SCP-3329
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アイテム番号: SCP-3329

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: 全てのSCP-3329実例は、個別に真空密封バッグに入れ、サイト-64保管棟の保安収納容器にまとめて収容します。実験はレベル4研究員1名の承認を得た場合のみ実施されます。

SCP-3329実例またはその一部が上記実験の終了時に残っていた場合、実験を監督する研究員の裁量次第で、保管場所に戻されるか、標準危険物プロトコルに従って廃棄されます。

実験3329-03の結果を踏まえて、Dクラス職員をSCP-3329の被験者に用いることは認められません。被験者は忠誠心と服従性の心理スクリーニング検査を受けた財団職員から選抜しなければならず、実験監督者はバーナム・イベントを経験中の被験者と視覚的・聴覚的に直接接触してはいけません。影響を受けた被験者からの意思疎通は音声-テキスト変換コンピュータプログラムを介して行われます — この間接的伝達はSCP-3329の副次異常性を十分に無効化できると証明されました。

SCP-3329副次異常性への偶発的曝露を防ぐため、被験者はバーナム・イベントが外見上終了した後も24時間隔離されます。

説明: SCP-3329は120本のロリポップキャンディの総称です(回収当時は144本、12本構成の束が12束)。各実例は直径約3.75cmのハードキャンディの球体と、そこに埋め込まれた長さ10cmの白い紙棒で構成されます。回収当時、各実例は上部に金色の飾り文字で'H F'、周囲に'リル・ロリポップのリトル・ロリポップ'と記された鮮やかな赤色の紙で包装されていました。各SCP-3329実例は12種類あるフレーバーの1つで(文書3329-01参照)、玉虫色の食用グリッターで描かれた0.5mmの三日月がキャンディの周囲を180度回って両極を繋いでいます。

包装されている時、または包装が解かれても人間が持っていない時、SCP-3329は全く異常性を示しません。人間がSCP-3329実例の紙棒を握ると、キャンディは発光し、グリッターの線が1回転毎分で時計回りに回転し始めます。グリッターの移動に際して、線が通過した部分のキャンディは、一見ランダムに他11種類のフレーバーのいずれかと置換されます。グリッター線が元々の位置に戻り、キャンディが100%新しいフレーバーに変換されると、サイクルが新たに始まります。

キャンディを舐めた/しゃぶった人物は、2種類のフレーバーが混ざった味を報告します。このプロセス中、SCP-3329実例の大きさは同心的に縮小していき、今日までどの被験者も口中でSCP-3329実例を球形以外に変形させるのに成功していません。打撃などの手段で実例を傷付けると異常性は失われます。

SCP-3329実例の直径が約5mmまで縮小すると、全12種類の味が1回転毎分で回転する個別の渦となって現れます。この“虹色コア”は噛み割ることができますが、それは“バーナム・イベント”と呼称されるSCP-3329の副次異常性を発現させます。

実験ログ3329-03、最初に記録されたバーナム・イベントの発生:

実験監督研究員: ジェデダイア・オズワルド博士

被験者: D-97605、女性、23歳

<記録開始>

D-97605: これマジ?

オズワルド博士: 馬鹿馬鹿しく見えるかもしれんが、アノマリーはアノマリーなんだ。とにかく1本キャンディを選んで、食べながら自分の経験する効果を説明してほしい。君のバイタルサインはこちらで確認しているし、有害作用があった場合に備えて医療職員も待機している。

D-97605: 別に文句は無いわよ、博士。どうせこんなのはいつでも[編集済]引き継げるんだし。

(対象はSCP-3329実例の包装を解く。SCP-3329実例は即座に赤く光り、グリッターの線が徐々にキャンディを琥珀色に変え始める。)

D-97605: これ放射能とか出してない?

オズワルド博士: まぁバナナ味なら、普通のバナナと同程度の放射線は出るな。私は天然の香料を使って作られた証拠だと見ている。

D-97605: 名無しの人間モルモットには最高級の実験環境を、って訳ね。じゃあ始めるわ。

(対象がためらいがちにSCP-3329を舐める。)

D-97605: うーん。赤い部分はサクランボ、琥珀色はシナモンみたいな味。見てすぐ分かる以外の変な点は思い当たらない。

オズワルド博士: 記録しておく。君のバイタルサインも変化していない。アイテムを舐め続けてくれ。

(簡略化のために無関係な映像を省略。被験者は指示に準拠し、SCP-3329から感じられる異なるフレーバーを報告したが、それらは全て文書3329-01のリストと一致していた。被験者は複数回SCP-3329を噛もうとしたが、割ることができなかった。約110分後、SCP-3329の大きさは十分に縮小し、“虹色コア”段階に入った。)

D-97605: 何かが起きてる。これも想定内?

