アイテム番号: SCP-3391
オブジェクトクラス: Euclid/Thaumiel
特別収容プロトコル: SCP-3391はプロジェクト・ハブリスの現在の対象です。当該プロジェクトはO5評議会により直接審査され選抜された職員によってのみ監督され、実行されます。プロジェクト・ハブリスと現在の形態のSCP-3391に関係するすべての情報は倫理委員会、シトラ・アキュラ職員、および全ての要注意団体から秘匿されなくてはなりません。SCP-3391に割り当てられたスタッフは、サイオニック感受性を持つ人類の1%以下でなくてはならず、プロジェクト・ハブリスの完了までサイト-104に留まらなくてはなりません。
SCP-3391の反ミーム的およびサイオニック特性のため、市民がアノマリーに暴露するのを防ぐための特別収容プロトコルは必要ありません。サイト-104はスタッフを居住させ、アノマリーと接触するためのプラットホームとするために、アノマリー内部に建設されました。サイト-104はSCP-3391が財団及び現実に対し総体的に脅威を呈し始めた場合に、O5評議会の任意の2名により起爆される数点の爆破装置が設置されなくてはいけません。
SCP-3391に提示されるYK-クラス宇宙終焉シナリオのリスクはゼロではないため、アキヴァ放射とヒュームレベルは正確にアノマリー周囲の背景強度に保たれなくてはなりません。以前の実体の制圧を中心とした収容方法と実体のチャンバー内に職員を派遣したことは、ベールプロトコルの破綻、前述のYKシナリオといった多数の反発を招きました。SCP-3391の外的影響の受けやすさとサイオニック能力のため、実体に暴露されるスタッフは最小限に留めるべきです。
説明: SCP-3391は地中海内の、極めて強い反ミーム特性を発揮する直径≈200mの球状領域です。使用可能な最も強い記憶補強薬を用いても、職員が領域内を観察することは不可能と判明しました。被験者は、SCP-3391の特性を知っている場合でさえも、SCP-3391に向けて移動するように指示しても、無意識に避けようとします。しかしながら、被験者がアノマリーに入ると、アノマリー範囲内の領域を完全に認知するようになります。SCP-3391の影響範囲を出ると、その反ミーム特性は続行し、被影響者からアノマリーに関するすべての知識を消去します。
物質とエネルギーはSCP-3391を自由に出入りできるため、無線信号もそこから中継する事が可能です。SCP-3391内の人間は、その発言に反ミーム特性を帯びることなく、外部の人間と自由に通信可能ですが、SCP-3391から中継される視覚情報は主要なアノマリーそのままの能力を持ちます。
SCP-3391-1は大型の未分化の心組織の塊であり、SCP-3391現象の中心として働きます。地球の重力中心に相対して固定された位置にあり、移動、破壊は不可能です。
SCP-3391-1はクラス-V終末論的実体です。初期測定では結果が得られませんでしたが、内部ヒューム測定値は650-850であり、それにより強力な現実歪曲能力を持ちます。当該オブジェクトは同定可能な意識を持ちませんが、不明な条件下ではそれを発生させることがわかっています。それが意思と思考力を持つならば、その現実歪曲能力は著明に増大することが予想されています。
SCP-3391の初期の反復から回収された文書は、初期のSCP記事からは分離したページにアーカイブされています。プロジェクトとSCP-3391-1自体への関連性のため、それらはここに収録されています。
回収された文書の抜粋1: “Aleazu Ma’Limua"
……そしてイオンは彼自身の肉の囁きに従い、アディトゥムからカシュールKashurの門への終わりなき歩みを続けた。彼は太陽の灼熱の抱擁に、夜の沁み入る寒さに耐え、しかしそれらは最も偉大なる真髄にとって何物でも無いゆえに — 彼はそれらの中に何も感じなかった。 崇高なるカルキスト・イオンは空虚なる平原に来て、かつては栄えたダエーワの廃墟を見渡した。そして彼はその荒涼とした場所、かつて人が神々に平伏し、懇願した場所、そして神々がかつて人と契約した場所でVažjumaに語りかけた。
