SCP-3353-JP
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アイテム番号: SCP-3353-JP

オブジェクトクラス: Ticonderoga1


Australopithecus

ハルトマン霊体撮影機で撮影されたSCP-3353-JP


特別収容プロトコル: SCP-3353-JPの出現はコントロールが困難であることに加え、出現トリガーである儀式が一般に深く浸透していること、SCP-3353-JPを知覚可能な霊知覚能力者の存在割合が極めて低いという観点から、対抗計画は検討されていません。SCP-3353-JPを知覚したと主張する霊知覚能力者が一般社会に対して混乱を及ぼす可能性のある場合は記憶処理と共にカバーストーリー("精神障害に伴う幻視と妄想")を流布し情報を操作してください。

説明: SCP-3353-JPは日本国全域で存在が確認されているレベルⅡ霊的実体の総称です。SCP-3353-JPは身長約120cmの概ね人型であり、やや長い腕と重度の小頭症の病態に類似した小さい頭部を有し、全身の大部分が濃い体毛に覆われています。SCP-3353-JPは女性のような身体的特徴を有しており、発達した乳房を有しています。全てのSCP-3353-JPの身体的特徴に個体差は存在せず、完全に同一の外観を有します。SCP-3353-JPを通常の光学的手段によって観測することはできず、肉眼での観測も不可能ですがクラスⅡ以上の霊知覚能力2者はSCP-3353-JPの存在を察知、または視覚的に認識することが可能であることが判明しています。

SCP-3353-JPはある程度の知性を有しているようであり、一定レベルの知的行動が見られます。SCP-3353-JPは周辺環境や他の霊体を観察して行動を変化させることが確認されており、攻撃的な霊体を攻撃する、周囲の霊体を拾得するなどの行動が現在までに観察されています。SCP-3353-JPは物理干渉能力を有さず物質透過性を示します。そのためSCP-3353-JPは大気を利用した発声を行うことはできません。SCP-3353-JPは外部からの刺激に対して僅かに反応を示すことがあるものの、大部分は関心を示さないか無視します。そのため、SCP-3353-JPとのコミュニケーションは事実上不可能です。

SCP-3353-JPは主に日本国内で夏季に行われる盆行事の進行と同時に出現します。SCP-3353-JPの出現は盆行事が太陰太陽暦(旧暦)7月に行われる地域、グレゴリオ暦7月15日に行われる地域、グレゴリオ暦8月15日に行われる地域で普遍的に観察され、盆行事実行時期が数日程度前後した場合であっても基本的には観察されます。一方で、期間が大きく逸脱した場合は出現が認められません。

SCP-3353-JPは盆行事の開始された後、実行者の周囲に不定期なタイミングで出現します。SCP-3353-JPの厳密な出現条件は明確でないものの墓や仏壇への礼拝行為、迎え火の実行など、祖先信仰と結びついた宗教的儀式の進行中に出現する傾向にあります。その後、SCP-3353-JPは盆行事実行者、及びその血縁関係者につきまとい、周囲を徘徊するなどして盆行事期間中を過ごします。その後は、盆行事の終了によりSCP-3353-JPは消失します。盆行事実行者による送り火の実行、灯篭流しへの参加などによって消失する例が確認されているものの、これらが行われなかった場合にもいずれかのタイミングで消失します。明確な消失の基準は明らかとなっていません。また出現中のSCP-3353-JPに対して霊的手段を用いて介入した場合、SCP-3353-JPは即座に消失します。この特性によりSCP-3353-JPの長期的な捕獲・拘束には成功していません。

SCP-3353-JPは古来より日本国内で確認されており、以前から祖霊儀式に関連する場に出現していたとされています。また霊知覚能力者によって目撃されたSCP-3353-JPを原型としていると考えられる複数の民俗伝承も国内で広く確認されています。

補遺1: 蒐集院内部文書
以下は蒐集院から回収されたSCP-3353-JPと考えられている存在についての資料です。

猿猴蒐集物覚書帳目録第三〇一一番

捕捉年不明。蒐集院の記録において猿猴と目される存在が登場した最も古い記録は皇紀一四八二年に作成されたものである。猿猴はその名の表す通り猿のような見た目をしているがやや人間の女に近い姿をしており、まるで人間と猿が混ざりあっているように見える妖である。猿猴の背は低く、子供ほどの背丈しかない。腕が不釣り合いに長く、潰れたような頭をしている。その姿は多くの者には見えないが、力のある者や死期の近い者、祈祷や呪術の験を得た者には見ることが出来る。悪鬼の類ではなく目立って人に害を成すことはないものの、よく人に纏わりつき、見えるものには不気味がられることがある。過去に調伏を試みたものがいたようであるが、その時はどこかへと逃げ消えてしまったという。

