SCP-3444-JP
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SCP-3444-JP収容担当者へ警告

本報告書の特別収容プロトコル以下の全文の閲覧は、SCP-3444-JPの収容・研究に重大なリスクを伴う事実が含まれることを承知した担当職員にのみ開示されます。また閲覧後は速やかに異常ミーム被曝検査およびクラスA記憶処理を実施してください。

SCP-3444-JP、およびその関連情報を閲覧の際、意図しない衝動的な行動あるいは強迫性障害やパニック障害、抑うつ、解離性障害、統合失調症に相当する兆候が見られた場合、異常ミーム被曝検査が実施され、クラスA記憶処理が適用された後、事後経過が観察されます。


アイテム番号: SCP-3444-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-3444-JPが発生していると噂される情報を各メディアおよびインターネット上の情報から追跡し、SCP-3444-JP発生地点の特定および封鎖を可及的速やかに実施します。特定されたSCP-3444-JPの発生地点は適宜状況に沿ったカバーストーリーを用いて、一般人の立入および侵入を防いでください。回収されたSCP-3444-JPは可能な限り直接の視認を避けつつ焼却処理します。SCP-3444-JPに関する実験等は無期限で凍結されています。

SCP-3444-JP発生地点への侵入者および、財団フィールドエージェントによる巡回等でSCP-3444-JP-AおよびBが発見された場合、該当者は確保され詳細な調査および異常ミーム被曝検査が行われます。検査の結果異常が認められない、あるいはSCP-3444-JP-Aであると判断された場合はクラスA相当の記憶処理および適切なカバーストーリーを適用の上で解放されます。検査の結果SCP-3444-JP-Bであると判断された場合はサイト-8102に収容あるいは特別終了手続: コード-3444に基づき終了されます。

SCP-3444-JPおよびSCP-3444-JP関連情報の追跡、捜索、管理、収容ならびに実験に従事する職員は、以下の規定に基づく副次プロトコルに従わなければなりません。

  • SCP-3444-JPの収容・研究担当者は隔週で入れ替えを実施し、入れ替え時やSCP-3444-JP関連情報の取り扱い後は異常ミーム被曝検査ならびにクラスA相当の記憶処理の実施を義務付ける。
  • SCP-3444-JP、およびSCP-3444-JP関連情報を記録したメディア (新聞やテレビ、インターネット上の情報、財団の報告書等その形態を問わない) への接触を要する際、SCP-3444-JPの発生原因となった経緯および関連する死亡者の情報を取り扱うことは禁止される。
  • SCP-3444-JPの情報隠蔽に用いられるカバーストーリーは、「誰かが死亡した事実」を含んだものは使用してはならず、「生存あるいは行方不明である」旨を含んだものを使用しなければならない。したがって、SCP-3444-JPに関連して死亡した者はその死亡事実を可能な限り隠蔽しなければならない。
  • SCP-3444-JPの収容担当者に関する名前等の情報はすべて本報告書から抹消しなければならず、担当者はSCP-3444-JP収容担当となった経歴を過去にわたって削除しなければならない。
  • SCP-3444-JP発生地点の焼却作業の実施の際は、別途事前に用意した欺瞞情報を与えたDクラス職員を用いて作業を行う。
  • SCP-3444-JP-Bの終了時は特別終了手続: コード-3444に基づき、いかなる職員もSCP-3444-JP-Bの終了時の状況を直接観測してはならない。作業に関与した職員は作業後に異常ミーム被曝検査およびクラスA相当の記憶処理を全員に実施し、担当者の入れ替えを実施する。
  • 上述の全部または一部のプロトコルに違反するなどして担当職員がSCP-3444-JP-Bとなった場合、すべての作業を中断し該当職員の即時の解任・解雇および収容あるいは特別終了手続: コード-3444の適用を行う。

また、財団倫理委員会による通達に基づき、SCP-3444-JPの収容担当者に割り振られた職員に、SCP-3444-JPの収容・研究作業は上述のリスクを伴うことを事前に通知し、書面での同意・承諾を取ることが義務付けられています。


