SCP-3388-JP
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SCP-3388-JP実例の発見されたリキュターク村

アイテム番号: SCP-3388-JP

収容クラス: Euclid

特別収容プロトコル: 1体のSCP-3388-JP実例がサイト-610のクラス3生物収容ユニットに冷凍保存されています。更なる実験にはサイト-610管理官の許可が必要です。冷凍保存されている実例以外のSCP-3388-JP実例は、特異的なものを除き原則終了されます。

説明: SCP-3388-JPは自身の肉体の変形・再生を可能とする生物です。知能レベルは形態によって変化するものの、最大でヒトと同等レベルの知能を有することが確認されており、意識的に変形・再生を行っていると推定されています。SCP-3388-JPは中枢神経が約10℃以下に冷却されると活動を一時停止し、中枢神経の約50%を破壊されると活動を停止します。

SCP-3388-JPは栄養補給や休息が無くとも生存可能ですが、約72%の実例は積極的に他の動物を襲撃・捕食しようと試みます。他の動物の捕食に成功した場合、SCP-3388-JPはその生物に擬態します — 知性体に擬態する際は記憶や人格も模倣する場合があります。


補遺1: 1999/08/02、リキュターク村周辺を巡回した財団エージェントが「未知の生命体に襲われた」と報告した後、通信途絶しました。これを受け同日、リキュターク村に機動部隊ラムダ-139が派遣されました。

ラムダ-139はリキュターク村周辺で当該エージェントを発見したものの、当該エージェントは既にSCP-3388-JPに擬態されており、背後からラムダ-139を奇襲しました。また、同時に周辺から村民に擬態したSCP-3388-JP実例が複数体現れ、ラムダ-139を襲撃しました。

戦闘の結果としてラムダ-139は半壊したものの、SCP-3388-JP群は鎮圧されました。その後、回収可能な実例はサイト-610に移送され、それ以外はその場で終了されました。しかし、回収された実例はサイト-610で複数回の収容違反を発生させたため、1体を除いて終了されました。


補遺2: リキュターク村は、ニタ・カルマ司祭を中心とする小規模な宗教コミュニティであったと推定されます。当該宗教は儀式を重要視するネオ-サーキシズム関連宗教と思われ、村からは複数の要注意団体との関連を示す物品が回収されています。ニタ・カルマ司祭の経歴は本稿執筆時点まで調査中です。

また、村の痕跡から、元は当該宗教とは無関係の民間信仰が存在していたものと推定されます。当該信仰に関連する文書はいずれも古語であるヴァサ語によって記述されており、またわずかに原始的な細工品などが回収されています。以下に回収されたヴァサ語祈祷文の訳文を示します。

文書記録


おお、丘のトヴォッカよ、我らを見守っていてください。

オオカミたちからヒツジたちをお守りください。

おお、丘のトヴォッカよ、我らと共にあってください。

あなたの証の下、(我らは)あなたと恵みを分かち合います。

(あなたが)我らをあらしめるように、(我ら)もあなたをあらしめます。

おお、丘のトヴォッカよ、我らを見守っていてください。

リキュターク村の広場には複数の奇跡論紋様図形の痕跡があり、SCP-3388-JPの出現に関連しているものと推定されます。また、広場からはP-729化合物1が検出されています。

カルマ司祭の自宅には地下室が存在しており、電池式の監視カメラから映像記録が回収されています(補遺3参照)。また、自宅からは以下の内容のメモが回収されています。

文書記録


手順:

  1. 魔法陣の上で子供たちが陣形を組み、薬を飲み干す。
  2. 大人たちがその外周で陣形を組み、膝をついて祈りを捧げる。
  3. 司祭が呪文を唱える。

魔法陣がプロセスを肩代わりするので、手順は最低限で問題ない。魔力に関しては古き神から徴収しておくこと。


補遺3: 回収された映像

映像記録


記録日時: 1999/07/25 22:13

<記録開始>

映像はカルマ司祭の家の地下室の様子を記録している。壁や床の土は薄い黄土色であり、鉄格子は赤く錆びているように見える。部屋の奥に、頭部が拘束具で覆われ青白い肌をした裸体の男性のように見える3m大の実体(以下、SCP-3388-JP-μ)が座っており、その両手は壁に取り付けられた鉄枷で固定されている。

