クレジット
タイトル: SCP-3403-JP - 掃き溜め
著者:
yanyan1
作成年: 2024
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アイテム番号: SCP-3403-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3403-JPはサイト‐8111 サイト‐8172 サイト‐8152 サイト‐8109の専用収容区画にて収容されます。SCP-3403-JPの収容には毎日以下の異常性抑制工程の遂行が義務付けられています。
SCP-3403-JPの異常性抑制工程
・収容施設出入口の清掃
・収容施設入口からSCP-3403-JP収容区画までの通路(最短距離が該当)の清掃
・SCP-3403-JP収容区画出入口の清掃
・SCP-3403-JPの周囲3m圏内の清掃
・全清掃工程終了後に収容施設出入り口前にて目を瞑った状態で30秒間の合掌
現在、本収容プロトコルにはエージェント・Puromの起用が必須事項であると定義されています。
収容プロトコル未遂行事案が発生した場合、全職員は速やかにサイト内から脱出し異常性発現まで外部で待機してください。その後、サイト内の環境検査を行い、問題がない場合は通常業務へと移行してください。
説明: SCP-3403-JPは1本の竹箒です。オブジェクトの形状や構成要素等には何ら異常性は見られず、挙動や破損も通常の物品と同様の反応を示します。(現在、SCP-3403-JPへの耐久実験は無期限に中止されています。)
SCP-3403-JPの異常性は収容プロトコルに組み込まれている異常性抑制工程を遂行できなかった場合に発生します。この工程を遂行しなかった場合、SCP-3403-JPの周囲1km圏内に存在する生物が消失します。これにはホモサピエンス、その他の動植物、微生物、細菌に至るまで該当し、消失事案が発生した地域は局所的な生態系の喪失により事実上の非生存領域へと変質します。現在、消失した生命体の行方や消失のプロセス等は未だ判明していません。
2000年現在まで、財団の各サイトにて3件の収容プロトコル未遂行事案が発生しています。現状、事案発生のたびに収容プロトコルの更新を行い、SCP-3403-JPを利用可能なサイトへ移送する事で収容状態を維持しています。
以下は過去に発生した収容プロトコル未遂行事案および消失事案のまとめです。
SCP-3403-JP収容プロトコル未遂行事案
第1次: 20██年█月█日、サイト‐8111の実験室にてSCP-3403-JPの耐久実験時に発生。Dクラス職員1名が消失した。(その他の職員に被害は出なかった)
第2次: 20██年█月██日、サイト‐8111にて収容中の生物型オブジェクトが一時的に脱走。これにより収容プロトコルが中断され、結果として生物型オブジェクト3体、研究員とセキュリティ担当者を含む12名が消失した。サイト‐8111の該当区間は現在も封鎖中。
第3次: 20██年██月██日、原因不明。サイト‐8172内の全生物型オブジェクトと全職員が消失した。現在もサイト‐8172全域は封鎖中。サイト内で唯一エージェント・Puromのみ生存が確認された。
現在、SCP-3403-JPの消失範囲は収容プロトコル未遂行事案の発生ごとに拡大傾向にあると計測されています。
発見経緯: SCP-3403-JPは██県██市██町の繁華街の中心にて発生した事案を切っ掛けに発見されました。当時、SCP-3403-JPは小規模でかつ木造の祠内で保管されており、20██年█月█日に祠の周囲10m圏内の人間が突如消失する事案が発生しました。これを察知した財団はすぐさま現地にエージェント1名と機動部隊員7名を派遣し、調査を開始しました。なお、この時点では該当地域において非生存領域が展開されてることが判明した為、再度防護服等の準備を整えた上でその中心地点の捜索が計画されました。
それと同時期に財団調査部は事案発生地域の逸話や伝承に関する調査を行っており、SCP-3403-JPを保管していた祠の記述とSCP-3403-JPに関連する伝承、およびその異常性の抑制に関連する儀式的様式を発見しました。財団はこれを基に機動部隊を起用したオブジェクト回収作戦を実施し、事案発生から3日後、SCP-3403-JPの回収に成功しました。
現在、収容以前のSCP-3403-JPの管理は祠の所有者であった██ 浩一郎氏という人物によって行われており、これには抑制工程を含めた清掃行為が含まれていたと判明しています。しかし、同氏はSCP-3403-JPが発見される1か月前に交通事故により死亡しており、これらの事象が事案発生の原因であると予想されています。
補遺: 以下は収容プロトコル未遂行事案を生存したエージェントへ行ったインタビュー記録です。
対象: エージェント・Purom(以下、P)
インタビュアー: 杷木場はきば博士
付記: 本インタビューはサイト‐8152のカウンセリング室で行われました。なお、このインタビュー時点までエージェント・PuromはSCP-3403-JPの影響を受け体内の常在菌が消失した事による重度の免疫疾患を発症していました。また、鬱症状および軽度の総合失調症も併発している状態であり、3件目の収容プロトコル未遂行事案から生存して以降も症状の改善が見られません。
<録音開始>
インタビュアー: エージェント・Purom。
P: [沈黙]
インタビュアー: あくまで、このインタビューは上からの命令ではありますが、こちらとしても続行が難しい場合はインタビューの中止も視野に入れています。今の貴方が置かれている状況も良く分かります。ですが……
P: ……そ、そこのゴミ。
インタビュアー: はい?
P: ……そこのゴミ、取ってくれ。その紙くず。は、早く捨ててくれ。
インタビュアー: 分かりました……。これで良いですか?