説明: SCP-3444-JPは、ミーム的異常性を保有したドクダミ (Houttuynia cordata) の茎および苞を含めた花序です。SCP-3444-JPは交差点の一角や道路沿い、電柱や信号機の脇などに発生し、日本の一般的な学校で使用されている牛乳瓶に、常に一輪のみで挿入された状態で出現します。ただし、SCP-3444-JPおよびSCP-3444-JPが挿入されている瓶そのものは通常いかなる方法を用いても視覚的に認識することは不可能です。

SCP-3444-JPの影響は、以下に提示する2つの条件に該当する者に対して発露し、視覚的に認識が可能となります1。そしてそれぞれに異なるミーム的影響を与えます。

曝露者が死亡者を認識せず想起した場合 (SCP-3444-JP-A)

発生地点で「このカーブでは交通事故が多い」などの情報・想像から「不特定もしくは不正確な誰かの死を想起する」ことで異常性に曝露します。

この曝露者は "SCP-3444-JP-A" と定義されます。SCP-3444-JP-Aは「誰が死亡したかはわからないものの、死亡したと思われる者に強い罪悪感を覚え、その地点に献花をしなければならない」といった心理兆候と行動を示すようになります。SCP-3444-JP-Aが任意の地点等で「献花」を行った場合、その地点にはSCP-3444-JPが継続的に発生するようになります。この影響は後述のSCP-3444-JP-Bと比類すると軽度なものであり、クラスA相当の記憶処理を適用することで、その影響を無力化することが可能です。

曝露者が死亡者を認識している場合 (SCP-3444-JP-B)

発生地点で実際に死亡した人物が存在する場合、「該当人物の名前や顔など正確な情報と一致した死を想起する」ことで異常性に曝露します。

この曝露者は "SCP-3444-JP-B" と定義されます。SCP-3444-JP-Bは「その人物が死亡した原因は自身に起因するものであり、それに対しての強烈な罪悪感から、その地点に献花をしなければならない」といった心理兆候および記憶改変、行動を示すようになります。この影響は記憶処理による無力化は不可能なものであり、また「献花をする」という行動そのものに対する多幸感に基づく依存性質を有するようになります。この影響が発生した段階での依存性は強いものではありませんが、一定期間「献花」を行わない状態が継続した場合、強烈な不安感や不快感、罪悪感に苛まれる形で、強迫性障害やパニック障害、抑うつ、解離性障害、統合失調症などの強度の精神疾患を引き起こします。

SCP-3444-JP-Bが任意の地点等で「献花」を行った場合、その地点にはSCP-3444-JPが継続的に発生するようになります。また、SCP-3444-JP-Bが死亡した場合も、その死体からSCP-3444-JPが発生します。後者の場合、発生するSCP-3444-JPの数は、SCP-3444-JP-Bが「献花」を行った数に比例して増加するものと思われ、また死体を移動させたとしても、死亡地点に継続してSCP-3444-JPが発生するようになります。

SCP-3444-JPの発生地点を無力化する方法として、SCP-3444-JPが挿入されている瓶が溶解・蒸発する程度の火力で焼却する方法が有効です。SCP-3444-JP-Bの影響の無力化の方法については補遺-02を参照してください。


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    補遺.01: 発見経緯

    SCP-3444-JPの発見には、複数名の財団フィールドエージェントが突如として「これ以上財団職員としての責務を全うできる立場にはない」という理由のもと辞表を提出したことに始まります。これに対し辞表の提出理由の詳細を当該エージェントらの上司であったエージェント・[削除済]が質問したところ、「自身が勤務中に小学生を車で跳ね飛ばした」「未収容のオブジェクトの追跡中に誤って老人を轢き殺した」ことが理由だと説明し、精神錯乱状態に陥りました。この主張を受けたエージェント・[削除済]は当該エージェントらの行動履歴を確認したところ、そのような事故を引き起こしたとされる記録は一切確認できませんでした。なお、当該エージェントらは何らかの異常オブジェクトの影響下にある可能性が懸念されたため、この時点での退職は保留されました。