オズワルド博士: その筈だ。消費して結果を報告してくれ。

D-97605: 了解。虹を味わってみる。

(被験者はSCP-3329を口に入れて噛み、キャンディを棒から取り外すのに成功する。)

D-97605: オーケイ、キャンディが溶けてる。すごく甘くて、全部のフレーバーが混ざり合ってる。味が薄れない。

(被験者は舌を突き出し、実験室のマジックミラーに映して確認する。彼女の舌は発光する虹色の渦に被覆されている。これがバーナム・イベントの始まりだったと考えられる。)

D-97605: ワオ、素敵。口の中でゲイ・プライド・パレードが起きてる。

オズワルド博士: パレードが? それは間違いなく初めての現象だ。もっと詳しく説明してくれ。

D-97605: へ?

オズワルド博士: 君の口の中のパレードだ。もっと教えてほしい。どのくらいの規模だ、それは君に不快感を引き起こしているか、そして何故この時期にプライド・パレードを開催している?

D-97605: ふざけてるの、それとも… あ、えっと、この口の中の人たちは太陽暦に従ってないの。季節はコーヒーのフレーバーに基づいてるんだって。パンプキンスパイス、ペパーミントモカ、そんな感じ。

オズワルド博士: 実に興味をそそられるね。人類学部門に連絡してこの進展を伝えなければ。彼らはきっと君の口腔の住民たちを研究したがるだろう。

D-97606: そう。そうよね。ねぇ、口の話で思い出したけど、私って文字通りの意味で甘党sweet toothなのよ。奥歯の1本が丸ごと圧縮されたショ糖で出来てるの。アノマリーじゃなくて、ただの自然の気まぐれ。どう思う?

オズワルド博士: 魅力的だが、今のところはプライド・パレードに集中すべきだと思うね。

D-97605: (微笑む) はいはい。実はね、これを研究し続けたいのはやまやまだけど、今日は私の釈放日なの。

オズワルド博士: おや。それはすまなかった。おめでとう。何故私に通知が来なかったのか分からん。

D-97605: 気にしないで、この施設の運営がどれだけお役所仕事かよく分かってるから。ええ、模範囚だからって、監督評議会の1人に恩赦を貰ったの。その模範的行動の報酬として、あなたたちが私をサイトの駐車場まで案内して、追跡装置が付いてない車と、民間人の服と、その時点で持ってる現金を渡して、私をそのまま帰してくれるんだって。今すぐ。

オズワルド博士: 随分標準から外れたプロトコルだが、O5とこれ以上揉めるのは嫌だからな。せめて現金だけでも埋め合わせがあれば嬉しいんだがね。

D-97605: ええ、きっと返金してくれるんじゃない。今すぐにでも出発しないと、今月の… 払い戻し?だか何だかに経費報告書を提出するのが間に合わないわよ。

オズワルド博士: 上は業務連絡も回さずに提出期限を変えたのか? 典型的だな。ならそろそろ行くとしようか。必要以上の出費はできれば避けたい。

(オズワルド博士は実験室のドアを開ける。当直の警備員は異議を唱えない。)

D-97605: 神様、感謝します。

(D-97605は実験室に置かれていた他全てのSCP-3329実例をポケットに入れ、警備員とオズワルド博士に付き添われて退出する。)

<記録終了>

事案後報告: 目撃者の証言と監視映像によると、オズワルド博士とエージェント ロークは、D-97605の要請に従って彼女をサイトの駐車場まで案内しました。彼女はこの行動を問い質した全ての人物に対し、彼女が実際に釈放されることを納得させたようです。彼女は黒のセダンに乗り、数千ドルの現金を持って逃走しました1。加えて、D-97605は彼女の釈放が機密情報扱いであり、他言無用であると全ての職員に納得させたらしく、その後数日間にわたって彼女の失踪に関する捜査を混乱させました。