「大いなる選別者よ」彼は言った。「私は強欲なる天使たちの呼び声に従った。私は忌々しき神たるMekhaneから、栄えし、されど凋落せしダエーワまで、この世界の数え切れぬ創造と力を見た。そしてもはや、我がカルマクタマの力には並び立つものはいない。汝ですら。私は我が束縛を、不敬なる奴隷使いを克服した。そして私は汝をもすぐに超越する。」
「汝は私に力を与え、私は汝を超えるものとなろう。私はすべての肉と創造を統べる者となろう。全ての創造はここにあり、されど汝が自らを包む皮膚のみなく、よって汝は我が纏う外套となろう。」そしてイオンは骨の杖で大地を打ち、恐ろしいアルコーンの姿を引き出し、それらは彼の力へ微笑みかけた。彼は力において、貪る者そのものと同じ程であったがゆえであった。
それゆえ、アルコーンは彼を、かつてヤルダバオートが未創造の空虚を彷徨い、旧き神々を貪ったカシュールへと連れてきたのだ。そしてそこで、イオンは六つの試練の一つ目に苦しんだ。恐ろしい力が彼の精神と魂を引き裂き、彼の実在をすべての世界、全ての次元へと薄く撒いた。他の者であれば、現実から焼かれ、歴史から拭い去られたであろう。しかしイオンの意志は彼の精神を残存させ、全ての現実をもって合一となるほどに不屈であった。よって、彼は神がそうであるのと同様に、全てを見、全てを知るものとなった。
回収された文書の抜粋2: “夢の鍛造"
……そして夢の中で、無限の機構が私に語りかけ、私の精神に構造を囁いた。私はすなわち世界とは継続した均質化であり、創造の全てはその一部であると理解した。そして私は世界とは、無数の他の恒星の中で、燃える熱の塊を回っていることを理解した。エントロピーと空間の広大な隔たりの間の膨大な光と物質の奔流であることを理解した。空の星の動きを、空虚な夜の中の燃え殻のように癒合し点滅する、機械の歯車として理解した。分割されたものが我々に鍛造した大いなる構想は、定命の肉の居場所無き完全なる秩序であると理解した。
そして私は時への答えを理解したと思う。そしてそれこそがWanだ。世界は神に等しく、そして神は宇宙に等しい。そしてそれらは同じ木の枝のように付け替えが可能である。氷と水のように、我々は全て真髄の表現に過ぎない。異なった方法で形作られた概念。
夢の中で、私は我々が、岩が、星が、そして海が成れるあらゆるものを見た — どのように神の欠片が何らかのより偉大なものを作るために再構成されるのかを。ただMekhaneの鑕にて彼が心のない人間の群れを考える人間へと変えたように、地上の鑕も同じようにするだろうと彼は明かした。屑鉄を刃へ、石をモニュメントへ、貧者を王へと。
そしてそのように、人は神をも生み出せるのだ。
回収された文書: SCP-3391から得られた日記。
この抜粋は「カルキスト・イアヘル」として知られる、詳細は不明ながらネオ-サーキックのリーダーであると自称し、おそらくはイタリアのコミュニティ出身の人物により書かれた日記です。当該コミュニティは現在は「失われて」おり、その内部で彼は小さなカルトを創設していました。彼らの描写に合致する異常なグループが最も最近記録されたのは、世界オカルト連合とのトルコやギリシャでの衝突においてです。彼らがどのようにSCP-3391と関係するようになったのかは不明です。しかしながら、その現在の状態へ導く過程に、ある程度は関与していたと推測されています。日記の最初の日付は1985/07/13ですが、カルキスト・イアヘルはこの日記を書き始める前にある程度の年月を生きてきたと思われます。
抜粋: 2015/01/14: 私の発見はまたしても焚書者どもにより巻き戻された。アンタルヤの男は田舎なら安全だと言ったが、彼が密告者だったに違いない。奴らは私を罠にかけようと必死だ。だが私は生きている。私に従うものは減っているが、彼らの決心の固さは変わらない。
しかし告白すると、私は時々、イタリアを離れなければよかったと考える。あの小さな町では何もかもがシンプルだった。そこでは秘密を保つこと、隠れ続けることは何の問題もなかった。だが私は強くあらねばならない。私は迷わない。私の総合的な計画はただの暴力行為などでは揺らがない。