    本件はエージェント・[削除済]により財団渉外部門および財団対話部門に転送され、職員の精神検査等が行われると同時にさらなる詳細な行動履歴の検証が行われました。結果としてこれらのエージェントらは神奈川県小田原市の複数の事故現場を警察官に扮して現場検証をするという業務に携わっていたことが判明するとともに、一概にエージェントらは「検証現場でガラス瓶にドクダミが挿入された献花を見た」と主張しました。

    上述の調査経緯を受け、小田原市周辺において何らかのミーム的影響を持ったオブジェクトが発生している可能性があるという推測のもとオブジェクトの特定および追跡が即座に計画されました。その後、追跡調査の過程で小田原市の[削除済]交差点にて献花を行っていた人物を確保の上、インタビューが実施されました。

    インタビュー記録-01


    対象: UA-3444-JP-01

    インタビュアー: [削除済]博士

    実施日: 19██/5/4 13:08

    付記: UA-3444-JP-012実例は小田原市内の[削除済]にて、何らかの異常な影響に被曝したと考えられる42歳の女性である。

    19██/█/█追記: 副次プロトコルに基づき、本記録より内容を具体的に想起できた場合、記録の閲覧・視聴を即時停止し、異常ミーム被曝検査およびクラスA記憶処理を受けてください。


    <記録開始>


    [削除済]博士: それでは、インタビューを開始します。気分はどうですか?

    UA-3444-JP-01: とても緊張しています。でも、これで治るんですか?

    [削除済]博士: はい。精神的な疾患にはカウンセリングが効果的と言われています。早速始めましょう。[削除済]さん、今の気分はどうですか?

    UA-3444-JP-01: (沈黙) ……不安です。身に覚えもそんなはずもないのに、誰かが亡くなった気がして、ずっと気持ちが悪いんです。

    [削除済]博士: 誰か、ですか。それは不安ですね。顔など心当たりも浮かびませんか?

    UA-3444-JP-01: はい、先生。誰かが死んでしまった。とても悲しい。ので、献花をしないといけない気がします。罪悪感ですかね……。

    [削除済]博士: 名前も顔もわからない誰かに罪悪感が有る、と。そして献花ですか。思い出せないのに、何処にするのですか?

    UA-3444-JP-01: [削除済]日前、事故が多いと噂になっている[削除済]交差点です。変な献花があるところです。

    [削除済]博士: 変な献花……[削除済]交差点ですね。

    (博士がメモを取る音)

    UA-3444-JP-01: はい。多分、ドクダミの花です。あれが牛乳瓶に1本ずつ挿してあって。ズラっと、とてもたくさん。気づいたら、車道にもせり出して並んでいて……すごくびっくりしました。

    [削除済]博士: ドクダミの花の献花、それは変ですね。車道にもですか。とても怖かったでしょう。それは不安になります。

    UA-3444-JP-01: はい。それから、慌ててお花を置きにいったんです。ドクダミの花もたくさんありました。

    [削除済]博士: そうですか。その時はどんな気持ちでしたか?

    UA-3444-JP-01: とても安心できました。とてもやさしい気持ち……というんでしょうか。ホっとしたんです。でも、時々思い出して……。

    [削除済]博士: 今日の[削除済]さんのように、また不安になってしまったんですね。

    UA-3444-JP-01: はい、先生。どうしたら、いいでしょうか。またお花を置けば……。

    [削除済]博士: 大丈夫ですよ。睡眠に似た状態で、力を抜いて安心感を増す治療があります。こちらのお部屋で出来ますので、受けてみますか?もしかしたら楽になるかもしれません。

    UA-3444-JP-01: おねがいします。お花を置かないと不安になってしまって。

    [削除済]博士: では、こちらへ。

    (二人の足音)