猿猴は御霊移しの儀や氏神に関する儀式の際に現れることがあると知られており、先祖儀式に関わっている場に引き寄せられるものと考えられる。仏式の祖霊儀式として盆が浸透してからは、盆の度に各家々に現れるようになりその発生頻度はとても多くなっている。特段の害を成さない上にその姿を見られる者も少ないため大きく取り沙汰されることもなかったが、僅かな姿を見ることのできるもの達の目撃談が全国に残されている。これらの目撃談の多くは、他の怪異や妖怪と同一視されている。山陰山陽四国における猿猴は河童と同一視されており、人を襲い、肛門から手を入れて生き胆を抜き取ると言われる。だが、毛が生えている、猿に似ている、人間の女に化けるなど、本来の猿猴の特徴を窺うことができる。また土佐に伝わる芝天狗と呼ばれるものも猿猴が原型であると考えられ、背が小さく子供のようで、全身に毛深い体毛が生えているという。日吉神の使者としての猿神や狒狒と混同する例もある。

シバテン

なぜ猿猴が祖霊の儀式に誘引されるのかはわかっていない。古来より多くが目撃されているものであるが無害故に院内でも詳しくは検められておらず、文献も少ない。猿猴は祖霊が何らかの形で妖に転じ猿のような姿に変化したものであり、祖霊儀式に誘引されるのは儀式により祖霊同様に彼岸から此岸へと降りるためであると考える硏儀官も存在するが、あくまで仮説である。祖霊より転じたものであれば意思の疎通などはできそうなものであるが猿猴が言葉を発するところは見たことがない。硏儀官が呪術により猿猴の内を覗かんと試みた際にも、ただ猿の如き吠え声が聞こえたのみであったというのでやはり猿猴はあくまで妖であると思われる。

(記・亮山)
(改稿者・不明)

補遺2: SCP-3353-JP意思疎通実験
19██/08/17。SCP-3353-JPとの意思疎通を目的として、クラスⅢ霊知覚能力3を有するDクラス職員と接触させる実験を行いました。なお接触の様子はハルトマン霊体撮影機により撮影され、Dクラス職員はその映像を端末から確認できる状態で行われました。以下は実験の記録です。

[SCP-3353-JPは屈みこみ、地面を右手で撫で回している]

北郷博士: D-8857、端末の映像を見ながらSCP-3353-JPに接近してください。

[D-8857がSCP-3353-JPに接近する]

D-8857: うわ。え、これ近づいて大丈夫なの?

北郷博士: 大丈夫です。あなたが何か感じるまで接近してください。

[SCP-3353-JPが顔を起こしD-8857の方を見る]

D-8857: こっち見てるよ。ねぇ。この猿こっち見てるって。

北郷博士: 何か感じますか?

D-8857: いや、なんか。凄いこっちのことに興味もってるよ。これ近寄らない方がいいんじゃ…。

北郷博士: 大丈夫です。接近を続けてください。

[D-8857がSCP-3353-JPに向かって接近する]

[SCP-3353-JPが立ち上がり、体をD-8857の方へと向ける]

D-8857: 見てるよ。この猿、私の事超見てる。うわっ。

北郷博士: どう感じますか?

[D-8857は目を瞑り顔を逸らす]

D-8857: なんか……なんだろ……警戒?なのかな……ちょっと怖い。

[SCP-3353-JPはD-8857を凝視したまま歩き出す]

D-8857: なんか……強くなってる……こっちに意識が向いてる気がする。

北郷博士: 意識と言うと具体的にはどのような感覚ですか?

[SCP-3353-JPはD-8857を凝視したまま接近する]

D-8857: わかんないよ。ただなんか……凄く……凄くこっちのことに興味を持ってる。……普通じゃないよ。見られてるって、画面見なくても分かるくらいだよ。

[SCP-3353-JPはD-8857を凝視したまま接近する]

D-8857: あぁ。無理無理。マジで無理。

[D-8857は振り返り、出口に向かって走り出す]

北郷博士: 止まってください。D-8857、命令違反とみなしますよ。

D-8857: いや、ほんと。無理だから。

[SCP-3353-JPがD-8857の方へと走り出す]

D-8857: わ!うわ…うわ!追いかけて来てる!

