SCP-3490-JP

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アイテム番号: SCP-3490-JP

収容クラス: Euclid

特別収容手順: SCP-3490-JPはサイト-81UOの標準人型収容室に収容されます。SCP-3490-JPの周囲には全長15cm以上25cm以下の船舶模型を5個以上、10cm以上15cm未満の船舶模型を5個以上常時配置します。これらの模型が破壊され次第同程度の模型と交換します。SCP-3490-JPの収容違反が発生した場合は機動部隊ミュー-13 ("ゴーストバスターズ")によって回収作業が実行されます。

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ハルトマン霊体撮影機で撮影されたSCP-3490-JP

説明: SCP-3490-JPは身長160mmの小型霊的実体1です。SCP-3490-JPの容姿は故人の三崎村吉氏のものと一致しています。同氏は20██年に青森県沖で発生した海難事故により死亡しており、この事故がSCP-3490-JP発生の起源であると推測されています。

SCP-3490-JPは限定的な広域知覚能力を有しており、船舶及びそれを模した物体が存在する座標に関した遠隔的な探知を可能とします。過去確認された知覚能力の最大範囲として、自身から40km離れた地点の対象物を探知をした事例があります。

SCP-3490-JPは自身から最も近方に位置する船舶を模した物体(以下"対象物")を探知すると、その地点まで転移します。転移後のSCP-3490-JPは騒霊(ポルターガイスト)現象を引き起こし、対象物の破壊を試みます。対象物を破壊する、もしくは破壊出来ずに一定期間が経過すると、近方に位置する別の対象物へ再度転移します。

SCP-3490-JPの騒霊現象の規模は狭い範囲に限定されるため、破壊可能な対象物も限られます。そのため多くの場合、破壊可能な対象物は素材が木製か軟質プラスチック製の、概ね10cm立方の範囲に収まるものになります。

SCP-3490-JPは青森県から秋田県や岩手県の北部にかけて、船舶の模型やボトルシップがひとりでに破壊される事案が相次ぎ、拡張感覚知覚2を有する人物による「小さいおじさんが模型を壊していた」という証言から発見されました。

担当チームは超常証跡データベース3に基づいてSCP-3490-JPの出現地点を予測し、用意した船舶模型による誘導を行うことでSCP-3490-JPとの接触に成功しました。以下はSCP-3490-JPに対するインタビューです。

インタビュー記録3490-JP-3


対象: SCP-3490-JP
インタビュアー: 谷口研究員
付記: 誘導地点にはSCP-3490-JPの転移が確認され次第、外周を防霊コーティング処理を施したパネルで覆い、加えてnPDNを作動させて転移を阻害している。


<記録開始>

谷口: ちょっと、ちょっとすみません。

SCP-3490-JP: ん?おやおやあなたは私が見える方でございましたか。こちらの模型の持ち主でいらっしゃいますか?

谷口: ええ、まあ。

SCP-3490-JP: このような立派な船を壊せてとても嬉しく思っています。ありがとうございます。

谷口: ……喜んでいただけて何よりです。私はあなたにお話しを聞きたくてこうして準備をしました。これはあたなを呼ぶために用意したものです。少しお話を聞いてもよろしいでしょうか。

SCP-3490-JP: なるほど、そういうことでしたか。もちろん構いません。

谷口: ありがとうございます。それではまずあなたのお名前を教えてください。

SCP-3490-JP: 私は三崎村吉と申します。よろしくお願いいたします。

谷口: よろしくお願いします。それでは三崎さんが行っている模型の破壊、あれはどういった目的で行っているのでしょうか。

SCP-3490-JP: 確かにかつての私ならあなたと同じことを思うかもしれません。私はある時から船の破壊に目覚めたのですが、それは私が船の事故によって命を落としてしまったことから始まります。

