アイテム番号: SCP-3425-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: Webクローラーにより、SCP-3425-JPに関連する情報がSNS上に投稿されていないか監視されます。投稿が発見された場合、発信者を特定しインタビューの後に記憶処理を行ってください。
説明: SCP-3425-JPは冷蔵庫1内を特定の空間に接続する為の一連の儀式です。以下はその内容です。
手順0: 現行の日本国憲法において所持/運搬が規制されている物体を所持しない。所持していた場合はSCP-3425-JPを完了しても空間には接続されない。
手順1: 平日の11:00〜19:00(JST)に冷蔵室のドアを3回ノックする。3秒待った後にもう3回ノックする。その後、「冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部」に入部する意思を冷蔵室のドアに対して表明する。表明の方法は、ドアに対する発声、ドアに対しての入部願望を表記した紙の貼り付け、墨によるドアへの入部願望の書き込みなどが確認されている。
手順2: 手順1が成功しているかつ冷蔵室内部が観測されていない場合、冷蔵室の内部から「冷蔵庫の中にいる動物はなんでしょう?」という発声が確認できる。それに対して、「バラバラ死体」と返す。それ以外の文言2を答えた場合はSCP-3425-JPを完了しても空間には接続されない。
以上の手順を完了し、冷蔵室のドアを開放すると当該冷蔵室内に特定空間と接続しているポータルが出現します。冷蔵室のドアを閉じることによって、接続を切断することが可能です。また、1人が空間へと侵入した時点でポータルは切断されます(以下、空間へと侵入した人物を侵入者と表記)。2人以上同時に侵入した場合、無作為に選出される1人を除き、侵入者は侵入に使用した冷蔵庫の前へと転送されます。
接続される空間は5m×5m×5mの白色の部屋であり、正面に1つの扉が存在しています。当該の部屋には高橋 龍一を名乗る人物が存在しています。高橋氏は「冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部の副部長」を名乗り、侵入者に対して「冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部入部試験」を行います。その内容については補遺-1を参照してください。
高橋氏に対して危害を加えようと試みる/試験に非協力的である/試験に合格しなかった場合は侵入者は侵入に使用した冷蔵庫の前へと転送されます。また、不審な格好をしている/冷蔵庫の前に記録機器を設置する/録音・録画機器を持ち込むなども転送の対象となる可能性があります。しかしながら、眼鏡型小型カメラなどの日用品に偽装された記録機器を持ち込んだ場合は転送の対象とならないことから、転送対象の選出は手順0における危険物の探知とは異なる機構が用いられていると見られています。具体的には、高橋氏の主観によるものであると推測されています。
発見経緯: 2022/7/14、東京都内において「不気味な広告が投函されていた」という旨の警察機関などに対する通報/SNS上への投稿が複数確認されました。調査を行った結果、通報者/投稿者は同一内容のマグネット型広告を受け取っていたことが判明し、財団によるカバーストーリー「悪質な悪戯」などを用いて回収が行われました。以下は当該広告の内容です。
冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部へのお誘い
冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部へと入部しませんか?
倶楽部の仲間達があなたを待っています!
一緒に冷蔵庫の中のバラバラ死体を楽しみましょう!
入部試験参加方法は以下のQRコードで!
[画像略]
当該広告に表記されているQRコードを読み取った場合は、SCP-3425-JPの実行方法を説明する動画ファイルがダウンロードされます(当該動画を視聴したい場合は添付ファイルを参照してください)。
その内容から、当該広告には「“Entertainment & Enterprise社”」が関与している可能性があります。当該組織はSCP-092-JPやSCP-216-JPに関連している、主に広告を制作する要注意団体です。複数のオブジェクトの発生に関与しているとして追跡を行っていますが、報告書作成時点でその正確な規模およびメンバーの詳細は判明していません。当該団体と「冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部」の関係については補遺-1を参照してください。
補遺-1: 以下は、SCP-3425-JPによって接続された空間内において眼鏡型小型カメラを用いて記録された高橋龍一氏との会話記録の書き起こしです。
映像記録-3425-JP-5
記録者: エージェント美瑛(以下、Agt.美瑛と表記)
付記: Agt.美瑛は広告を見て侵入した一般人を装っている。
<ログ開始>
[Agt.美瑛が空間へと侵入する]
Agt.美瑛: すいませーん。
高橋氏: ようこそ。冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部入部試験会場へ!
Agt.美瑛: あの、ちょっと質問いいですか?
高橋氏: いいですよ。気兼ねなく質問してください。
Agt.美瑛: 冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部ってなんですか?