問題のセダンは地元の中古車販売店で、如何なる事務処理も無く、本来の約12倍の価格2で買い取られ、後日財団に回収されました。D-97605と他11本のSCP-3329実例は現在も行方不明です。

オズワルド博士は、不適当な実験プロトコルでDクラス1名とSCP-3329実例11本の喪失を招いたとして、停職及び降格処分を受けました。実験プロトコルと収容プロトコルはこの事案を反映して更新されています。

補遺: その後のSCP-3329実験の結果、ある人物がSCP-3329の虹色のコアを消費してバーナム・イベントを引き起こすと、他者は対象者のあらゆる主張に批判的思考を適用できなくなり、影響者の発言がどのようなものであれ、疑う余地の無い事実として受け入れることが判明しました。これは対象者が意図的に虚偽を述べたか、それと知らず間違った発言をしたか、単純な比喩表現や誇張であるかに関係なく発生します。

この効果は、伝達される情報が口頭でも文章でも、対面でも遠距離通信でも必ず発生します。対象者の声明を人間またはAIが間接的に伝えると、この効果は打ち消されます。影響者の発言記録は、バーナム・イベントの期間中のみ情報災害性質を保持します。

バーナム・イベントは、目に見えるコーティングが対象者の舌に残存している限り続くようです。バーナム・イベントの期間は対象者が消費する飲食物の量や質、口腔衛生への配慮の程度といった様々な要因に応じて大きく変化します。

回収: 144本の実例は全て、紫色のペンで“不気味なぐらい販売中止”DISQUIETLY DISCONTINUEDと記された紙袋の中から発見されました。当初、この紙袋はサイト-64の私書箱に匿名で届けられましたが、D-97605の脱走に関する調査中に、オズワルド博士は自身が財団のプロトコルに違反し、キャリアアップを目的として個人的に異常存在を探していたと告白しました。証言によると、彼は“魔法のカーニバル” — GoI-233 (“ハーマン・フラーの不気味サーカス”)と推定される — の備品トレーラーからSCP-3329を盗み出したと主張する、現時点でまだ特定されていない人物から、計█████米ドルでSCP-3329を購入していました。

このプロトコル違反のため、停職と降格に加えて、オズワルド博士は内部保安部門の監視下に置かれています。

SCP-3329の紙袋の中からは、SCP-3329の宣伝資料と思われる60cm×90cmの折り畳まれたポスターが見つかりました。

文書3329-01:

一歩踏み出して勝利へのチャンスを掴もう

リル・ロリポップのリトル・ロリポップ!

12種類のフレーバーに変化するのをまじまじとご覧あれ!:

緑 ~ リンゴ
琥珀 ~ シナモン
オレンジ ~ オレンジ (当然!)
白 ~ バニラ
金 ~ モモ
赤 ~ サクランボ
茶 ~ コーラ
黄 ~ バナナ
紫 ~ ブドウ
青 ~ ペパーミント
ピンク ~ キウイスイカ
インディゴ ~ ワイルドベリー



[以下の文章は、女性道化師のマンガ的なイラストに添えられた吹き出しの中に記されていました。]

“男の子も、女の子も、ノンバイナリの子もこんにちは! リル・ロリポップがみんなのために特別なお菓子を持ってきたわよ! あたし専用の隠し場所からロリポップキャンディを手に入れるチャンス! あたしは飽きっぽいから、団長が特別に作ってくれたの。フレーバーが変わり続けるから、1分ごとに新しい味が舐められちゃう! あたしの好きなフレーバーが全種類揃ってるし、変化するごとに驚きが待ってる — 何十種類も違う組み合わせが楽しめるのよ! あたしの注意だって十分に引き付けられる! それに、それぞれのキャンディの中心にはスペシャルサプライズが待ってるわ。素敵すぎてきっとみんなも信じられないようなサプライズよ!”

オモシロ情報: “ナメていい奴は何処にでもいる”There's a sucker born every minuteって言葉はよくP・T・バーナムの発言だと思われてるけど、彼が実際にそう言った証拠は無いって知ってた? 実はこの言葉を生み出したのは、あたしたちの初代団長ハーマン・フラーで、謎の失踪を遂げるまではずーっとこのモットーに従って生きてたのよ。あいつがいた頃にこのキャンディが無くて良かった。きっとますます世の中をナメてたでしょうからね!

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