谷口: 20██年に発生した遊覧船████によるものですか。

SCP-3490-JP: はい、私は泳げないなりに必死にもがきましたが、それでも間に合わずに海に沈む中で段々と意識が遠のいていきました。ああ、ここで自分は死んでしまうんだと残念な気持ちでいっぱいになりましたが、そんなことお構いなしに潮の流れは私を容赦なく海底にまで引きずり込みました。

しかしまた私は意識を取り戻しました。理由こそ分かりませんが、九死に一生を得たのならばそれに感謝するのみ、とは思ったのですが……今まで感じたことのない、抗えない欲求が自分の中にふつふつと湧いてくるのを感じたんです。

谷口: 欲求、ですか。どういったものでしょうか。

SCP-3490-JP: 船を沈めたい、というものです。

谷口: ……何故ですか。

SCP-3490-JP: この欲求を分析してみたのですが、私は海難事故で死んでしまったわけじゃないですか。なのでどうしてもやっかみと言いますか、楽しく船を乗っている方々に対する妬み嫉み僻みを持ってしまいます。そしてそれら負の感情が、私をいわゆる船幽霊4みたいなものに変貌させたのではないかと思います。

多少の困惑はありましたが、そうは言っても一度死んでしまってはどうすることも出来ません。ですがよし船を沈めるぞと思うと何だが活力が湧いてくるため、それを生き甲斐として過ごすことを決意しました。

谷口: ご丁寧にどうも……しかし船幽霊になったとご自身では仰られていますが、我々が認識している範囲では一隻も船を沈めてはいません。これはどうしてなのでしょうか。

SCP-3490-JP: いやはや、お恥ずかしながら今の私には、船を沈められるほどの力がありません……私が船幽霊になったばかりだからか、このように小さな体になってしまったからかは分かりませんが、うんともすんともしない船を目の前にしたときはさすがに涙が出そうになりました。

谷口: まあその、我々としては沈められるよりはそちらの方が全然構いませんが。それで模型への破壊行為はその……苛立ちとかですか。

SCP-3490-JP: 確かにそのように思われても仕方ないかと思います。しかし私は決して腹いせに皆様の大切な模型を壊して回っているわけではありません。

私が船幽霊としての力量が大幅に欠けていることに気づき、それならば何をすればいいかと考えました。その時ふと、少年の頃の野球の練習を思い出しました。私は一度、本当に気持ちのいいホームランを飛ばしたことがあります。そしてそのホームランは幾度とない素振りのもとに達成したものです。

私はそういった記憶から、派手な結果というのは地道なものの積み重ねで到達するものだということを理解しました。そうなればやることと言えば一つ、とにかく練習をしてより強い力を得ようということです。

谷口: だから船の模型の破壊を続けていたと。

SCP-3490-JP: はい。初めは笹舟から徐々にモノを大きくしていき、今ようやっとボトルシップの中身ほどのものは完膚なきまでに壊せるようになりました、このように。

[SCP-3490-JPは用意した模型を破壊する。]

しかしそこからがさらに上にステップアップするのが中々に出来ずに……お恥ずかしい限りではありますが、ここ最近は自分の限界と絶賛格闘中であります。

谷口: なるほど、分かりました、ありがとうございます。

SCP-3490-JP: それでは私はここで失礼させていただきます。私としても自分の想いを誰かに話せて何かすっきりした気がします。本当にありがとうございました。

[SCP-3490-JPが転移する。]

谷口: え?うわマジか。これでもワープ出来るんだ……。

<記録終了>

SCP-3490-JPの転移能力の阻止は現在の収容技術では極めて困難であるため、SCP-3490-JPの主張及び誘導計画を基に船舶模型を利用した収容方法が立案されました。SCP-3490-JPには力量向上を目的とした練習の場を提供するという名目で説明し、継続的に模型を提供することで他所への関心を防いで転移を防止するというものになります。この計画は成功し、継続的な収容が行われています。

インタビュー記録3490-JP-8


対象: SCP-3490-JP
インタビュアー: 谷口研究員


<記録開始>

SCP-3490-JP: ああ、谷口さん。こうして練習の場を設けていただいて、ありがとうございます。

谷口: 三崎さん、どうですか調子は。

SCP-3490-JP: ええ、調子は悪くないです。悪くはないのですが……中々こう成長したと明確に言えるような成果を出せず……ここまでしていただいてるのに申し訳ないです。

