SCP-3366
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シリア砂漠施設の内部。SCP-3366実体の出現位置は赤丸で示される。

アイテム番号: SCP-3366

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 2010年以降、SCP-3366の新規実例は報告されていません。初期調査において実行された既存の偽情報プロトコルを除いて、自発的な収容措置は必要とされません。

シリア砂漠施設の地上に観察基地3366/01が建設されています。基地の座標はN 33°33′15.2″ E 38°83′37.56″です。基地には常に2名以上の訓練された医療職員が配置され、施設内で出現した対象者に対応し、サイト-52へ直ちに移送されるように取り計らいます。尋問の後、対象者は記憶処理を施され、標準的な死別手順に従って親族の下へ戻されます。

説明: SCP-3366は、2008年から2010年にかけてイラク、バグダッドで37名の人間が類似の状況で消失した現象です。SCP-3366の影響を受けた対象者は、最初に疲労感や立ち眩みの症状を経験し、続いて消失現象、口内の乾燥、飲食や発声が困難な程の喉の鋭い痛みを経験したことを報告しました。各対象者が消失した際、所持品や衣服はその場に残されていました。

2012年以降、消失した37名中9名が、シリア砂漠の放棄された地下施設内に再出現しました。施設の入り口は、砂中に埋没したコンクリート基礎に据え付けられた鋼鉄製跳ね上げ扉です。入り口は深さ47mのシャフトに繋がっており、急勾配の階段を通じて移動することが可能です。シャフトの先は小部屋に接続しています。部屋の南側には目立たない窪みがあり、メッカの方向を指しています。発見時、部屋には2つの切断死体のみがあり、両死体は消失していた人物と同定されました。

以後行われた施設の監視の際に、消失していた対象者の内7名が生存状態で回収されました。いずれの対象者も深刻な筋萎縮と脱水症状を示しましたが、それ以外の面で加齢は発生しなかったと考えられます。いずれの対象者も、消失前の症状が継続していたことに加え、失語症と解離性障害の症状を示しました。各対象者の聞き取りの結果、彼らが共通の外時空的あるいは外パラダイム的体験を経たことが示唆されています(添付されたミーム部門報告書を参照)。

警告の為、冒頭にこれを記します。 ― 結論を出す前に、全体を読み通す必要があると思われます。分析部門が文献の重要性を指摘した時点で、既に三名の対象が解放されていました。残りの対象も既に手遅れになっていることが危惧されます。

我々の皆が子供の頃にアルフ・ライラに触れているものかと思います。一つ得られる教訓があるとすれば、物語には力が宿るということです。この物語において、神の慈悲があらんことを。

— M.スフィアン博士(サイト-52医療部門)

補遺: 対象者の証言記録(抜粋)

対象: 3366/003
消失日時: 2008/09/11
回収日時: 2013/10/06

対象の略歴: シャプール・アルジュマンド医師、37歳。アル・マグリブ地区に位置するアル・ワジリア私立病院に勤務していた総合診療医。1992年に重大なバイク事故に巻き込まれ、左目を失っている。最後に姿が確認されたカメラ映像では、病院地下に駐車してあった自身の車に向かって歩いていた。同氏の車はエンジンが掛かったままかつドアが施錠された状態で、平常通りの場所で発見された。同氏の衣服は運転席に残されていた。

[06:53:02] 時間。失われた。喉の痛み。傷。跳ね上げ扉。落ちた。ここに閉じ込められた。助け。王子。

[06:53:56] 彼女は彼を鋭いヤギの痛みの底の井戸の底に叩き落とした。私の口は開くが、喋ることが出来ない。彼女は戻ってくるが、それは今ではない。柔らかい唇はしなる鞭の形をして、深い傷に入れられる。

[06:55:16] 腐敗した冷たさの上の床。肉は残っていない。私には玉座が見える、奥行のあるピラミッドの上に小さなピラミッド達が生えている。彼はあまりに切り刻まれて、そこは暗く、彼の血のせいで温かい。彼はそこに閉じ込められている。どうか私を助けてくれ。

[06:57:26] 助けてくれ。床が冷たい。彼の足は石に変えられた。

[06:59:12] 私は見ることが出来ない。穴から出してくれ。

対象: 3366/007
消失日時: 2008/10/15
回収日時: 2014/09/17

対象の略歴: サデク・デーガン、37歳。バグダッド、サドルシティーの薬草販売人。若年性緑内障により左目を失明している。夜までに帰宅しなかったことに加え、手押し車が同市地下の浄化槽から発見されたことで、警察による記録が作成された。犯罪に巻き込まれたことが疑われたものの、容疑者の不在によって否定された。

[10:48:32] 彼の体の中の返し針は人間ではありません。脊椎は曲がり、彼女の鞭によって反動します。彼女は今も私に巻き付いています。彼女はどこにでもいます。彼女は水銀と氷です。

[10:51:28] 彼女は私の魔法を圧迫して、萎びた肉の種水を飲みます。刺すように痛みます。痛みます。彼女は再び鞭を振るいます。裸の背に火と氷があたり、魚の鱗が擦れます。彼は何も出来ず、痛みは続きます。皮と骨は分解され誰にも触れられません。明日は同じく新しい地獄です。

