アイテム番号: SCP-3329-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3329-JPはサイト-8175の低脅威度ヒト型実体収容房に収容されています。SCP-3329-JPには指定食糧を除く一切の動物性タンパク質を与えないでください。指定食糧は冷凍保存し、備蓄が無くなり次第、1名のDクラス職員を原料として製作してください。指定食糧の製作コストの高さのため、収容体制を後述のプロトコル・ドメスティックに移行する案が計画されていますが、プロトコル内容について倫理的問題点が指摘されているため、協議が進められています。
説明: SCP-3329-JPは、外見が██歳の日本人男性に類似している動物型実体です。SCP-3329-JPは雑食性であり、その異常性は動物性タンパク質を経口摂取した際に発現します。SCP-3329-JPが動物性タンパク質を一定量摂食すると、摂食量に比例した速度で外見が当該動物のものへと変化します。一度に変化しうる動物は1種類のみであり、異なる種を同時に摂食させた場合は摂食量の多い動物の外見へと変化します。実験で植物由来の食品のみを与え続けた結果、一般的な成人男性に必要な栄養価の水準は満たしているにもかかわらず衰弱の兆候を見せたため、変化後が草食性あるいは雑食性動物であっても動物性タンパク質の摂食が必要であると考えられます。SCP-3329-JPから細胞を採取、培養して観察したところ、正常なヒト細胞と比較して異常な速度でDNAが劣化、変質することが判明し、このことがSCP-3329-JPの衰弱の主な原因であると考えられています。
SCP-3329-JPは20██年██月██日、静岡県██警察署内にある留置所に勾留されている霧川浩一氏の居室内で発見されました。当初、「殺人事件の加害者と被害者の外見及びDNA等生態情報が一致している」という事案が報告され、調査を進めていたところ、「対象がニワトリの姿に変化した」との報告を受けて即時収容に移行しました。SCP-3329-JPが発見された霧川氏の居室からは弁当が発見され、弁当に入っていた鶏肉の煮物を摂食したことでニワトリ(Gallus gallus domesticus)に変身したものとみられています。霧川氏の逮捕事由は死体損壊容疑であり、自宅の冷凍庫からは逮捕された霧川氏と同一のDNAを有する、解体された遺体が発見されました。SCP-3329-JPは霧川氏の殺害を自供しており、遺体の一部を摂食することで霧川氏と同一の外見に変化したと結論づけられています。なお、防犯カメラの映像から、霧川氏殺害前時点でのSCP-3329-JPの外見もヒト型であったと推定されています。
SCP-3329-JPを収容後、霧川氏の遺体の一部を摂食させることでニワトリに変化する前の外見を復元し、インタビューを実施しました。以下はインタビュー内容です。
補遺1: インタビュー記録
回答者: SCP-3329-JP
質問者: 浅野研究員
<記録開始>
浅野: おはようございます。気分はいかがですか?
SCP-3329-JP: ここは…?留置所とは別のところですか?
浅野: ええ。あなたについていろいろ聞きたいことがありますので別の収容所に移送しました。私は警察の者ではありません。まあ我々のことはおいおい説明します。浅野です。よろしくどうぞ。さっそくいろいろ聞かせて頂きましょう。まずは…どうして死体を食べていたんですか?
SCP-3329-JP: 生きるためです。なるべく植物性のものしか食べない食生活を心がけているのですが、3日も肉を食べないでいると身体に不調が出て、どうしようもなく肉が食べたくなるんです。この欲求はただの空腹じゃない。かといって鶏や豚は食べたらもう人間に戻れない気がして、怖くて食べられない。本能が拒むんです。もし空腹に負けて他の動物を食べていたら、今ごろ捕食されるかプランクトンにでもなっていたと思うとぞっとします。
浅野: 大方自身の異常性に関して理解されているんですね。その体質は物心ついたときからですか?
SCP-3329-JP: 一番古い記憶は半年くらい前、松井健三という老人だったことです。気がついたら山奥にいて、横には腹を食べられた老人の死体と鉄砲が落ちていましたのでその前は熊とかだったのかもしれませんね。それ以前の記憶は全くありません。
浅野: 食糧はどうやって調達していたのですか?