    <記録終了>


    記録終了報告: その後、UA-3444-JP-01はクラスA記憶処理を適用の上解放された。UA-3444-JP-01の予後観察も数日間継続したが、UA-3444-JPに起因すると思われる異常行動等は確認されなかった。

    上記インタビューの後も追跡調査は継続していましたが、インタビューから2日後の19██年5月6日、同市で下校中の小学生の列にトラックが衝突する事故が発生しました (後に本事故は "起点インシデント-3444-01" に指定) 。

    この際も警察官に扮した財団フィールドエージェントによる現場検証が行われましたが、その際事故を引き起こした運転手は「走行中、ガラス瓶にドクダミが挿入された献花が大量に見え、焦りでハンドル操作を誤って事故を起こした」と説明しています。同様の報告は現場検証に赴いていたフィールドエージェント、および現場に居合わせた複数名の一般人からも上がっており、即時の隠蔽対応の実施と当該オブジェクトの回収、カバーストーリー「飲酒運転による交通事故の発生」の流布が行われました。

    なお、回収されたオブジェクトはSCP-3444-JPに指定の上、サイト-8102にて検証および実験が行われる予定でしたが、SCP-3444-JPに関与した職員6名のうち4名が「強い罪悪感とその場での「献花」欲求」を訴え始めました。これを受け同席していた他の職員はSCP-3444-JPによる何らかの影響を受けているものと判断し作業を中断、当該職員の即時隔離と異常ミーム被曝検査の実施、クラスA記憶処理が実行されました。検査の結果、職員4名全員が自身の関与したはずのない死亡事故に強い罪悪感を抱いてること、その場での「献花」を行うことに対する強迫的なほどの欲求を訴えていること、またそれが異常なミーム的影響に基づくものであることが判明しました。記憶処理の結果、職員4名のうち3名にはクラスB以降の記憶処理も効果を示さないことが判明したため、解雇の上収容状態に置かれました。

    また、これまでの経緯から上述の職員と同様の実例である可能性が考えられたため、辞表を提出したフィールドエージェントらに対しても即時隔離の上、異常ミーム被曝検査とクラスA記憶処理が実施されました。結論として前述の実例と同様の結果となったため当該エージェントらは解雇の上収容状態に置かれました。なお、これらのSCP-3444-JPに被曝したと思われる職員は常時「献花」を行わせるよう主張し続けましたが、それが行われたことによる問題の発生が未知数であることからすべて却下されています。

    この後、SCP-3444-JPの影響が財団外でも発生している可能性が指摘されたため、小田原市を中心に複数の地域でSCP-3444-JPの追跡調査が実施されました。そこから得られた情報を統合した結果として、「SCP-3444-JPを認識した者が各地で「献花」を行っていること」「曝露者が「献花」した地点には永続的にSCP-3444-JPが発生すること」「SCP-3444-JPが原因で何らかの死亡事故が発生したという事実そのものが「献花」を引き起こす原因となっていること」が判明しました。そのため、特別収容プロトコルならびにカバーストーリー流布の規定方針が更新され、「副次プロトコル」の初版が策定されました。


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    補遺.02: SCP-3444-JP-B異常性無力化実験記録

    インタビュー記録-04


    対象: SCP-3444-JP-B-18

    インタビュアー: [削除済]博士

    実施日: 19██/11/6 19:15

    付記: SCP-3444-JP-B-18実例は小田原市内の[削除済]にて、SCP-3444-JP影響に被曝した当時10歳の男子小学生である。インタビューは当時、SCP-3444-JPによる影響拡散範囲が不明瞭かつ曝露者の根治が模索されていた前提があるため、財団管轄の児童養護施設に偽装された臨時サイトにて隔離・収容の上で実施された。映像による他の職員へのSCP-3444-JP影響の曝露が懸念されたため、全ての記録は音声のみで行われた。

    19██/█/█追記: 副次プロトコルに基づき、本記録より内容を具体的に想起できた場合、記録の閲覧・視聴を即時停止し、異常ミーム被曝検査およびクラスA記憶処理を受けてください。