[10:53:17] 彼女は愛の為に彼を燃やします。彼女は私を愛しています。彼女は昨日、彼の爪の裏の皮を取りました。彼はその前の日から叫び続けています。彼女は明日戻ります。

[10:59:14] 喉の痛み。続けられません。明日話します。

対象: 3366/008
消失日時: 2009/08/22
回収日時: 2014/10/12

対象の略歴: ハシェム・ラスツカル、37歳。バグダッド、アル・ジャディーダに所在するイラク製薬産業(Iraqi Pharmaceutical Industry Co.)の工場監督者。2003年のイラク戦争に際してスンニ派民兵組織に所属していたものの、左目を破片によって負傷した後に脱退した。同氏が午前3時頃に集合住宅地下の洗濯室へ降りていくのを近隣住民が目撃したのを最後に消失した。

[02:33:27] 彼女が終わったなら、彼にそう伝えてくれ。昔の彼は、他から貰った贈り物を彼女に与えたものだ。彼の目は私の娘の目と似ている。再び嫁に会うことは出来るだろうか。私は山や夢も動かせるというのに、彼女は私を自由にしてくれない。私の手は黒く、拳は肉を掴むことが出来ない。跳ね上げ扉の底だ。助けてくれ。

[02:34:03] 私は半分死んでいるのに、彼女は私を犯そうとする。彼女は再び鞭を振るい、より多くを取り除く。彼は射精することも、話すことも、叫ぶ以外には何も出来ない。

[02:35:49] 私は病院に居るのか?彼女の爪で彼の首を壊せと、彼は彼女に囁く。しかし彼女は、彼の身体の骨の全てを壊さずにはそれを行えない。彼の足は燃えたマッチ棒のようだ。石でさえも血を流す、痛みが十分にあれば。

[02:38:33] 嫁を壊すべし、婿を壊すべし。

[02:39:10] 嫁を壊すべし、婿を壊すべし。

[02:39:45] 嫁を壊すべし、婿を壊すべし。

[02:41:00] (判別不能)

[02:41:55] 下の如く、上も然り。

補遺: サイト-52ミーム部門が行った対象3366/01~05の証言のメタ分析より抜粋。

分析手法

証言の転写は単語レベルの頻度分析にかけられ、SCP-3366から帰還した対象者の間に無意識的な共通傾向が存在するか否かが検討された。対象者が消失に際して外パラダイム的体験を経た可能性を踏まえ、SCP-3366の影響が意識的な表現として容易に現れないことへの対処として本手法が妥当であると考えられた。単語の関連性と意味内容の定量化により、隠された実体の性質が明らかにされることが[…]

場面の概念的性質を具体化することに成功した。それは玉座あるいは王宮広間に類するもので、おそらくはアケメネス朝に由来すると考えられる(シンボルクラスター:「彫り物」/「楔」/「大理石の階段」、全ての群に渡ってp=0.05)。いずれの証言でも共通しているのが、視覚的表現と地下の関連付け(シンボルクラスター:「穴」/「暗い」、p=0.16)と、不確実な時間認識ないし夢の感覚である。(シンボルクラスター:「分からない」/「順番」/「何故」、p=0.10)。

5名全員の証言を包括する広域概念構造(p<0.30)を整理することで、3つのシンボルクラスター構造を組み立てることが可能である。3つ中2つの構造は外パラダイム的実体を代表するものと考えられる:

第1のシンボルクラスター構造: 実体と推察される。男性/人間型/王子/自己と表現される。良性と考えられる。若さ、王族、無能力1と関連付けられる(p<0.10)。身体を部分的に固体物質(石、金属、木)に変化させられ、現在進行的に妻による拷問を受けている。

第2のシンボルクラスター構造: 実体と推察される。女性/非人間型/魔女/他者と表現される。悪性と考えられる。死、遍在、サディズム、魔術と関連付けられる(p<0.20)。前述の王子実体の妻/配偶者。

第3のシンボルクラスター構造: 性質不明。不動、男性性、腐敗(死を除く)、盲目、脱出と関連付けられる(p<0.10)。いずれかの実体に対応する互換可能な説明/アイデンティティ要素の全体を代表している可能性がある。あるいは、第三の未判明実体の全体に相当するものと考えられる。

補遺: 遺物サイト-76の記録

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OBINT175305のスキャン、1ページ、3-9行目。

アイテム番号: OBINT175305
アイテム説明: 4世紀頃に由来するベラム紙の写本。パフラヴィ―文字を用いた中期ペルシア語によって記されている。562枚中に23枚の彩色パネルを含む。断片的であるが、各片は良好な状態を保ち、大部分が可読である。
発見場所: バーミンガム大学、キャドバリー研究図書館
発見日時: 2015/12/22
取得理由: SCP-3366研究における要注意オブジェクト
実行措置: 秘密ルートを通して当該場所より移送。分析の為、2015/12/29にサイト-52へ引き渡される。

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