私が一致すると主張した文書。アルコーンたちはイオンを創造を越えたところへと導き、彼の精神を、肉体と魂を六つの試練で完全な形へと鍛えた。カルキストとしてのイオンは死に、彼の死体から神としてのイオンが立ち昇った。同じように、アルコーンたち自身が大いなる貪るものの排泄物から創造されたのだ。ただの人間は定命の肉の限界のままにデミウルゴスへと上昇することはできない。私はアルコーンを創造しなくてはならない。そうすればアルコーンは私自身のより良いバージョンを作れるだろう。そうして私はあらゆる創造を備えた者、生命の守護者となる。
2015/02/19: あの文書は全く役に立たなかった。あの尊大なソロモナリも私の助けとはならなかった。この道を歩くのは私が初めてであることは明らかである。他のカルトのなんと臆病で、なんと視野の狭いことか。彼らはこれを行おうと考えたこともない — これは力と上昇のサーキシズムの教えへの侮辱ですらある。誰も神族の領域を破ろうとしてこなかったのだ。彼らは愚者である。
しかしそうではあったが、私が行ってきたことは実りのあるものだった。私は私の持つ資源から苦しみながら大いなる獣を創造した。しかし同様の基盤なくして神は作れなかった。子宮なくして子供は育たないように。私は最も偉大な基礎を探さなくてはならない。そこから神が開花する完全な一例を。私にはそうする技術がある。私にはそうする力がある。そしてすぐに、私は素材も手にするだろう。
2016/04/16: 私はポリスで、神の心臓の在り処を知っているという奇妙な男に会った。アディトゥムの最も偉大なる知恵者たちが同様に神格を創造しようと考えたのははるか昔のことのようである。聞くところによると、彼らはほぼすべての仕事を私のためになしたようですらある。おそらくは、ミノアの裏切り者たちの艦隊が生まれ出ようとする神を海を渡り運ぼうとし、そのときメカニトの軍船に包囲され破壊されたのだろう。しかし、もし伝説を信じるならば、その神は生き延び、今キプロスの下で眠っている。私は彼の情報に感謝し、弟子たちを集めた。私はこの遺物を探し出さなくてはならない。その価値がない者たちの手に渡る前に。
2016/04/22: 多くの試みと交渉が必要だった。だが私は現地の潜水夫たちの助けのもと、ついに神の心臓を見つけ、そこへと入った。これほど注意深く行動することは辛いことであったが、私を狩ろうとする者は無数におり、私の所在の情報を漏らすわけにはいかない。大いなる創造者の七つめの肢がシリアの海の底に横たわっている。私は私の仕事が邪魔されないように、自分でその周囲にシェルターを作った。多くの弟子たちが理想を捨て、あるいは死へと屈服した。しかし私は驚かない。あと少しのところに私はいるのだ。
2016/04/29: 成功だ!この数日はこの心臓のパズルを解こうとして本当に大変だった。まず最初に、これは最初は地面の石や岩のように私の働きに抗うように見えた。だがこれは力や技量の不足ではなく、テクニックの問題だった。作られた神は決して力任せの操作には従わない。そして同じように、これはより強く成長する機会には抗わない。アディトゥムの古代人たちができたように、私はこれを育てることができると感じる。安定した肉の供給を保ち、拡大するに従い私の計画に形作る事によって。魚はこの開花しようとする神格と、私に従う者らの双方にとって大量の食料の供給源となる。
2016/05/11: 水中の生物は安定して更に進化し、更にサーキックの設計に馴染んでいっている。眠っている間にも、この神は無意識にその力を発現させている。これは私の脈も同様に波打たせ始めている — あるいはまた他の方法で。それを見ずとも、私と私に従う者たちの胸には同じ鼓動が波打っているようだ。私の弟子たちはこれは気味が悪い、この心臓は制御できないと主張した。二人が夜中に私を見捨て、痕跡も残さず消えた。こんなことで挫けたりはしない。一人であろうと、誰かとであろうと、私はこれが完成するのを見届けるのだ。
彼らの懸念には根拠がない。この生物は、あるがまま強力であり、精神がないままである。この物はまだ思考することもない。この力は強大で、それを妨げるものは全く無い。もし私だけがこの力を得るならば、まさにその瞬間にこの計画を達成することができるだろう。しかし私は抑制しなければならない。もし私がこれを一人でなさねばならないなら、それでも良い。私がアルコーンと一つとなった時、時間はもはや私を捕らえることはできない。私はこれに精神を与えようと考えている。これに考えさせる方法を編み出し、そして私に従わせよう。
