回答者: PoI-0171
質問者: マラヴィラ博士
序: グティエレス氏はこれ以前には非協力的だった。彼と過去に知り合いだったというマラヴィラ博士は、更なる尋問の試みが行われる前に彼と話すことを要請した。要請は承認された。
<記録開始>
マラヴィラ博士: こんにちは、ギレルモ。
PoI-0171: ウィル! おい、随分長くご無沙汰だったじゃねぇか! 調子は?
マラヴィラ博士: 元気だよ。ありがとう。
PoI-0171: じゃ… お前はここで働いてるって訳かい?
マラヴィラ博士: それはどういう意味かな?
PoI-0171: おいおい。俺たちの中で、お前はいつだって科学系だったろ。7年生の時、工作でマットの野郎が火山を作るのを手助けしたこと覚えてるか?
マラヴィラ博士: ああ勿論、あれは最高だったよ。で、僕らはサリナス先生に教室の掃除をさせられる羽目になった。
PoI-0171: 少なくとも俺とアーマンドは助けただろ、見捨てちゃおかなかった。
マラヴィラ博士: ああ、いい時代だったよ。
PoI-0171: 全くだ。
マラヴィラ博士: で、教えてくれないか。展示場で一体何が起こったんだ?
PoI-0171: (興奮する) 俺のせいじゃない、もう分かってるんだろうが。あのクールでも何でもねぇクソ野郎どもは、俺の未完成のキャンバスをくすねて、馬鹿馬鹿しい展示会の一部に使おうとした。俺があの作品で何をやりたかったか奴らは全く理解してなかったから、多分大混乱が起きたのはあれがそもそもの理由だな。
マラヴィラ博士: じゃあ、君はなぜあそこにいた?
PoI-0171: キャンバスを取り返すために決まってんだろ。俺とミゲルは展示会に忍び込む準備万端で、計画もしっかり練ってた、ところがそこに火の付いたカメの甲羅をヘルメットみてぇに被ったあの野郎が叫びながら走って来やがって、そっから地獄みてぇな騒ぎよ。
マラヴィラ博士: 爆発?
PoI-0171: そうだ。なぁ、俺に伝える許可が出てるかとか、そもそも知ってるかは分かんねぇけど、ミゲルも捕まってたりするのか?
マラヴィラ博士: 捕縛したのは君と他2名のAWCYメンバーだけだ、混乱の中でほとんどの人は逃げてしまったよ。他の事を話そう。
PoI-0171: おう。
マラヴィラ博士: “もっと良い夢を見よう”について教えてくれ。
PoI-0171: おお、あれもここに持ってきたのか?
マラヴィラ博士: そうだ。
PoI-0171: そうかい、ありゃ俺のお気に入りだったんだがな。隠された、秘密の意味を教えてほしいのかい?
マラヴィラ博士: 実を言えば、うん、そうなんだ。かなり興味が湧いていてね。恐竜とドラゴンは何を象徴しているんだい?
PoI-0171: まず、お前が何を思ったか知りたい。
マラヴィラ博士: 僕が個人的に、という事かな? 僕は芸術評論をするタイプじゃない。深読みはできないよ。
PoI-0171: 正確に、お前が見た物だけを教えてくれ。
マラヴィラ博士: なかなかクールな代物だとは思ったね。
PoI-0171: その通りだ! お前… お前は理解できてる奴の一人だよ!
マラヴィラ博士: 深い意味は全く無いなんてことは言わないだろ?
PoI-0171: いやいや、意味はあるさ。説明させてくれや。
マラヴィラ博士: しっかり聞いておくよ。
PoI-0171: 美術教室の先生方が言うだろ、良い芸術の鍵は“どんな感情を観客に体験してもらいたいか?”だってよ。 (PoI-0171は指を疑問符の形状に曲げる)
マラヴィラ博士: うん、前に聞いたことがある。
PoI-0171: そう、この作品に関しちゃ、そいつはすごくシンプルさ。俺がこの絵で掻き立てたかった感情は正にお前が言ったとおりだ。 “クール!” それ以上でも以下でもねぇ。
マラヴィラ博士: (くすくす笑い) じゃあ、大成功だね。でも、異常な効果についても説明してもらいたい。
PoI-0171: ああ、あれかい。面白かったぜ。展示場にいたお堅い批評家さんどもが沢山、あー、影響されたって聞いてるよ。痛快だったろうなぁ。
マラヴィラ博士: 彼らが君の言うような見方をしたとは思えないね。
PoI-0171: なぁおい、奴らは皆きっとリムジンでお家に帰る前に、タムズかペプトかその辺りの胃薬を買いに行ったに違えねぇ。ラスベガス・ストリップ沿いにどんだけ薬局があるかは神のみぞ知る事だ。今はもう全員平気だろうぜ、俺が請け合う。
マラヴィラ博士: それじゃ、なぜあの効果を付随させたのかを教えてくれ。
PoI-0171: つまりだ、こう、世界は問題を抱えてはいる。見渡すかぎり何処にでも悪いことは起こる。でも世界の全てが悪いって訳じゃない。ニュースが何をほざこうとも、空は落ちてきてない。
マラヴィラ博士: (水を一口飲む)
PoI-0171: でも、そのネガティブなクソを芸術に入れる必要はないだろ! 俺? 俺は芸術を逃げ道として見てる。もっと明るい日に照らされた、より良い世界を見る手段だ。芸術は無限だ。何故それを鎖に繋がなきゃならない?
