SCP-3344-JP


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アイテム番号: 3344-JP
レベル3
収容クラス:
euclid
副次クラス:
none
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
danger

特別収容プロトコル: 飼育下のSCP-3344-JPはDクラス職員1名につき1体のみを寄生させた状態で維持しています。SCP-3344-JP娘個体の流出を防ぐため、飼育担当のDクラス職員の排便は検査されます。

野生下のSCP-3344-JPを捜索するため、SCP-3344-JPの寄生に伴う症状はカバーストーリー「新種の難病」として流布されています。発見・報告されたSCP-3344-JP宿主は財団傘下の医療機関へと搬送してSCP-3344-JPを摘出してください。

野生下のSCP-3344-JPを発見した場合、最低限のサンプルを確保し、残りを殺処分してください。


説明: SCP-3344-JPはコウガイビル亜科(Bipaliinae)の特徴を有する寄生性生物の一種です。SCP-3344-JPはヒトを終宿主としての寄生を行う生活環を持ちます。形態的特徴として、SCP-3344-JPは寄生生活への適応として、宿主の消化管に固着するための鉤状構造を口器の周辺に発達させています。また、SCP-3344-JPは低酸素環境においては嫌気呼吸を、有酸素環境においては好気呼吸を行うことが可能であり、嫌気呼吸を行っている間は緩慢な動作のみを行うなどの行動的適応を持ちます。

生活環: SCP-3344-JPはヒト - ヒト間感染によって継代する生活環を持ちます。SCP-3344-JPの生活環は以下に示す通りです。

1. SCP-3344-JPが食物に混入する形でヒトに経口摂取された場合、SCP-3344-JPは十二指腸で孵化または活性化し、口器周辺の鉤状構造を用いて腸壁へ固着することで盲腸へ寄生します。この段階のSCP-3344-JPは多くの寄生虫と同様、酸素を用いない嫌気呼吸を行います。この段階のSCP-3344-JPの体長は1-3cm程度です。


2. 性的に成熟したSCP-3344-JPは、不明な機序により消化管内容物に含まれるセルロース等の食物繊維の分解能力を獲得します。一般にヒトが摂取する食物繊維の大部分は植物性食品に由来するセルロースであり、セルロースはβ-グルコースが直鎖状に重合して生成される高分子です。セルロースのような高分子が分解されてセロビオース1あるいはβ-グルコースに変化した場合、腸液内の溶質が増加することによって浸透圧が上昇し、腸管内部への水分の誘引を呈して下痢症状を誘発します。また、大腸内へ流入した大量の糖類は腸内細菌によって利用され、分解産物として短鎖脂肪酸やメタン、二酸化炭素、水素が生じます。これらの内短鎖脂肪酸は大腸上皮細胞から吸収されますが、メタンや水素などのガスが大量に生じた結果としてSCP-3344-JPの宿主は腹部膨満感や放屁などの症状を呈します。ただし下痢症状はSCP-3344-JPによる糖類の利用、および発生した糖類による腸内細菌叢のバランスの変化によって2週間から1ヵ月程度で軽快します。

先述の症状が軽快した段階では、SCP-3344-JPが食物繊維を分解して生じた糖類の内、SCP-3344-JPが利用しなかったものは腸内細菌叢が速やかに分解し、腸管から吸収可能な短鎖脂肪酸かメタンや水素などのガスへ変換することで腸液内の溶質量を低下させ、結果として消化管内の浸透圧を上昇せずに消化管内容物を減少させます。宿主の消化管内容物の減少は排便回数及び排便量の減少をもたらし、多くの場合大腸の蠕動運動の低下を誘発します。この蠕動運動の低下は大腸内の便の滞留時間を延長することによって、便からの水分の吸収を誘発し、これにより宿主は便秘症状を呈します。この段階のSCP-3344-JPの体長は5-10cm程度です。


3. SCP-3344-JPは体長15cm程度まで成長した段階で身体後部の自切による無性生殖を開始します。SCP-3344-JPは一部のコウガイビルと同様に体内にテトロドトキシンを保有しており、この自切によって体内のテトロドトキシンが漏出します。この段階のSCP-3344-JPのテトロドトキシン保有量は微小であるため、この漏出による宿主への影響は軽微でありほとんどの場合自覚症状を呈しませんが、稀にめまいや腹痛などの症状が現れることがあります。自切により生じたSCP-3344-JP娘個体は便とともに排泄され、下水管内で有酸素環境に対応して自由生活を開始します。