    <記録開始>


    ([削除済]博士が、椅子を引き座る音)

    [削除済]博士: こんにちは。アッキーくん3

    SCP-3444-JP-B-18: ちがうよ?僕は[削除済]だよ。

    [削除済]博士: ごめんね。ここではニックネームで呼ぶことになってるんだ。病院みたいだと、怖いからね。

    SCP-3444-JP-B-18: そんな呼び方されたことないよ。

    [削除済]博士: (優しい笑い声) 新しい呼び方なら、テレビのスパイみたいでカッコいいんじゃないかな。

    SCP-3444-JP-B-18: そっか。なら報告だね。

    [削除済]博士: そうだね。では、アッキー隊員に質問だ。今、辛いことはあるかな?

    SCP-3444-JP-B-18: あはは、スパイだから辛いことなんて……ない、あっ。ああ、ごめんなさい。ごめんなさい。

    (SCP-3444-JP-B-18は何かを思い出したように急に声が小さくなり、突然泣き出し始める)

    [削除済]博士: 先生は怒らないし、アッキーくんの味方だよ。話して。

    (2秒の沈黙の後、SCP-3444-JP-B-18は嗚咽混じりに話し始める)

    SCP-3444-JP-B-18: あ、あっ、車に轢かれそうになって、慌ててピョンってしたら、僕、カナちゃんにぶつかって……それで、カナちゃんが転んで、その、お花!お花を置かないといけないのに!僕!

    [削除済]博士: すごく怖かったんだね。大丈夫、アッキーくんのせいじゃない。どうしてお花を置かないといけないのかな?

    SCP-3444-JP-B-18: 僕悪い子だから、悪い子だから、お花を置けばね、カナちゃんがゆるしてくれるの。そうしないと、僕は悪い子で。お花置かせて!

    (SCP-3444-JP-B-18の声が大きくなり、音声が乱れる)

    [削除済]博士: ちゃんと先生にお話できている。アッキーくんはおりこうさんだよ。どんなお花を置くといいの?

    SCP-3444-JP-B-18: わかんない。お花をね、置くの。みんながしてるみたいに、白いお花がいいのかな。瓶にささってる。いっぱい!いっぱい……お花!置かせて!置くよ!

    (SCP-3444-JP-B-18が突然席を立ち走り出す音)

    [削除済]博士: カナちゃんもアッキーくんがそんな風にすると心配しちゃうよ。カナちゃんの名前は?先生が代わりにお花を置いてきてあげる。

    SCP-3444-JP-B-18: [削除済]ちゃん。だめ。悪い子は僕だから僕がやらないといけないの、やだよ!お花するの!お花するの!怖いよ、先生!僕悪い子いやだ!お花置かせて!

    [削除済]博士: SCP-3444-JP-B-18のインタビューを終了します。アッキーくん、大丈夫。じゃあ、先生と行こうね。

    (SCP-3444-JP-B-18の叫び声が突如途絶え、ノイズだけが聞こえてくる)

    [削除済]博士: [削除済]くん……。


    <記録終了>


    記録終了報告: SCP-3444-JP-B-18が言及した「カナちゃん」こと[削除済]氏は、19██/5/6のSCP-3444-JP発見初期に発生した起点インシデント-3444-01に巻き込まれ死亡している。また、本インタビューを実施した[削除済]博士は過度なオブジェクトへの共感と擁護の態度が指摘されたため、異常ミーム被曝検査の実施とクラスA記憶処理の適用が行われた。

    インタビュー記録-09


    対象: SCP-3444-JP-B-23

    インタビュアー: [削除済]研究員

    実施日: 19██/2/16 16:40

    付記: SCP-3444-JP-B-23実例はインタビュー記録-04にて、SCP-3444-JP-B-18へのインタビューを行った財団職員である。前述のインタビュー後に異常ミーム被曝検査およびクラスA記憶処理を行った結果、SCP-3444-JP-B実例と判定された。SCP-3444-JP-B-23はSCP-3444-JP-AおよびBの影響無力化手段の模索の過程で終了実験が敢行されることとなった際、被験者として立候補した。本記録は実施前に自身へインタビューを行うことを希望したため行われた。