P: [沈黙]
インタビュアー: ……エージェント・Purom。私も大変心苦しいのですが、貴方には答える義務があります。話してください。あのサイトで、何があったのか。
[3秒間の沈黙]
P: 何も……。何も、無かった。
インタビュアー: いや、そんな筈はありません。現に、あの日に未遂行事案が発生して……。
P: お、俺達は……何も……間違えなかった……! 全部……! 全部、綺麗にした……! 来る日も、来る日も……! でも……!
インタビュアー: では、何故消失が発生したのでしょう。 それに、何故、貴方だけが……。
P: ……み、見たから……。
インタビュアー: 見た?
P: く、黒い……奴……! あ、あの日……! あれが俺に……近づいて……! 目が……! 何個もあるあの目が……! 壁にも、床にも、突然……! 俺が、磨いてきたところに……現れて……! それから、や、奴が……! 俺の中に……![叫び声]
インタビュアー: エージェント・Purom!
P: 磨かなきゃ! 綺麗にしなきゃ! 何もかも! 何もかもを!
インタビュアー: 止めてください! そんな状態で動き回ったら……!
P: ごめんなさい! もう休みません! あなたの為に! あなた様の為に! 綺麗にします! 綺麗にし続けます! だから……!
[4秒間、エージェント・Puromが同様の発言を繰り返す]
インタビュアー: ……エージェント・Purom。貴方は一体、誰の為にあの清掃を続けるのですか?
[3秒間の沈黙]
P: ……儀式その物の為に。……俺は……選ばれた。
インタビュアー: 一体、誰に?
[2秒間の沈黙]
インタビュアー: ……なるほど。分かりました。
[2秒間の沈黙]
インタビュアー: どうにかして、貴方を解放する方法を模索します。ですから、それまで……。
[2秒間の沈黙]
インタビュアー: エージェント・Purom?
P: ……いる。
インタビュアー: え。
<録音終了>
終了報告書: このインタビューの終了直後、小規模の消失事案が発生しました。これにより、インタビューに同行していたセキュリティ担当者3名と杷木場博士が消失しました。その後、SCP-3403-JPの収容プロトコルにはエージェント・Puromの起用が必須になり、Dクラス職員と合わせた遂行が決定されました。
追記: 以下は██ 浩一郎氏の自宅にて発見された手記、およびSCP-3403-JPに関連する文章の抜粋です。
目を覚ます。奴がいる。
あの黒い姿。私の家も、あの祠に向かう道も、いつもあの目玉が見ている。
父も、祖父も、そのまた上の世代も。私はもう疲れた。私の人生などどこにもない。あれは、あの神は、もう壊れている。
もう私は全てを捨て去って次に後を託すと決めた。自分勝手、無責任、いくら罵って貰っても構わない。だが逆に言わせてもらえば、お前たちに私の苦悩が分かるか。既に死んでしまった神への奉公だけが、いつしか大元の神を越えて権能を得てしまった時の絶望なんてお前たちに分かるものか。
あの神は既に大きな穴に成り果て、神が居なくなったのに奉公だけが幅を利かせているなど酷い皮肉ではないか。あそこは所詮掃き溜めで人からの施しを乞食の様に貪り、足りなければ我儘の様に生き物を喰らうだけの黒い存在がいる。
日に日にあれも力を増している。あれの近くにいる犬や猫が消えたのを見た。もう、胎児を消すどころの話じゃない。あれは、最早人の手ではどうにもできない領域に達している。
だが、もう何もかもどうでも良い。こんな人生糞だ。俺はもう行く。
あとは勝手にやってくれ。
[判別不能]様
解説:もともと箒に纏わる信仰というのは「安産」などが当てはまり、妊娠中のお母さんのお腹を箒で掃くことで無事な出産を祈願するという風習がありました。ですが、██町で祀られている箒の神様である[判別不能]様はその意味合いが違います。
本来、██町は小規模ですが江戸時代の花街としての側面がありまして、そんな中でも問題だったのが遊女の妊娠だったんです。子供が出来てしまえば商売にならない、だからこそ出来た子供が直ぐに流れる様にという縁起物の逆の意味を込めてあの箒を祀ったんです。持ち手の部分と箒の先の部分を逆さまにしてから房に指し直す。これで、あれに安産ではなく堕胎を促す神としての意味を与えた訳なんですね。
そこでまた面白いのがですね。その堕胎を促す儀式のような物があって、妊娠してしまった遊女のいる店からあの箒を祀っている祠まで掃き掃除をするんです。これは、所謂ゴミ、穢れをあの祠にまで持って行くという意味がありまして。出来てしまった赤子を穢れと捉えて、あの箒の方まで掃き動かしていくんですね。そうする事で、堕胎の成功率を祈願したんです。遊女の体を傷つけずに子を下ろすのを成功させる為に、ですね。
言ってしまえば、あの箒はそう言った掃き溜めとして捉えられつつも神としても祀られている訳です。本当に歪な信仰で、それに付け加え、あそこには元々何の由縁も逸話も無かった場所なんですよ。町人のアイディアで作られた偽りの神様が今も、その儀式様式だけを残して存続している。それが、あの地域信仰の面白いところなんですよね。
著:██ ██(██大学人文学部教授)
追記2: 現在、SCP-3403-JPの根幹は竹箒という物体ではなく儀式的様式その物であると考察がされています。
その為、一部の研究者は収容プロトコルの遂行自体がSCP-3403-JPの影響範囲の増加と消失対象の拡大を助長している可能性があると主張し、収容プロトコルの更新を具申しています。しかしながら、プロトコル未遂行事案の発生により起きる被害の規模が判別できないため、この提案は日本支部理事会により却下されています。