4. ヒト腸管内にSCP-3344-JPが2体以上存在する場合2、SCP-3344-JPの内1体がその直径を増大し始めます。(以下この個体をSCP-3344-JP-aと指定します。)通常のSCP-3344-JP個体は幅広の蠕虫様の形態であり横幅は1-2mm程度ですが、SCP-3344-JP-aはその形状をより太い円筒形に変化します。この過程が進行し当該個体の直径が3-4cm程度まで成長した場合、SCP-3344-JP-aは鉤状構造による腸壁への固定を解除します。これによってSCP-3344-JP-aは大便と同様に大腸の蠕動運動によって直腸まで運ばれます。この段階へ至る例では、先述した食物繊維分解による排便回数の低下などの要因で宿主は弛緩性便秘症状を呈していることが多く、SCP-3344-JP-aの直腸への移動は遅延することとなります。

SCP-3344-JP-aが直腸に到達した場合、当該個体は身体を伸縮させることによって、直腸内に嵌入します。これによって直腸刺激に伴う激しい便意と完全な排便の停止を誘発し、それに伴って消化管蠕動運動の急激な亢進を呈します。蠕動運動の急激な亢進によって生じた盲腸での消化管内容物の成分変化および蠕動運動による振動を感知した他のSCP-3344-JP個体は、この段階で鉤状構造による腸壁への固定を解除します。蠕動運動の亢進によってこれらの個体の直腸への移動は速やかに行われ、直腸内へ他の個体が到着しSCP-3344-JP-aとの交尾が成功した段階で次の段階へ至ります。

5. 交尾に成功したSCP-3344-JP個体は口器から咽頭を伸展させて消化管を露出させ、テトロドトキシンを分泌します。SCP-3344-JP-aは成長に伴ってテトロドトキシンの分泌量が増大しており、宿主は20分程度で進行性の運動麻痺、神経障害を呈し、意識を保ったまま外見上は数時間の昏睡状態へと至ります。この過程において骨格筋のナトリウムチャネルの抑制により、骨格筋で構成されている外肛門括約筋3が弛緩します。

これによる圧力の低下を感知したSCP-3344-JP-aは身体を伸縮させて直腸内での嵌入を解除し、肛門から体外へ脱出します。前段階において生じる激しい便意のため、宿主は排便を試みている途中に昏睡状態になることが多く、その場合には脱出が被服により妨害されません。

宿主体外でのSCP-3344-JP-aは有酸素環境によって好気呼吸に基づく活動性を獲得します。体外へ脱出したSCP-3344-JP-aは宿主の背部へ移動し、口器から消化管を吐き出して消化液を分泌します。当該消化液は塩酸と消化酵素の混合物で構成されており、これによってSCP-3344-JPは数時間かけて宿主の肉体を消化・吸収します。宿主腸管内にSCP-3344-JPが2体以上存在しない場合は宿主を捕食する行動が見られないことから、これは有性生殖に伴う産卵のためのエネルギーを獲得するための適応と推測されています。

SCP-3344-JP-aは扁形動物であり移動速度は緩慢ですが、この段階へ至った宿主は直腸内に分泌されたテトロドトキシンによる影響で外見上の昏睡状態にあり、SCP-3344-JP-aによる捕食からの逃避行動を取ることが出来ません。一方でテトロドトキシンは血液脳関門を通過することが難しい物質であるため、これらの麻痺は中枢神経系には進行せずあくまで末梢でのみ進行します。これは消化に伴う出血性ショックか、テトロドトキシンによる呼吸筋への麻痺の進行のいずれかで死亡するまでの間、宿主は意識を保った状態であり当該捕食行為を知覚していることを示唆しています。

6. 宿主を消費したSCP-3344-JPはトイレなどから下水管へ侵入し、下水管内で産卵します。SCP-3344-JPは嫌気呼吸が可能であり、封水4によって下水管への通行を妨害されません。産卵が完了したSCP-3344-JP個体は多くの場合その後に死亡します。

SCP-3344-JPの卵は下水管内で孵化し、オオチョウバエ(Clogmia albipunctatus)やチャバネゴキブリ(Blattella germanica)などの下水管内に生息する生物の卵や幼生を捕食する自由生活を行います。これによって充分に成長したSCP-3344-JP幼生は下水管から住居・食料品店・料理店の厨房などに侵入し、食料品へ潜入します。SCP-3344-JPは陸生プラナリアの一種であるため身体の切断に高い耐性を持ち、調理過程における切断や摂食時の咀嚼においては死亡せず、非加熱で体内に侵入した場合高い確率で寄生に成功すると推測されています。



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