得して漁に連れて行ってもらったとき、マウイはマナイアカラニを使って海の底から島を釣り上げました。マウイは漁が下手くそであったためにこの釣果にすっかり気を良くしてしまい、今度は兄たちに内緒でこっそり漁に出かけます。そこでマウイがマナイアカラニを使って釣りをすると、海の底から大きな岩を釣り上げました。また島が釣れたと大喜びでマウイが岩に乗り上げると、岩は恐ろしい顎を開いてマウイに襲い掛かりました。マウイが釣り上げたのは島ではなく、クジラの悪魔ホハクラだったのです。何とか逃げ出したマウイはこれ以降普段の釣りにはマナイアカラニを使うことはなくなり、兄たちはマウイの釣果が少ないことを一層からかうようになりました。

この時釣り上げられたホハクラは今でもマウイを食べようと狙っており、岩に化けて泳いでいるので、航法師たちは外洋の岩場にはけして近づかないように伝えているのです。


付記: 上記伝承に加えて、数か所の海域がホハクラの住処であるとして航海における禁足地と伝えられていました。


上記の研究チームはマイチキ島周辺における「悪魔の島」伝承を元にウェイファインディング航法による検証航海を行っていました。これにはポリネシア原住民の使用していた双胴船を模した航海カヌー1隻とその航行をサポートする目的の小型クルーザー2隻が用いられており、通報を受けて派遣された財団フィールドエージェントが到着した時点で航海カヌーは破砕されており、小型クルーザー2隻も転覆していました。2名の生存者を除いたこれらの船舶の乗員██名が死亡したと推測されています。当事案はカバーストーリー「荒天による船舶事故」が適用され、生存者はAクラス記憶処理の後に解放されました。

生存者の所持していたカメラから復元された映像からは、発見した岩礁に双胴船の乗員4名及び小型クルーザーの乗員5名が上陸し、調査を開始しようとした際に岩礁が突如沈没し、背部が岩礁に類似したクジラ様の実体が投げ出された乗員及び船舶を襲撃する様子が確認されました。

当該海域は近現代における主要航路からは外れている上、上述の通りポリネシア原住民にも忌避されており、これがSCP-3322-JPの発見を妨げていたと推測されています。


追記1: 2002年12月17日、観察下にあったSCP-3322-JPの老齢個体を捕獲した上での解剖が行われました。これは海洋大型生物に関わるアノマリーの確保を主要任務とする確保艦、SCPSしものせき及びSCPSナンタケットにより海上で実施されました。

この解剖において、当初はSCP-3322-JP個体の消化管内容物の分析では海鳥、鰭脚類、ヒトなどの既に捕食を観測された生物種の証拠しか得られませんでしたが、任務終了後に帰投したSCPSしものせきの清掃業務にあたっていた財団廃棄部門の監察官より、不明な反ミーム実体の存在が指摘されました。4ただちに両船舶において反ミーム実体の捜索が行われた結果、SCP-3322-JPの解剖の主要作業現場及び消化管内容物の分析が行われた研究室において、反ミーム性を持つ腐肉が発見されました。


発見された腐肉の形態的特徴、及び詳細な分析を試みた際に起こった分析結果の速やかかつ著しいデータ破損から、これはSCP-2256の死骸であると特定されました。

SCP-3322-JPの消化管内容物よりSCP-2256の死骸が発見されたことから、SCP-3322-JPの大型生物の捕食への適応が果たす意義が解明されました。SCP-3322-JPはSCP-2256の捕食へ特化した生態を有していると推測されています。

SCP-2256は体長1000mを超える超大型動物ですが、その体重は4t以下であり広い皿状の足を持つことから海上を歩行する能力を有します。SCP-2256は陸地での生活に消極的であり、通常は陸地から30km以上離れた沖合に生息しています。加えてSCP-2256は反ミーム特性を持ち他の動物に知覚/記憶されることを阻害している上、自身が知覚されたことを認識する能力を有します。

SCP-3322-JPの岩礁に擬態し、背部に荷重がかかった際に反射的に背部に乗った存在を捕食する習性は、SCP-2256を知覚することなく捕食するための適応だと推測されています。SCP-3322-JPが生息する海域はSCP-2256の主な生息地である他、SCP-3322-JPの背部に生長する草本類及び木本類にはSCP-2256の主要な餌である████や█████を含みます。加えてSCP-3322-JPの背部に他の動物が生息することは稀であり、これはSCP-2256の他の動物種を避ける習性を刺激しません。これらの特徴によりSCP-3322-JPはSCP-2256を誘引しています。誘引されたSCP-2256がSCP-3322-JPの背部へ足をかけた場合、閾値を超える荷重がかかることによって反射的な捕食行動を誘発します。この捕食行動は本能に基づく反射によって行われるため、捕食対象の知覚に左右されずに完遂し、SCP-2256の知覚認識能力を刺激しません。

この反射による捕食行動によって噛みつかれたSCP-2256はSCP-3322-JPの40cmの歯と発達した顎の筋肉に支えられた強靭な咬合力に保持され、300tの体重によって海面下へ引きずり込まれます。荷重によって引き起こされたSCP-3322-JPの捕食行動は周囲への無差別な攻撃を誘発するため、姿勢を崩されたSCP-2256はSCP-3322-JPによって何度も噛み裂かれて絶命しSCP-3322-JPに消費されます。

SCP-3322-JPがSCP-2256の捕食へ特化していることを加味して食餌量を計算した場合、実際の食餌量は平均350kg/日程度であり、これは一般的なクジラを元に計算した推定食餌量の7%程度と、休眠状態を有し体温維持機能を放棄した生物としては妥当な範囲5に収まります。


追記2: SCP-3322-JPの脳細胞の化学分析により、SCP-3322-JPの脳内にはクラスW記憶補強薬と構造的に類似する化合物が存在していることが判明しました。一方で抽出されたこの化合物は記憶補強作用を有していませんでした。これはSCP-3322-JPの進化過程において、SCP-2256の捕食への適応として記憶補強作用を有する化合物の合成が行われていたことを示唆します。SCP-2256が知覚認識能力を獲得したことによって記憶補強が不利となったことでこの化合物の合成が生存上不利となり、合成経路に関与する遺伝子の変異が選択されたと推測されます。

SCP-3322-JPとSCP-2256は典型的な捕食者と被捕食者間での共進化を呈しており、2003年現在において████████まで生息数が減少しているSCP-2256が絶滅した場合、SCP-3322-JPも絶滅する危険性が高いと推測されています。このため、SCP-3322-JPの保護のため飼育プロトコルの制定が進められていますが、生態の特殊性及び食餌量のコントロールの難易度から飼育下での生存が困難であり、プロトコル制定は難航しています。

追記3: 2006年10月30日にSCP-2256の最後の個体が死亡しました。絶滅を避けるため、現存するSCP-3322-JPは内██体が飼育下に置かれ、残りの個体は自然下での観察にとどめられることとなりました。

追記4: 2021年、SCP-2256絶滅から15年経過した現在でも野生下のSCP-3322-JPの個体数は変動していません。飼育下でのSCP-3322-JPの絶食可能期間は最長でも1年であり、主な餌であったSCP-2256の絶滅の後にSCP-3322-JPが個体数を減少させていない理由は不明です。


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