アイテム番号: SCP-3355-JP
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル: SCP-3355-JPは周囲2.0kmを高さ10.0mの有刺鉄線フェンスで覆い、一般人が立ち入ることを防いでください。また、SCP-3355-JP-1群はSCP-3355-JP周囲に設置した監視カメラによる監視状態を継続し、異常性の行使やこれまでの挙動と逸脱している点が見られた場合は速やかにサイト管理官に報告してください。SCP-3355-JP-1群がコミュニケーションとして用いるSCP-3355-JP内の通信機器は常時傍受され、その内容の監視と記録は継続されます。
ネットワーク上自動監視システムがSCP-3355-JP-1群の異常性による文書の改竄を検知した場合は速やかに復元を行い、カバーストーリー「マルウェア感染やサイバー攻撃等による文書の改竄」を流布してください。
SCP-3355-JP-1群と直接接触する可能性の高い職員は対ミーム予防措置を行い、SCP-3355-JP-1の異常性への曝露を防いでください。また、SCP-3355-JP-1群鎮圧部隊の職員は上述の措置に加えて30日に1度散髪を行い、髪型をパンチパーマに維持してください。
説明: SCP-3355-JPは███山の山腹部に存在する寺院に酷似した建造物です。外装に未知の木材や鉱石が使用されており、内装は一般的な美容室を模倣したような構造となっています。ハサミやバリカン、シャンプーボール等の一般的なものに加え、火炎放射器や金剛杵等の用途が不明な器具や設備が確認されています。
SCP-3355-JP-1はSCP-3355-JP内に生息する未知の生命体です。人の頭部に酷似した本体に、クモ類の歩脚に近い特徴を持った触腕を有しています。触腕は8本存在し、全長は約8.0mに及びます。
SCP-3355-JP-1は発声が可能です。一部の発言には異常なミームが含まれており、曝露によって認識災害を引き起こすと同時に意思疎通が困難となります。また、「御洒落」「解脱」といった単語を頻繁に使用するようになりますが、SCP-3355-JP-1やその異常性の曝露者は既存の概念とは違った意味でこれらの単語を使用していると考えられています。
SCP-3355-JP-1は異常性に曝露した人物(以下、対象)に対してコミュニケーションを図り、「御洒落」することへの同意を得ようと試みます。対象が同意した場合、SCP-3355-JP-1は対象を触腕によって拘束し、口腔内に未知の器官を挿入します。その後、乳白色の粘液を放出することで対象は以下のプロセスでSCP-3355-JP-1へと変換されます。
フェーズ1 |
SCP-3355-JP-1が放出した乳白色の粘液が粘膜から静脈内に浸透します。その後、血液中で融解し、血液循環によって脳動脈内に達します。その際に頭頚部の毛細血管が異常に拡張し、対象の多くは頭痛や熱感を訴えます。 |
フェーズ2 |
対象の頭髪が抜け落ちます。 |
フェーズ3 |
8本の触腕が頭皮を突き破るように出現します。その内の1本が対象の頚部を第7頚椎のレベルで瞬時に切断します。 |
フェーズ4 |
数秒間の痙攣後、対象はSCP-3355-JP-1に変換されます。 |
SCP-3355-JP-1は異常な手段で電子文書にアクセス・改竄を行うことが可能です。SCP-3355-JP-1群はこれまで74回にわたりその異常性を行使しましたが、いずれも京都府内のローカル企業のHPとSNSアカウントのみの改竄に留まっています。より広範囲に異常性を行使できる可能性もあるため、財団はSCP-3355-JP-1による改竄と疑われる文書を自動で検知できるシステムを開発しました。現在、日本国内の全企業に自動監視体制が確立されています。
また、髪型がパンチパーマである人間を視認することで約5時間にわたって仮死状態になるという特性を有しています。SCP-3355-JP-1群は仮死状態となる直前に「如来」や「尊い」、「絶頂」と連呼することが確認されていますが、意図は不明です。この特性を考慮し、SCP-3355-JP-1群が積極的に人類に対して物理的危害を加える場合を想定して編成された鎮圧部隊の全隊員の髪型はパンチパーマで維持されます。
SCP-3355-JPは当初、200█/12/8から京都府内にて発生する電子文書の改竄現象として認知されていました。しかし、200█/4/8にて財団はSCP-3355-JPを発見。改竄された文書の内容や添付画像から、一連の現象はSCP-3355-JP-1群の異常性によるものと推測され、現在の収容プロトコルが確立されました。収容当初からSCP-3355-JP-1群はSCP-3355-JP内に留まっており、人類に対して積極的に物理的接触を図るような行動は確認されていません。
改竄された文書やSCP-3355-JP内での通信内容からSCP-3355-JP-1群は何らかの目的をもって活動していると考えられていますが、行動原理は未だ不明です。
補遺1: 以下はDクラス職員を用いたSCP-3355-JP内の探査記録の抜粋です。
探査ログSCP-3355-JP - 日付20██/██/██
目的: SCP-3355-JP内部の調査
探査員: D-20561
追記: D-20561はGPS装置、ボディカメラ、マイクを装備し、野村博士が通信で探索中の行動を指示する。また、D-20561と野村博士は対ミーム予防措置を施行済みである。
<記録開始>
D-20561: 美容室?みたいな所に入ったぞ。
野村博士: カメラに周囲の様子を写してください。
D-20561: まじかよ……写真で見たまんまのやつが動いてる。先生、こいつらはまともに話できんのか?
SCP-3355-JP-1-14: いらっしゃいませ。ご予約はされていますか?