マラヴィラ博士: だから君は描くのか?
PoI-0171: だから俺は描く。俺はセンス・オブ・ワンダーを吹き込みたいんだ。新鮮な一息の空気を。
マラヴィラ博士: それで、恐竜とドラゴン?
PoI-0171: “10歳の俺ならこの世で一番クールなのは何だと思うだろう”と考えて、それをそのまま描いた。
マラヴィラ博士: ああ、成程ね。もし異常な物でなければ、僕のオフィスの壁に飾っておきたいぐらいだ。
PoI-0171: おお、ありがとよ。
マラヴィラ博士: でもすまない、進めてくれ。
PoI-0171:影響された奴らは、子供心を失っちまってるんだ。あいつらは物事の表層だけを見るってことができず、何でもかんでも自分の視点を注入しようとする。楽しさを吸い出してる。
マラヴィラ博士: 正直言って、それは認める。
PoI-0171: だろ? お前は俺が今まで会った少数派の一人だよ。これは俺が何年も前にAre We Cool Yetから爪弾きにされてる理由でもある。奴らは“メッセージを送る”ことに憑り付かれてる。自分らがジョーカーだとでも言うように。でも全部がメッセージを送らなきゃならないってのは違うだろ? 時には単純な物、クールであるためのクールな物が必要な場合もある。
マラヴィラ博士: あれが夢に入り込む事に関しても説明してくれ。
PoI-0171: あいつらと会ったんだな?
マラヴィラ博士: 何?
PoI-0171: あの絵を見て、あいつらの夢を見たんだろ?
マラヴィラ博士: ああ、見たよ。
PoI-0171: それで? 連中は何て言ってた?
マラヴィラ博士: (溜め息) 恐竜は、僕を誇りに思っていると、夢を追い続けるようにと言ったよ。僕がやっていることには価値があると言ってくれた。彼女は、あー、僕は物事を改善していると、それを忘れないようにとも言った。
PoI-0171: で、ドラゴンは?
マラヴィラ博士: 心配するなと言った。僕の父に起こったことは僕の責任ではないとも。彼は…
PoI-0171: OK、ウィル。話したくない事は話さなくていい。あいつらがお前を迎え入れてくれたのなら、もう一度絵を見ることを恐れなくてもいいんだ。
マラヴィラ博士: ありがとう。そもそも何故ああいう夢を見るのか教えてくれないか。
PoI-0171: それは連中に聞いてもらわないと仕方ねぇ。あいつら2匹が何処から来たかは俺も知らねぇんだ、連中には自分の心がある。
マラヴィラ博士: 実体を作成したんじゃなかったのか?
PoI-0171: ある意味ではな。絵に嵌め込みはしたが、俺は連中が言う事を制御できねぇ。皆は聴くべきことを耳にするんだって、あいつらは俺にそう言った。
マラヴィラ博士: じゃあ、どうやっ—
PoI-0171: またこれだよ、どうやって俺があいつらを絵に入れたかって? 俺が絵を描いた時、もう連中はそこにいた。俺はただ形作るのを手助けしたまで。
マラヴィラ博士: 彼らはいつ君の夢に登場した?
PoI-0171: 俺が絵を描き上げる前の晩に、一度だけ夢に出た。細かいとこまでは思い出せないが、あいつらが2匹揃って言った一言だけは脳に焼き付いてる。 (PoI-0171は深呼吸をする) “私たちの目と君の目は同じ星々を見上げている。もし君がかつてのようにもう一度背伸びしたいのなら、私たちは君の手を、そして他の者たちの手も取ることができるよ。”
マラヴィラ博士: ワオ。
PoI-0171: そんな感じだ。
マラヴィラ博士: でも一体どういう意味だい?
PoI-0171: それが分かれば世話ねぇや。 (PoI-0171は笑う)
マラヴィラ博士: しかしまぁ、素敵な言葉だったよ。
PoI-0171: ああ。近況を知れて嬉しかったよ、ウィル。絵のほうは大事にしてくれ。
マラヴィラ博士: 分かった。間もなく、君を尋問に戻すことになるだろう。君の無実は無論、僕が保証する。協力してくれるかい?
PoI-0171: 何でもいいさ。もし仮に黒焦げのキャンバスが見つかったら、俺に返してくれねぇかな?
マラヴィラ博士: ここがどういう場所か分かるだろう。
PoI-0171: 冗談さ、相棒。
マラヴィラ博士: 君とまた会えて良かった、ギレルモ。
PoI-0171: こっちもさ、ウィル。他に何か聞きたいことは?
マラヴィラ博士: 一つだけ。
PoI-0171: ったく。
マラヴィラ博士: 絵画の組成のことだ。一部の染料は、過去に合成されていないか、あるいは記録されたことが無い。あれは一体何をどうした?
PoI-0171: お前んとこの人たちは皆、化学ってもんが科学であるのと同じぐらい芸術でもあることに気付いてるだろうぜ。じゃあなStay cool、ウィル。
<記録終了>
結: 現場の更なる調査と、捕縛されたAWCY構成員の尋問により、前記事件におけるPoI-0171の無実は証明された。しかしながら、尋問の終了直後に、PoI-0171は未知の手段で財団の拘留下を逃走した。彼の現在の所在は明らかになっていない。