高橋氏: おっと、それは試験に合格してからのお楽しみです。
Agt.美瑛: そこを何とか教えてくださりませんか?広告と名前のインパクトに惹かれてきたはいいものの、やっぱりちょっと不安になってきちゃって……
高橋氏: そこはご安心ください!当団体は非常に安全かつクリーンな団体ですので!……それにしても、やはり広告を見てここに来たのですね。
Agt.美瑛: そうです。あの広告、とってもインパクトがあって良かったですよ。特に団体名が。
高橋氏: それは良かったです。広告を出してから部員希望者が急増しましてね3。変な人も少しいましたが……嬉しい限りです。
Agt.美瑛: あれはやはり倶楽部の方が作っているんですか?
高橋氏: いやー、外部に委託してますよ。死体を提供したら喜んでいただけたこともありましたし、積極的に引き受けてくださいました。
Agt.美瑛: ……死体の提供も行っているのですか?
高橋氏: まあ問答もここまでです。そろそろ試験に入りましょうか。試験に合格すればどんな質問にでも答えますよ。
Agt.美瑛: はあ。
高橋氏: 私についてきてください。
[高橋氏は扉を開ける。扉の先には同様の大きさの部屋があり、その中央に3基の冷蔵庫が並べられている]
高橋氏: ここに3つの冷蔵庫がありますね。
Agt.美瑛: はい、ありますね。
高橋氏: あの中の1つにバラバラ死体が入っています。あなたにはその1つを当てていただきます。近づいて調べても構いませんよ。ただし、扉を開けたり、持ち上げて重さを確認してはなりません。あ、死体は焼死体ですよ。
Agt.美瑛: ……分かりました。じっくり調べます。
[Agt.美瑛は3基の冷蔵庫の周りを歩きながら目視による調査を行う。しかしながら、外見的特徴からはそれぞれの冷蔵庫に異なる点は見受けられない]
Agt.美瑛: うーん、難しいですね。じゃあ、とりあえず……
[Agt.美瑛は中央の冷蔵庫を指差す]
Agt.美瑛: これにします。
高橋氏: ほう……何故これを?
Agt.美瑛: まあ、なんとなくです。唯一理由をつけるとすれば、人間は3つの選択肢があった場合、真ん中を選びやすいと聞いたことがあるからですかね。
高橋氏: なるほどなるほど。
[高橋氏が右側の冷蔵庫の扉を開ける]
高橋氏: 右側の冷蔵庫はハズレです。ここで、あなたには2つの選択ができます。1つ目は選択を変えないという選択。2つ目は選択を変えるという選択。
Agt.美瑛: あー、聞いたことがあります。確か…….「モンティホール問題」ですよね。
高橋氏: つまり?
Agt.美瑛: 変えたほうがいいってことですよ。この場合、最初に選択した冷蔵庫がアタリである確率は1/3、ハズレである確率は2/3。に1つハズレが分かった状態において、残っているものはハズレ1つとアタリ1つ。ここで選択を変更するとき、最初にアタリを選択していた場合はハズレを、最初にハズレを選択していた場合はアタリを選ぶことになります。すなわち、最初にハズレを選ぶ確率のほうが高いので選択を変更をしたほうが良いということです。直感に反する確率の問題として有名な問題ですね。
高橋氏: ほう、素晴らしい。では、これにて試験は終了です。
Agt.美瑛: 結果は。
高橋氏: ……もちろん、不合格です。
[4秒間の沈黙]
Agt.美瑛: えっと……どうしてですか?
高橋氏: 持ち上げてはならないと言ったからといって触れてはならないわけではありませんし、近づいてはならない訳ではありません。通常、冷蔵庫の内部は密閉されていますが、完全という訳ではありません。すなわち!真の冷蔵庫の中のバラバラ死体好きであれば!匂いでアタリの冷蔵庫を見つけるべきなのです!……まあ、試験は何度もチャレンジできますので、次回の挑戦もお待ちしています。
Agt.美瑛: えっと、色々言いたいことはあるんですけど、なんでモンティホール問題の真似事を?
高橋氏: ああ、あれはただの世間話ですよ。まさか試験の一環だと思いました?
Agt.美瑛: まあ……つまり、あの問答は殆ど試験に関係なかったということですね?
高橋氏: まあ、そうなりますね。混乱させてしまったのならば申し訳ありません。でも、普通に考えれば冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部の試験が、数学の試験な訳ないじゃありませんか。冷蔵庫の中のバラバラ死体を愛するのに、数学は必要じゃないんですよ。では、またの機会に。
[Agt.美瑛が侵入に使用した冷蔵庫の前へと転送される]
<ログ終了>
当探索後、試験の合格のため、エージェント天塩を空間内に送り込むことが決定されました。以下はその際の映像記録の書き起こしです。
映像記録-3425-JP-6
記録者: エージェント天塩(以下、Agt.天塩と表記)
付記: Agt.天塩は財団による感覚試験において、嗅覚が平均より高いスコアを記録していた。
<ログ開始>
[Agt.天塩が空間へと侵入する]
Agt.天塩: 失礼します。
高橋氏: ようこそ。冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部入部試験会場へ!