D-20561: は?なんの?
SCP-3355-JP-1-14: 美容室をご存知でないのですか?哀れ、駄洒落は御洒落の後に嗜むものです。
D-20561: くっさ。婆さんちみたい。
野村博士: 余計な発言は慎むように。とにかく相手を刺激せず、注意して接触して下さい。
SCP-3355-JP-1-14: 御身を洒い落とし、美を窮めて極妙となりなさい。御洒落の真髄を刮目しなさい。貴様、ダサ過ぎます。70,000円になります。
D-20561: ごみをあらい……分からん。
SCP-3355-JP-1-14: では救いの糸はこちらに。下等生物1体御入信でーす!
SCP-3355-JP-1-15: モーハ!
SCP-3355-JP-1-16: パーパ!
D-20561: なんか知らんが入れたぞ。
野村博士: 分かりました。今回は一通り中の様子が撮影できればそれで結構です。
SCP-3355-JP-1-14: 髪が地獄色なのは貴様がダサい故ということを悟りなさい。つまり餓鬼であり、畜生であり、修羅であるということです。毎朝髪を卑猥に形作る邪婬の傀儡である貴様は我の施術を受けなさい。我々はどう見ても極妙なる美そのものであり、毎朝触腕もツヤツヤ。即身仏は頭皮へのダメージが気になりませんか?必要なのはヘッドスパであり、それは30,000円になります。
SCP-3355-JP-1-15: ここは洒い場でありスタイリストの領域、つまりは浄土です。ここで御洒落による解脱に至った後、カットした際の煩悩と御身は智慧光放射装置によりワックスに転生を果たします。痒いところはありませんか?フルーティー浄土フローラルは我も愛用のワックス。ですが使いこなすにはまず御洒落することが必要です。我のカットはあの崇拝者絶頂中の清純派韻踏み偶像集団「御利益46」御用達。つまりは90,000円になります。
SCP-3355-JP-1-16: 髪は際限なく湧き上がる煩悩の権化であり、その傀儡が穢れたる御身です。それらをカットし洒い落とすことこそが御洒落の真髄、美の極点であることは明らかです。涅槃の境地に立ち、カットによる御洒落で美しい解脱へ導くのが我々スタイリストの使命なのはお分かりいただけますか?熱地獄と化した血生臭い娑婆に住まう下等生物達の涙がたとえ一滴ずつでも滴り落ちるならば、大地をも沈める深い悲しみとなります。つまりは有機的かつサステナブルな上位存在となることで極妙なる浄土を刮目しなさい。ところで、我慢の限界ではありませんか?我々とヘッドインし、濃厚かつすんごい叡智なワックスを繰り広げなさい。我々は生まれを問わず、行為を問います。要するに210,000円になります。
D-20561: 金持ってない。
SCP-3355-JP-1-16: 嗚呼、カード払い。
D-20561: いや、現金もカードもないよ。
SCP-3355-JP-1-16: 理解。では……
D-20561: QRも。
SCP-3355-JP-1-16: 畜生。
<記録終了>
補遺2: 20██/██/██に傍受された通信にて、SCiP.NET内の文書の改竄計画を記していると考えられるメールが確認されました。このことから財団はネットワークセキュリティの強化とSCP-3355-JP-1群の監視の強化を実施中です。また、SCP-3355-JP-1群の異常性によって財団の機密が漏洩する可能性もあるとして、オブジェクトクラスをKeterへ変更する案が可決されました。以下はメールの内容です。
To: トップスタイリスト・mimura
From: スタイリスト・onose
Subject: 嗚呼、妙案
本日の即身仏もナチュラルでしょうか。トップスタイリスト・mimura。
下等ながらも毎日シャカリキなSCP財団が当美容室の広告を作成していた件についてです。
解脱の概念を因果に刻み込めるよう、叡智な広告に差し替えよとのことでしたが、それだけで良いのでしょうか?
このセンス皆無な広告が当店への冒涜、そして営業妨害にあたるとして存在代償請求を含む仏法的措置を適用するのはいかがでしょう?
そうすれば、下等生物らの強制解脱を執行することが可能と考えます。
貪の下等生物は知能が低次元過ぎます。つまり、当店での説法のみで導くのは非効率的ですし、我の考えが至高であるのは明らかです。
許可を、トップスタイリスト・mimura。
To: スタイリスト・onose
From: トップスタイリスト・mimura
Subject: 頭皮がカチカチですよ
極妙よう、スタイリスト・onose。
その案は血の気も髪の毛も多すぎると思いませんか?そのような釈迦力の使い方は布教ではなく、侵略と言って過言ではありません。
執着とは即ち喪失。貴様は悲願への執着で美徳を喪失したのです。
美と調和の使徒たる我々は決して侵略者ではないということを忘れないでください。
時に、下等生物のあまりの愚かさに怒りを覚えることもあるでしょう。しかし、それもまた愚かなことです。
怒りにまかせて成せることなど、何ひとつとして有り得ない。
必要なのは赦すことです。
赦すことで怒りは断たれ、寂静たる精神で施術を行うことができるのです。
頭皮の力を抜きなさい。ハゲますよ。
結論、サステナ仏法典に基づいて釈迦力行使は下等生物広告の書き換えのみにしなさい。
サステナブルを意識し、下等生物のダサいサイトと調和した極妙なる広告を作成しなさい。
赦し、報い、救う。
それがスタイリストのスタイルです。
分かりましたか?スタイリスト・onose。
To: トップスタイリスト・mimura
From: スタイリスト・onose
Subject: Re:頭皮がカチカチですよ