[SCP-3353-JPがD-8857を追跡する]

[D-8857の悲鳴]

[D-8857が転倒し膝を強打する]

D-8857: 嫌だ!…猿!あっち行け!

[SCP-3353-JPがD-8857の1m手前で停止する]

D-8857: うっ。

[SCP-3353-JPが屈み込み、D-8857に顔を寄せる]

[D-8857の悲鳴]

[SCP-3353-JPが唇を横に結び、歯を覗かせる]

[SCP-3353-JPがD-8857に更に近づき、手を伸ばす]

[4秒の沈黙]

[SCP-3353-JPが手をD-8857の膝に当てる]

D-8857: え?

北郷博士: D-8857、どうしましたか?何を感じますか?

D-8857: え、なんだろ。なんか。

[SCP-3353-JPがD-8857の膝を擦る]

[D-8857は目に見えて落ち着きを取り戻す]

D-8857: なんか、なんか変だよ。なんか不安というか…心配?してるみたい。

北郷博士: 心配ですか?

D-8857: うん。そう。なんか、変な感じ。

[SCP-3353-JPがD-8857にさらに近づく]

[SCP-3353-JPがD-8857の体を抱くようにして絡みつく]

D-8857: なんか。なんだろう。うーん。言語化しにくいけど…。

D-8857: 子供見てる親……みたいな感じする。

D-8857: …いや、孫見てるばあちゃんかもしんない。この感じ。

[SCP-3353-JPがD-8857の頭に手を載せる]

D-8857: …なんか。あれかな。お盆だから帰ってきた感じかな。多分。うん。

[後半省略]

[記録終了]

この実験では明確な意思疎通には至らなかったものの、SCP-3353-JPが見せた行動はボディランゲージとも考えられます。これはSCP-3353-JPがある程度のコミュニケーション能力を有する可能性を示唆するものです。

補遺3: SCP-3353-JP解剖学的所見
20██/08/16に出現したSCP-3353-JP実例に対して非物質変位無効装置(nPDN)4を稼働させることにより短時間ではあるものの物理実体へと状態を固定することに成功し、消失までの間にX線写真を撮影しました。このX線写真を用いて骨格及び臓器等の解剖学的特徴を調査しました。

調査結果からSCP-3353-JPの骨格はサル目ヒト科ヒト族の原始的な人類に類似することが確認されました。SCP-3353-JPの骨格は華奢型でアウストラロピテクス属に近く、430ml程度のやや小さな脳容量、手指の骨格の歪曲程度やヒトに近い骨盤形状などアウストラロピテクス・アファレンシス(†Australopithecus afarensis)5に極めて類似した特徴を有することが確認されました。これらのことからSCP-3353-JPはアウストラロピテクス・アファレンシスを由来とする霊的実体である可能性が極めて高く、3,900,000~2,900,000年前のアフリカ大陸で死亡したアウストラロピテクス・アファレンシスのクラスΑ(α)霊体6であると考えられます。この調査結果を基として、SCP-3353-JPは祖霊儀式により盆行事実行者の共通祖先として召喚されているものであるとの仮説が霊障部門によって提唱されています。

SCP-3353-JPが祖霊儀式により現生人類(Homo sapiens)の共通祖先として召喚されている場合、祖霊信仰の存在する地域全域でSCP-3353-JPが出現している可能性が高いと考えられています。霊障部門による国外での調査が進行中であり、現在までにSCP-3353-JPに関連する可能性のある以下のような情報が発見されています。

  • ソルラル(旧正月)期間中の幽霊チンパンジーの目撃情報 - 大韓民国
  • 家屋に侵入し先祖を祀る祭壇の供え物を食べる未確認動物 猿人フイハイの噂 - ベトナム社会主義共和国
  • ディア・デ・ムエルトス(死者の日)に地元警察に寄せられた全裸の人間または猿が墓地を徘徊しているという旨の通報 - メキシコ合衆国
  • ハロウィンイベントにおけるリアルな「おさるのジョージ」の仮装をした子供の目撃情報 - グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国
  • 伝統的な降霊術により先祖の霊を自身に憑依させる儀式を行った後、不明な原因により社会性と言語能力を喪失した呪術師に対する精神科治療例 - タンザニア連合共和国

ほか 367件

現在、更なる調査と事実確認が進行中です。




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