SCP-3400
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SCP-3400が入っている2つのビーカー

アイテム番号: SCP-3400

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 機動部隊ガンマ-6の一分隊が野生のツノシマクジラ(Balaenoptera omurai)を監視し、SCP-3400を排出するのが確認された個体は直ちに終了処分します。排出されたSCP-3400は全て回収・焼却されます。 約5リットルのSCP-3400が実験目的で現地に保管されています。SCP-3400を取り扱う全職員は防液手袋を着用し、常に当該物質との直接的な皮膚接触を避けなければいけません。ヒト被験者が関与する実験は近い将来禁止される予定です。

SCP-3400との直接皮膚接触を行った人物は捕縛し、感染の重症度を断定するために検査してから記憶処理を施します。解放にあたり、対象者には“今のところ不明だが珍しい脳の状態を抱えている”と通知します。SCP-3400の感染度が重篤であると判断された対象者には人道的終了措置が施されます。

説明: SCP-3400は、インド洋に生息するツノシマクジラ(Balaenoptera omurai)の約54.3%が噴水孔から排出する異常な物質です。この物質は高い発光性を持つ明るい青色であり、植物油と同等の粘度です。SCP-3400は水に浮きますが、インド洋の外部では発見されていません。

人間がSCP-3400と直接的な皮膚接触を行うと、SCP-3400-1個体が転送されます。SCP-3400-1個体は、SCP-3400に曝露した人物の精神の内部にのみ現れる意識的実体です。これらは2枚の大きな背鰭を有するナガスクジラの姿を取り、常に群れで出現します。SCP-3400-1個体は感染者の意識と記憶の中を自由に移動可能です。重篤な症例において、SCP-3400-1個体は幻覚として感染者の視界に出現することもあるようです。感染者はSCP-3400に触れてから初めてのREM睡眠に入った時点で感染を自覚します。感染者はクジラの群れが登場する夢を経験し、これ以降SCP-3400-1個体群は感染者の精神内をほぼ完全に移動できるようになります。クジラ群はやがて感染者の記憶の中に自らを挿入し始め、感染者の思考の大部分を占めるようになります。感染者が曝露後に比較的正常な生活を送ることは可能ですが、重症患者の場合、SCP-3400-1個体は思考や記憶の大部分ないし全てを占拠して普通の活動を妨げます。

補遺: 199█/██/██、オーストラリアのパース近郊にある港に1艘のヨットが運ばれてきました。乗組員は全員生存していたものの、SCP-3400に曝露しており、うち数名が重篤な症状を呈していました。以下はヨットから発見された、感染当時24歳のアイザック・██████が書いた日誌です。

199█/██/██

今日は一日中静かだった。小さめのイルカ以外に関心事さほど無し。食べるほど大きくなかったので海に投げ返した。リックは無論文句を言ったが。暗くなってから、イーサンが俺たちをデッキに呼んだ。何か光る物の塊が水に浮かんで、ボートの横を流れ過ぎていく所だった。イーサンは屈んでそれに触り、スライムみたいな感触だと言った。俺たちも最後には皆、ボートを進める前にそいつに手で触った。俺の手にはかなり馴染んだ。その後間もなくベッドに入った。

199█/██/██

昨夜はかなり妙な夢を見た。俺は空に浮かぶ島のような場所にいて、周りにクジラの群れが浮かんでいた。普通のクジラみたいに見えたが、ヒレが2枚あった。仲間たちも夢に同じクジラが出てきたという。これがいわゆる共有夢とかいう物なんだろう。昨日とはなかなかの好対照で、格闘の末にかなりデカいハタを1匹仕留めた。でも例の夢について考えることを止められない。

199█/██/██

今日は夢の事を考えていない。でもそこに出てきたクジラたちは俺の心の中に留まっている。脳裏に背ビレや口先がチラついている。釣りのほうはまた穏やかだったが、一日中カモメの群れに付きまとわれた。全く迷惑そのものだ、リックがかなりキレていた。これを書いている今も脳裏にクジラが見える。気に入らない。

199█/██/██

何故か分からないが、夢のクジラは一日中俺の心に居座っている。こいつらの事を考えるのを止めることができない。かなりイラつかされている。釣りに集中できなかったので何も釣れなかった。今日は全体的にもほとんど漁獲が無く、全員が上の空のようだった。幸い、もう十分な食料があるからこれ以上は釣らなくていい。あのクジラにはヒレが2枚ある、奇妙だ。見覚えがあるような気もする。記憶のほんの片隅、俺が若い頃に行った湖の中にあいつらはいた。

199█/██/██

今日は日記を書くのに立ち上がるのもやっとなので、ベッドの中で書いている。メシを食って垂れる必要以外ではクジラのことしか考えられない。リックが消えた、ベッドにいなかった。ウィルはほとんど普通みたいだったが、リックが姿を消したと言っていた。クジラのことを何度も何度も思い出している。奴らは親父が死んだ時に窓の外にいた。奴らは俺が溺れかけた時に海の中にいた。奴らは海の中にいた。俺たちが光る物を触った海の中。

(日付無し)

クジラのことしか考えられない。2枚のヒレ。空にいた、俺が初めて学校に通った日。俺がハタを釣った時には海の中にいた。この航海を通して奴らがあらゆる場所にいたのを覚えている。奴らはこの日記を俺が書いている時もここにいる。数秒前に見たのを思い出せる。

(日付無し)

奴らは今まさにこの部屋にいる。飛んでいる、2枚のヒレが天井を擦っている。部屋を横切ってあいつの上を浮かんでいる。食い物は尽きた。動ける奴はいない。ヒレが2枚ある。

アイザック・██████には発見後間もなく人道的終了措置が施されました。

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