    19██/█/█追記: 副次プロトコルに基づき、本記録より内容を具体的に想起できた場合、記録の閲覧・視聴を即時停止し、異常ミーム被曝検査およびクラスA記憶処理を受けてください。


    <記録開始>


    SCP-3444-JP-B-23: おつかれさまです。

    [削除済]研究員: SCP-3444-JP-B-23、協力に感謝します。では、インタビューを始めます。どうぞ。

    SCP-3444-JP-B-23: ありがとうございます。私のせいで[削除済]が死にました。私が車で轢いたのです。終了処分に後悔はありません。

    [削除済]研究員: SCP-3444-JP-B-23、貴方は誰も殺害していません。それに関与している記録も存在しません。それでも、終了処分より辛いのですか?

    SCP-3444-JP-B-23: 間違いなく私が[削除済]を轢き殺した記憶があります。それが辛い。そして、献花したい。それが今すぐに出来ないことがとても辛いです。

    (SCP-3444-JP-B-23は突如緊張状態になり、声が震え始めた)

    [削除済]研究員: もう一度言います。SCP-3444-JP-B-23、貴方は誰も殺害していません。では、今からこのデータを視聴してください。

    (研究員が退室し、Dクラス職員が入室、機材を操作する音。その後、副次プロトコルによる音声処理のため、しばらく無音になる)

    SCP-3444-JP-B-23: [削除済]ちゃん!カナ、ちゃん……(嗚咽)……私が轢いたのに!このアッキーくんが押したと!

    [削除済]研究員: 貴方はこのインタビューの後、[削除済]にて献花を行いました。その後、貴方は辞表を提出しました。理由には、車で[削除済]氏を轢いてしまったと主張していますね。

    SCP-3444-JP-B-23: ええ、ええ……轢いた記憶があります。ですが、あのアッキーという少年も同じような事を言っていました。そして殺したのは同じ[削除済]氏で間違いないです。献花をさせてください。怖い。とても恐ろしいです。

    [削除済]研究員: 落ち着いてください。もう一度確認します。終了処分より、それは恐ろしいことでしょうか?

    (激しく机を叩く音)

    SCP-3444-JP-B-23: そんなの当たり前でしょう!私は怖いんだ、すごく、だから献花を……献花をさせてくれ!皆こうやって置いているんだ、皆が置いているのに、犯人の私が置かないなんて、そんなのあり得ない!

    [削除済]研究員: それはどんな花ですか?

    SCP-3444-JP-B-23: ([削除済]研究員の言葉に食い気味に) ドクダミだよ!皆、瓶に一輪ずつ挿して献花している!花束を献花すると、そこに有るんだ!私の運転ミスで、傷つけられた誰かが花を置いてる!だから!献花しないと!

    [削除済]研究員: ありがとうこざいます。貴方はドクダミを献花するのですか?

    SCP-3444-JP-B-23: 私じゃない。どんな花でも献花したい。心だろ、だから!食堂の花瓶の花でもいい!すぐにくれ、すぐに供えさせてくれ。本当に申し訳ないことをした。償わなければ!