カルマ司祭が鉄格子の外に立つ。

カルマ司祭: お前は一向に呪文を使わないな。「呪文さえわかればお前を解放してやる」と散々言っているのに。

くぐもった唸り声が響く。

カルマ司祭: 民衆はお前を神だと思っていたが、結局のところお前はそこいらの犬畜生にも劣る程度のものでしかなかった。最早お前を信仰する者はおらず、形骸化した品ぐらいしか残ってはいない。いくら強情に耐えようと、このままではお前には死しか待っていないだろう。

唸り声が響き続ける。

カルマ司祭: あと3晩待とう。その後に真の神を呼び出す儀式を行い、お前も殺す。お前の肉も血も捧げ物には値しないだろうが、神の御力を試すにはちょうど良いだろう。

カルマ司祭が鉄格子から離れる。

カルマ司祭: 守るべき民から見捨てられた神ほど哀れな者はないな。

カルマ司祭が地下室から退出する。

唸り声が止む。

<記録終了>

映像記録


記録日時: 1999/07/28 9:35

<記録開始>

外におけるものと思われる、走る音が近づいてくる。地下室のドアが開く音が聞こえ、静止していたSCP-3388-JP-μが身を乗り出す。ドアが閉じられる音が響く。

村民と推定される1名の少女が鉄格子の前に現れる。首にかけた小さい袋から鍵を取り出し、鉄格子の扉に触れる。SCP-3388-JP-μが暴れて鉄枷が動かされる音が響き、少女はのけ反り躊躇う。

断続的な衝突音が記録される。少女とSCP-3388-JP-μがドアの方を見る。

少女が鉄格子の鍵を開いて内側に進入する。扉を閉め、手を伸ばして鍵を閉める。

少女: ご、ごめんなさい、その —

衝撃音が響き、ドアの方からSCP-3388-JP実例(以下、SCP-3388-JP-1)が地下室に現れる。SCP-3388-JP-1は不定形に泡立つ肉塊のような形状を取っている。

少女: た、助けて!

SCP-3388-JP-1が高速で触手を伸長させ、鉄格子の隙間から内側へ進入させる。少女が後方に転倒する。

SCP-3388-JP-μの頭部拘束具の隙間から1本の細長い腕が出現し、触手を掴む。甲高い音が響き、少女が耳を塞ぐ。SCP-3388-JP-1の触手が液状に融解し、SCP-3388-JP-1が悶えるように身体を動かす。

SCP-3388-JP-1はドアの方へ移動し、地下室から退出する。SCP-3388-JP-μは腕を伸ばしたまま静止しており、少女はSCP-3388-JP-μを見つめている。

少女: た、助けてくれた、の?

くぐもった唸り声が響き、腕が少女に伸びる。少女はのけ反るが、それ以上後退することができないような様子を見せる。SCP-3388-JP-μの手のひらが少女の頬に触れる。

唸り声が響き続ける。

腕が少女から離れ、SCP-3388-JP-μの頭部拘束具の内部に腕が戻る。唸り声が止む。

沈黙。

少女: あ、あの。

唸り声が響く。

少女: ご、ごめんなさい。

唸り声が止む。

沈黙。

少女が泣き始める。

<記録終了>

映像記録


記録日時: 1999/07/28 11:21

<記録開始>

少女が、鉄格子とSCP-3388-JP-μの中間辺りの壁に寄りかかっている。SCP-3388-JP-μは静止している。

少女: あの … 朝は、助けてくれてありがとう。

沈黙。

少女: その — ここって司祭様のお家、ですよね?

沈黙。

少女: あなたって、その —

SCP-3388-JP-μの頭部拘束具の隙間から腕が出現し、少女が悲鳴と共にのけ反る。腕は少女の口元を押さえる。

外からのものと思われる小さな叫び声が記録される。

沈黙。

腕が少女から離れ、少女の首にかかった袋に伸びる。腕は鍵を取り出し、少女の手元に置く。

少女: え、あの —

腕が急速に地下室のドアの方へ伸び、鉄格子の手前で停止する。

沈黙。

少女: … あ、届かない、んですか?

