アイテム番号: SCP-3409-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3409-JP発生可能性のある駅は定点カメラで常時監視を行ってください。SCP-3409-JP発生条件が整った場合、SCP-3409-JP発生地点付近の職員1名へ連絡を行い、その地点で待機させてください。SCP-3409-JPの発生が確認された場合、SCP-3409-JP-Aに対しプロトコル「道案内」を行い、SCP-3409-JP-Aを異常性の影響下から離脱させてください。
説明: SCP-3409-JPは、鉄道駅周辺で待ち合わせを行っている人物が周囲から視認不能になる現象です。SCP-3409-JPは現時点で雨天時にのみ発生しており、特に降雨量の多くなる6月から7月にかけて顕著にみられます。
SCP-3409-JP発生時、発生地点周辺で待ち合わせを行っている人物(SCP-3409-JP-A)は、待ち合わせ相手(SCP-3409-JP-B)を含む周辺の人物から視認されることがなくなります。加えてSCP-3409-JP-Aは、SCP-3409-JP-Bを視認ができない状態になります。そのため、SCP-3409-JPの発生中はSCP-3409-JP-AとBは互いに会うことができず、待ち合わせが失敗に終わります。SCP-3409-JPの発生条件は、SCP-3409-JP-AとSCP-3409-JP-Bが概ね18歳以下1かつ異性同士であることがわかっています。
SCP-3409-JPの影響から離脱する方法は以下の4つです。
- SCP-3409-JP-Aが、SCP-3409-JP発生地から10m以上離れる
- SCP-3409-JP-Aが他人への接触を図る
- SCP-3409-JP-Aが他人からの声掛けを感知する
- SCP-3409-JP-Aが何らかの方法で他人へ自分の場所を伝達する
この際、厳密な場所の伝達は必要でなく、対象がSCP-3409-JP-Aの位置をある程度推測できれば足りることが判明しています。上記のいずれかが達成された場合、SCP-3409-JP-A及びBは異常性の影響から脱します。また、降雨が終了した場合は上記を満たさずとも異常性の影響から脱します。
異常性の影響下にあるSCP-3409-JP-Aは、写真や映像に映した場合は視認が可能です。そのため、映像記録で位置を確認した人物は、先述の方法でSCP-3409-JP-AをSCP-3409-JPの影響から離脱させることが可能です。
SCP-3409-JPは東京都西立川駅で発見されました。SCP-████-JPの調査のために西立川駅を監視していたエージェント・碓氷が、映像では確認できるが直接視認ができない人物を認識したことが発見の端緒となりました。当初、その人物が現実改変者である可能性を考慮し、エージェント・碓氷が接触および拘束をしました。財団の調査の結果、当該人物は一切異常性を持たないことが判明しています。このことから、SCP-3409-JPは西立川駅あるいは駅周辺で発生する異常現象であると推定され、追加の調査が行われました。
調査の結果、西立川駅以外の駅舎周辺でもSCP-3409-JPが発生することが判明しました。また、発生箇所が平均乗降客数約5,000人以上の比較的利用者の多い駅に集中していることも明らかになっています。SCP-3409-JPは先述の通りある程度の規模以上の駅舎であれば発生する可能性がありますが、とりわけ███駅での発生が顕著にみられました。そのため、███駅周辺でSCP-3409-JPに関する情報を収集することとしました。以下はその情報収集の一環として行われたインタビュー記録です。
インタビュー記録 - 日付 1979/7/7 13:57
対象: 荒井氏
インタビュアー: 千堂博士
付記: インタビューは荒井氏の自宅で行われました。千堂博士の表向きの職業は文化人類学の研究者となっており、本インタビューは中高生文化の研究の一環と称して行われています。
<録音開始>
[重要度の低い会話のため割愛]
千堂博士: なるほど、███駅周辺も今と様子が違っていたんですね。駅といえば、中高生の方がよく利用する場所ですよね。駅に関する学生時代のお話なんてありませんか。
荒井氏: ███駅ね。実はあの駅にはね、とある「言い伝え」があったの。
千堂博士: 駅の「言い伝え」ですか。興味深いです。どのような内容でしょうか。
荒井氏: 「雨の日に███駅で待ち合わせをして無事会えたアベック2は結ばれる」というものなの。
千堂博士: またロマンティックで良いですね。しかし、場所が分かっている以上簡単に出会えてしまうような気もしてしまうのですが。
荒井氏: それがね、そう簡単じゃなかったの。ほら、███駅って待ち合わせできるところがいっぱいあるでしょう。だから、まずはどこにいるか探さないといけない。しかも、みんな傘を差してるから人を探すのは結構大変なの。それからね、傘を忘れた人たちが家の人が来るまで駅の軒下でいっぱい待ってる。つまり、同じ時間に同じように待ってる人がいっぱいいたの。だから、人混みを見渡してもなかなか見つからなくて。結局、すれ違ってばかりで会えることの方が少なかったの。