谷口: いやもうそんな……三崎さんは努力家なのですね。

SCP-3490-JP: 努力家だなんてとても、自分の不甲斐なさを何とかしようとしているだけですよ。

谷口: それでもですよ、人間そうひたむきに努力出来る人は中々いません。

SCP-3490-JP: そう言っていただけると私もますます頑張らねばなと身が引き締まりますね。ありがとうございます。

谷口: こちらこそ、お話ありがとうございます。

<記録終了>

補遺3490-JP-A: 20██/██/██にSCP-3490-JPの収容違反が発生しました。再確保自体は事案発生から約2日経過した時点で完了したものの、その後の調査によってSCP-3490-JPが従来とは異なる挙動を示したことが判明しました。本事案におけるSCP-3490-JPは対象物の破壊は行いつつも、破壊後にすぐ再転移を行わずに周囲、特に書籍を中心に物色する様子を見せました。

インタビュー記録3490-JP-24


対象: SCP-3490-JP
インタビュアー: 谷口研究員


<記録開始>

谷口: 単刀直入にお聞きしますが、どうしてまた他所に行ったんですか。我々の提供する模型では足りないでしょうか。

SCP-3490-JP: いえいえ、そんなことはございません。谷口さん方には本当に親切にしていただいていると、心の底から思っています。

谷口: ではなぜ。

SCP-3490-JP: はい、私は皆様のご協力もあって本当にたくさんの練習をさせていただいていると思います。しかし、それでも私の力量はお恥ずかしながらまったく上がる気配がありません。ああもちろん、皆様の批判をしているわけではありません。これは私が望んだ形ではありますし、基礎練を疎かにする者は愚か者です。

谷口: は、はぁなるほど……。

SCP-3490-JP: ですがそうは言っても実績が出ないことには話は始まりませんが、その時ふと、少年の頃の野球の練習を思い出しました。私は一度会心のホームランを打ってから、しばらく球がバットにかすりもしない日々が続きました。今でいうスランプというものです。

子供ながらに焦りました、ホームランならまだしも打てすらも無くなるなんて思いもしませんでしたから。しかし私はそこで諦めず、父に相談した上で色んな練習方法を試し、苦労はしましたがまた打てるようになりました。その時の嬉しさと言ったらもう格別でした。

谷口: なるほど……それでその記憶で何を思いついたのですか?

SCP-3490-JP: はい、私の力はまだ非力です。しかしそれならアプローチを変えてみればいいのではと思った次第です。例えば船のエンジンを弄って岸壁に衝突させるとか、構造的に弱い箇所に穴を開けて水の流入を誘うとか、そういった今の私の力でも出来ることがあると思うのです。

谷口: はぁ、まあ確かに、だいぶ方針を変えましたね。

SCP-3490-JP: そうとなると船に関する詳細な知識が必要になります。模型を作るほど船が好きな方なら、そういった本を持っていないかと思いましたが……詳しい構造などの話になりますと、それこそ専門家の方が持っているようなものでないと考えているようなことは出来そうにありませんでしたね。

今度は図書館を探してみようとも考えています。ああ、もちろん皆様が用意してくださるこの場も存分に活用させていただいた上になります。基礎練を疎かにする者は愚か者ですからね。

谷口: ……なるほど、ありがとうございます。

<記録終了>

船舶工学部門の見解では、正しい知識があってもSCP-3490-JP程度の騒霊現象の規模であれば、環境等の外的要因が無い限り自力での沈没は極めて困難であるとしています。しかし船舶模型以外のSCP-3490-JPの収容違反のきっかけとなる興味の対象が出来たことと、船舶の沈没に発展しうる極低確率の事態が発生した場合の予防策として、SCP-3490-JPに対して船舶に関する誤った情報の提供が予定されています。

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