アイテム番号: SCP-3324-JP
オブジェクトクラス: Safe Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-3324-JPは5m×5m×2.5mの小型収容チャンバーに収容されます。SCP-3324-JPの顔面は常に監視カメラによって監視、録画されます。SCP-3324-JPは防腐処理を行い、低危険度物品用冷凍保管室に収容されます。
説明: SCP-3324-JPは20██/██/██に自殺した真桑友梨佳氏の死体です。死亡時は18歳の学生で死因は自宅の湯を貯めた浴槽で動脈を切断したことによる、出血死であると判明しています。SCP-3324-JPには腐敗の兆候は見られません。
SCP-3324-JPの顔面は鼻、口、目などの部位が失われており、全体が液晶画面に置換されています。液晶画面は毎日20:00に同一の映像を再生します。映像は映画やドラマ等のスタッフロールに類似したものであり、生前の真桑氏と一定以上の関係があった人物の名前が列挙されていると考えられます。以下に映像の内容の転写記録を示します。
私 真桑友梨佳
お母さん 真桑恵子
お父さん 真桑昭
弟 真桑拓斗
産婦人科医 小島保奈美 助産師 土井美奈
幼稚園の先生 辻本里香 小児科医 水上洋二
幼馴染で親友 大川綾香 幼稚園の友達 藤川さやか
初恋の人 上杉翔太 おとなりさん 遠藤香
«以下、200名程の名前が列挙されている。重要度が低いため省略»
演出 真桑友梨佳 真桑恵子
衣装 真桑恵子
Special Thanks 私の大好きなお母さん!
インタビュー記録: 以下に示すのはSCP-3324-JPの第一発見者であり、真桑友梨佳氏の実母の真桑恵子氏に対して行われたインタビューの記録です。
インタビュアー: 高瀬研究員
インタビュイー: 真桑恵子
内容: SCP-3324-JPの発見経緯及び異常性発現の原因の聴取。インタビュアーは自身を警察機関の人物であると称している。
«記録開始»
高瀬研究員: よろしくお願いします。早速ですが、あなたの娘さんの遺体を見つけたときの状況を教えていただけませんか。辛いことでしょうし、ゆっくりで構いません。
真桑恵子氏: はい、あの時は、仕事を終えて帰ってきたとき、ちょうど7時半くらいだったと思います。まだ夕方なのに浴室から湯気が出てきて、おかしいなと思って見たら、友梨佳がいました。
高瀬研究員: その時から既に娘さんの顔は変化していましたか?
真桑恵子氏: はい、気が動転していてよく覚えていませんが、ああそうです、その時から黒い画面になっていました。だから何が何だか分からなくなって。
高瀬研究員: それで、慌てていると画面から映像が流れたと。
真桑恵子氏: 多分そうです。慌てていたら8時頃に画面から急にスタッフロールみたいなのが流れて……(数秒沈黙)えっと、その、見つけたまましばらくそのままにしてしまったことって何か罪に問われたりするんでしょうか?
高瀬研究員: いえ、大丈夫ですよ。我々としてもこのような事例は初めてですし、真桑さんがパニックになって判断できなくなってしまったからといってそれを責めることはありません。
真桑恵子氏: 良かった。ありがとうございます。
高瀬研究員: もういくつか聞きたいのですが、あの画面に何か心当たりはありますか?
真桑恵子氏: 画面自体には心当たりとかはないですが、流れていた名前は本当の友梨佳の家族や知り合いの名前に間違いありません。
高瀬研究員: なるほど、では娘さんが自殺した原因などには、心当たりはありますか?
真桑恵子氏: ありません、今でも信じられないくらいです。あの子はいつでも私に対して笑顔で、学校での友達との話とか、彼氏の話とか、たくさんしてくれて。
高瀬研究員: そうですか。それは、お辛いですね。
真桑恵子氏: はい、でも、大丈夫です。確かに娘がいない生活は辛いですが、あの画面に流れた映像を見てから、あまり深く考えないことにしました。
高瀬研究員: そうなんですか。それは良かったですが、なぜそうお思いに?
真桑恵子氏: ええ、娘が自殺したと分かった時は自分が何かしてしまったかもしれないと思ったんですが、映像を見てると、友梨佳と私の思い出が蘇ってきちゃって。小さい頃の友達の名前とか、お世話になった人の名前をちゃんと覚えていたんだなって。なんて言えばいいんでしょう。友梨佳が名前の一つ一つを私に見せて、お母さんのせいじゃないよ、私は楽しかったよって、励ましてくれているような気がしたんです。
(真桑恵子氏が涙ぐむ、インタビュアーは数十秒間沈黙する)
高瀬研究員: 話しにくいことを話してくださってありがとうございます。きっと娘さんは今もあなたのこれからの人生を天国から励ましてくれていますよ、頑張ってください。
真桑恵子氏: ありがとうございます。本当に、そう思います。
«記録終了»
備考: インタビュー後、真桑恵子氏には通常の記憶処理を行い解放しました。
追記: 真桑恵子氏から引き渡しの後SCP-3324-JPを収容してから49日目に、液晶画面が通常とは違う映像を再生しました。また、50日目以降は一切映像を再生せず通常通り腐敗を始めたため、オブジェクトクラスはNeutralizedに再設定されました。以下に49日目の映像の内容を示します。
演技指導 真桑恵子
キャスティング 真桑恵子
予算 真桑恵子
総監督 真桑恵子
原作
「真桑友梨佳」
真桑恵子 著
49日目の映像内容からSCP-3324-JP研究チームは真桑恵子氏の供述に不審点があるとして、再度49日目より前の映像の人物の身元を精査しました。調査の結果、「お父さん」の真桑昭氏は苗字が瀬田で真桑恵子氏の夫ではなく愛人であったり、「初恋の人」の上杉翔太氏は真桑友梨佳氏と面識が無かったり等々、70件程の虚偽が含まれていることが判明しました。