腕がゆっくりとSCP-3388-JP-μの頭部拘束具に戻っていく。

沈黙。

少女が立ち上がり、鉄格子の扉の鍵を開けて外側に出ていく。少女が地下室のドアの方へ移動し、フェードアウトする。

ドアの鍵を閉める音が響く。

少女が小走りで鉄格子の内側に戻り、鉄格子の扉の鍵を閉める。先ほど座っていた位置に座り直す。

少女: あ、し、閉めてきました。

沈黙。

くぐもった唸り声が響く。少女が慌てて鍵を首にかかった袋に入れる。

<記録終了>

映像記録


記録日時: 1999/07/29 08:37

<記録開始>

少女が、鉄格子とSCP-3388-JP-μの中間辺りの壁に寄りかかっている。ヒト型実体は静止している。

少女: す、すいません。あの —

くぐもった唸り声が響き始める。少女の小さい悲鳴が記録される。

少女: あ、あの。あなたって、神様 … なんですか?

唸り声が大きくなる。

少女: う、ごめんなさい。でも、司祭様のお家には、神様がいるって聞いたから。

唸り声が小さくなる。

少女: と、閉じ込められてた、んですね … 同じだ、私と。

唸り声が止む。

少女: ご、ごめんなさい。その、私も、お母さんに、そうされてたから。私が悪い子だから … あの、ごめんなさい、何か。

沈黙が続く。

少女: ちょっと似てるな、って思っちゃって。

唸り声が響く。

少女: ご、ごめんなさい。変なこと言って。

唸り声が止む。

<記録終了>

映像記録


記録日時: 1999/07/29 09:08

<記録開始>

少女が、鉄格子とSCP-3388-JP-μの中間辺りの壁に寄りかかっている。SCP-3388-JP-μは静止している。

地下室のドアの鍵が開けられる音が記録される。少女が立ち上がり、SCP-3388-JP-μが身を乗り出す。カルマ司祭が鉄格子の外側に現れる。

カルマ司祭: ん? おや、どうしたんですか、パラズ? 何故そこにいるんです?

くぐもった唸り声が響く。

少女: し、司祭様!

カルマ司祭: さあ、危ないですからそこから出てきなさい。もう、外は大丈夫ですよ。

唸り声が響く。

少女: は、はい!

少女が立ち上がり、鉄格子の扉へ近づく。唸り声が大きくなる。

少女が、鉄格子の前で立ち止まる。

少女: … あ、あの。

カルマ司祭: どうしました?

少女: 鍵は、その、どうしたんですか?

カルマ司祭: え? それはまあ、普通に鍵を開けて …

少女が首にかかった袋から鍵を取り出して、カルマ司祭に見せる。唸り声が響く。

カルマ司祭: おっと、間違えたか。

カルマ司祭 — に擬態したSCP-3388-JP実例(以下、SCP-3388-JP-2)の頭部が2つに裂け、2本の触手に変形する。同時に、SCP-3388-JP-μの頭部拘束具の隙間から腕が伸びて少女をSCP-3388-JP-μの方へ引く。

触手が少女の直前まで伸びたところで、SCP-3388-JP-μの腕が触手の1本を掴む。甲高い音が響き、少女が耳を塞ぎSCP-3388-JP-2が暴れ始める。SCP-3388-JP-2の触手が液状に融解し、少女が悲鳴を上げる。

SCP-3388-JP-2の殆ど融解した触手が縮み、徐々にSCP-3388-JP-2の頭部右半分の形に再生していく。頭部の再生した部分に穴が開き、口のように動き始める。

SCP-3388-JP-2: き — 貴様、偉大なる我らにこんなことをしてただで済むと —

SCP-3388-JP-μの腕がSCP-3388-JP-2のもう1本の触手を掴む。甲高い音が響き、触手が液状に融解していく。SCP-3388-JP-2は叫びながら異言を発しているように聞こえる。

SCP-3388-JP-2の上半身が、頭部から徐々に融解していく。SCP-3388-JP-2はふらふらと地下室を後にする。

SCP-3388-JP-μの腕が徐々に頭部拘束具の隙間へ戻っていく。

少女: か、神様 …

少女がSCP-3388-JP-μを抱擁する。少女の泣き声が響く。

<記録終了>

映像記録


記録日時: 1999/07/29 21:56

<記録開始>

少女が、SCP-3388-JP-μの左の壁に寄りかかっている。SCP-3388-JP-μは静止している。

少女が起き上がり、首にかかった袋から細工品を取り出す。SCP-3388-JP-μの拘束されている右腕に細工品を取り付ける。

少女: こ、これ … お守り。悪い物から、神様が守ってくれるって。

沈黙。

少女: あ、でも。神様はあなたで、その …

少女の小さな笑い声が記録される。

少女: その、ごめんなさい、変だったかも。

<記録終了>

映像記録


記録日時: 1999/07/30 10:14

<記録開始>

少女が、SCP-3388-JP-μの左の壁に寄りかかっている。SCP-3388-JP-μは静止している。

小さな足音が聞こえ、少女が立ち上がり、SCP-3388-JP-μが身を乗り出す。女性が鉄格子の外側に現れる。くぐもった唸り声が響き始める。

女性: あら、パラズ?