Agt.天塩: 今日はよろしくお願いします。
高橋氏: ええ、こちらこそ。質問などは何かありますか?
Agt.天塩: えっと、特にないですね。強いて言えば、何故バラバラ死体なのか、と思いました。
高橋氏: そりゃあ、バラバラじゃないと冷蔵庫に入りませんからね。それとも、何故冷蔵庫なのかって話ですか?それは、もちろん腐らせないためですよ。
Agt.天塩: では、冷凍庫でも良いような気がしますが。
高橋氏: まあ普段は冷凍庫ですよ。ですけど、最後には冷蔵庫に入れます。徐々に解凍していくことで品質を保ったまま解凍が出来るんですよ。
Agt.天塩: 解凍して……どうするんですか?
高橋氏: 食べます。
Agt.天塩: 食べるんですか……分かりました。ありがとうございます。
高橋氏: では、試験を開始します。私についてきてください。
[高橋氏は扉を開ける。扉の先には同様の大きさの部屋があり、その中央に3基の冷蔵庫が並べられている]
高橋氏: ここに3つの冷蔵庫がありますね。
Agt.天塩: ……はい。
高橋氏: あの中の1つにバラバラ死体が入っています。あなたにはその1つを当てていただきます。近づいて調べても構いません。ただし、扉を開けたり、持ち上げて重さを確認してはいけません。中の死体は焼死体です。
Agt.天塩: 分かりました。
高橋氏: ええ、では調べてみてください。
Agt.天塩: いえ、もう分かってます。
[Agt.天塩は左の冷蔵庫を指差す]
Agt.天塩: あれですね。
高橋氏: ……どうしてあれを選んだのですか?
Agt.天塩: 匂いがここまで来ていますから、すぐに分かりますよ。でも、これって[言葉が遮られる]
高橋氏: 素晴らしい!ここから分かるとは!あなたにはソムリエの資格があります!ええ、ええ、おっしゃる通り、この冷蔵庫が……
[高橋氏が左側の冷蔵庫の扉を開ける]
高橋氏: 正解の冷蔵庫です!
[冷蔵庫の中には牛肉のステーキが入っている]
Agt.天塩: えっと……やっぱりこれって牛肉ですよね。
高橋氏: ええ、独自のルートから仕入れた渾身のバラバラ死体です!
Agt.天塩: ……人肉じゃないんですね。
高橋氏: はあ?……当たり前じゃないですか。ここは日本で法治国家ですよ?人肉なんて手に入る訳ありませんし、手に入っても食べるわけないですよ。
Agt.天塩: いや、でも、冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部って……
高橋氏: いや、本当にバラバラ死体が大好きな倶楽部かと思っていたんですか?そんな訳ないじゃありませんか。いやだって、普通に考えたら分かりますよ、実際にバラバラ死体が大好きな団体じゃないことくらい。人肉大好きで食べるってどんな団体ですか、それ。やばすぎるでしょ。
Agt.天塩: えっと……はい、おっしゃる通りです。では、何故このような名前に?
高橋氏: もちろん、インパクトがあるからですよ!実際に名前をつけたのは部長なんですけど、私はこの名前気に入ってますよ。
Agt.天塩: いやでも、絶対私の他にも勘違いして来た人いたと思いますよ?
高橋氏: ……ああ、だから変な人が来てたりしてたんですね。でもまあ、「ステーキ大好き倶楽部」とか「冷蔵庫の中の牛肉大好き倶楽部」よりはこれで良かったと思います。
Agt.天塩: ……どうしてですか?
高橋氏: だって、もしそういう名前だったら貴方ここまで来てないでしょう?
<ログ終了>
Agt.天塩による潜入調査により、「冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部」の実体が解明されました。当該団体は通常の牛肉愛好家の集まりでしたが、現部長である美濃 義則が個人的に奇跡論術者と接触したところから異常技術の研究を開始し、SCP-3425-JPを完成させたことで団体は方針を転換しました。具体的には、他倶楽部との差別化や人気獲得のため、名称を「冷蔵庫の中のバラバラ死体大好き倶楽部」に定め4、隠れ家系の倶楽部を目指すようになりました。補足すると、入部試験の際に牛肉をバラバラ死体と呼称するのは演出であり、倶楽部内では牛肉は通常通り牛肉と呼称されていました。
調査完了後、SCP-3425-JPに関する知識を有している当団体の構成員に対してはポータルに関する記憶を処理することで対処しました。今後当団体に関しては関与することはありませんが、部長である美濃氏に関しては異常技術との接触が再度行われる可能性があるため監視が行われています。美濃氏に対して異常技術を供与した人物については、美濃氏との接触記録から追跡を行っています。
偶発的に発生する可能性が極めて低いことから、SCP-3425-JPのオブジェクトクラスをSafeにするという提言がSCP-3425-JP研究チームによって成され、報告書作成時点で評議会によって審議されています。









