SCP-3484-JP

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アイテム番号: SCP-3484-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 限りある財団リソースと有益性を鑑み、当該異常に対する積極的な封じ込め措置は認められていません。担当職員は関連事案を倫理委員会に逐次報告する義務が課せられ、必要に応じて特定の職員に睡眠健康プログラムを受講させる権限を持ちます。

当該異常により発生した影響は上層部により審査され、必要に応じて差し戻しの措置が執られます。また、当該異常の付随物は通常の製品と見なして使用するか、非危険物ロッカーに保管することが許可されています。

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SCP-3484-JPの付属物

説明: SCP-3484-JPは孤立した財団職員が疲労や過労等により夜間勤務中に意図せず睡眠に陥った際に超低確率で発生する現象です。対象者は眠りに落ちた後、現地のタイムゾーンで翌日午前9-11時の間に入眠時と同一の姿勢のまま覚醒しますが、その背中には材質的に非異常である黄色地のブランケットが覆い被せられています。そして驚くべきことに、入眠前に未完了だった業務がその後続業務に至るまで全て終了していることが確認されます。

完了した業務は異様なまでに正確で、一見すると技術的に非の打ち所がない水準まで仕上げられています。その裁量は機械的で、人間特有の思慮性は感じられず、論理的合理性のみに従って実行された秩序的行為の形跡が残されます。

さらに、SCP-3484-JPが発生している間、周囲のレコードデバイスは一時的に全機能を喪失します。それらの機能は対象が目覚めた時点で散発的に回復しますが、影響下中の電子記録が残されたという事例は一つとして存在しません。そして現場には、物体の移動・消費痕や対象の様相の変化など、対象が実際に動いて作業したという事実の示唆に富んだ法医学的証拠がしばしば検出されます。しかしながら、その動きを目撃した人物は基本的に存在せず、本人にも一切の自覚がありません。

SCP-3484-JPの正確な起源・機序については未詳であり、米国のサイト-319に属する研究チームの元で目下調査が続けられています。

補遺3484-JP.1: 実例

以下は、SCP-3484-JPの発生事案を抜粋した資料です。情報整理の便宜上、この資料は特に有意な事案のみを掲載しており、既知のSCP-3484-JP関連事案を全て網羅していないことには留意すべきです。完全版の記録は要請に応じてサイト-319データアーカイブから取得可能です。

対象 業務 内容
S.モクソン次席研究員 手書き書類の電子化 2001/08/12、S.モクソン次席研究員は、ミネソタ州・サイト-3V7Fの居住区にて、21世紀以前に作成された手書き資料の電子化作業を私的に継続していた。対象は連日の事務作業により2日間十分な睡眠を取っておらず、作業中に極度の疲労からPCの電源を点けたまま自然睡眠に陥った。覚醒後、手元にあった手書き資料はすべて財団データベース上に正確に電子化されており、走り書き特有の表記ゆれや語句の不明瞭さ、あるいは注釈の不足といった些細な誤りに至るまで極めて精密に修正されていた。補足情報として参照された既存データベースへのアクセスは計867件に上り、対象が入眠した直後からおよそ4分の間に集中して記録されていた。
F.カーヴァー保安技師 送電塔の補修作業 2007/09/24、F.カーヴァー保安技師は、カリフォルニア州・エリア-708の丘陵地帯にある送電塔の補修任務に従事していた。当初の目的は落雷の微影響を受けた部品の点検と修繕であったが、現地は豪雨後の滑りやすい地形で、仮設の足場も一部崩壊しており、作業環境は著しく不安定だった。日没までの進捗はわずかで、対象は仮設アウトポストに戻り、徹夜で計画書の再構成を試みていた。その後、対象は作業テーブルに覆いかぶさるような姿勢で自然睡眠に陥った。覚醒後、送電塔は全体的に正常な稼働状態にまで回復しており、対象の手元にあった資材のみで理論上可能な限界に迫るレベルの修繕が施されていた。対象の作業着および黄色地のブランケットは雨水に濡れ、膝には泥ハネが確認された。安全靴にはエリア周辺で見られる赤褐色の粘性土壌が分厚くこびりついていた。両手首には何かを持ち上げたような鈍痛が残っていた。破損した仮足場は全て撤去され、キューブ状に押し固められて同施設内の廃棄場に整然と積み上げられていた。
O.ソナフ博士 Dクラス職員の投入審理 2016/07/30、O.ソナフ博士は、タスマニア州・サイト-5ZU1において、LoI-9925への高危険度探査にDクラス職員を投入するか否かの審査を行っていた。LoI-9925は南極海沿岸の人里離れた地域に存在する旧造船労働組合の事務所であり、2階の用務員室の扉を通じて、刃物を所持した人型実体が徘徊するキャビン風異常空間へと侵入することができた。対象は周囲から強い人道主義者として知られており、こうした判断に最終決定権を持つのは今回が初めてだったため、深刻な心理的葛藤に直面していた。対象は一晩中眠れないまま思い悩み、翌日も同様の状態が続いた末、研究セクター内で精神的な摩耗を感じながら自然睡眠に陥った。覚醒後、Dクラス職員5名がサイト内の収監チャンバーから行方をくらまし、対象の机上にはLoI-9925の内部構造・異常性・歴史に関まつわる計785ページにわたる詳細な報告書が置かれていた。当該報告書は臨床的にきわめて適切かつ精緻に構成されていたが、感情的・主観的要素に関する記述は意図的に全て排除されていた。本事案の翌日、Dクラス職員5名が人員補填規定に基づき新たにサイト-5ZU1へと移送されたことが記録された。これは一定の権限を持つ研究職員が要請できる特別措置であり、本件の人材依頼書には完全にO.ソナフ博士の筆跡でサインが為されていた。
R.ブーキナ医師 E.ペノルフ研究員の処遇審理 2020/01/05、R.ブーキナ医師は、モスクワ州・サイト-7PYにて、同僚であり恋人関係にあったE.ペノルフ研究員の長期的な精神医療を担当していた。ペノルフ研究員は2016年、未登録異常への曝露を受けた後、3年以上にわたり重度の無気力状態に陥っていた。ブーキナ医師は観察・治療・介護を単独で担っていたが、上層部からは利益の見込みなしと判断され、度々終了勧告が下されていた。これに対抗する形で、対象は治療継続を求める署名活動を開始し、その推進のため日夜時間を費やしていた。最終的に、対象はペノルフ研究員の今後の処遇にまつわる審理について思案中に心身の疲労から自然睡眠に陥った。覚醒後、ペノルフ研究員は医療棟の長期リハビリ室から完全に姿を消していた。該当時間帯の監視記録は全て空白状態だった。約13時間にわたる捜索の結果、サイト-7PY敷地内の森林にて、未登録の埋葬遺体が発見された。歯科記録との照合により、それがペノルフ研究員本人であることが確認された。対象であるR.ブーキナ医師の手指および爪下、そして黄色地のブランケットからは微細な土壌粒子が検出された。対象の両手は酷くかじかみ霜焼けていた。医療棟からは運搬台車1台とアイスピック1本、生体用保冷剤7個についての紛失届が提出された。

