誤伝達部門より通達
以下の文書は不完全であることを余儀なくされています。当オブジェクトの特別収容プロトコルは1個人あるいは1組織がその全貌を把握していない事により存立します。
アイテム番号: SCP-3432-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 当報告書の閲覧が可能な担当者は追加文書を確認した後、速やかに担当業務へと移行してください。
説明: SCP-3432-JPは表面に葉の装飾が施されたシラカバ製の棺桶です。発見された全ての製品の外見的特徴は完全に一致しており、背面には"by The Factory"の文字が刻印されています。
SCP-3432-JPは196█年以降、地方の個人経営のアンティークショップ内にて度々発見報告が上がっています。その購入者は一貫して定年退職を迎えた労働者階級の人物であり、平均して対象の生涯賃金の15%に相当する金額で購入取引が成立します。購入後のアンティークショップからは対象の指紋が検出された紙幣群が発見されますが、この金額は購入時点の対象が持ち得ないはずの総額です。発見報告の分布は他のファクトリーとの関与が疑われているアノマリー群が多く回収される地域との関連が見られます。アンティークショップの店員はSCP-3432-JPの仕入れ先について知識を持たないか、あるいは両親から遺産として相続した物だと説明しました。
SCP-3432-JPは自身の所有者が明確である場合、不明なタイミングで所有者と共に行方をくらまします。所在不明となったSCP-3432-JPは所有者が内部に納められた状態で、現場周辺の地面から深さ20cmに埋没した状態で発見されます。内部に人物が納められた状態のSCP-3432-JPは常時自律的な振動を継続しており、蓋と棺本体間の境界は未加工の状態を連想させる程に隙間なく完全に密封されています。
所有者が消息不明となった後、その親族や元同居者は度々洗濯した服にこびり付いた黒色の染み、床から滲み出る工業用オイル、就寝中に爪に入り込んだと思わしき微細な金属粉または土壌の粒子、家具の下から見つかる現代の製造基準に合致しない用途不明のネジ、不特定多数の人物が廊下を渡る音等、日常を送る上で些細な違和感を覚え始めます。いずれのケースでもこれらの違和感の根本的な原因が解明される事はなく、時間の経過により次第に収束します。
SCP-3432-JPと所有者が消息不明となってから7年が経過する度、所有者の親族の元には不明な物品群、あるいは一定の金銭が送られてきます。これらは多くの場合で所有者が生前に保有していた財産の譲渡という名目で遂行されますが、これらの財産が実在する物的証拠は一切なく、金銭の発生源は不鮮明です。
SCP-3432-JPの外装が著しく損傷する、あるいは上記の送金プロセスが5回繰り返されると、SCP-3432-JPは自律的な振動を停止し、確認されている異常性の全てを喪失します。損傷による停止の場合、内部に納められた遺体は身体の4%〜87%が欠損した状態となっていますが、35年が経過した場合は全身が欠けることなく納められています。内部に納められた遺体は消息不明となった地点から異常性喪失時点までの年数と同等の老化を経ているようであり、指先、首の傾き、足の筋肉の発達には特定の反復行動の継続に由来すると考えられる偏りが見られます。
SCP-3432-JPに関連する例外的な事案として、200█年に中国の広東省で行われていた道路の再整備の過程で未発見のSCP-3432-JPが損傷した際、損傷箇所からは数時間に渡って窒素酸化物や煤塵が噴出し続け、内部の空間からは半身が欠損した3名分の遺体が回収されました。当時案及びこれまでに施行された収容の試みにより、SCP-3432-JPが所有者と見做す存在は1個人に留まらず1組織にまで及び、これは1団体規模まで発展し得る可能性が懸念されています。