2016/05/15: 我々は5人しか残っていない。他の者は昨夜出ていった。この計画はあれらの離反者が私がどこにいるかを喋る前に完成されなくてはならない。この機会を絶対に逃しはしない。心臓は我々とますます同期していっている。我々の精神ですら今や調律されている。私の弟子たちは私と同じくらい、この道に留まろうと固く決意している。今日私は彼らに話し、同意した。明日我々は自らを心臓に捧げるのだ。私はあれに精神を授ける方法を見つけられなかった。だから私は自身の肉体を授けるのだ。私はこの能力を支配し、そして私は上昇するのだ。
SCP-3391-1は、これと他の終末論的実体を研究し、これらの影響に対処する方法を見つける進行中の試みであるプロジェクト・ハブリスの対象です。現在このアノマリーを動かし、影響し、相互作用する手段が存在しないため、財団の科学力がSCP-3391-1の研究からどれほどのものを得ることができるのかは不明です。
O5-1からの覚書:
ここまでで君はアーカイブされた文書を全て読んだことになり、おそらく多くの疑問を抱いていると思う。なぜ我々は未だに3391を無力化していないのかというものは、そのうちよくあるものであろうし、私が言及したいものである。率直に言うと、我々には不可能である。我々がこれらの関連ファイルを時間アーカイブから最初に見つけたとき、我々はそれを発見し、破壊しようと必死になった。我々は地中海の深淵に錘を垂らし、全くの偶然でそれを見つけた。メスから監督評議会の許可すら超えるアノマリーまで、あらゆる道具や技術を検討しても、あれに傷一つつけられるものはない。
我々のチームは今や何年もスキャンを走らせているが、それが何なのかの手がかりすらつかめていない。我々がアノマリーから回収した文書は、何かの創造の断片から作られた一種の人工の神であることを仄めかしている。我々が置かれた状況を考えると、これが文字通りの解釈か、もっと深いものかはおそらく関係ないだろう。しかし事実として我々が知っていることは、SCP-3391はこれまでに前例のない、終末論とより広い世界についての情報源としての意味があるということだ。しかし現在は、あのオブジェクトを動かすことも、あれについて試験する事もできない。そこで、プロジェクト・ハブリスが始まったのだ。
この文書を受け取ったその時から、君はプロジェクト・ハブリスの一員である。君と君の同僚の仕事はこれを研究し、相互作用する方法を見つけ、やがてはこれを制御することだ。異常な現象はこれまでも、現在も上昇傾向にある。現在のモデルだと我々の現在の活動は50年以内に持続不可能になる。SCP-3391は、要するに、神の形をしたカンバスだ。我々がそれについて研究し、それをどう扱うか学べば、そのアノマリーは計り知れない力と知識を我々に与えるかも知れない。そうでなかったとしても、それは次の出来損ないの神が我々の現実の片隅で生まれ出ようとすることに対する抑止力になるだろう。
リスクは本質的に大きなものだ。この物体はもしそうしようと思えばヨーロッパの半分の精神を奪い去ることができる。これは我々の現実を消費しようとするかもしれず、そしてその時、我々にはそれを止める力がないだろう。しかし同じくらい忌々しいことに、そうしない場合の唯一の帰結は、財団にただ死ぬまで血を流させ続けることのように思われる。SCP-3391をもって、我々には運命を変えるチャンスがある。これなくして、我々は自らを予見される未来へ、我々が知る数え切れないほどの差し迫った滅亡へと委ねることになる。我々の使命は我々の未来を確保することである。異常なものを収容することである。ゆっくりと我々の力が流れ去っていくに任せることは、我々が何かを成し遂げることの助けとはならないだろう。我々はいつの日か、我々を全て貪るために何が闇から這い出ようとももはや思い悩まずに済むように、いつの日か我々自身がもはや必要でなくなるために、途上で出会うあらゆる幸運な出来事を利用するだろう。
君の時間と努力を持って、SCP-3391は、我々の正常性のための戦いの最初で最後の、そして最良の武器となるかも知れない。我々の滅亡を、起こるに任せてはならない。
— O5-1