補遺3484-JP.2: 現状報告

2020/12現在、精神的理由によるSCP-3484-JP関連の管理休暇の受理はこれまで11件を越え、現在の睡眠不足気味な勤務傾向が改善されない限りこの件数は増え続けることが予測されています。しかしながら、SCP-3484-JPによって完了された業務は最終的に財団内のリソースや研究成果に大きく貢献する結果となっており、一部の成果物は例外的な品質を持つものとして財団マニュアルへの再編集・再利用が期待されています。こうした状況を鑑み、倫理委員会は長期的な顧問活動が要請され、SCP-3484-JP関連事案に対する継続的な評価を実施することでアノマリーの消極的監査を行っています。



補遺3484-JP.3: 追記

2025/11/13、千葉県・サイト81H9に勤務するA.セノオ研究員が、特定の非生命知的アノマリー1の収容チャンバーを巡察中、休憩のために腰かけたパイプ椅子の上で、職務上の疲弊により自然睡眠に陥る事案が発生しました。覚醒後、A.セノオ研究員の体には黄色地のブランケットが覆い被せられており、知的アノマリーはその後の聴取において、セノオ研究員が一晩中無表情で自分を凝視してきたと主張しました。また、知的アノマリーは対象について、覚醒する約10分前に突然凝視を止めてうな垂れた後、収容チャンバー天井付近に"幾何学的な柄の入った光を漏出させる"裂け目が発生し、そこから真っ白な細腕2本がだらりと垂れ、把持するブランケットで対象をそっと覆ったのち頭を優しく撫で付けてその場から消失したとも証言しました。当該事案は現在審理中であり、適切かつ十分な評価を経た上で報告書への正式記載が見込まれています。

また、本事案に関与したこの非生命知的アノマリーについて、面会した財団職員に不自然な労いの言葉を投げ掛けるという新たな行動が確認されています。現段階での聴取によると、この知的アノマリーは自身の最近の傾向について納得の行く自己理解に至っておらず、重度の光視症や天文学的なうわ言に苦しんでいるとも診断されています。以下に、この知的アノマリーの労いの言葉をケーススタディとして1例掲載します。

周りにとって喜ばしい道に進めることが、貴方達の立派な所です。

今日もお疲れ様でした。

R.ブーキナ医師が精神寛解後の事後分析過程で誤ってこの発言データを閲覧してしまい、管理休暇が無期限延長されたことは特筆すべき事項です。本事案はSCP-3484-JPの曝露者が上述を始めとする発言データ群から一種の残酷な洞察を得ることによるトラブルの発生を実証したため、曝露者に対する限定的なデータアクセス禁止措置を確立する契機となりました。

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