千堂博士: なるほど。
荒井氏: 同じくらいの背丈の人を見るたびに「来た!」と思うんだけど、近くで見ると全然違う人で。逆にね、知り合いを見つけたら声をかけられないようにじっとして。ほら、あの「言い伝え」では他の人に声をかけられたら効果はなくなるという話だったから。まあ、そうやってるうちに門限が近くなって。結局雨の中一人でとぼとぼ帰るんだけどね。
[互いに軽く笑う]
荒井氏: そして、次の日に「なんで見つけてくれなかったの!」って怒りに行って、相手が謝ってくるまでがワンセット。でもおかしいわよね。相手が探してくれていること前提で怒っているんですから。
千堂博士: それほど相手を信頼されていたということですよ。して、話を伺うに、例えば「3番線の掲示板の前」のように、より具体的な場所を指定されればすれ違いは回避できたのではないでしょうか。
荒井氏: そうね、そうかもしれない。でも、そんなのつまらないじゃない。
[数秒沈黙]
荒井氏: たぶんね、当時の私にとって会えるかどうか、結ばれるかどうかはそれほど重要なことではなかったのでしょうね。大事な人が私のために走り回ってくれたかどうか、必死になってくれたかどうか、ただそれが見たかっただけだと思うの。そうでなかったら、会えなかった次の日にわざわざ話しかけに行くわけないでしょう。
[千堂博士は荒井氏と目を合わせ軽くうなずく]
荒井氏: まあ、それも含めて待ってるのは楽しかったんだけどね。あ、ごめんなさいね、懐かしくなってつい必要のないことまで。
千堂博士: いえ、非常に良い話を伺えました。雨の日に男女が会えないとは、七夕の催涙雨さいるいう3か、はたまた雨障あまつつみ4か。興味深いです。しかし、お相手と会えなかったのは残念ですね。
[荒井氏は少しの間思案する]
荒井氏: いいえ、一度だけ。会えたことがあるの。
千堂博士: 本当ですか。差し支えなければお伺いしてもよろしいでしょうか。
[荒井氏は少し言いよどんでいる様子だったが口を開く]
荒井氏: 卒業式の日。その日も天気予報では雨だったから彼の卒業アルバムに「今日6時に███駅で待ってる」と書いておいたの。彼、卒業したら西の方に行くことになってたから何か思い出が欲しくて。予報通りちゃんと雨が降ってくれて、1時間くらい前からずっと待ってた。でも、6時を過ぎても7時になっても彼は見つけられなかった。
[荒井氏は窓の外を見る。雨が降っている]
荒井氏: 卒業式の日に何やってるんだろう、とふと我に返ったら何だか悲しくなってきて。傘も差さないで駅から逃げるように走って帰って。すぐに家の前に着いたけど、門限過ぎてるなとかずぶ濡れだから何て言おうかとかウジウジ考えながら門の前で立ち止まってね。そうは言っても寒くなってきたから諦めて門の取っ手に手をかけたら誰かから大きな声で呼び止められて。振り返ったら……
[荒井氏は微笑みながら千堂博士を見やる]
荒井氏: そんなところ。もう、ここまで話すつもりはなかったのに。恥ずかしいったらありゃしない。この先は言わないわ、勘弁してちょうだい。それに「言い伝え」でも言われてるの。
荒井氏: 「結果を誰かに詳しく教えたらおまじないは解けてしまう」ってね。
[以下、重要度の低い会話のため割愛]
<録音終了>
当インタビューの内容を基に実験を行った結果、SCP-3409-JPの発生要因及び影響からの離脱方法等が明らかになりました。調査結果を受け、SCP-3409-JP-Aが発見された際にはプロトコル「道案内」5を行い、SCP-3409-JP-Aを異常性の影響下から離脱させることとしました。
また、インタビュー後に███駅周辺で詳細な調査を行った結果、先述の「言い伝え」として言及されていた口伝は1950年代中頃から自然発生的に広まっており、上記インタビューが行われた1979年には推計で6万人が口伝の内容を把握しているという試算がなされました。口伝の完全な隠蔽のためには大規模な記憶処理が必要ですが、███駅周辺の降雨の頻度が平均と比べて低く、異常性への対処が短時間かつ容易に行うことができることから、大規模な記憶処理の実行は見送ることとなりました。また、文学作品やラジオドラマ、テレビドラマ等で、待ち合わせで男女がすれ違い会えずに終わるシーンを意図的に入れ込み「雨の日の待ち合わせはすれ違う」という認識を持たせることで、SCP-3409-JPの認知を防ぐ方式をとることと決定しました。
補遺: 1990年後半からSCP-3409-JPの発生が大幅に減少しています。これはSCP-3409-JP-A及びBが携帯電話で自身の場所を伝えることが可能となり、自発的にSCP-3409-JPの影響下から離脱するケースが増えたためです。2024年現在、SCP-3409-JPの発生件数は最大時の████分の1まで減少しています。
また、███駅周辺でも「言い伝え」として言及されていた口伝を実践する人物は減少しており、それに伴い口伝の存在を認知する人物も減少しています。口伝について言及した文献やインターネットの投稿等は確認されていないことから、SCP-3409-JPの対象となる若年層で口伝を知る人物は減少を続け、将来的に口伝が実行される可能性は限りなく0に近づくとみられています。