SCP-3329-JP: 最初はもちろん殺して解体して食べていましたが、自分が生きるため、生きるためと思っていても罪悪感に耐えられなくなりました。その後はまだマシかと思って自殺者を持ち帰って解体していたんですが、そう何度も死んで間もない死体が見つかるなんてありません。やむなく今の人を食べたところで捕まりました。
浅野: なるほど、そして留置所内では食べられる人間がなかったので鶏肉を口にしたと。ニワトリになっている間の記憶はないのですね?
SCP-3329-JP: はい。何も覚えていません。
浅野: なるほど、よく分かりました。
SCP-3329-JP: どうか…助けてください。治してください。これ以上他人様の命を奪って生きたくはない、でも死にたくない、人間でありたい。手に入れた人間としての姿を、生活を手放したくない。普通のヒトとして生きていきたいんです!
浅野: 我々とて何でも出来るわけではありません。ですが最善は尽くします。
<記録終了>
後書: SCP-3329-JPの供述によれば、ヒトであった時以外の記憶は存在しないという。SCP-3329-JPの行動・記憶能力は現在の生物種の脳に依存すると考えるのが妥当だろう。
補遺2: 特別収容プロトコル改訂に関する声明
議題: SCP-3329-JPに対するプロトコル・ドメスティック適用の是非
結論: 当該プロトコルを適用する。
決定事由: 以下の三つの観点に沿って判断した。
一: SCP-3329-JPの性質
SCP-3329-JPは「ヒトとして生きたい」との意志のためヒト以外の形態に変化することに対して強い忌避感を示しているが、それとともにヒトの肉を摂食することに対しても強い抵抗を示している。SCP-3329-JPは摂食によって肉体を更新するため、摂食を止めない限り寿命で死ぬことはなく、財団の保護下にいるため外的要因で死ぬことはない。よってSCP-3329-JPは擬似的な不死性を持っていると解釈でき、後者の苦痛は半永久的に持続するといえる。ヒト以外の動物に変身していた時の記憶が一切無いため他の生物種に変身する際に記憶が継承されず、さらに知能レベルは変身している動物に依存する。
この事実から、当該プロトコル適用は後者の苦痛からの解放という点から一概に倫理に反するとは言えない。
二: 現収容プロトコルの倫理的問題点
現収容プロトコルでは指定食糧を与えることが規定されているが、指定食糧の作製は貴重な資源の浪費である上に重大な倫理的問題を抱えている。収容に必要不可欠であるとの理由で黙認されていたが、代替手段が存在するならば速やかに移行すべきである。三: プロトコル・ドメスティックの安全保障上の合理性及び経済性
SCP-3329-JPの異常性は動物性タンパク質を摂食した場合に発生するものであり、それ以外では通常の生物との生物学的差異は存在しない。また、前述の通りSCP-3329-JPの知能レベルは変身中の生物の知能レベルに依存する。そうであるならば、当該プロトコルを適用することで収容違反のリスクを低減することが出来る上、前項の特定食糧の件も含めて収容コストを大きく低減することが出来る。以上より、当該プロトコル適用により得られる利益と現プロトコル続行による不利益、倫理的問題点は当該プロトコル適用に係る倫理的問題点に優越すると判断された。
20██年██月██日
SCP-3329-JP 収容責任者 篠崎健吾
補遺3: プロトコル・ドメスティック詳細
協議の結果、プロトコル・ドメスティックの採用が正式に決定されました。
以下はその詳細です。なお、SCP-3329-JPに対して詳細を伝えることは禁止されています。
SCP-3329-JPはサイト-8175の低脅威度異常動物収容室に収容されます。
SCP-3329-JPには動物性タンパク質を一切含まないニワトリ用飼料を与え、2日に一度、鶏肉を与えてください。
当該プロトコルは20██年██月██日より施行されます。