    [削除済]研究員: ありがとうございました。これでインタビューを終了します。

    (席を立ち上がる椅子の音)

    (音声が途切れる)


    <記録終了>


    記録終了報告: その後、SCP-3444-JP-B-23は終了処分が実施されるまで、[削除済]氏への謝罪の言葉と「献花」を要求し続けた。SCP-3444-JP-B-23の灰、および同時に発生した溶解したガラスは各種検査の後、特段の異常性は見られなかったため通常の廃棄物処理プロトコルに従い廃棄された。

    その後、SCP-3444-JP-A、SCP-3444-JP-Bのそれぞれに終了実験が複数回にわたって行われた結論として、SCP-3444-JP-Aは終了する必要はなく、SCP-3444-JP-Bの無力化は焼却が有効であることが判明しました。これは、SCP-3444-JP-Bを殺害した際必ずSCP-3444-JPが死体および死亡地点で発生しますが、SCP-3444-JP-Bを焼却した場合、SCP-3444-JPそのものが同時に焼却されるためであると考えられています。

    詳細な実験結果は以下の通りです。いずれも場合も実験結果の確認は「誰かが死亡した事実」をDクラス職員に与えた上で実施しています。

    被験者 終了手段 結果
    SCP-3444-JP-A-1~5         薬剤      終了後にSCP-3444-JPは発生しなかったため、SCP-3444-JP-Aの終了実験は早期段階で打ち切られた。
    SCP-3444-JP-B-4~8 薬剤 終了後、作業に使用した台にSCP-3444-JPが発生したため、副次プロトコルに基づき作業室を隔離・封鎖した。
    SCP-3444-JP-B-12~15 水没 水没による窒息死で終了。死亡時点ではSCP-3444-JPは発生しなかったが、水から引き上げた時点で引き上げ作業に使用した機器にSCP-3444-JPが発生した。副次プロトコルに基づき機器は隔離・封鎖した。
    SCP-3444-JP-B-17~21 凍結 凍結室で急速凍結する形で終了。凍結24時間後、SCP-3444-JP-B-17、19、21はそのまま解凍したところ、解凍台にSCP-3444-JPが発生した。SCP-3444-JP-B-18は凍結室から搬出後即座に破砕したが、破砕した破片からそれぞれSCP-3444-JPが発生した。いずれも作業に使用した設備等は副次プロトコルに基づき隔離・封鎖した。
    SCP-3444-JP-B-22~25 焼却 焼却室にて4000度で加熱して終了。SCP-3444-JP-B実例が灰化・炭化するまで加熱したところ、SCP-3444-JPは発生せず、肉眼で確認できる溶解したガラスが同時に発生した。これらには特段の異常性は見られなかった。

    以上の結果から、SCP-3444-JPは焼却処理が可能であること、および焼却処理がSCP-3444-JP-Bの無力化に有効であることが判明し、以後特別終了手続: コード-3444の初版が策定され運用されています。なお、運用の過程で必ずしもSCP-3444-JP-B実例の意識が覚醒している必要はないことが判明したため、後の改訂でSCP-3444-JP-B実例終了の際は薬剤によって昏睡状態にする等の措置を執った上で終了される形となっています。 補遺-03を参照してください。


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    補遺.03: 特別終了手続: コード-3444の改訂

    20██/█/██より、特別終了手続: コード-3444は以下の手順に改訂・運用されることとなりました。

    特別終了手続: コード-3444

    SCP-3444-JP-B実例の終了時には、以下の手順を経ること。副次プロトコルに基づき、手順終了後は速やかに異常ミーム被曝検査およびクラスA記憶処理の適用と人員異動を実施すること。

    1. 終了対象のSCP-3444-JP-Bは以後「オツカレさん4」と偽名が与えられ、呼称が統一される。
    2. 欺瞞情報を与えたDクラス職員がSCP-3444-JP-Bの口をテープ等で塞ぎ、頭部を布袋で覆っだ上で、「オツカレさん」と言葉を繰り返しながら焼却室にSCP-3444-JP-Bを移動させる。
    3. 欺瞞情報を与えた別のDクラス職員により、焼却室の稼働ボタンが押される。この際、「オツカレさん、次は健康診断です」と復唱しながら押さなければならない。なお、焼却室は自動清掃機能を持ったものを最低でも3基用い、稼働ボタンを押すことでSCP-3444-JP-Bがいずれかの焼却室でランダムに焼却されるシステムである必要がある。
    4. 焼却後、灰はすべて1箇所の専用廃棄設備に集積され、死体処理担当のDクラス職員にチェックさせる。死体およびSCP-3444-JPが設備内で発見されなければ、一連の手順は終了となる。