少女: … こ、こっちに来ないで。お母さん。

女性: 何をしてるのよ、あんた。司祭様の家に勝手に入っちゃ —

少女: わかってる。お、お母さんが、偽物だって。

唸り声が響く。

SCP-3388-JP-μの頭部拘束具の隙間から腕が伸び始める。

女性: 残念だ。

鉄格子の内側の地面から触手が出現し、SCP-3388-JP-μの腕を壁ごと突き刺す。少女の悲鳴が響く。

もう1本地面から触手が出現し、先端が細く変形する。SCP-3388-JP-μが暴れる。

少女: 嫌 —

触手が少女の頭部を切断する。頭部が床に転がり、くぐもった叫び声が響く。女性に擬態したSCP-3388-JP実例(以下、SCP-3388-JP-3)は鼻で笑う。

SCP-3388-JP-3: さて、次はお前だ。お前を —

叫び声が響く。

SCP-3388-JP-3: 何だ、子供。お前もそうなのか。仮初めの殻にかまけて、お前の仕事を忘れるなよ。

触手がSCP-3388-JP-μの腕から離れ、急速に地面に潜る。叫び声が止み、SCP-3388-JP-μが腕を急速に伸ばすが、鉄格子の前で停止する。

SCP-3388-JP-3が地下室から退出する。SCP-3388-JP-μが暴れ始め、鉄枷の音が響く。

少女の肉体が起き上がり、徐々に切断面から頭部が再生していく。床に転がっている頭部が徐々に融解していく。鉄枷の音が響く。

少女 — に擬態したSCP-3388-JP実例(以下、SCP-3388-JP-4)の頭部が完全に再生される。SCP-3388-JP-4の泣き声が響き始め、SCP-3388-JP-μが静止する。

SCP-3388-JP-4: あの時 … 逃げ遅れて、私 …

SCP-3388-JP-4の泣き声が響く。

SCP-3388-JP-μの腕が、SCP-3388-JP-4の頭を撫で始める。SCP-3388-JP-4が号泣する。

<記録終了>

映像記録


記録日時: 1999/07/30 11:59

<記録開始>

SCP-3388-JP-4が、SCP-3388-JP-μの左でうずくまっている。SCP-3388-JP-μは静止している。

SCP-3388-JP-4が立ち上がり、SCP-3388-JP-μの前に立つ。

SCP-3388-JP-4の頭部が触手に変形し、SCP-3388-JP-μのくぐもった唸り声が響く。触手はSCP-3388-JP-μの鉄枷を破壊し、もとの頭部の形状に戻る。唸り声が止む。

SCP-3388-JP-4: ごめんなさい、神様を … その、騙しちゃって。

沈黙。

SCP-3388-JP-4: これで、少なくとも、ここからは出れます。外は、怖いのでいっぱいだけど。

SCP-3388-JP-μの頭部拘束具の隙間から腕が出現し、自身の右腕の細工品を外す。

SCP-3388-JP-4: あ。

細工品がSCP-3388-JP-4の目の前にかざされる。

くぐもった声: ヤーカ2

SCP-3388-JP-4の背後の地面に黒い円が出現する。SCP-3388-JP-4は背後を向き、声を上げる。SCP-3388-JP-4がSCP-3388-JP-μの方を見る。

SCP-3388-JP-4: これ、何?

唸り声が響く。

SCP-3388-JP-4: ここから、出るの?

腕が細工品をSCP-3388-JP-4の首にかける。SCP-3388-JP-4の泣き声が響く。

SCP-3388-JP-4: … ありがとう。

腕がSCP-3388-JP-4の頭を撫でる。

腕が頭部拘束具の隙間に戻る。SCP-3388-JP-4はSCP-3388-JP-μの腕を掴む。

SCP-3388-JP-4とSCP-3388-JP-μが同時に黒い円に飛び込み、消失する。黒い円もまた消失する。

<記録終了>

付記: 現在、映像内のSCP-3388-JP-4およびSCP-3388-JP-μの捜索が機動部隊ラムダ-139により行われています。

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