    特別終了手続: コード-3444に違反する事態が発生した場合すべての作業を停止し、即時全員に対しクラスA記憶処理を行い、異常ミーム被曝検査を実施の上で緊急対応、および欺瞞情報の更新等が行われる。

    当初の版においてSCP-3444-JP-Bの終了に際しては、SCP-3444-JP-Bの倫理的側面に配慮し麻酔等を用いた昏睡状態での作業が組み込まれていましたが、作業に携わるDクラス職員の作業ミスにより重大な事故につながった事例が発生したため、現在はこの手法は用いられなくなっています。


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    補遺.04: 追跡調査記録

    SCP-3444-JPの発見以前、別任務でオブジェクトを追跡中であった財団フィールドエージェントにより、神奈川県南足柄下郡の山中で献花をする男性を複数回目撃した、という事例が報告されました。SCP-3444-JPの収容以後、関連した事案であるとして該当地点付近を探索した結果、一軒の朽ちた別荘らしき建物を発見しました。

    内部を調査したところ、書きかけの一枚の手紙の断片と日本生類創研のロゴマークが印刷された封筒が発見・回収されました。封筒の宛先は静岡県[削除済]であり、宛名から差出人の妻に宛てたものであると考えられます。

    [削除済]のことはずっと覚えています。
    葬式で泣かなかった僕の事、まだ憎んでいますか?
    仕事に追われていた、と言われれば間違いはありません。
    だから、僕は、僕の仕事を成し遂げ、貴方に詫びるつもりで、新しいプロジェクトを立ち上げました。

    あの日、僕には、[削除済]がまだあの交差点にいる気がしたのです。
    塾の帰りに、いつも僕と帰るのを楽しみに待っていたコンビニの前の交差点に。
    交通事故に打ちひしがれて居た僕は、
    ニュースで報道され、花を持ち訪れる人々に日本中が泣いてくれた、と僅かな救いを見ていました。

    でも、あんなにたくさん有ったペットボトルも無くなり。
    花は枯れて崩れていきました。誰かの姿を見かけることもなくなりました。

    あの時、本当に[削除済]の事を知って泣いてくれた人は、その中に居たのでしょうか。
    涙を出せなかった僕は、その誰かより、冷たかったのでしょうか。

    後悔した僕は、あの後、あの場所へ何度も向かいました。

    残っていたのは[削除済]を知っている同級生の花だけ。
    その光景が懐かしかったです。[削除済]がクラスメイトに話したんでしょう。
    彼らだけは、ずっと来てくれていましたね。学校の帰りに来てくれたのでしょう。
    僕は仕事が忙しく、お礼を言いに行けませんでしたが、今でも感謝しています。

    貴方はあの時、見えないふりをしました。
    怖くて辛い時、何かを認めたくない時、目を背けてしまうのは当たり前です。
    安心してください。友は、花は、[削除済]を見送ってくれていたんですよ。

    だから、この花を飾りに行きます。

    覚えていますか?[削除済]が初めて捕まえたカブトムシが死んだ時、お墓を作って牛乳瓶に挿したドクダミの花を供えたこと。
    貴方が、優しいわね、とだけ呟いて[削除済]を抱きしめた時です。
    僕が、ちょっとその花は変じゃないかな、と言った時、そんなものはありませんよ。と[削除済]を傷つけないようにしてくれた。

    ああ、僕は昔から、気が回らなかったのかもしれません。

    居なくなった人の事を忘れないで。
    僕が悪かったと、思い出せるように。

    きっと、
    たくさん、
    花開くはずです。

    [削除済]が言っている気がするんです。この花を届けてって。

    大切な貴方が僕から離れてしまったことを悔やんでいます。
    泣けなかった優しい人が、誰かから見捨てられないように。5


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    異常ミーム被曝検査:

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    Houttuynia_cordata_03.jpg

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